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「管理会社を変更したい。新しい管理会社へどのような情報が引き継がれるの?」
「管理会社を変更したいけれど、引き継ぎがうまくいかず、入居者とトラブルになったらどうしよう」
入居者がいる状態で管理会社を変更するため、初めてでもトラブルなく引き継ぎできるものなのか心配になりますよね。
現在の管理会社から新しい管理会社へ変更する場合、引き継ぎは管理会社同士で行われるケースがほとんどです。そのため、あなた自身が引き継ぎ手続きを行う場面はほとんどありません。
しかし、管理会社へ任せっぱなしにしないでください。次の7項目は、あなた自身でも確認すべきです。
適当に引き継ぎをする管理会社が意外と多く、新しい管理会社が「聞いていない」「知らない」ことでトラブルになるケースが多いからです。
スムーズかつ漏れなく引き継ぎが行われなければ、あなたの不動産管理や経営に悪影響を与えます。
入居者にも迷惑がかかり、悪評が拡散されると、今後の入居者募集にも影響を与えてしまうかもしれません。
不動産管理をより良くしようと思って新しい管理会社へ変更しようと思っているのに、引き継ぎがうまくいかなくて最悪の事態を招く結果になるのは避けたいですよね。
そこで本記事では、不動産の管理会社変更における引き継ぎについて、基本的な流れや引き継ぎのときに確認すべき項目について解説します。
引き継ぎならではの注意点を把握しておくことで、引き継ぎ漏れや管理会社の雑な対応による引き継ぎトラブルを回避することができます。
引き継ぎトラブルを回避する具体的なポイントについても解説しているので、ぜひ本記事と以下の引き継ぎリストを参考にしながら管理会社変更の引き継ぎを進め、よりよい不動産管理を実現してくださいね。
1.管理会社の変更における引き継ぎの流れ
管理会社を変更すると、上記のような流れで引き継ぎすることになります。
冒頭でもお伝えした通り、管理会社を変更すると、新旧の管理会社間で引き継ぎされるのが一般的ですが、あなた自身も基本的な引き継ぎの流れを把握しておいてください。
どのようなSTEPで引き継ぎされるのかを理解していなければ、状況に応じた書類や備品の準備、引き継ぎ時に確認すべき内容がわからず、管理会社へ任せっぱなしにしてしまうことになるからです。
「すべてやってくれるのであれば、任せてしまっていいのでは?」
このように思うかもしれませんが、管理会社の中には、適当な引き継ぎをする担当者もおり、後々トラブルに発展するケースが少なくありません。
あなた自身も、引き継ぎの基本的な流れを把握し、新旧管理会社との連携タイミングに行動できるようにしておきましょう。
旧管理会社の解約前に新管理会社を探しておくと引き継ぎもスムーズにできる |
新管理会社との契約は、旧管理会社を解約する前に探しておき、解約を申し入れするタイミングには新会社と契約を締結できる状態にしておくのがおすすめです。 旧管理会社の解約時に新管理会社が決まっていれば、解約が承諾されたタイミングで、すぐに新旧の管理会社同士でやり取りでき、十分な時間をかけて引き継ぎしてもらえるためです。 旧管理会社の解約をしてから新しい管理会社を探し始めると、解約までのカウントダウンが始まってしまい、新しい会社が見つかっても引き継ぎにかけられる時間が短くなってしまいます。 時間がない中で対応に追われる心配や、引き継ぎが漏れるリスクも回避するためにも、事前に新管理会社を探して、解約と同時期に契約できるよう準備しておきましょう。 |
2.管理会社変更時の引き継ぎで確認すべき項目7つ
新旧の管理会社同士で引き継ぎが行われますが、次の7つは、あなた自身もきちんと引き継ぎされているか確認しておきたい項目です。
引き継ぎ途中における重要書類や鍵などの紛失や今後のトラブル防止のポイントになるからです。
早速、各チェックごとの気をつけたいポイントを確認していきましょう。
2-1.不動産の管理に関わる書類
管理会社を変更した際に、不動産の管理・運営に関わる書類が引き継ぎされているかを確認しましょう。
管理会社を変更後、継続的な運営・管理を行う時に、過去の決まりや対応の履歴が重要となるからです。
