目次
金融商品取引業者の登録が必要のないスキーム
前回ご説明したように、エクシア合同会社は、通常の株式会社に対する株券や社債の購入といった出資を募るのではなく、社員権の購入を名目として投資家に投資(出資)を募っていました。
合同会社の社員権の購入による出資スキームは、自社の資金調達のためです。社員権を自ら募集することに、金融商品取引業者の登録は必要ありません。また、会社法では、出資額分の払戻しの請求は原則認められていません。
これらを前提とした際、前回の記事で掲載したエクシア訴訟1及び2について原告の主張が争点となり、今後、裁判所がどのような判断を下すのかが注目されます。
エクシア訴訟1:損害賠償請求の原告の主張と私的見解
エクシア共同会社への損害賠償請求における原告の主な主張と、それに対する私的見解を申し上げます。
知人の紹介によりエクシア合同会社の存在を知った
投資の勧誘に、既存の出資者や投資マンションなど他の金融商品を扱う業者を使い、呼びかけを行っていました。投資勧誘の成功報酬として、高額な勧誘手数料を払ったとされています。
実際に当方が取材した被害者の中にも、インターネットのブログからの問い合わせで勧誘行為を受けた被害者もいました。(近々でその被害者からのインタビューは掲載予定)これは金融商品取引法に抵触する可能性があります。
高利回りが年30%程度と魅力的だった
エクシアの社員権は最低で1口100万円から投資が可能でした。投資のプロなら気になるのが、投資額に対しての利回りが共通していることです。
本来、大口になり、投資金がロックされている期間が長ければ長いほど利回りが大きくなりますが、エクシアの利回りは一律とされています。大口の投資家から見れば、不公平感を覚えるでしょう。経済合理性を考えた時、非現実的としかいえません。
元本や利益の出金は随時可能、一部制限があると認識していた
元本保証を謳った投資は、そもそも出資法に違反します。書面の交付により元本保証を示している訳ではありませんが、勧誘の際に「元本保証」を謳っている可能性は十分にあります。
出金の一部制限は、認識していたのであれば問題はありません。しかし、そもそも元本すら払い戻しがされていないのです。
著名な弁護士が顧問として名を連ねていることに安心した
実際に著名な顧問がたくさん並んでいましたが、現在は契約を解除しています。著名な弁護士達は実態を知らずに、利用されていた側面もあるでしょう。とはいえ、大金に飛びついて事業の実態をよく把握せず、顧問を務めていたことに責任はあります。
担当者と面談をせず、契約はオンライン上の電子サインのみ
説明実施日の記載はあるものの、担当者による契約内容の説明は行われていません。こちらは特別に問題ありませんが、重要告知事項を含めて書類を示し、十分に説明した上で電子サインをしたのでしょうか。実際には担当者からの説明はなかったとされています。
出資金に対する評価額がメールで送付されていた
評価額が事実であるならば、なぜ出金規制を行う必要があるのでしょうか。評価額がプラスである場合、出金規制の必要はありません。複利を含めた増え続ける評価額を背景に、出金を抑止していたとも考えられます。
退社(全解約)に対する回答が得られなかった
退社(全解約)に関する原告への回答は以下のとおりです。
・出金を拒否しているとの情報をインターネットで得て、オンラインで本件出資口について退社(全解約)申請をして元利金全ての払戻を求めたところ、被告から「今月の返還上限額に達した為、今月の返還の受付は終了しました。誠に恐れ入りますが、来月1日より出資金解約の返還申込みの受付を致します」と回答を受けた。
・払戻拒絶を受けて、翌月1日に再度、本件出資口全てについて退社(全解約)申請をオンラインで送信したが、同月9日に「ご依頼いただいた件についてですが、当社から内容確認・申請受付・手続き完了等の返信をいたしますので暫時お待ちくださいますよう、お願いいたします」とメールのみで、全解約申請に応諾する回答は得られなかった。
その後も出資金全額を返金するように求めましたが、出資金の払戻に応じる回答を得られないため、本件訴訟に至りました。
