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不動産投資の法人化とは
不動産投資の法人化とは、不動産投資事業を個人から法人に切り替えた運営方法です。
個人でマンションやアパートなどの不動産を管理して家賃を得るのではなく、法人を設立して収入の中から役員報酬を受け取る形になります。
不動産投資の法人化は営利を目的として設立する法人とは異なり、設立者の資産管理を目的とするのが一般的です。
そのため、不動産を多く所有している場合の税金対策として注目されています。
特に日本では、個人の所得税率は上昇していますが法人税は低下しているため、不動産投資を法人化する方が増えています。
平成元年の法人税率は40%でしたが、複数回の減税が行われ令和6年4月1日時点の法人税率は23.2%になりました。
また、資本金1億円以下で課税所得800万円以下に該当する部分に関しては、軽減税率により15%となります。
不動産投資の法人設立では、多くのケースで資本金が1億円以下になることから、法人税は23.2%もしくは15%になります。
このように法人税率が下がっているため、不動産収入によっては不動産投資を法人化したほうが節税効果を得られるというわけです。
不動産投資を法人化する流れを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
→不動産投資で法人化するメリット・デメリット!法人化の流れも紹介!
不動産投資で法人化すると節税になる基準
不動産投資で法人化すると節税になる基準は、個人の所得税と比較した場合の税率が低くなる場合です。
個人に課せられる所得税や住民税の税率、法人税の税率は以下の通りです。
個人に課せられる所得税や住民税 |
|||
所得金額 |
税率 |
||
所得税率 |
住民税率 |
合計 |
|
195万円以下 |
5% |
10% |
15% |
330万円以下 |
10% |
20% |
|
695万円以下 |
20% |
30% |
|
900万円以下 |
23% |
33% |
|
1800万円以下 |
33% |
43% |
|
4000万円以下 |
40% |
50% |
|
4000万円超 |
45% |
55% |
法人税 |
||
資本金1億円以下の法人 |
所得が年800万円以下の部分 |
15% |
所得が年800万円超えの部分 |
23.2% |
|
上記以外の法人 |
すべて |
23.2% |
例えば、所得額が900万円以上になる場合は、個人に課せられる所得税や住民税の税率と法人税の税率が大きく変わるタイミングです。
所得金額が900万円未満の場合には所得税率が33%課せられますが、超えると税率が9%アップした43%になってしまいます。
そのため、900万円を超える所得金額があれば、法人化して15〜23.2%の法人税を支払った方が節税対策になります。
課税される所得金額には不動産所得だけでなく給与所得も含まれるため、会社員の場合は年収1,500万円程度を目安に法人化を検討するのがおすすめです。
ただし、会社員として働きながら不動産投資を運用しているのか、専業で不動産投資を運用しているのかでも節税できる基準が異なります。
それぞれが節税につながるケースは以下の通りです。
所得が900万円を超える会社員のケース
不動産投資を個人で行っている会社員が、不動産所得と給与所得を合計して900万円を超える場合、税率は43%になります。
しかし、法人の税率は15.0〜23.2%になるため、法人化は大幅な節税対策につながります。
個人の所得に課せられる税率よりも法人税の方が低い税率になっている部分を考慮して、所得に応じて法人化を検討するのがよいでしょう。
ただし、会社員の場合は給与所得と不動産所得の合計が年収になるため、年収1,500万円ほどを基準に法人化を検討するのが一般的です。
不動産投資の専業で330万円を超えるケース
専業で不動産投資を行い、不動産所得が年間330万円を超えるケースでは30%の税率が課せられます。
一方、法人化すれば15.0%〜23.2%の税率であるため、場合によっては50万円近い金額の節税対策が可能です。
所得額に応じて税率も変化しますが、不動産投資を専業で運用し、不動産所得が330万円を超える際は不動産投資を法人化した方が節税になるでしょう。
不動産投資を法人化するメリット
ここでは、不動産投資を法人化するメリットを解説します。
税率が個人所得税より低い
不動産投資で法人化するメリットとして、大幅な節税対策が挙げられます。
所得額に応じて変動する税率ですが、一定の基準を超えると法人税の方が大幅に安くなるため、多くの物件を管理したり、黒字経営が続いている方は法人化がおすすめです。