代表的な書類は、以下の通りです。
【不動産の管理に関わる書類の代表例】
・管理規約・使用細則の原本 ・区分所有者名簿(居住者の名簿) ・竣工図面・設計図書 ・修繕履歴 ・保険証券 ・理事会・総会の議事録 ・工事見積書 ・浄化槽や消防の点検書類 ・修繕履歴 |
参考:広島市「2020 年 分譲マンション管理運営講座 マンション管理のQ&A 管理委託契約編」
特に、規約の原本や居住者の名簿などの、本来は不動産の管理組合や所有者が管理すべき書類を管理会社へ預けていた場合は、必ず引き継ぎされているか確認してください。
管理会社が紛失していたらどうなる? |
管理会社が書類を紛失していた場合、書類は戻ってきません。 ただし、紛失により被害を被った場合は、損害賠償を請求することができます。 不動産の管理に関わる書類の管理を管理会社へ委託する場合、「管理委託契約書」で「事務管理業務に関連した書類などをきちんと保管すること」と明記するのが一般的です。 紛失や破棄をしていた場合、その管理会社は契約上の管理義務を怠ったことになり、損害賠償を請求することができます。 |
2-2.共用部の鍵・備品類
不動産の共用部における鍵や備品類の引き継ぎは、必ず確認してください。
居住者の安全を守り、快適な環境を維持するのに重要なものだからです。
鍵 | ・本数(預けていた箇所の鍵と、スペアキーの数が一致しているか) ・鍵合わせ(実際に使用できるか) |
集会所やゴミ置き場のほか、居住者の個人情報を保管する管理室の鍵や、ポンプ室や屋上といった危険なエリアへの侵入を防ぐための鍵など、数多くの鍵があります。
管理会社へ預けていた箇所の鍵が、すべて引き継ぎされているかを必ず確認しましょう。スペアキーが複数ある場合、本数が一致しているかの確認も重要です。
また、鍵は経年劣化します。途中で、新しい鍵に変えたというケースもあるため、引き継がれた鍵が実際に使用できるかも確認してください。
備品類 | ・在庫(発注数量との誤差はないか) ・状況(不足、破損、紛失などがないか) |
エントランスや駐車場などの電球のほか、集会所のテーブルや椅子などの備品も、不動産の大事な資産です。引き継ぎのタイミングで、在庫を確認し、発注数と誤差がないかを確認しておきましょう。
管理会社が準備した備品については、変更になったタイミングで撤去、回収されます。
破損や紛失しているケースもあるため、不足している備品がないかを確認し、必要に応じて準備しましょう。
2-3.入居者クレームや設備不具合
旧管理会社が対応、把握している入居者からのクレームや設備の不具合について、新管理会社へ共有されているかを確認しましょう。
引き継ぎされず、対応されないまま放置されると、問い合わせや依頼をしていた入居者の退去や、マンションの悪評の書き込みをされるなどの可能性があります。
「エアコンに不具合があり、管理会社に対応をお願いしていたのに全く対応してもらえない」
「確認したら、新しい管理会社に変わっていて、お願いしていたことが引き継がれていなかった」
新旧の管理会社間で適当な引き継ぎが行われ、入居者対応をないがしろにしているケースは少なくありません。
今後、入居者募集や不動産の経営に大きな影響を与えるため、入居者からのクレームや設備の不具合について、具体的な内容や対応状況が引き継ぎされているか、確認するようにしましょう。
2-4.保証会社の契約
旧管理会社のときに契約していた保証会社を引き継ぎできる場合、契約内容の確認が必要です。
一般的な家賃保証のほか、滞納保証や入居者が死亡した場合の死亡保証、修繕保証など、保証会社にも複数の種類があり、会社によって内容やプランが異なる場合があります。
【保証会社の主な保証内容】
・死亡保障(孤独死保証) ・早期解約違約金保証 ・訴訟費用保証 ・更新料保証 ・退去時精算費用保証 |
利用料含め、旧管理会社の契約をそのまま引き継ぎできるのか、内容が変わるのかを確認しましょう。
2-5.家賃の振込先と入居者への告知タイミング
管理会社を変更し、引き継ぎすることが決まった時点で、家賃の振込先と告知のタイミングを確認し、遅くても1か月前までには告知できるよう準備をしましょう。
