退去立会いは、賃貸物件オーナーにとって原状回復の範囲と費用負担を明確にする重要なプロセスです。立会いを適切に行うことで、敷金精算のトラブルを未然に防ぎ、次の入居者募集をスムーズに進められます。本記事では、退去立会いで確認すべきチェックリストを部位別に詳しく解説し、証拠写真の撮り方や書類準備のポイントまで網羅しています。国土交通省のガイドラインに基づいた適正な判断基準も紹介しますので、退去時のトラブル回避と円滑な物件運営にお役立てください。

退去立会いの流れと準備チェックリスト

退去立会いは、入居者が退去する際に室内の状態を共同で確認し、原状回復の範囲を特定する手続きです。ここでは、立会い当日の流れから事前準備まで、押さえるべきポイントを順を追って解説します。

立会い当日の鍵返却と現状確認の流れ

退去立会いは、入居者が荷物をすべて運び出した直後に行うのが最適なタイミングです。家具がない状態でないと、隠れた傷や汚れを正確に判定できないため、引越し当日から解約日までの間に実施しましょう。

立会いの流れとしては、まず入居者から鍵を受け取り、その後室内を一緒に巡回して状態を確認します。確認した内容はその場で記録し、入居者の署名・捺印をもらうことで、後日のトラブルを防ぐことができます。

修繕費や原状回復の確認項目

原状回復費用の負担区分は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて判断します。入居者負担となるのは故意・過失による破損や、掃除を怠ったことによる汚れであり、それに対し経年劣化や通常の使用による摩耗はオーナー負担となります。

修繕が必要な箇所を特定する際は、入居時の写真と比較しながら確認することが重要です。壁紙のタバコによる黄ばみや、床の深い傷などは入居者負担となるケースが多いため、見落としがないよう注意深くチェックしましょう。

入居者が準備する事前対応一覧

立会いをスムーズに進めるためには、入居者にも事前準備を依頼しておく必要があります。具体的には、ライフライン(電気、水道、ガス、インターネット)の解約手続きの完了と、残置物がないことの確認を求めましょう。

また、入居者には新住所と連絡先を正確に伝えてもらうことが必須です。敷金精算や後日の連絡のために、身分証明書で住所の正確性を確認することが望ましいでしょう。

入居者に依頼する事前準備の一覧を以下にまとめます。

  • 電気、水道、ガスの解約手続き完了
  • インターネット回線の解約手続き完了
  • 室内の残置物撤去と清掃
  • 新住所と連絡先の準備
  • 入居時に渡した鍵(スペアキー含む)の用意
  • 郵便局への転居届提出

これらの準備が整っていることで、立会い当日の確認作業がスムーズに進みます。

退去立会いで確認する部屋チェックリスト

退去立会いでは、部屋の状態を部位ごとに細かく確認することが重要です。ここでは、壁紙や床、水回り、設備など、見落としやすい箇所も含めた具体的なチェックリストを紹介します。

壁紙や床の傷の確認項目

壁紙と床は、最も損傷が発生しやすい箇所であり、原状回復費用の大部分を占めることが多いです。壁紙については、タバコのヤニによる変色、画鋲やネジ穴の数と大きさ、結露によるカビの発生状況を重点的に確認しましょう。

床については、家具の設置跡(通常損耗)と引きずり傷(入居者負担)を区別することがポイントです。フローリングの深い傷や、畳の焼け焦げなどは入居者負担となるため、入居時の写真と比較しながら慎重に判断してください。

壁紙と床の具体的なチェック項目を以下に示します。

確認箇所 通常損耗(オーナー負担) 入居者負担となる損傷
壁紙 日焼けによる変色、画鋲穴(少数) タバコのヤニ、ペットの引っかき傷、大きな穴
フローリング 家具設置跡、日焼け 深い傷、水濡れによる膨れ、ペットの爪跡
日焼けによる変色 焼け焦げ、飲み物のシミ、カビ
クッションフロア 家具の凹み跡 タバコの焦げ跡、油汚れ

この表を参考に、各箇所の損傷が通常損耗か入居者負担かを適切に判断しましょう。

水回りの漏れと汚れの点検項目

水回りは、清掃不良や経年劣化による故障が発生しやすい箇所です。キッチン、浴室、トイレ、洗面台の各設備について、水漏れの有無と清掃状態を確認しましょう。

特に換気扇の油汚れや、浴室のカビは清掃を怠ったことによる汚れとして入居者負担となる場合があります。排水口の詰まりや蛇口からの水漏れは、設備の経年劣化が原因の場合はオーナー負担となるため、症状の原因を見極めることが重要です。

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設備と備品の動作確認項目

エアコン、給湯器、インターホンなどの設備は、動作確認を必ず行いましょう。故障している場合、入居時から不具合があったのか、入居中に発生したのかを特定する必要があります。

備品については、照明器具のカバー、網戸、ふすまなど、契約時に付属していたものがすべて揃っているかを確認します。入居時のチェックリストや写真と照合し、紛失や破損があれば入居者に負担を求める根拠として記録しておきましょう。

設備と備品の動作確認項目を以下にまとめます。

  • エアコンの冷暖房動作とリモコンの有無
  • 給湯器の温度調整機能
  • 換気扇の動作音と吸引力
  • インターホンの呼び出しと応答
  • 照明器具の点灯とカバーの状態
  • コンセントとスイッチの通電確認
  • 網戸の破れとレールの動作
  • ふすまと障子の破損確認