出金に規制をかけなくてはならない資金繰りに陥ったのでしょうか。あるいは、元々ポンジスキームだったのでしょうか。この出金規制を境に民事訴訟が相次ぎます。当方が把握しているだけで16件です。
その他の原告の主張を下記に挙げます。
・過去に出金拒否などのトラブルはないと認識していた
・子会社が第二種金融商品取引業者であることに安心した
免許事業者であることに安心するのは、投資をするうえで重要でしょうか。
エクシア訴訟2:持分払戻請求のポイント
・直接の勧誘を受けて、エクシア合同会社に出資した
・複数回に渡って出資していた
・SNS等において、ポンジスキームを行っていることに関する疑義などから、退社に伴う全解約の申請をしたが応諾する回答は得られなかった
特徴として、一度出資した投資家は複数回に渡って投資をしています。当方が取材した投資家も同様でした。何かしらのスキームがあるのでしょうか。
弁護士の見解
果たして今後、裁判所はどのような判決を下すのでしょう。エクシア合同会社の被害者の代理人を務め、エクシアの投資スキームに詳しい「法律事務所Steadiness」の唐澤貴洋弁護士に話を聞いてみました。
「エクシア訴訟1は、主位的に退社による持分(評価額)の払戻請求、予備的に消費者契約法4条の基づき出資契約の取消による出資額の支払を求めるものです。前段については、エクシア合同会社側は、定款15条但書を根拠に、払戻請求を拒絶しています。そこで、定款15条但書の有効性が法的に問題となってきています。エクシア訴訟1は、消費者契約法10条に基づき無効と主張するものです。その他の無効の根拠となり得る構成は、会社法611条1項、2項、民法134条が主張として考えられます。エクシア合同会社における払戻請求の制限の有効性については、法解釈ですので、最終的には裁判所の判断となってきます。
仮に払戻制限無効主張が認められ、払戻請求が認められた場合であっても、払戻額がいくらになるのかが問題となってきます。
その評価については、エクシア合同会社が出資者に対して毎月通知している評価額がありますが、これについて、エクシア合同会社が争わなければ、裁判所としては、その額を前提とした判決を書くのではないかと考えます。その場合、①持分払戻額≦剰余金額は問題がないですが、②剰余金額<持分払戻額≦簿価純資産額、ないし、③簿価純資産額<持分払戻額である場合は、エクシア合同会社としては債権者保護手続をその後取っていかなくてはならなりません。②、③の場合に、手続きをとらないで持分を払戻した場合は、出資の払戻しに関する業務を執行した社員は、その合同会社に対し、出資の払戻しを受けた社員と連帯して、出資払戻額に相当する金銭を支払う義務を負うことになるため、出資の払戻しを受ける側としてもエクシアの財務状況は気になるところだと思います。
訴訟1での契約の取消の主張については、払戻制限について、定款に書かれていることと説明が異なることを主張していますので、説明が異なっていたことをどのように立証できるかにかかってきます。
仮に、定款15条但書が有効であるとした場合、その定款による制限が合理的なものなのかを判断する必要があるでしょう。仮にエクシアが主張するように利益が出ていて、払戻しの財源があるにもかかわらず、払戻さないのは合理的ではないため、どういった財務状況にあり、払戻総額を決め、どのように払戻金額の割り当てをおこなったのかが明らかになる必要があります。」
まとめ
やはり投資は自己責任になってしまうのでしょうか。
昨年11月9日、不特定多数から投資を募っていた「ジュビリーエース」の金融商品取引法違反では、玉井暁容疑者(53)など7名が逮捕されました。民事訴訟での投資金の回収が困難であれば、せめて被害者のために事件化することを望みます。
ジュビリーエースの事件の際は『専用サイトに配当が表示され安心していたが、2020年11月頃から出金ができなくなった』との被害が相次ぎ、警視庁捜査2課が捜査を開始し、逮捕に至った例があります。
当方が知る限り、現在「東京地方裁判所」で行われている民事裁判は16件です。一刻も早く事件化することを求める一方、エクシアがこれらの民事裁判にどのように対応していくか注目します。