振込口座や告知のタイミングの確認を怠ると、次のような事態やトラブルに発展する可能性があります。
【家賃の振込先や入居者への告知を忘れた場合のリスク】
・家賃収入が得られない ・入居者からのクレームにつながる |
振込先を伝えていなければ、家賃収入を得られません。
また、時間的な猶予を設けずに振込先を変えると、混乱を招き、クレームの原因となる可能性もあります。
2-6.物件の状況
管理会社の変更時に、修繕歴や点検歴、傷、不具合などの物件状況についても引き継ぎされているか確認が必要です。
今後の賃貸経営や建物の維持管理に必要な費用を検討する際に必要になる情報だからです。
特に、築10年を越える不動産の管理会社を変更する場合、旧管理会社の大規模修繕履歴や点検歴の確認は必須です。
建物の劣化にともなう不動産の躯体を維持するための大規模修繕は、概ね築10〜15年前後に行うケースが多く、旧管理会社が行なっていない場合、新管理会社に切り替えてから実施する必要があります。
模修繕にかかるコストは、修繕内容や規模で変わってきますが、大規模修繕の場合は数百万〜数千万円になるケースもあります。
【物件の状況で確認すべき内容】
・過去に修繕した履歴があるか ・定期的に点検をしてメンテナンスを行なっていたか |
上記の状況によって、修繕内容や準備するコストが変わってくるため、管理会社の変更引き継ぎのタイミングに、大規模修繕の履歴や点検歴にともなう修繕を行なっていたか確認しましょう。
2-7.管理組合の運営・取り組み
管理組合の懸案事項(問題視していながら解決できていない課題)や現在検討中の今後に向けた取り組みの引き継ぎも重要です。
現状の課題や今後の運営について共有ができていなければ、物件の運営を円滑に進めることができません。
安定した不動産の管理を行う上で、管理会社の協力は不可欠です。
【管理組合の運営・取り組みで確認しない内容】
・周辺地域との関係 ・設備の老朽化にともなう検討事項(機械式駐車場の平置化など) ・入居者ニーズの変化に合わせた規約の見直し(管理規約の改訂など) |
新旧の管理会社とコミュニケーションを取り、管理組合の運営方針や取り組みについて引き継ぎされているかを確認しましょう。
3.新しい管理会社の引き継ぎ直後はトラブルが起こりやすい!
「運営がうまくいっていなかった管理会社を変更して、引き継ぎも確認をしたから大丈夫」と思うかもしれませんが、引き継ぎ直後はトラブルが起こりやすい時期です。
旧管理会社は、解約されることがわかると担当者のモチベーションが低下し、旧管理会社から新管理会社へ、適当に引き継ぎされるケースもしばしば見られます。
【新しい管理会社へ引き継ぎした直後に起こりやすいトラブル】
・新管理会社への家賃振込の切り替えがうまくいかず、入居者が二重で家賃を支払うことになった ・鍵の引き継ぎ漏れがあり、新調することになった ・旧管理会社の解約と同時に保証会社との契約も切れてしまった ・旧管理会社へ依頼していた対応が未処理のままになり、入居者から不平不満が出る ・解約の申し出以降、旧管理会社が入居者募集をしてくれない |
新しい管理会社へ引き継ぎをした直後は、上記のようなトラブルが起こりやすい傾向です。
繰り返しになりますが、特に入居者に対するケアを怠ると、退去される可能性があります。
次章で、引き継ぎトラブルを回避するポイントを紹介するので、このまま読み進め、トラブルを未然に防ぐ行動を取ってください。
4.管理会社変更の引き継ぎトラブルを回避するポイント3つ
管理会社変更の引き継ぎトラブルは、事前に対策をすることで回避できる可能性が高くなります。
具体的なポイントは、次の3つです。
どのような行動を取ることで、管理会社変更の引き継ぎトラブルを防げるのかを詳しく解説します。
4-1.現管理会社との契約最終月の月末に振り込まれる家賃は新しい管理会社に管理してもらう
現管理会社から新しい管理会社へ変更になる最終月に振り込まれる家賃は、新しい管理会社へ依頼して管理してもらいましょう。
家賃の振り込みは、月末ごろに来月分の家賃を振り込みするケースが一般的だからです。
