貯蓄から投資への流れの中で起こっている事とは?

昭和の時代から日本人は堅実な国民性から貯金への信頼度が極めて高い時代が続いています。現在のような低金利時代においても依然金融資産全体に占める預金・貯金の割合が極めて高い事からも示されます。

日銀の調べによると、日本の家計の金融資産のうち「現金・預金」は2024年12月時点1,134兆円もあり、これは家計の金融資産の約50% を占めています。

家計の金融資産

 

資産残高

割合

資産合計

2,230兆円

     -

現金・預金

1,134兆円

50.9%

債務証券

32兆円

1.4%

投資信託

136兆円

6.1%

株式等

298兆円

13.4%

保険・年金・定型保証

544兆円

24.4%

その他

86兆円

3.9%

<日銀「2024年第4四半期の資金循環(速報)」>

近年ではこうした貯蓄を投資に向かうように、政府でも投資を推奨していますので少しずつ投資も増えていますが、まだまだ日本人全体に浸透するには至っていないようです。

また投資というと昔から「投機」のようないわゆる危ないものという良くないイメージが定着してきた事もあります。

若い方には将来のための資産運用としてNISAなどを始めた方も多くいらっしゃいますが、こうした方も証券乗っ取りに合うケースもあります。

特にインターネットやスマホなどのセキュリテイは万全ではありません。こうした点にも留意して万全の注意が必要であると考えます。

政府でも投資を推奨していますが

政府による「資産運用立国」の考えのもと、国民に対し資産運用を推奨する世の中となってきています。高校生など若い時から授業の中に資産運用のカリキュラムを組んだり、NISAやiDeCo、最近ではシニアNISAなど国民に資産運用というキーワードが急速に浸透してきています。中には同僚がやっているから、あるいは知り合いがやっているからといったちょっとしたきっかけで始める方も多く、リスクについての考え方が希薄な状態で進める方が多いのも実態と考えます。

従来の投資のリスクというと損失や資産の目減りを意味していましたが、近年の投資詐欺においては資産が減るどころではなく消えるという怖さも併せ持っています。

増加している「証券口座乗っ取り」とその対策

近年は手数料の安さから証券のオンライン取引が増加しておりますが、この証券口座が乗っ取られて自分が知らないところで勝手に株の売買をされてしまうのが、いわゆる「証券口座乗っ取り」です。

金融庁の発表によると、2025年に入ってからだけで、証券口座乗っ取りによって発覚した不正アクセス数は6,380件、不正取引額は売却・買い付け合わせて3,000億円を超えています。こうした不正により発生した被害が不正取引額とは別に発生しています。

またこれは発覚した数値であり、まだ判明していない不正取引も多数ある可能性があります。

特に今年4月には不正アクセス件数が一気に5,000件近く発生、被害額も前月から約10倍となっています。新年度で新たに始めた資産運用などが狙われた可能性もあります。

2025年の不正アクセス・不正取引(第三者による取引)の被害<2025年>

 

1

2

3

4

合計

不正取引が発生した証券会社数

2社

2社

5社

9社

不正アクセス件数

65

43

1,420

4,852

6,380

不正取引件数

39

33

687

2,746

3,505

売却金額

約0.8億円

約1億円

約129億円

約1,481億円

約1,612億円

買付金額

約0.7億円

約0.6億円

約128億円

約1,308億円

約1,437億円

<資料:金融庁>

<その対策>

闇サイトでこうした証券口座が売買されているとの新聞報道もありました。その数は14万口座とされていますが、これは氷山の一角の可能性もあり、多くの口座のパスワードなどが盗まれている可能性があります。パスワードの管理(使いまわしをしない・二要素認証)、フィッシングメールの注意、セキュリティソフトの強化、そして口座に不信な点があった場合には早急に証券会社に連絡をする事などが重要です。

当社にもこうした詐欺メールが毎日来ます。受信拒否をしてもアドレスを変えて毎日来ます。何かのタイミングで騙されてしまう方もいらっしゃるかもしれません。あやしいメールは絶対にクリックしないようにして下さい。

