目次
不動産投資が赤字続きになる理由
赤字続きとは、支出が収入を上回る状態が継続して徐々に資金が減る状況です。現状を打開できなければいずれ資金は底をつき、最悪の場合、自己破産に陥ります。
赤字続きで悩んでいるときは原因の把握に努め、適切な対策を見極めることが大事です。不動産投資が上手くいかなくなる主な理由を紹介します。
空室が原因で収入が伸びない
空室を解消できず収入が伸びない状況が常態化し、赤字続きになるパターンです。賃貸の解約は入居者の都合によるため、常に満室状態を維持し続けるのは不可能です。
一時的な空室の発生は自然なこととはいえ、いつまで経っても埋まらないなら、何かしらの問題が生じている可能性があります。
入居者が見つからない代表的な理由は賃料や立地、外観や内装、設備の老朽化などです。原因の追求に努め、入りたいと熱望する人が現れるよう、対策を講じる必要があります。
マンション経営における収入の大半は入居者の家賃です。ローンの返済を迫られる場合、賃料の減収が続けば経営破綻を引き起こしかねません。
シミュレーションの精度が低い
購入前のシミュレーションが実態と乖離した不十分な計画だと、想定どおりの利益を出せません。
不動産会社の営業マンが伝えてきた利回りは、費用を加味しない表面的な数値の可能性があります。鵜呑みにして、自ら計算する手間を惜しんでいては投資が失敗する確率が高くなるでしょう。
広告で目にする表面利回りは「年間の家賃収入÷物件価格×100」で算出します。計算式をみると分かるとおり、購入時の諸費用や維持管理の費用、住宅ローンの返済額を考慮していません。
実際の運用で使える正確な数値を知りたい場合、実質利回りの確認が必要です。固定資産税や火災保険料、不動産会社に支払う仲介手数料、登記費用などの諸費用が含まれるため、実態を正確に把握できます。
また、利回りの算出時に計上した年間収入は満室時の賃料を基準に考えていませんか。空室がある状況を想定した現行利回りを合わせて計上する必要があります。
想定外の修繕コストが発生した
修繕コストが予想以上に多額におよび、収支を逼迫する場合があります。数十部屋を備えた大きな物件では、故障の都度行う修理のほか、定期的に大規模修繕を行わなくてはいけません。
投資用の賃貸物件は内装や外観が入居率に関わるため、トレンドをとらえたセンスの良いデザインを維持する必要があります。したがって修繕の頻度が増え、修繕コストが想定以上の金額になる場合が珍しくありません。
修繕の規模が大きい外壁の張り替えは内装の修繕と比較して高コストです。
さらに退去に伴う原状回復費用の負担が生じるため、入居者の入れ替わりが激しいと修繕費が想定を上回る可能性が高くなります。
共用部の修繕は管理組合が積み立てた修繕積立金を活用できますが、専用部の修理には使えません。設備の修繕コストはマンションの所有者が負担する必要があるため、経年劣化の速度が予想を超えると収支の悪化を招きます。
ローンの金利が上昇した
変動金利でローンを組むと、金利の上昇で返済額が増加する場合があります。
通常の住宅ローンより高めの不動産投資ローンでは、たった1%の金利の上昇が経営に影響を与える可能性が小さくありません。
賃料を低く設定し過ぎていない限り、ローンの金利が原因で経営破綻を起こすことは稀です。しかし赤字続きで苦しい状況を迫られるとボディーブローのように効き、いつの間にか土俵際に追い込まれている場合があります。
毎月の返済額を固定したい人は、固定金利の選択がおすすめです。
変動金利は基本的に固定金利より低めですが金利の上昇リスクがある以上、想定外の返済額の増加に迫られるリスクからは逃れられません。
家賃の滞納者が想定外に多い
家賃を踏み倒す悪質な入居者が頻発して、想定を下回る収入を強いられる状況です。賃貸経営を続けていれば家賃滞納リスクは避けられません。
とはいえ、単に失念していただけで催促すれば快く支払いに応じる場合もあります。何度も入金を求めているのに拒否する、もしくは連絡がつかない場合、踏み倒す明確な悪意をもった確信犯の可能性が高いといえます。
長期の滞納者が多い原因は、入居者の審査が不十分なことです。収入源の確保に意識を捉われ、経済力や信用力の調査を怠った結果、悪意をもつ賃借人を見抜けなかったのです。
穏便に済ませるには話し合いでの解決がベストですが、収支が逼迫していますぐの支払いを望んでいる場合、強制力のある法的手続きを検討すべきかもしれません。
家賃の回収のみが目的なら支払督促や少額訴訟、信頼関係が破綻したとみなして退去を求めるなら明け渡し請求訴訟を提起します。
初期の赤字は必ずしも問題ではない
賃貸マンションの経営が赤字だからとはいえ、財政が不完全な状態にあるとは限りません。見かけ上利益がなくても一時的な現象に過ぎず、他に問題がなければ、徐々に改善する場合もあります。
赤字が続いても過度に心配する必要がない状況を紹介します。
経営初期
マンション経営を始めて数年の間、赤字が続くのは自然なことです。物件の購入に多額のローンを組んだ場合、返済費用を賃料収入で補填する必要があり、利益が出るのは二の次になるからです。
初年度は不動産取得税や登録免許税、不動産会社への仲介手数料と他の年度より多額の出費を迫られます。
不動産投資で黒字化に成功する平均的な年数は、5~10年だといわれています。創業から10年以上赤字続きなら対策を考えたほうが良いですが、数年間利益が出ないだけで危機感を募らせるのは焦り過ぎかもしれません。
減価償却による赤字
