全国の路線価は

路線価の対前年変動率を都道府県別に見ると、上昇率が最も高かったのは東京都で8.1%の上昇となりました。2位は7月に開業したジャングリアで話題沸騰の沖縄県、3位は天神ビッグバンなどの大規模再開発で注目を集めている福岡県と続き、大阪府は4.4%の上昇で全国第4位の上昇率となりました。大阪府では現在の算出方法になって以来最も高い上昇率です。消費者物価の上昇が続いていますが、大阪府の路線価は物価上昇率より高くなっています。マンションなどの資産価値が上昇して嬉しい反面、相続税や贈与税が上昇するという事になります。

地価上昇率が高い東京・福岡・大阪・神奈川などの大都市圏の他、観光客の多い沖縄、また宮城県では仙台市青葉区などの中心部で地価の上昇が見られ平均で大きく上昇となりました。

 

2025年路線価 都道府県別 上昇率ランキング

順位

都道府県

上昇率

1

東京都

8.1%

2

沖縄県

6.3%

3

福岡県

6.0%

4

大阪府

4.4%

4

神奈川県

4.4%

4

宮城県

4.4%

<国税庁「令和7年路線価」>

 

全国の税務署管内別の最高路線価は

全国の税務署管内別の最高路線価が最も高かったのは東京都の中央区銀座となりました。銀座は何と40年連続の最高額となっています。

2位は大阪の御堂筋にある阪急梅田本店前となりました。東京の銀座と並び御堂筋も路線価の高いブランドストリートとなってきている事が分かります。

他にも横浜市の駅前や名古屋駅前、福岡市の天神の中心的な通りである渡辺通りなどの地価が高くなっています。それらのエリアの共通点は高級ホテル、高級飲食店なども建ち並ぶ事が挙げられます。

 

2025年路線価 都道府県庁所在地別の最高路線価ランキング

順位

地点

路線価

1

東京都中央区銀座5丁目

(銀座中央通り)

48,080

2

大阪府大阪市北区角田町

(御堂筋)

20,880

3

神奈川県横浜市西区南幸1丁目

(横浜駅西口バスターミナル前通り)

17,200

4

愛知県名古屋市中村区名駅1丁目

(名駅通り)

12,880

5

福岡県福岡市中央区天神2丁目

(渡辺通り)

9,680

単位:千円/㎡

<国税庁「令和7年路線価」>

 

全国の路線価上昇率は

税務署管内別の最高路線価の上昇率を見ると、全国で最も昇率が高かったのは長野県白馬村で32.4%の上昇となりました。「コートヤード・バイ・マリオット白馬」など高級ホテルのあるスキーリゾート地としても有名です。

2位は北海道の富良野で30.2%の上昇となりました。北海道はインバウンドを始め観光客も多く訪れており、「北海道ボールパークFビレッジ」や「ラピダス富良野」など新しい施設も多く開業しています。また札幌までの新幹線計画もあり、今後の発展も期待できるエリアです。

3位は東京の浅草です。東京でも有名な観光地で全国的にも有名なエリアです。

4位は岐阜の高山で、江戸時代の街並みの残るエリアです。

路線価の上昇率の高いエリアは観光地が上位を占めています。新型コロナの影響で減少したインバウンドや国内観光客も大幅に増加しています。ホテルの1泊料金も上昇しており路線価の上昇にも繋がっていると考えられます。

また東京北千住の路線価の上昇率が26.0%で5位となりました。北千住駅は交通利便性が高くJR常磐線のほか東京メトロ日比谷線・千代田線、東武伊勢崎線、つくばエクスプレスなどが利用できます。下町でありながら都心までの鉄道交通アクセスが極めて良好で、まさに「準都心」として注目を集めているエリアです。

 

2025年路線価 税務署管内別 上昇率ランキング

順位

地点

上昇率

1

長野県白馬村

32.4%

2

北海道富良野市北の峰町

30.2%

3

東京都台東区浅草

29.0%

4

岐阜県高山市

28.3%

5

東京都足立区千住

26.0%

<国税庁「令和7年路線価」>

 

