目次
固定資産税とはどんな税金なのか
まずは、固定資産税とはどのような税金なのかをご説明します。
課税対象と税率
固定資産税とは、土地や建物に課される地方税です。
総務省によると、固定資産税とは「資産価値に応じて、所有者に対し課税する財産税」とあります。財産税とは物質的な資産をいい、土地や建物を指します。固定資産税がかかる対象は、法人税法または所得税法上で減価償却の対象となるべき資産も含みます。
固定資産税とは別に、市街化区域にある固定資産に対して都市計画税が課税されます。都市計画税も地方税です。市区町村の自治体(23区は都)が、土地計画事業などによる都市整備に要する費用として課税するものです。
固定資産税と都市計画税の税率はそれぞれ以下の通りです。
【固定資産税】:1.4%(標準税率)です。多くの自治体で1.4%ですが、地方税のため自治体によって税率に差が生じます。
【都市計画税】:0.3%(制限税率)です。多くの自治体で0.3%が採用されています。最大税率が0.3%なのでこれ以上になることはありません。
納税者
固定資産税は土地や建物を所有する人が負担します。毎年1月1日現在の所有者が固定資産税を納税します。固定資産課税台帳に登録されている人です。
年の途中で不動産を売却したことなどによって所有者が変わった場合には、決済日を基準にして納税すべき固定資産税を日割り計算し、清算するのが一般的です。売却した側と購入した側が所有していた日数分支払うことになります。
納付方法
固定資産税の納税者には、自治体から納税通知書が送られてきます。
納付は、年4回に分割して支払う「分納」が一般的です。市区町村によっては1年分の固定資産税を1回で納める「全納」ができるところもあります。
支払い方法には、いくつか方法があります。納税通知書に同封される振込用紙を使って金融機関やコンビニで支払うほか、口座振替、クレジットカード払いなども可能です。
納税については、納期や支払い方法が自治体ごとに異なるため、納税通知書で確認するようにしましょう。
固定資産税が不動産投資に与える影響
固定資産税は投資物件の収益性に直接影響を与えるため、投資家にとっては慎重に考慮すべき要素となります。
ここでは、固定資産税が不動産投資に与える影響について詳しく解説します。
キャッシュフローへの影響
固定資産税は不動産投資のキャッシュフローに直接影響を与える重要な経費の一つです。投資物件の収益性を評価する際には、固定資産税の負担を考慮に入れることが不可欠です。
例えば、固定資産税が高額な物件では、家賃収入から差し引かれる金額が大きくなるため、実際の手取り収入が減少し、投資の利回りが低下する可能性があります。
したがって、固定資産税を含めた総合的なキャッシュフローの見積もりが重要です。固定資産税の影響を理解し、収益性を確保するための戦略を立てる必要があります。
投資物件選びの際の考慮点
固定資産税額は物件の立地や評価額によって異なるため、投資物件を選ぶ際の重要な判断材料となります。そこで、税負担の低い物件を選ぶことで、長期的な収益性を高めることができる可能性があります。
例えば、都市部の高額な物件よりも、郊外の比較的評価額が低い物件を選ぶことで、固定資産税の負担を軽減することができます。また、新築物件には特例措置が適用される場合があり、一定期間税額が軽減されることもあります。
物件選びの際には、固定資産税額を慎重に検討し、総合的な収益性を見極めることが重要です。
固定資産税は不動産投資の経費にできる
不動産投資では、固定資産税を経費として計上することが可能です。ここでは、固定資産税を経費として計上する際に押さえておきたいポイントを解説します。
目安は家賃の0.5~1ヶ月分程度
不動産投資の運営において、固定資産税はその年の経費として計上できます。しかし経費計上できるとはいえ、実際には支出となります。
固定資産税は、不動産投資が赤字経営であっても納税しなくてはならないため、固定資産税が大きな金額であると月々の資金繰りや返済も含めた資金計画にも影響が出てくるでしょう。
順調に家賃が入ってきても、固定資産税を支払って利益が残らないという状態にならないようにすることが大切です。
目安として、家賃の0.5〜1ヶ月分程度の固定資産税額になるように物件選びや家賃設定を考えていくと良いでしょう。
売買時の固定資産税精算分は経費にできない