減価償却は、築年数の経過による資産価値の下落を費用計上する会計上の行為です。購入価格のうちの一定割合を経費とみなし、毎年度経費にします。
減価償却の額は大きいため、賃貸経営の赤字が続く原因になっている場合があります。帳簿上は利益がなく不安に駆られますが、見かけ上の赤字で経営に悪影響を与えるものではありません。
収入の低下や維持管理コストの上昇とは無関係のため、心配は無用です。
不動産投資で赤字続きのときの改善法
赤字が続いたときは、粘り強く待っていてもいつのまにか状況が良くなるケースは稀です。対策を立案して行動に移し、積極的に改善に努めなくてはいけません。
有効な改善策は次のとおりです。
入居者の募集要件を変える
募集要件を緩くして間口を広げると、入居者が見つかる可能性が高くなります。例えば少子高齢化が進む昨今、単身の高齢者の受け入れは効果的な戦略です。
他にも以下のような募集要件の変更が考えられます。
- フリーレント
- ペット可
- 楽器演奏可
- 高速のインターネット回線の導入
フリーレントとは、入居から数ヵ月間、家賃の支払いを免除するサービスです。支払い能力に不安がある学生や若いビジネスマンに喜ばれ、ターゲットやエリア次第ではすぐに入居者が決まると予想されます。
入居者の属性をリサーチする
入居者の性別や年齢、資産構成を調査して実態に即したターゲットを設定します。そして需要に見合う物件にすることで、希望者が一気に増える効果を期待できます。
学生街ならルームシェア可能に、若い女性が多いならオートロックを付帯して親御さんが安心できる住まいにすると効果的です。高齢者夫婦が多いエリアでは、手すりの設置や段差の解消など設備の充実によるバリアフリー化が有効です。
購入前に行った調査だけだとトレンドや周辺環境の変化に対応しきれず、本来のニーズとかけ離れた対策になるリスクがあります。
「多分こうだろう」と勘に頼った戦略をするのではなく、入居者のデータに基づく客観的な施策を考案すると、赤字続きの状況から脱却しやすくなります。
リノベーションを実施する
外壁のリノベーションで古めかしい外観から脱却し、魅力的な見た目に変貌すれば、吸い寄せられるかのごとく入居者が集まります。周囲の物件と差別化したい時にリノベーションはおすすめの方法です。
ただし外壁の張り替えは大規模で費用が高額にのぼる傾向があるため、費用対効果の視点は必要です。
リノベーションとリフォームの違いは、修繕で元の状態に戻すのではなく、間取りの変更や設備の設置で新たな価値を見出すことです。修繕積立金では賄い切れないと想定されるからこそ、入居者の増加に直結する本質的な改修を施しましょう。
赤字続きで限界を迎えたときの対策
改善策を試しても赤字を解消できず、どうにもならないと匙を投げたくなっても諦めないでください。限界を迎えてもまだできることはあります。
赤字続きの状態を乗り切る最終手段は次のとおりです。
損益通算を行う
損益通算とは、マンション経営の赤字と他の所得の黒字を相殺して節税につなげることです。例えばサラリーマンの副業投資家は給与所得から不動産所得の赤字を差し引けば、課税所得が減ります。
不動産所得の計算式は次のとおりです。
- 不動産収入(家賃収入/更新料/共益費)-経費(減価償却費/修繕費/固定資産税/火災保険/住宅ローンの返済)
上記で算出した不動産所得が-1,000万円、給与所得が2,000万円と仮定した場合、損益通算で課税対象所得を1,000万円に圧縮できます。
住宅ローンの利子に相当する金額は損益通算の対象に含められません。国税庁のホームページには、不動産所得の算出上、費用に計上した土地等の取得に要する負債の利子は対象外だと明記しています。
確定申告を怠らなければ、源泉徴収で払い過ぎた所得税の還付を受けられる場合もあります。
赤字を逆手にとり節税するのは決して卑しく愚かな所業ではなく、経営リスクを軽減する賢い行為です。
任意売却を検討する
赤字の物件を抱え続けるなら、いっそ売却して借金の返済に充てたいと考える人もいるでしょう。しかし不動産投資ローンの返済が完了するまでは抵当権がついた状態となり、所有者の一存で売却できません。
ローンの残高が物件の価値を越える状態だと、手持ちの資金で差額を補填しない限り、売りに出したくても出せないという難しい局面を迫られます。
打開策の一つは、債権者の同意を得て売りに出す任意売却です。競売より高値で買い手を見つけることが条件ですが、抵当権の実行と比べて売却後の残債が減ります。
内見や契約手続きのスケジュールをオーナーが決定できることも、任意売却は優れています。
ローンの滞納が常態化する程収支が悪化していれば、抵当権の実行でオークションにかけられる可能性が高いです。できるだけ負債を減らしたいときは債権者(金融機関)の手で競売に出される前に動き出し、任意売却の段取りを進めましょう。
まとめ
不動産投資で赤字が続いても、経営初期で多額の費用を計上している場合や、減価償却によるものであれば基本的に問題はありません。
しかし思うように入居者がつかず、賃料収入が低い状態を解消できないときは対策が必要です。
募集要件の変更で入居者を集めやすくするほか、リノベーションで周囲の物件と差別化を図るといった効果があります。
アセットテクノロジーは大阪を中心に、賃貸管理や土地や建物の売買仲介を手がける会社です。長年の経験で培った知見を活かして、不動産に関する総合的なソリューションを提案します。
賃貸経営で赤字が続いてどうにもならないと悩んでいる人は、ぜひ私たちを頼ってください。