確定申告で1年間の所得が明確になるタイミングで、法人化を検討するのがよいでしょう。
法人化で悩まれている場合には、不動産投資に詳しい税理士や会計士事務所に相談するのもおすすめです。
相続税の対策になる
不動産投資を法人化すれば、相続税の節税対策になります。
例えば、法人を設立した際に家族を役員に設定して、役員報酬を家族で分散支給すれば代表者の相続財産の軽減が可能です。
また、不動産管理会社を設立したあと保有した物件が3年経過すると、資産の評価額を小さくできるため、相続対象となる株価が下がって相続税の節税対策につながります。
資産価値上昇などの点に注意すれば、相続税対策に対するメリットを得られるでしょう。不動産投資が相続税対策になる理由を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
→不動産投資は相続税対策になる!節税対策になる物件の特徴も解説
経費の範囲が広くなる
不動産投資を法人化すれば、個人で運用するよりも経費の範囲が広くなります。
個人で不動産投資を運用する場合は、経費の範囲に厳しい制限があり、不動産投資に必要な経費を判断して計上しなければいけません。
しかし、不動産投資を法人化すれば経費の対象となる幅が広がるため、個人より多くの節税対策が期待できます。
ただし、法人化したとしても経費の範囲には決まりがあるため、税理士に記帳代行を依頼しながら決算を行うケースが一般的です。
そのため、不動産投資に関連した経費は必ず相談して記帳しましょう。
赤字の繰越期間が長くなる
個人の赤字繰越は3年ですが、法人化によって10年間の赤字繰越が可能です。
法人では年間の収支が赤字になった場合、翌年に繰り越して翌年の売上から控除できるため、黒字が発生したときの節税対策になります。
また、赤字を全額控除できない場合でも翌年以降に繰り越しすることも可能なため、法人化による赤字繰越の期間は大きなメリットとなるでしょう。
不動産投資を法人化するデメリット
ここでは、不動産投資で法人化するデメリットを解説します。
売却時の税率が高くなる
不動産投資を法人化すると、保有期間が5年以上となる物件を売却する際の税率が高くなるデメリットがあります。
一方で個人の場合は、売却時の税率は所有期間によって異なり、以下のようになります。
所得の種類 |
所有期間 |
所得税率 |
住民税率 |
短期譲渡所得 |
5年以下 |
30% |
9% |
長期譲渡所得 |
5年超 |
15% |
5% |
個人で保有している5年超えの物件の長期譲渡所得は、所得税率と住民税率を合わせて税率は20%です。
しかし、法人の税率は所有期間に関係なく法人の実効税率で計算されます。
法人の実効税率は約35%になるため、所有期間が5年超のアパートを売る場合には、法人よりも個人の方が低い税率で売却可能です。
法人設立費用と維持費がかかる
法人化するには、法人設立費用と維持費がかかります。
例えば、法人を設立するためには法人登記が必要となり、登記免許税、印鑑の作成などの費用が発生します。
また、法人設立後も個人での運用とは異なり、会計処理が複雑になるため、税理士へ記帳代行や確定申告を依頼するのが一般的です。
不動産投資の規模によっても異なりますが、税理士の報酬として年間50万円以上がかかることも珍しくありません。
一方、個人で不動産投資を運用していれば、法人設立の手間や費用が発生しないため、費用を抑えながら不動産投資を始められます。
法人化の判断は不動産所得とかかる費用を比較し、設立費用や維持費をカバーできる規模の運用が可能になってから検討するとよいでしょう。
法人化にともなって社会保険や税金がかかる
不動産投資で法人化すると、社会保険の加入義務対象事業者に含まれます。
そのため、代表者1人で経営している法人でも国籍や性別、賃金の額等に関係なく、健康保険や厚生年金保険の被保険者となります。
また、法人には法人住民税が課せられ、赤字であっても最低の7万円は法人税を毎年収めなくてはいけません。
しかし、個人で不動産を管理する場合には、赤字の年に住民税は課税されません。
そのため、法人化する場合には社会保険料や毎年支払う法人税を加味して検討するようにしましょう。
まとめ
不動産投資を法人化する場合は、所得が900万円を超えた際に検討するのがおすすめです。
現在の日本では個人の所得税よりも法人税の方が低いため、不動産所得が高額な場合は節税対策として法人化するのがよいでしょう。
ただし、不動産投資では賃貸物件の管理だけでなく、入居者の募集や家賃管理などの細かい作業が多く発生するため、オーナーの労力は予想以上になります。
その場合は、不動産投資や賃貸管理を行っている不動産管理会社に委託するのがおすすめです。
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