旧管理会社へ振り込まれると、改めて指定口座へ振り込みしてもらわなければなりません。
家賃収入を得られるまでに時間がかかり、余計な振込手数料まで発生してしまうため、現管理会社との契約が切れる最終月の月末の家賃振り込みは、新しい管理会社に管理してもらうように依頼しましょう。
また、現管理会社との契約が切れる前に、振替停止のタイミングを確認してください。
間違って旧管理会社へ振り込まれた場合は、速やかに指定口座へ振り込んでもらえるように、念を押しましょう。
4-2.重要資料・備品の引き継ぎは管理組合の理事長立ち合いのもとで実施する
管理会社変更にともなう重要資料や備品の引き継ぎは、必ず管理組合の理事長や役員の立会いのもとで行うことが大切です。
ひとつずつ書類や備品を確認しながら引き継ぐことで、漏れを防ぐことができます。
【引き継ぎ時に確認すべき内容】
書類 | ・旧管理会社と入居者が結んだ賃貸借契約書や印鑑証明の原本 ・入居者が契約している家財保険の写し ・保証会社の契約書類(滞納保証会社などを利用し、引き継ぎできる場合) |
鍵 | ・各部屋のマスターキー ・ポンプ室や事務室、ごみ収集場所の鍵 |
メンテナンス契約情報 | (管理会社とは別に業者と契約し、引き続き利用する場合) ・清掃業者 ・エレベーターの保守点検業者 ・給水タンクの点検業者 |
入居者情報 | ・家賃の滞納状況 ・入居者の緊急連絡先 ・入居者からの問い合わせ内容 |
上記のような内容は、新旧管理会社と理事長、関係する管理組合員が集まって行うようにしましょう。
4-3.新旧双方の管理会社から引き継ぎの進捗を報告してもらう
管理会社の変更引き継ぎをスムーズかつ確実に行うためには、新旧双方の管理会社の担当者から引き継ぎ進捗をしてもらうことが大切です。
旧管理会社と新管理会社の担当者から引き継ぎ状況を共有してもらうことで、各管理会社の認識の違いを発見でき、漏れやトラブルを未然に防ぐことができるからです。
管理会社にとって手間がかかるため、解約されることでモチベーションが下がっている旧管理会社の担当者が対応してくれないケースもあります。
その場合は、新しい管理会社から受けた報告をもとに、旧管理会社へ確認を取るようにして引き継ぎ進捗や認識に相違がないかを確認しましょう。
新しい管理会社も期待通りの対応をしてくれない場合はすぐに変更を検討しよう! |
もし新しい管理会社も引き継ぎ進捗の報告をしてくれない場合は、今後、何か依頼をしたときにも対応してもらえない可能性が考えられます。 「契約をしてすぐに変えてもいいのかな?」 このように思うかもしれませんが、管理会社を利用してマンション管理を行う場合、その管理会社のやり方が今後のマンション経営や収入を大きく左右します。 新しい管理会社でも不安が残る場合は、あなたの大切な不動産を守るためにも、連絡が取りやすく、引き継ぎ進捗の報告に対しても、親身になって丁寧に報告してくれる管理会社への変更を検討しましょう。 |
5.引き継ぎ中は新しい管理会社に先行して募集をかけてもらえるか打診しよう
空室がある場合、引き継ぎを始めたら、すぐに新しい管理会社で入居者募集を始めてもらえないか相談することが大切です。
入居者の募集をしてから入居が決定するまで、最低でも3か月前の期間かかるからです。
解約されるとわかると、入居者募集を行ってくれない管理会社がおり、新しい管理会社へ引き継ぎが完了するまで待っていると、その期間は家賃収入が得られません。
引き継ぎ途中に新しい管理会社へ入居者募集の打診をし、空室期間が短くなる行動を心がけましょう。
6.まとめ
ここまで紹介した通り、不動産の管理会社変更にともなう引き継ぎは、新旧の管理会社間で行われるため、あなた自身がやるべき引き継ぎ作業はほとんどありません。
しかし、任せっぱなしにしていると、適当に引き継ぎをされ、引き継ぎ漏れによるトラブルに発展する可能性があります。
この7項目については、管理会社の変更引き継ぎのときに、あなたも一緒に確認することが大切です。
管理会社変更時の引き継ぎトラブルを回避するポイントを押さえた行動で、スムーズかつ漏れのない引き継ぎを実現させ、理想の不動産管理のスタートを切りましょう。