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三大都市圏の地価は上昇に
新型コロナが2023年5月に5類に移行し日本経済も長いトンネルを抜けて回復へと向かう傾向が見られてきています。株価の上昇や企業収益の増加、インバウンドの増加など明るい条件が揃いつつあり、こうした効果が地価の動向にも鮮明に表れてきています。
2023年の基準地価では三大都市圏の地価は上昇率が拡大し、地価の回復傾向が本格化してきている事が分かります。
大阪圏では住宅地で2022年の0.4%から1.1%の上昇へ、商業地は1.5%の上昇から3.6%の上昇とそれぞれ地価上昇率が拡大しています。これは住宅地においては戸建てマンションなどの需要が拡大している事、また商業地においてはその人流が増えサービス業などの活性化かども起因していると考えられます。
三大都市圏の地価変動率の推移
住宅地 | 商業地 | |||
2022年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 | |
全国 | 0.1% | 0.7% | 0.5% | 1.5% |
東京圏 | 1.2% | 2.6% | 2.0% | 4.3% |
大阪圏 | 0.4% | 1.1% | 1.5% | 3.6% |
名古屋圏 | 1.6% | 2.2% | 2.3% | 3.4% |
三大都市圏 | 1.0% | 2.2% | 1.9% | 4.0% |
<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>
大阪圏の地価は大阪、兵庫などがけん引
大阪圏の府県別の地価動向を見ると、商業地の上昇が目立ち大阪府で4.3%、兵庫県で3.4%、京都府で4.0%の上昇とそれぞれ上昇率も拡大しています。
大阪や京都などは新型コロナ発生前までは地価は大きく上昇しており、その後はその反動もあり特に商業地ではその影響も大きかったエリアも散見されましたが、インバウンドの回復や今後の増加期待なども合わせて、地価は上昇傾向となっています。
奈良県の住宅地は下落となりましたが、下落率は縮小しており回復基調にある事が分かります。
大阪圏の県別 地価変動率の推移
住宅地 | 商業地 | |||
2022年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 | |
大 阪 府 | 0.4 | 1.3 | 1.6 | 4.3 |
兵 庫 県 | 1.2 | 1.9 | 1.6 | 3.4 |
京 都 府 | 0.1 | 1.0 | 2.0 | 4.0 |
奈 良 県 | △0.7 | △0.4 | 0.0 | 0.9 |
大 阪 圏 | 0.4 | 1.1 | 1.5 | 3.6 |
<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>
大阪府では都心部を中心に地価が大きく上昇
大阪府の地価を見てみると住宅地で1.3%、商業地で4.3%の上昇となりました。大阪市の商業地は5.5%の上昇となり、中でも都心6区(北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区)の商業地は7.0%と高い上昇率となりました。
投資用のマンションなども建設される事の多い商業地の地価が上昇している事で、今後のマンション価格も上昇する可能性もあります。
大阪府の商業地の地価上昇の要因としては、一時期調整局面にあった地価が潜在需要の顕在化から再び市場が活性化している事、さらに大阪市全体では再開発の進行や新線・新駅の開業予定、大阪・関西万博やIRの開催など大型イベントが予定されており将来性も高い事などが挙げられます。
特にキタ・ミナミなどの都心部及び湾岸部などは今後も地価上昇傾向に続く可能性もあります。では大阪市の地価を区別に見てみましょう。
基準地価
大阪府の地域別地価変動率の推移
住宅地 | 商業地 | |||
2022年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 | |
大 阪 府 | 0.4 | 1.3 | 1.6 | 4.3 |
大 阪 市 | 1.1 | 2.5 | 1.7 | 5.5 |
中心6区 | 1.9 | 3.7 | 2.1 | 7.0 |
北 大 阪 | 0.6 | 1.3 | 2.0 | 3.9 |
東 大 阪 | 0.3 | 1.5 | 0.7 | 2.2 |
南 大 阪 | 0.1 | 0.7 | 1.6 | 2.6 |
大阪市の中心6区:北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区
北大阪:豊中市、池田市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市、摂津市、島本町、豊能町、能勢町
東大阪:守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、門真市、東大阪市、四條畷市、交野市
南大阪:大阪市、北大阪、東大阪を除くその他の大阪府
<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>
大阪市の区別地価上昇率トップは?