不動産を取得した時、固定資産税は日割りで精算しますが、これは不動産投資の経費には計上できません。税務上「固定資産税の精算分は物件の取得価格に含めること」とされており、取得した年度分の確定申告で、経費ではなく取得価格に含めて減価償却していきます。
なお、取得した年に支払った登録免許税や不動産取得税は不動産投資の経費として計上できます。
固定資産税の課税標準額
課税標準額は、固定資産税の計算基準となる重要な要素であり、投資判断に大きな影響を与えます。
ここでは、固定資産税の課税標準額について解説します。
課税標準額の決定方法
課税標準額は、固定資産の評価額をもとに決定されます。具体的には、市町村の固定資産評価審査委員会が3年ごとに評価を行い、その結果に基づいて課税標準額が設定されます。
ただし、特定の条件下では軽減措置が適用され、実際の評価額よりも低い金額が課税標準額として設定される場合もあるため、条件の把握が必要です。
例えば、新築住宅の場合、最初の3年間は、課税標準額が2分の1に軽減されます。また、耐震改修を行った住宅には、改修工事完了年の翌年度から一定期間、固定資産税が減額される特例措置があります。
このような軽減措置は、不動産投資の収益性に直接影響を与えるため、自身の物件がどの軽減措置に該当するか確認しておくことが重要です。
課税標準額と実勢価格の違い
課税標準額は必ずしも不動産の実勢価格を反映しているわけではありません。一般的に、課税標準額は実勢価格よりも低く設定されており、この差異が投資判断に影響を与えることがあります。
実勢価格は、市場における実際の取引価格を指し、需要と供給のバランスや経済状況によって変動します。一方、課税標準額は、固定資産評価額よりも低く設定されることが多く、市場の変動に対してすぐに反応しないことが多いです。
この差異は、投資物件の選定や収益性の計算に重要な影響を与えます。例えば、実勢価格が高騰している地域でも、課税標準額が低く抑えられていれば、固定資産税の負担が相対的に軽くなる可能性があります。
このような課税標準額と実勢価格の違いを十分に理解し、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。また、定期的に自身の物件の評価額をチェックし、税負担の変化に備える必要があります。
固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法を知ることで、投資物件の維持費用を事前に見積もることができ、長期的な資金計画を立てやすくなります。
ここでは、固定資産税の計算方法について解説します。
固定資産税評価額の確認方法
固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、土地や建物に対して自治体の長が決定し、固定資産課税台帳に登録された価額のことです。
固定資産税評価額の確認方法については、以下のとおりです。
- 課税明細書
- 固定資産評価証明書
- 固定資産課税台帳
課税明細書は、市区町村から届く課税明細書で確認できますが、明細書が見当たらない場合は不動産を管轄している市区町村役場を訪れるとよいでしょう。
また、市町村の固定資産課税台帳にも記載されており、毎年送付される納税通知書で確認できます。
また、自治体によっては、オンラインで評価額を照会できるサービスを提供している場合があります。自治体のウェブサイトにアクセスし、必要な情報を入力することで、評価額を確認することが可能です。
評価額は3年ごとに見直されるため、定期的に確認しておく必要があります。不動産投資を行う際は、この評価額をもとに将来の税負担を予測し、投資判断に活用することができます。
具体的な計算方法
固定資産税は、固定資産の評価額(課税標準額)に標準税率となる1.4%を掛けることによって算出されます。
【固定資産税=固定資産税評価額×標準税率1.4%】
ただし、標準税率は原則として国が定めた1.4%が用いられることが多いですが、自治体によっては異なる税率が適用される場合もあります。したがって、自分の住む市区町村のホームページでの確認が必要です。
固定資産税評価額について、大まかな目安を知りたいといった場合は、土地については公示価格の70%程度、家屋については再建築価格の50〜70%程度を求めることで把握できます。
評価額の算出方法は、土地と建物で違いがあります。土地の評価額は路線価を基準にして計算されますが、建物の評価額は構造、広さ、経年劣化などを反映させて算出するため、計算が複雑になる点に注意しましょう。
固定資産税には軽減措置がある
