不動産投資に大規模修繕は必要?行うべき理由・頻度・注意点を解説

一棟物のアパートやマンションでは災害や事故で発生した損害を補修する工事のほか、定期的に行われる大規模修繕があります。 外装や内装、下地の補修、シーリングの補修にいたる建物全体におよぶ規模が大きな工事です。投資用物件の価値を保ち、築年数が経過しても入居人が集まる魅力的な外観を保つために必要とされています。 今回は大規模修繕を行うべき理由や頻度、工事内容、注意点を解説します。通常の修繕との違いが分からない人や、投資用物件でも必要なのか不明な人はぜひご覧ください。

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大規模修繕とは?

不動産投資で安定した家賃収入を得るには、経年劣化や事故による損傷にいち早く修繕を施し、物件の価値を維持することが大切です。

なかでも足場をかけて行う大がかりな工事は大規模修繕と呼ばれます。大規模修繕の頻度や工事の種類、コストの目安といった基本的な情報を解説します。

投資用物件の一般的な大規模修繕の頻度は12~18年

マンションの大規模修繕には、一概に何年周期で行うという厳密なルールが存在するのではありません。とはいえ、一般的には12年〜18年のスパンで行うケースが大半です。

多くのマンションが大規模修繕の頻度を12年にする理由は、国土交通省が作成した長期修繕計画作成ガイドラインに準拠しているためです。

また塗料や防腐剤の性能は10年を目途に劣化が始まるため、取り替えるタイミングとしてちょうど良いという点も関係しています。

しかし近年では修繕コストの上昇を背景に、18年の周期で行われる修繕サービスが登場しています。仕組みや工法を工夫して安全性を保ちつつ、修繕の回数を減らすことが可能になりました。

不動産投資で必要になる大規模修繕の工事一覧

大規模修繕工事の詳細は建物調査の結果を基に、管理組合の議論を通して決定します。具体的な内容は損傷の箇所や程度で異なるものの、一般的に行われる工事は次のとおりです。

  •  仮設:足場や現場事務所、資材置き場を設置する工事
  • 下地補修:壁や床などコンクリート部分のひび割れを補修する工事
  • タイル補修:年数の経過で接着が剥がれ落ちたタイルを補修する工事
  • シーリング補修:サッシや外壁の接合部に用いられるシーリング材の付け替え工事
  • 外壁塗装:塗料と下地の接着力を確認し、塗装し直す工事
  • 鉄部塗装:階段や手すり、扉などの鉄部の錆を除去し、塗装し直す工事
  • 防水工事:雨水からコンクリートを保護するための工事
  • その他:エントランスの改修、旧排水管の付け替え、扉の交換など

大規模修繕のコストの目安

国土交通省が実施した「大規模修繕工事に関する意識調査」によると1回当たりの大規模修繕の平均的な相場は4,000〜6,000万円です。

調査対象の90%を超える割合が4,000万円以上の費用を負担しています。

大規模修繕は単発で終わらず、2回、3回と繰り返し行われる性質をもちます。築年数が経過する程修繕が必要な箇所が増えるため、徐々にコストが上昇する傾向があるようです。

3回目に差し掛かると築年数が40年程度に達しており、いたるところで不具合が散見されます。劣化が激しければ修繕を諦め、買い替えによって新たな投資用物件を調達する場合もあります。

投資用物件でも大規模修繕を行うべき理由

自分が住むわけではない投資用の物件でも、定期的な大規模修繕を怠ってはいけません。なぜなら不動産投資の成否を占う重要な行為の一種だからです。

ここでは、投資用の物件で大規模修繕が求められる理由を解説します。

入居者を募るインセンティブになる

大規模修繕は建物の耐久性を高めるほか、外観を綺麗に保つことで入居したいと思う魅力的な環境を維持する効果があります。

コンクリートのひび割れや汚れだらけの古臭い物件は不人気になり、競合マンションとの競争力の低下を引き起こします。

劣化が確認できる箇所以外にも、設備の追加や機能の改良を目的にしたリノベーションを施せば、募集を募る際に有利です。

競合との差別化を図りやすく、賃料や他の条件が同じときに入居を決める要因になるからです。

大規模修繕のコストは高額ですが、新しい入居者が入って賃料収入が増えれば、将来的に元が取れます。

出口戦略の実現可能性を高める

不動産投資の主な収入源は、月々の家賃収入と運用期間が終了した後の売却益に分かれます。

運用中はローンの返済で赤字が発生していても、最後に売りに出して黒字に転換すれば成功だといえます。

希望価格で買い手を見つけて出口戦略を完遂させるには、意外にも大規模修繕がカギを握っているのです。

適切なタイミングで必要な箇所を修繕していない場合、購入者に負担が押し寄せるため、取引の相手は購入価格を下げて釣り合いを取ろうとします。

修繕積立金に不足がみられる状況でも、将来的な積立金の上昇を予想して取引価格が安価になりがちです。希望価格で買い手が見つからなければ、売価を下げて妥協するより他ありません。