大阪市の地価を「住宅地」「商業地」の区別で見てみます。
住宅地
「淀川区」が地価上昇率5.3%でトップとなりました。淀川区は梅田から淀川を挟んで北側にあり「新大阪」などのある区です。大規模な再開発の進む梅田をはじめ大阪の各エリアにもアクセスしやすく、また新幹線を始めリニア中央新幹線の開業も予定されているエリアです。
2位の「都島区」は梅田の東側に位置し、5.1%の上昇です。3位の「東成区」は大阪市東部にありキタ・ミナミなどにもアクセスしやすい立地です。
4位の「天王寺区」や5位の「城東区」などいずれも都心にアクセスしやすいエリアの住宅地の需要が高いと言えます。
商業地
「西区」が9.1%の上昇と大きく地価が上昇しました。ちなみに東京都区部の商業地では「北区」が7.3%の上昇でトップですが、それよりも地価上昇率が高くなっています。
「西区」は「なにわ筋線」の新駅である「西本町」駅が開業する予定があるなど、新線によって交通アクセスが向上する事が期待されるエリアです。大阪万博の開催される「夢洲」まで「大阪メトロ中央線」の延伸も予定されており、大阪市のほぼ中央に位置している事もあってキタ・ミナミ・湾岸エリアとアクセスしやすい立地で将来性も高い事から地価も大きく上昇していると考えられます。
2位の「福島区」は梅田の西側に位置する区で、多くの路線が利用でき梅田エリアにも極めてアクセスしやすい立地にあります。「ほたるまち」などの再開発エリアや多彩な飲食店街も魅力な街です。
3位の「北区」は大阪キタの中心となる梅田や北ヤードのあるエリアです。都市再生緊急整備地域にも指定されている「梅田北ヤード」では第一期の「グランフロント」が2013年に開業し、現在は第2期工事である「グラングリーン大阪」が進行中です。北ヤードには新駅「大阪」駅も開業し「なにわ筋線」の開業も予定されています。
将来的には「リニア中央新幹線」の開業が予定されており、新大阪に近い北区や福島区などのオフィスビルやホテル・商業施設などの需要も今後ますます多くなる可能性も考えられます。
2023年基準地価
大阪市区部
地価上昇率ランキング ベスト10
住宅地 | 商業地 | ||||
1位 | 淀川区 | 5.3 | 西区 | 9.1 | |
2位 | 都島区 | 5.1 | 福島区 | 7.8 | |
3位 | 東成区 | 4.9 | 北区 | 7.6 | |
4位 | 天王寺区 | 4.7 | 鶴見区 | 7.0 | |
5位 | 城東区 | 4.5 | 中央区 | 6.1 | |
6位 | 福島区 | 4.3 | 東成区 | 6 | |
7位 | 東淀川区 | 3.7 | 浪速区 | 5.9 | |
8位 | 中央区 | 3.7 | 大阪市 | 5.5 | |
9位 | 鶴見区 | 3.2 | 淀川区 | 5.3 | |
10位 | 北区 | 3.2 | 城東区 | 5.2 |
<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」より作成>
大阪府の地価の高いエリアは?
大阪府で土地の価格が高い地点を見てみます。
住宅地
天王寺区の地点がベスト5のうち3地点がランクインしています。住宅地で価格が最も高かったのは「天王寺区真法院町10」の地点で、「四天王寺」のお寺からほど近い立地にあり大阪環状線と大阪メトロ谷町線の利用できるエリアです。2位の「天王寺区堀越町1」は「天王寺」駅からほど近く、四天王寺や天王寺公園なども近いエリアです。天王寺区は交通利便性や文教的なエリアとして名高い事などから住宅地としての人気も高いと考えられます。
商業地
「北区大深町20」の地点の価格が最も高く1㎡当たり2,300万となりました。これはグランフロントのある地点で、将来性の高い北ヤードの価格が1位となっています。梅田北ヤードでは、なんと最高価格25億円のマンションが発売され、関西では最高額となり話題となっています。北ヤードの周辺でもマンションなどの需要が高まり地価も高い水準となっています。
2位はミナミの宗右衛門町の地点で1㎡当たり1,950万円です。ミナミの繁華街の地価は一時期インバウンドの減少などで価格が下がっていましたが、価格自体は高い水準にあり、さらに前年比も価格が上昇しています。大阪のキタ・ミナミともに価格が高水準にある事が分かります。
2023年基準地価
大阪府 高価格ランキング<住宅地>
順位 | 基準地番号 | 令和5年価格 | 変動率 | 所在地 | 住居表示 |
1 | 天王寺(府)-2 | 675,000円/㎡ | 4.2% | 大阪市天王寺区真法院町117番3 | 「真法院町10-6」 |
2 | 天王寺(府)-3 | 554,000円/㎡ | 5.1% | 大阪市天王寺区堀越町1番8 | 「堀越町1-8」 |
3 | 中央(府)-2 | 520,000円/㎡ | 4.0% | 大阪市中央区玉造1丁目10番18外 | 「玉造1-10-1」 |
4 | 天王寺(府)-1 | 519,000円/㎡ | 4.8% | 大阪市天王寺区清水谷町13番5 | --- |