固定資産税の算出方法をお伝えしましたが、固定資産税にはいくつかの軽減措置が設けられています。ここでは主な軽減措置を3つ取り上げてみました。
非課税になる免税点
固定資産税には固定資産税評価額(課税標準額)が一定金額を満たしていなければ課税されない「免税点」が存在します。
具体的な固定資産税の免税点は以下のとおりです。
・土地:30万円未満
・建物:20万円未満
・償却資産:150万円未満
これらの免税点を下回る場合、固定資産税は課税されません。
ただし、免税点には注意点があります。同じ人が同一の市区町村内々に複数の不動産を所持している場合は、その合計の課税標準額で判断される仕組みです。
例えば、複数の土地を所有しており、それぞれの評価額が30万円未満であっても、合計が30万円以上になると課税対象となります。
さらに、免税点は市区町村ごとに適用されるため、異なる市区町村に不動産を所有している場合は、それぞれの市区町村で個別に免税点が適用されます。
したがって、固定資産税の免税点の仕組みを正確に理解し、自分が所有する不動産を適切に管理することが重要です。
小規模住宅用地に関する特例
人が居住するために利用されている土地(住宅用地)には、固定資産税が軽減される特例措置が設けられています。具体的には一戸につき200㎡までの部分を「小規模住宅用地」、200㎡を超えた部分を「一般住宅用地」といい、それぞれの課税標準額は以下の通りです。
・小規模住宅用地:固定資産税評価額×6分の1
・一般住宅用地:固定資産税評価額×3分の1
例えば、課税標準額3,600万円の「小規模住宅用地」の場合、土地の固定資産税は以下のように求められます。
課税標準額×1/6×標準税率(1.4%)=土地の固定資産税
3,600万円×1/6×1.4%=8.4万円
また、賃貸アパートを所有する場合、小規模住宅用地の特例は戸数分に対して適用されます。
新築住宅にかかる減額措置
下記の一定条件を満たす新築住宅の場合、軽減措置が適用されます。
・2024年3月31日までに建てられた住宅であること
・居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であること
・共同住宅の場合、区画された居住部分の床面積に廊下や階段など、共有部分の床面積を按分(比例分配)し、加えたものが50㎡以上280㎡以下であること
※賃貸物件の場合、一戸につき40㎡以上280㎡以下
これらの条件を満たすことで税額が1/2に減額されるほか、一般住宅の一戸建ては3年間、マンションでは5年間適用されます。(認定長期優良住宅の場合は適用年数が延長され、一戸建ては5年間、マンションは7年間となる)
課税標準額×1/2×1.4%=建物の固定資産税(3年間)
3,000万円×1/2×1.4%=21万円
例えば、条件を満たした課税標準額3,000万円の一戸建て新築住宅であれば、固定資産税は上記のように求められます。
固定資産税の評価替えについて
不動産投資を行う上で、固定資産税の評価替えは重要な要素です。評価替えにより税額が変動し、投資収益に大きな影響を与える可能性があります。
ここでは、固定資産税の評価替えについて解説します。
3年ごとの評価替えの仕組み
固定資産税の評価替えは、3年に一度実施されます。この仕組みは、不動産の価値変動を適切に反映するために設けられています。
評価替えでは、土地の場合、公示価格の7割を目安に評価額が決定されます。一方、建物は再建築価格から経過年数や劣化状態に応じた補正を行い、評価額が算定されます。
評価替えにより、不動産市場の変化や経済状況の変動が固定資産税額に反映されるため、3年サイクルを念頭に置いて長期的な収支計画を立てる必要があるでしょう。
評価替えが投資収益に与える影響
評価替えによる固定資産税額の変動は、不動産投資の収益性に直接影響を及ぼすため、注意が必要です。
急激に税額が上昇した場合は投資計画の見直しが必要になる可能性があります。一方で、新築物件では特例措置により一定期間税額が軽減されるため、初期の収益性が高まる場合もあります。
不動産投資では、評価替えのタイミングや税額の変動を予測し、それに応じた資金計画を立てることが重要です。また、負担調整措置により税負担の急激な増加が緩和される仕組みもあるため、これらの制度を理解し活用することで、より安定した投資運用が可能となります。
不動産投資における固定資産税の注意点
固定資産税は物件の評価額に基づいて計算され、毎年支払う必要があります。