適切な頻度で必要な箇所の大規模修繕を施していれば、出口戦略の下方修正を考える心配はなくなります。

修繕積立金の金額が適正か確認することが重要

修繕積立金は将来の修繕に備えて賃料に加えて居住者から徴収するお金で、大規模修繕の主な資金源です。毎月の積立金は修繕工事で必要になる費用を予想して決まります。

修繕積立金の金額は管理組合の主導で決定し、建物のオーナーも一部の負担を強いられます。

不動産投資で利益を出したいと考えているなら、収支に影響を与えるため、適切な水準かどうか確認しなくてはいけません。

段階増額積立方式には注意が必要

修繕積立金の積み立て方は次の2つの方法に分かれます。

  • 均等積立方式:毎月固定の積立金を拠出する方法
  • 段階増額積立方式:一定期間が経過したとき段階的に積立金を増額する方法

年数の経過によって負担額が増える「段階増額積立方式」を採用するマンションには注意が必要です。

購入後は安価のため一見得したと思えますが、徐々に負担が大きくなる仕組みを把握していないと、想定外のコストに悩まされます。

住宅ローンの返済を迫られる局面で、修繕費の上昇まで起きるのは手痛い現象です。

入居者からの理解が得にくい段階増額積立方式を採用するマンションは多くないとはいえ、もしものときのキャッシュ不足を防ぐためには、均等積立方式の物件をおすすめします。

段階増額積立方式のもう一つの問題点は、肝心の修繕が必要になったとき、積み立てたお金では足りない可能性があることです。

新築物件では修繕のリスクの低さから採用する物件もありますが、災害や事故など築年数と関係がない理由で損害が発生しては意味がありません。

国土交通省も「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」のなかで合意形成を得にくい段階増額積立方式である点に着目して、均等積立方式への切り替えを推奨しています。

大規模修繕の注意点

大規模修繕はマンションの価値を保つために必要とはいえ、1回当たり4,000〜6,000万円を拠出するのは大きな負担です。

万一費用を払いきれない場合、工事を依頼できず損傷や劣化を放置したままの状態を余儀なくされます。

大規模修繕の費用を抑えて収支を逼迫させないためのコツを紹介します。

長期修繕計画を見直す

マンションの購入時に長期修繕計画を策定して、修理コストを漏れなく計上したシミュレーションをしましょう。長期修繕計画とは、概ね30年間の修繕計画を示したスケジュール表です。

新築の時点で経年劣化の程度を正確に予測するのは不可能なため、定期的に計画を見直さなくてはいけません。

現実にそぐわない無意味な計画は変更して、実態とのズレを解消することは、想定外のコストを防ぐ重要な戦略です。

法律の改正や物価の変動により、人件費や材料費、消費税が高騰して、大規模修繕の費用が想定と著しく乖離する可能性もあります。

現状調査によって予期していなかった追加工事が発生することもあるため、数年に一度の周期で計画を見直しましょう。

積立金に不足はないか定期的に確認する

修繕積立金に不足が生じた場合、大規模修繕を行うには、オーナーの持ち出しが必要になる場合があります。突然、大金をキャッシュで支払うことになれば経営状態の悪化を招くでしょう。

積立金が不足すると予見した時点で、早めの対処が必要です。管理組合と協議して工事内容や工期を見直した上で、必要があれば積立金の増額やローンの借り入れ、一時金の徴収を検討します。

月々の負担が増えると居住者から反発を受ける可能性もありますが、変更の理由や修繕の必要性を粘り強く説得し、理解を得るために努めましょう。

工事をしないで放置すると、建物の価値が摩耗して売却による出口戦略の実現が難しくなるため、修繕積立金の残高は定期的に確認してください。

自ら業者を選定する

投資用物件の維持管理を不動産会社に任せていても、大規模修繕にかかる業者の選定はオーナー自ら行うことができます。

施工業者を選定する際は、不動産会社の仲介を受けず極力自分の手で探しましょう。業者の紹介を挟むと紹介料(マージン)が上乗せされて、支払い額が増える可能性があるためです。

管理会社に業者の手配や見積もりを任せれば、オーナーや管理組合が楽になるのは違いありません。しかし費用の削減を第一に考える局面では、時間や手間を投じてでも、できることは自分で巻き取るべき状況もあります。

相見積もりを取る

自分で大規模修繕の見積もりを取るときは複数の業者に依頼し、金額を比較した上で相場を掴むことが大切です

費用を重視する場合、提示額が高い業者は真っ先に対象から外れますが、他より明らかに安い見積もりをしてきた相手にも注意が必要です。

安さを押し出して契約を募り、工事内容に不足が生じている可能性があります。

相見積もりではあくまでも相場の把握に努め、最終的に依頼する業者を決める際は、実績や評判を決め手にすることをおすすめします。

まとめ

経年劣化による資産価値の減少を緩和するには、定期的に大規模修繕を行わなくてはいけません。1回当たりの工事の平均的な金額は4,000万円〜6,000万円と高額です。

修繕積立金が主な資金源となるため、積立金に不足は生じていないか定期的にチェックしましょう。

「大規模修繕の必要性は分かったけどコストが高すぎる」と感じた人は、ぜひアセットテクノロジーにご相談ください。

長年の経験で培ったノウハウを活かして、お客様の悩みを解消するソリューションを提示します。ぜひこの機会に、お気軽にお問合せください。