投資用マンションを売却する際にかかる税金の計算方法

投資用マンションを売却する際には様々な税金がかかります。税金を考慮せずに売却益を当てにしていると、損をしてしまうかもしれません。今回は、投資用マンションを売却する際にかかる税金をシミュレーション付きで紹介します。売却時にかかる税金をなるべく抑えるポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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マンションの売却にかかる税金の内訳

投資用マンションの売却時には、大きく分けて次の税金がかかります。

1.印紙税

2.登録免許税

3.譲渡所得税

4.消費税

まずは、税金の仕組みを確認しておきましょう。

1.印紙税

印紙税法に基づき、売買契約書や領収書などの文書を取り交わす際に課税される税金です。売買契約書に収入印紙を貼付して納めます。

税額は不動産の売買価格で決まり、次の軽減税率が適用されます。

不動産の売却金額

本則税率

軽減後の税率

10万円以下

200円

-

10万円を超え50万円以下

400円

200円

50万円を超え100万円以下

1千円

500円

100万円を超え500万円以下

2千円

1千円

500万円を超え1,000万円以下

1万円

5千円

1,000万円を超え5,000万円以下

2万円

1万円

5,000万円を超え1億円以下

6万円

3万円

1億円を超え5億円以下

10万円

6万円

5億円を超え10億円以下

20万円

16万円

10億円を超え50億円以下

40万円

32万円

50億円を超えるもの

60万円

48万円

出典:「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」(国税庁)

2.登録免許税

マンションの抵当権の抹消登記をする際にかかる税金です。不動産1件につき1,000円かかります。売買する物件が土地と建物の登記に分かれているなら個別に課税されます。

マンションを売却するにはローンを完済して抵当権を抹消する必要があり、手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。登録免許税を含めた依頼料として、10,000~40,000円の費用がかかります。

3.譲渡所得税

資産を売却した利益に対して課税される税金の総称で、次の三つからなります。

・所得税

・住民税

・復興特別所得税

土地や建物などの不動産は売却価格が大きく、高額化しやすい税金です。ただし、売却損が出た場合は課税されません。

所得税

所得税は売却益に対して課税され、マンションの所有年数によって税率が分かれます。

・長期(所有期間5年超):15%

・短期(所有期間5年以下):30%

住民税

マンションを売却して所得が変わると、住民税が課税されます。マンションの所有年数により、次の二つの税率に分かれています。

・長期(所有期間5年超):5%

・短期(所有期間5年以下):9%

復興特別所得税

復興特別所得税とは、2011年に発生した東日本大震災の復興に充てられる税金で、2037年12月31日まで課税されます。税率は個人の所得税額に対して一律2.1%です。

出典:「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」(国税庁)

4.消費税

投資用マンションを売却する場合、不動産会社に支払う仲介手数料に消費税が課税されます。ただし、事業目的の建物の売却が課税対象です。土地のみやマイホーム用のマンションの売却、免税事業者の場合は、消費税の支払い義務がありません。

なお、投資用マンションの売却にかかる消費税については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。

投資マンション売却で消費税が課税される?仕組みや計算方法を解説

【シミュレーション】投資用マンション売却時の税金の計算方法

ここからは、計算が複雑な譲渡所得税の計算方法を解説します。

マンション売却時の譲渡所得税を算出する方法

譲渡所得税は譲渡所得を基準に、次の計算式で算出できます。

譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用

それぞれの求め方をみていきましょう。

譲渡価額

マンションを売却した金額です。タイミングによっては固定資産税が買主負担になるため、売却金額のほかに固定資産税清算金も譲渡価額に含まれます。精算が必要でも管理費、修繕積立金などは含まれません。

取得費

マンション購入にかかった費用です。購入代金のほかにマンションを購入する際の仲介手数料も取得費に含まれ、次の計算式で算出します。

取得費=土地部分購入額+(建物部分購入額-減価償却費相当額)

建物の売買では、減価償却を考慮することが必要です。減価償却費相当額は定額法で次の計算式で算出するのが一般的です。償却率は建物の目的や構造によって異なります。

減価償却費相当額=建物部分購入額×0.9×償却率×経過年数

出典:「No.3261 建物の取得費の計算」(国税庁)

譲渡費用

マンション売却にかかった費用の総称で、売却時に不動産会社に支払う仲介手数料、広告費、印紙税、立退料なども含まれます。一方で、抵当権抹消費用、司法書士手数料、家財処分費用、引越費用は含まれません。

【シミュレーション】マンション売却時の譲渡所得税計算例

次の売却事例で、譲渡所得税を計算してみましょう。

【シミュレーション事例】

・マンション購入時の金額:2,000万円

・購入時にかかった費用:50万円

・売却金額:3,000万円

・売却時にかかった費用:150万円

・マンションの所有期間:6年

・構造:鉄骨鉄筋コンクリート造

【計算手順】

1.鉄骨鉄筋コンクリート造の償却率「0.015」を用いて取得費を算出する。

取得費=2,000万円+50万円-(2,000万円×0.9×0.015×6)=1,888万円

2.取得費から譲渡所得を計算する。

譲渡所得=3,000万円-150万円-1,888万円=962万円

3.6年間の長期譲渡の場合の税率、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税15%×0.021=0.315%を合算し、所得にかけて譲渡所得税を算出する。

譲渡所得税=962万円×20.315%=195.43万円

マンション売却時の税金はいつ払う?

印紙税は契約時に、登録免許税は引き渡し時に課税され、マンション売却による譲渡所得税は確定申告で納税します。翌年の2月16日から3月15日までが申告期間です。

住民税は翌年度の6月以降、4回に分けて納税します。申告漏れをすると追徴課税の対象になるため、忘れずに納めましょう。

投資用マンションを売却する際に節税するポイント

マンション売却時の注意点は、次の通りです。

・譲渡所得を正しく算出する

・長期譲渡所得税の税率適用を活用する

・事業用資産の買換え特例を活用する

・相続税の取得費を加算する

それぞれを詳しくみていきましょう。不動産投資を成功させるには、なるべく税金の無駄を省くことがポイントです。

譲渡所得を正しく算出する

譲渡所得は、なるべくかからない方が節税できます。取得費や売却費に法令上認められている経費を漏れなく計上して、譲渡所得の金額を抑えましょう。

不明とすると、売却金額の5%が取得費に計上されます。購入時のパンフレットや住宅ローンの金額を参考に、できるだけ詳しく調べることが肝心です。

長期譲渡所得税の税率適用を活用する

マンション売却のタイミングは、5年超えを目安にするのが節税のポイントです。マンション売却にかかる税率は、年初の時点で所有期間5年を超えた長期譲渡の方が抑えられます。

事業用資産の買換え特例を活用する

買い換えを伴うマンション売却の場合は、「事業用資産の買換え特例」を活用しましょう。賃貸用の土地建物に適用でき、売却利益の80%を上限に譲渡所得課税を繰り延べられます。特例の適用を受けるための要件が決まっているので、確認をしてください。

出典:「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」(国税庁)

相続税の取得費を加算する

相続したマンションであれば、譲渡所得の計算で相続税分を取得費に加算して節税できます。ただし、マンションを相続した日から3年以内の売却が加算の適用条件です。

出典:「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(国税庁)

まとめ

投資用マンションを売却する際には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、消費税などの税金がかかります。自宅用マンションの売却時以上に税金がかかる可能性があるため、しっかりシミュレーションすることが大切です。不動産投資を成功させるためには節税が欠かせません。税の仕組みを理解してから売却の手続きを始めてください。