当社に来た詐欺メールの例

注:↑絶対にクリックしないで下さい。

SNS型の投資詐欺とは

インスタグラムやフェイスブックなどのバナー広告やダイレクトメッセージなどで、「絶対もうかる」などと表示してクリックを誘い、または有名人やタレントなどの写真などを無断で悪用して本人になりすまして投資をさせる詐欺です。

警視庁によると2024年におけるSNS型投資詐欺の認知件数は6,413件で前年よりも4,142件増加するなど大きく増えています。被害額は約871億円と前年より約593億円も増加しています。被害額は500万円以下が約50%を占めていますが、中には1億円以上の被害にあった方もいます。500万円超の合計被害額が全体の約93%を占めており、被害の高額化が進んでいます。また2025年3月末時点ではSNS型投資詐欺の被害額は約55億円と前月比で約23億円増加しています。

有名人や芸能人の中には無断で写真を使われて、本人になりすますケースも多くなっています。株式や暗号投資などの投資資金や手数料の名目でネットバンキングなどでお金を振り込ませたり、電子カードを購入させたりするものです。最初は利益が出ているにように見せかけて信用させて、多くのお金を振り込ませる手口です

有名人が推奨している資産運用という事でつい信じ切ってしまうのも人間の心理でありますがそこには思わぬ落とし穴があるという事も認識すべき時代となりました。特にAiが本人に成り代わって会話をしている例もありました。

副業詐欺の被害も多く発生しています

近年では政府によるいわゆる働き方改革により副業を容認する企業がとても増えています。このような世の中においてSNSなどによる「副業詐欺」も摘発されています。先日も大規模な詐欺組織が摘発され被害者も1万人と報道されています。警視庁が発表した被害の例によると、「短時間」「簡単」などの広告を出し、応募すると当初はスクリーンショットを撮って送るなど簡単な作業で報酬がもらえますが、暗号資産に誘導させられ、さらに損害の補填金や違約金などを詐取されるケースなどがあるそうです。またネットショップを開業するように言われて開業して、やがて資金が足りない、違約金がかかるなどの名目で詐取されるケースもあります。

いずれも「短時間」「簡単」等の甘い言葉には充分注意する必要があります。

不動産投資で注意すべき点は

不動産投資会社においては宅建業法を始め多くの法律に基づいており、法令順守やガバナンス、社員教育が徹底された時代となってきました。しかしながらごく少数ですが法令違反などで関係省庁から処分を受ける会社もいまだ存在する事も事実です。

不動産市場動向や不動産投資についての正しい知識を得ると同時に、経験と実績のある信頼できる会社から購入する事が非常に重要で、その点では「会社選び」が重要なポイントとも言えます。

不動産における投資詐欺とは何でしょうか。最も大きい話としては「地面師」が挙げられます。これはまさに投資詐欺師の中でもプロ中のプロと言っても過言ではありません。何しろ地主になりすまして取引相手や金融機関を欺く訳ですから。また投資系不動産会社においても不動産取引における「双務契約(買主売主が約束・契約において同じ書類を持ち合う事)が基本となります。不動産取引では絶対とか必ずとか間違いなくとか断定的な表現は宅建業法でも禁止されています。さらに断ったにも関わらず再三電話連絡が来たりアプローチしてくるのもNGです。

またこれは買取りのケースですが、近年は「押し買い」の被害も増えています。これは不動産価格の上昇により高齢者の方を狙ってマンションを相場より安く買い取る業者のケースでます。長期間居座って強引に契約させる事が特長です。自宅の売却にはかならず家族や親しい人、専門家などに相談しその場で契約しない事も大切です。

では次に不動産投資の注意点を見てみましょう。

居住用の住宅ローンでの投資用マンション購入はNG

現在住宅ローン金利は最低水準にあり、特に居住マンションの住宅ローンは非常に低い水準にあります。また半公的なローンである住宅金融支援機構の「フラット35」などは長期固定金利型のローンでマンションを購入できます。

但しこうしたローンは居住用のマンションで利用できるもので、投資用、つまりご自分が居住しないマンションには利用できません。

しかし一部の業者では、投資用マンションを居住用と偽って居住用のローンを利用する場合があります。これは契約違反となり、発覚した場合は数千万円ものローン借入金の一括返済を求められる場合もあります。また勤務先や年収などを偽ってローン審査を通す事も違反となります。