これらの項目を一つずつ確認することで、設備の状態を正確に把握できます。

トラブル回避のための立会いチェックリスト

退去立会いでは、オーナーと入居者の間で認識の相違が生じやすく、トラブルに発展するケースも少なくありません。ここでは、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策とチェックリストを紹介します。

立会いでの立場と役割整理

退去立会いには、オーナー(または管理会社担当者)と入居者が参加しますが、可能であればリフォーム会社などの専門家にも同席してもらうことをお勧めします。専門家がいることで、修繕方法と概算費用をその場で提示でき、入居者の納得感が高まります。

オーナーの役割は、室内の状態を客観的に確認し、原状回復の範囲を入居者と合意形成することです。感情的にならず、国土交通省のガイドラインに基づいた公正な判断を心がけることで、円滑な精算につながります。

証拠写真の撮り方と保存方法

立会い時には、傷や汚れの箇所を写真撮影し、客観的な記録として残すことが必須です。撮影する際は、部屋全体の様子がわかる引きの写真と、損傷箇所のアップ写真の両方を撮影しましょう。

写真には撮影日時が記録されるよう、カメラやスマートフォンの設定を確認しておくことが重要です。撮影した写真は、入居時の写真と合わせてフォルダ分けして保存し、敷金精算の根拠資料として少なくとも5年間は保管しておきましょう。

証拠写真の撮影ポイントを以下に示します。

  1. 部屋の四隅から全体を撮影する
  2. 損傷箇所は定規やメジャーを添えてサイズがわかるように撮影する
  3. 窓からの自然光と照明を併用して明るく撮影する
  4. 撮影日時が記録される設定になっているか確認する
  5. 入居者にも撮影内容を確認してもらう

これらのポイントを押さえることで、後日の争いを防ぐ有効な証拠となります。

立会い後の請求対応と交渉注意点

立会い後に修繕箇所が新たに見つかった場合、その箇所を入居者に請求するのは困難です。立会い時に見落としがないよう、チェックリストに沿って漏れなく確認することが鉄則となります。

敷金精算の金額に入居者から異議があった場合は、ガイドラインの基準を示しながら冷静に説明しましょう。合意に至らない場合は、第三者機関(消費生活センターなど)の調停を利用することも選択肢の一つです。

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退去立会いで使う持ち物と書類チェックリスト

退去立会いを効率的に進めるためには、必要な持ち物と書類を事前に準備しておくことが大切です。ここでは、オーナーが持参すべきアイテムを一覧で紹介します。

持参すべき身分証と鍵類一覧

オーナー自身が立会いに参加する場合は、本人確認のための身分証明書を持参しましょう。入居者から鍵を受け取る際には、渡した鍵の本数(スペアキー含む)を事前に確認し、すべて返却されているかをチェックします。

鍵の返却が不完全な場合、セキュリティ上の理由からシリンダー交換が必要となり、その費用を入居者に請求することになります。鍵の受領書を作成し、入居者の署名をもらっておくことで、後日の紛争を防ぐことができます。

用意する契約書や領収書一覧

立会い時には、賃貸借契約書と入居時のチェックリスト(または写真)を必ず持参してください。契約書には原状回復に関する特約条項が記載されている場合があり、その内容に基づいて負担範囲を判断します。

敷金の預かり証や過去の修繕履歴がある場合は、それらの書類も用意しておきましょう。特約内容が有効となるためには、必要性・合理性・入居者の認識という3つの要件を満たしている必要があるため、契約時の説明記録も確認しておくと安心です。

立会いに持参すべき書類の一覧を以下に示します。

書類の種類 用途 重要度
賃貸借契約書 原状回復の特約確認、契約条件の照合 必須
入居時チェックリスト 入居時の状態との比較 必須
入居時の写真 損傷の有無を判断する根拠 必須
敷金預かり証 預かり金額の確認 推奨
過去の修繕履歴 経年劣化の判断材料 推奨
退去立会い確認書 当日の確認内容を記録し署名をもらう 必須

これらの書類を準備しておくことで、立会いの信頼性と効率が向上します。

現場で使う測定や清掃道具一覧

立会い現場では、傷や汚れのサイズを正確に測定するためのメジャーや定規が必要です。また、スマートフォンやデジタルカメラで証拠写真を撮影するため、バッテリーの充電を忘れずに確認しておきましょう。

簡易的な清掃道具(ウェットティッシュなど)があると、汚れの程度を確認する際に役立ちます。懐中電灯を持参すると、押し入れの奥や床下収納など暗い場所の確認がしやすくなり、見落としを防ぐことができます。

現場で使用する道具の一覧を以下にまとめます。

  • メジャーまたは定規(傷のサイズ測定用)
  • スマートフォンまたはデジタルカメラ(証拠写真撮影用)
  • 懐中電灯(暗所確認用)
  • ウェットティッシュ(汚れ確認用)
  • 筆記用具とクリップボード(記録用)
  • 退去立会いチェックリスト(確認漏れ防止用)

これらの道具を事前に準備しておくことで、立会い当日の作業がスムーズに進みます。

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まとめ

退去立会いは、原状回復の範囲と敷金精算を明確にするための重要なプロセスです。本記事で紹介したチェックリストを活用し、壁紙、床、水回り、設備を部位ごとに漏れなく確認してください。

トラブルを防ぐためには、証拠写真の撮影と入居者との合意形成が欠かせません。国土交通省のガイドラインに基づいた公正な判断を心がけ、必要書類と道具を事前に準備しておきましょう。

退去立会いを単なる事務作業と捉えず、次の入居者募集に向けた物件価値向上の機会として活用することをお勧めします。

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執筆者

アセットテクノロジー編集部

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