近畿圏の府県別の路線価動向は

近畿圏の動向を見ると、6府県の平均で前年比2.7%の上昇となり、3年連続で前年比上昇となりました。

大阪、京都、兵庫では前年比上昇となった一方、和歌山や奈良などは減少となりました。

大阪や神戸などの大都市や京都はインバウンドの増加などもあり路線価は上昇となっています。滋賀県は2年連続の増加で、最も上昇率が高かったのは「JR草津駅東口広場」で前年比6.1%の上昇となりました。商業施設やマンションなどの集積するエリアで土地の需要も増加しているようです。

 

2025年路線価 近畿圏の府県別 地価上昇率ランキング

順位

府県

変動率

1

大阪府

4.4%

2

京都府

3.7%

3

兵庫県

2.0%

4

滋賀県

0.5%

5

和歌山県

▲0.7%

6

奈良県

▲1.0%

<国税庁「令和7年路線価」>

 

ホットな大阪エリアの路線価ランキング

大阪は東京に並ぶ日本有数の大都市であり、経済力も大きいものがあります。

特にキタ・ミナミなどを含む都心では土地の需要も多く地価も高くなっています。

大阪府の大阪税務署管内別の最高路線価を見ると、最も路線価が高かったのは大阪市北区角田の「阪急うめだ本店」前の御堂筋で42年連続1位となりました。御堂筋を始め周辺では「うめきた」の「グラングリーン大阪」の開発も進んでおり、周辺の地価の上昇の要因ともなっています。阪急阪神グループでは「梅田ビジョン」を発表、「芝田1丁目計画」では「大阪新阪急ホテル」「阪急ターミナルビル」の建て替えと、「阪急三番街」のリニューアルを計画。JR大阪駅と空中デッキで結ぶ事も検討されており、2035年頃の開業の予定 です。阪急梅田などのある梅田東エリアは梅田に近く今後開発の期待できるエリアです。筆者は取材で大阪キタなどもよく訪れますが、大きな変貌に驚くばかりです。

2位は心斎橋2丁目(心斎橋筋)となりました。心斎橋では新型コロナ後の商業施設・添付需要の増加から店舗賃料も上昇しており路線価の上昇につながっています。

3位は北区大深町(大阪駅北側)は「うめきた」の再開発地及びその周辺となっており、将来性も高いエリアです。4位は北浜3丁目(御堂筋)など大阪「キタ」の路線価が依然として高い水準にあります。

5位の阿倍野筋1丁目(阿倍野筋)や6位の天王寺区悲田院町(谷町筋)などの都心周辺エリアなどにも路線価が高くなっている事が分かります。

 

2025年 大阪国税局各税務署管内 最高路線価ランキング(大阪府)

順位

署名

                       最高路線価の所在地

最高路線価

1

大阪市北区角田町(御堂筋)

20,880

2

大阪市中央区心斎橋筋2丁目(心斎橋筋)

17,680

3

大淀

大阪市北区大深町(JR大阪駅北側)

12,800

4

大阪市中央区北浜3丁目(御堂筋)

8,160

5

阿倍野

大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目(阿倍野筋)

4,370

6

天王寺

大阪市天王寺区悲田院町(谷町筋)

4,270

7

西

大阪市西区江戸堀1丁目(四つ橋筋)

4,000

8

浪速

大阪市浪速区難波中2丁目(指導浪速区台9033号線)

2,500

9

東淀川

大阪市淀川区宮原3丁目(市道歌島豊里線)

2,500

10

大阪福島

大阪市福島区福島5丁目(なにわ筋)

1,970

単位:千円/㎡

<国税庁「令和7年路線価」>

 