ここでは、不動産投資における固定資産税の注意点について解説します。
税金の支払いスケジュール
前述のとおり、固定資産税の評価額は3年ごとに評価替えが行われます。この仕組みにより、不動産の価値変動が税額に反映されることになります。
評価替えのタイミングを把握し、事前に予算を組むことが重要です。特に、評価額が上昇する場合には、税額も増加するため、資金計画に影響を与える可能性があります。なお、評価替えの情報は市町村の固定資産課税台帳で確認できます。
納税通知書は毎年4月に送付され、通常は4回に分けて納付できますので、計画的な資金準備で、納税のストレスを軽減しましょう
税金滞納のリスクと対策
固定資産税の滞納は、延滞金の発生から始まり、最悪の場合、財産の差し押さえや競売にまで発展する可能性があります。
このようなリスクを回避するには、納税スケジュールを把握し、計画的に資金を準備することが重要です。特に複数物件を所有する場合は、各物件の税額を正確に把握し、総額管理が必須となります。
万が一、支払いが困難な状況に陥った場合は、早めに自治体に相談しましょう。分納や納税猶予などの制度を利用できる可能性があります。また、家賃収入の一部を税金支払い用に積み立てるなど、計画的な資金管理も有効な対策です。
固定資産税の算出をシミュレーション
ここでは上記の計算方法、軽減措置を踏まえてシミュレーションを確認してみましょう。
新築物件の場合
■戸建ての場合
新築戸建て物件で、固定資産税評価額が土地(300㎡)4,000万円、建物1,500万円とします。この場合、土地には「小規模宅地の特例」、建物については「新築住宅の軽減措置」が適用されます。
【土地】
(200㎡までの部分):4,000万円×200㎡/300㎡×1/6 ≑ 445万円
(200㎡を超える部分):4,000万円×100㎡/300㎡×1/3 ≑ 445万円
合計890万円
【建物】
1,500万円×1/2=750万円
標準税率の1.4%で計算すると、土地の固定資産税額は約12.4万円、建物の固定資産税額は10.5万円となり、合計で約22.9万円の税金が発生します。
■マンションの場合
新築マンションの場合であっても、小規模宅地の特例ならびに新築住宅の軽減措置が適用されます。例えば、新築マンションの土地の固定資産評価額が800万円、建物の固定資産税評価額が2,000万円だったとしましょう。
この場合、土地には小規模宅地の特例が適用されるため、課税標準額は約134万円(800万円×1/6
)となります。一方、建物についても新築住宅の軽減措置が適用されることから、課税標準額は1,000万円(2,000万円×1/2)です。
上記に標準税率の1.4%を掛けると、土地の固定資産税額は約1.9万円、建物の固定資産額は14万円となり、合計で約15.9万円となります。
中古物件の場合
■戸建ての場合
中古戸建て物件で、固定資産税評価額が土地(300㎡)3,500万円、建物1,000万円とします。この場合、土地には「小規模宅地の特例」、建物については「新築住宅の軽減措置」が適用されます。
【土地】
(200㎡までの部分):3,500万円×200㎡/300㎡×1/6 ≑ 389万円
(200㎡を超える部分):3,500万円×100㎡/300㎡×1/3 ≑ 389万円
合計778万円
【建物】
1,000万円×1/2=500万円
標準税率の1.4%で計算すると、土地の固定資産税額は約10.8万円、建物の固定資産税額は7万円となり、合計で約17.8万円の税金が発生します。
■マンションの場合
中古マンションの固定資産税評価額が土地800万円、建物1,000万円だったとします。この場合、中古マンションであっても土地については小規模宅地の特例が適用されます。よって、中古マンションの土地の課税標準額は800万円×1/6で約134万円と求められるでしょう。
一方、建物については新築住宅の軽減措置の適用対象外となることから、固定資産税評価額がそのまま課税評価額となります。ここまでを踏まえ、土地の固定資産税額は約1.9万円、建物の固定資産税額は14万円となり、合計額は約15.9万円と求められます。
まとめ
不動産投資において、固定資産税がいくらかかるのかは重要な項目です。納付義務のある税金のため「経費計上ができるからといってどれほどかかっても問題がない」ということにはなりません。
これから投資用物件を購入したいなら、固定資産税の計算方法の仕組みを知った上で固定資産税額をシミュレーションしておくと良いでしょう。