フラット35の不適正利用が発覚した場合の対応

(1) 不適正利用が判明した融資の残債務の一括返済請求

(2) 不適正利用事案の警察への通報

(3) 不適正利用に関与した事業者の監督官庁への通報

(4) 不適正利用を行った者に対する損害賠償請求

(5) 不適正利用に関与した取扱金融機関に対する処分

<資料:住宅金融支援機構>

不動産投資の「デート商法」とは

婚活をしている方などはSNSやマッチングアプリなども利用する方も多くいらっしゃるかと思います。こうしたアプリで知り合った相手に誘われて様々な契約をさせられたり、投資用マンションの契約をさせられたりする事もあります。

「二人の将来のために」などと言って結婚などの前提にワンルームマンションの購入を勧められて、契約すると相手が行方をくらましてしまうというケースなどです。中には路上のアンケートがきっかけとなった場合もあります。

マンション投資自体は安全な投資ですが、こうしたデート商法の場合は価格が相場より高く設定されていたり、立地の悪い物件であったりする可能性もあります。

婚活やマッチングアプリなどで知り合った相手からこうした投資を勧められた場合は、相手の身元をよく確認したり、投資対象についてよく考えてみる事が重要です。

騙されたと思ったら「クーリングオフ」が利用できる場合もあります。また2019年からは「消費者契約法」の対象となりましたので、契約しておかしいと思ったら「消費者ホットライン※」や「国民生活センター」などに相談してみて下さい。

※消費者庁「消費者ホットライン」:電話番号188(いやや)でつながります。

失敗しないマンション投資のコツとは

安全にマンション投資を行うためのいくつかポイントがありますので見てみましょう。

1)適正な相場を知る。立地選びも重要

こうした詐欺にあわないためにも、適正な相場を知る事も重要です。

マンション投資は物件選びが重要となり、賃貸需要の高い物件の条件を満たしている事が大切です。特に需要層となる若いサラリーマンの方は通勤時間や生活利便性を重視しますので、こうした視点から物件を選ぶ事が重要です。将来のための資産運用としてマンション投資を持ちかけられた場合でも、物件の良し悪しと価格を見抜く眼が大切となります。

中古などで価格が安く利回りが高い物件も見受けられますが、一旦入居者が退去してしまうと、次の入居者がなかなか決まらない事も散見されます。また築年数の経過した物件は修繕費などもかさむ場合があります。立地をよく見て通勤や生活に便利かどうか住む人の視点に立って見る事が重要です。

また資金計画にも余裕を持った計画を立てる事も重要となります。

2)資産運用のフォーラム、マンション投資のセミナーなどに参加して情報収集する

セミナーに参加すると、第三者の目線から公正な立場で正しい情報を得る事ができます。ただしセミナーの主催者のチェックも大切で、経験と実績のある不動産会社が主催するセミナーは安心と言えます。外部講師を招いたセミナーでしたら、より客観性が高いと言えます。近年はオンラインのセミナーも増えています。また多くの企業が集まる「資産運用フォーラム」などではより多くの情報も得る事ができます。

3)信頼できる会社から購入する

安心できるマンション投資をするためには、会社選びが重要となってきます。

新築ワンルームマンションは立地や建物の質、設備などが賃貸ニーズと一致するように建設され、提携したローンで購入でき、さらに建物や賃貸の管理もついてくる、いわば「パッケージ商品」とも言えます。こうした商品を購入するのは何と言っても会社選びが重要となってきます。また過去にその会社がどのような立地に物件を発売しているのかもチェックしてみて下さい。

不動産は盗難に強い資産と言えます。持ち出す事はできませんし、所有権は法務局に登記されています。所有権の移転にも多くの書類などが必要となりますので、現金などのように簡単に振り込んだりする事はできません。

資産価値の高い物件を購入すれば、資産の保全については安心な資産と言えるのではないでしょうか。

執筆者

住宅コンサルタント野中清志

住宅コンサルタント野中清志

株式会社オフィス野中 代表取締役(宅地建物取引士)
内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、On Lineも含め数多く講演。
メディア・テレビ出演等多数
2022年1月よりYou Tubeチャンネル「野中清志のマンション学校」開設