大阪府の路線価上昇率ランキング

大阪府の大阪国税局各税務署管内別の最高路線価で最も上昇率が高かったのは宮原3丁目(市道但馬豊里線)で18.5%の上昇となりました。新大阪駅に近く、「リニア中央新幹線」の延伸計画や「なにわ筋連絡線(仮称)」「新大阪連絡線(仮称)」などで「なにわ筋線」との直通により関西国際空港への直通も期待されています。交通の発展により大阪でも特に将来性の高いエリアとも言えます。周辺では大規模な再開発も検討されており、湾岸エリアに続く今後の注目スポットとも言えます。

2位の難波中二丁目は開発の進む南海難波駅の近くで17.9%の上昇です。南海電鉄では「グレーターなんば」構想を推進しており、「なんばパークスサウス」が2023年に開業しています。「難波中二丁目」エリア再開発を始め、なにわ筋線の「新難波」駅の開業も予定しており、今後大きく街が変貌する可能性のあるエリアです。

3位は西区江戸堀1丁目(四つ橋筋)で17.6%の上昇です。肥後橋駅にも近く四ツ橋筋は、梅田周辺再開発の影響を受け、前年には大阪国税局管内でトップの上昇率となる19.3%の上昇となりましたが、2025年も上昇が続いています。

大阪府は2025年4月13日かあら開催されている「大阪・関西万博」の影響により宿泊料が大きく上昇しており、2025年4~6月はまさに「万博特需」の状況となっており、前年比3~4割高くなっています。またこうした特需で人手不足も発生しており人件費の上昇にもつながっています。

 

2025年は巳年ですが大阪エリアはまさに「寅年」と言っても過言ではない状況ではないでしょうか。プロ野球においては阪神タイガースが独走状態、また高校野球も開幕され何と言っても関西大阪万博が佳境となっています。大阪のこのようなホットな状態が景気や地価動向にも今後も大きく影響してくると考えられます。

東京では東京五輪の後も大規模な再開発や新線計画などにより経済の発展がそのまま続いています。大阪でも今後の大規模再開発やなにわ筋線・リニア中央新幹線など大型の新線計画の期待も大きく、大阪経済の発展や地価の上昇も続くと考えられます。

 

2025年 大阪国税局各税務署管内 最高路線価 上昇率ランキング(大阪府)

順位

署名

最高路線価の所在地

上昇率

1

東淀川

大阪市淀川区宮原3丁目(市道但馬豊里線)

18.5%

2

浪速

大阪市浪速区難波中2丁目(市道浪速区第9033号線)

17.9%

3

西

大阪市西区江戸堀1丁目(四つ橋筋)

17.6%

4

大阪福島

大阪市福島区福島5丁目(なにわ筋)

15.9%

5

城東

大阪市城東区森之宮1丁目(中央大通り)

15.0%

6

大阪市中央区北浜3丁目(御堂筋)

14.0%

7

吹田

吹田市豊津町(大阪内環状線)

12.6%

8

堺市堺区三国ヶ丘御幸通(南海堺東駅前)

12.5%

9

大阪市都島区東野田町2丁目(京阪京橋駅前)

11.9%

10

大阪市港区弁天1丁目(中央大通り)

11.0%

<国税庁「令和7年路線価」>

 

「京都府」の路線価

次に、近畿地方で大阪府に次いで上昇率が2位となった京都府の路線価についていてみましょう。京都府の路線価は平均で3.7%の上昇となり4年連続の上昇となりました。京都はインバウンドも多く訪れる日本を代表する観光地でもありますが、企業の集積も多く経済的にも大きな街となっています。

京都府内の税務署管内別の路線価で最も高かったのは「下京区四条通寺町東入2丁目御旅町(四条通)」で1㎡あたり832万円、34年連続のトップとなりました。阪急京都線「京都河原町」駅の近くのエリアで、「京都高島屋S.C」や四条河原町交差点にも近い場所です。錦市場なども近く、また河原町商店街、新京極商店街などアーケードのある商店街で京都でも有数の商業エリアとなっています。商業施設・店舗需要の増加から路線価も上昇しています。