5 | 北(府)-1 | 502,000円/㎡ | 4.6% | 大阪市北区長柄中1丁目3番15 | 「長柄中1-6-5」 |
大阪府 高価格ランキング<商業地>
順位 | 基準地番号 | 令和5年価格 | 変動率 | 所在地 | 住居表示 |
1 | 北(府)5-2 | 23,000,000円/㎡ | 4.5% | 大阪市北区大深町207番外 | 「大深町4-20」(グランフロント大阪 南館) |
2 | 中央(府)5-3 | 19,500,000円/㎡ | 4.3% | 大阪市中央区宗右衛門町46番1外 | 「宗右衛門町7-2」(デカ戎橋ビル) |
3 | 北(府)5-1 | 17,200,000円/㎡ | 6.2% | 大阪市北区梅田1丁目2番 | 「梅田1-8-17」(大阪第一生命ビルディング) |
4 | 中央(府)5-6 | 7,600,000円/㎡ | 6.7% | 大阪市中央区南船場3丁目12番9外 | 「南船場3-5-11」(心斎橋フロントビル) |
5 | 中央(府)5-12 | 7,000,000円/㎡ | 10.2% | 大阪市中央区南久宝寺町3丁目39番1外 | 「南久宝寺町3-6-6」(御堂筋センタービル) |
地価上昇率の高い地点は
大阪府で地価の伸びが最も高かった地点を見ていきます。
住宅地
「福島区鷺洲5丁目」の地点で前年比6.6%の上昇となりました。「うめきた」にも近い立地にあります。うめきた周辺や福島区などには梅田周辺の発展に伴いマンションなどの建設も増加しており、今後も地価の上昇が予想されます。
2位は「寝屋川市本町」の地点で、寝屋川市役所などのあるエリアです。価格自体は都心部と比較してそれほど高くはありませんので割安感があり、大阪市周辺部の交通利便性が良く住環境の優れたエリアの住宅地としての需要が高まっている事が感じられます。
商業地
「大阪市福島区福島6丁目」の地点が前年比11.5%と大きく上昇しました。「梅田」や「福島」駅に近い大阪北ヤードの「グラングリーン大阪」にも近い立地にあります。福島区は住宅地の地価上昇率1位の地点もあり、うめきた周辺の地価が大きく上昇している事が分かります。
2位は「北区大淀南1丁目」の地点が11.1%の上昇となりました。「グラングリーン大阪」に隣接したエリアになります。
うめきたエリアは今後、「グラングリーン大阪」の開業やリニア中央新幹線の開業など将来のビッグイベントがあり将来的にも地価の上昇が続く可能性があります。
3位は「西区西本町2丁目」、4位は「中央区南久宝寺町3丁目」となりいずれも10%以上の上昇となりました。5位は「箕面市船場東3丁目」です。大阪メトロ御堂筋線から直通運転となる北大阪急行南北線が延伸され、「箕面船場阪大前」駅が開業予定のエリアです。新線・新駅により都心へ直通のエリアが誕生しますので、今後の発展にも期待できます。
2023年基準地価
大阪府 地価上昇率ランキング<住宅地>
順位 | 基準地番号 | 変動率 | 所在地 | 住居表示 |
1 | 福島(府)-3 | 6.6 | 大阪市福島区鷺洲5丁目6番41 | 「鷺洲5-6-56」 |
2 | 寝屋川(府)-10 | 6.0 | 寝屋川市本町443番7 | 「本町10-5」 |
3 | 都島(府)-1 | 6.0 | 大阪市都島区都島中通2丁目101番 | 「都島中通2-11-17」 |
4 | 堺中(府)-3 | 6.0 | 堺市中区深井水池町3118番 | --- |
5 | 淀川(府)-3 | 5.8 | 大阪市淀川区木川東3丁目29番1 | 「木川東3-3-21」 |
2023年基準地価
大阪府 地価上昇率ランキング<商業地>
順位 | 基準地番号 | 変動率 | 所在地 | 住居表示 |
1 | 福島(府)5-3 | 11.5 | 大阪市福島区福島6丁目20番2 | 「福島6-20-2」 |
2 | 北(府)5-11 | 11.1 | 大阪市北区大淀南1丁目9番6 | 「大淀南1-10-9」 |
3 | 西(府)5-2 | 10.3 | 大阪市西区西本町2丁目111番外 | 「西本町2-1-34」 |
4 | 中央(府)5-12 | 10.2 | 大阪市中央区南久宝寺町3丁目39番1外 | 「南久宝寺町3-6-6」 |
5 | 箕面(府)5-3 | 10.2 | 箕面市船場東3丁目1番1 | 「船場東3-1-6」 |
大阪エリアの今後は万博・IR・リニア・資産運用特区などでも将来性が高い
このように大阪では多くの地点の地価が上昇しています。
岸田総理は札幌・東京・大阪・福岡を軸に「資産運用特区」の創設を表明しており、大阪もその候補地に含まれています。実現すれば大阪には外資系企業の参入や世界からの投資資金の流入などの経済効果も期待されます。
大阪では万博・IRを始め多くの再開発や新線計画、そして将来的にはリニア中央新幹線の開業が控えており、今後ますます発展する可能性があります。
新型コロナから回復傾向にあり、今後のインバウンドの増加なども見越して、今後の大阪エリアの地価はますます上昇する事も考えられます。