2位は「中京区河原町通四条上る米屋町(河原町通)」です。こちらも阪急京都線「京都河原町」駅の近くで河原町通りとなります。地上9階のショッピングセンター「河原町オーパ」など多くの商業施設もある商店街です。豊臣秀吉にゆかりのある歴史のある通りですが、現在は京都の代表的な繁華街となっています。

3位は「東山区四条通大和大路西入中之町(四条通)」です。「祇園四条」駅の近く、こちらも京都川原町駅を東に橋を渡った場所になります。

 

京都府 最高路線価 ランキング

順位

署名

最高路線価の所在地

路線価

1

下京

下京区四条通寺町東入2丁目御旅町(四条通)

8,320

2

中京

中京区河原町通四条上る米屋町(河原町通)

8,000

3

東山

東山区四条通大和大路西入中之町(四条通)

3,920

単位:千円/㎡

<国税庁「令和7年路線価」>

 

京都府の路線価上昇率

路線価の上昇率が最も高かったのは「東山区四条通大和大路西入中之町(四条通)」で15.0%の上昇となりました。路線価が京都で3位に入った地点で、上昇率も極めて高い事が分かります。

この地点は「清水寺」から「清水坂」などの土産街を通り「八坂神社」から通り祇園へ向かう道筋でもあります。京都有数の繁華街でありさらにインバウンドの増加が加わり路線価も大きく上昇しました。

2位は「京都市右京区西院高山寺町(四条通)」で13.3%の上昇です。阪急京都線、京福嵐山線「西院」駅の近くです。建物の高さ制限が緩和され、今後のビル建替え需要の増加が期待されているエリアです。

3位は路線価で2位となった中京区河原町通四条上る米屋町(河原町通)です。

四条通り、川原町通りの交差点を中心として大規模な商業エリアが広がっており、路線価及びその上昇率も非常に高くなっている事が分かります。

 

京都府 最高路線価 上昇率 ランキング

順位

署名

最高路線価の所在地

上昇率

1

東山

東山区四条通大和大路西入中之町(四条通)

15.0%

2

右京

京都市右京区西院高山寺町(四条通)

13.3%

3

中京

中京区河原町通四条上る米屋町(河原町通)

10.5%

<国税庁「令和7年路線価」>

 

京都は景観規制や高さ制限があり、大通りに面したエリア以外の大型の建物は少なくなっています。しかしインバウンドの大幅な増加により宿泊施設が不足し、宿泊費も大きく上昇しています。高級ホテルも次々と開業しており、こうした宿泊費の上昇は周辺の不動産価格の上昇にも繋がります。

但しオーバーツーリズムも問題となっています。これは世界的にも関心が高く、日本でも多く観光地などでも発生しています。今後もインバウンドの大きな増加が予想される中で、住民と観光客との共存についても「持続可能な」施策を進めていく必要があると考えられます。

 

<まとめ>

全国的な主要エリアにおいて路線価は上昇幅が拡大している事が分かりました。しかし今後の地価動向はまさに玉石混交の時代を迎える可能性を秘めています。現況国民の共通問題である物価高、住宅ローンを始めとする金利の上昇傾向、米国トランプ政権による関税・通商政策の影響など特に日本の輸出産業の影響度など不確実性も高まりつつあります。今後は上がる場所、横ばいの場所、需要が低下し下がる場所など、より地価においても格差が鮮明化していく時代になると考えられます。人口動態や、企業の進出、就業人口、新線・新駅・再開発計画などの後押しで地価が上昇するような場所に不動産投資をする事が極めて大切な時代になるかと考えます。

執筆者

住宅コンサルタント野中清志

住宅コンサルタント野中清志

株式会社オフィス野中 代表取締役(宅地建物取引士)
内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、On Lineも含め数多く講演。
メディア・テレビ出演等多数
2022年1月よりYou Tubeチャンネル「野中清志のマンション学校」開設