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青色申告とは
青色申告とは、確定申告の方法の一つで、複式簿記と呼ばれる方法で帳簿を作成します。一定の要件を満たせば、様々な特典を受けられます。
一方、白色申告では単式簿記を採用しており、複式簿記より比較的簡単に帳簿が作成できるものの、特典がついていません。
青色申告は白色申告より高い節税効果が見込めるので、不動産収入を得ている人は青色申告で手続きしていて損はないでしょう。
不動産投資で青色申告!どんなメリットがある?
青色申告には様々な特典があります。不動産投資をする人も、できれば青色申告を活用したいものです。ここでは、青色申告にどのようなメリットがあるのか、詳しく紹介します。
青色申告の特別控除がある
控除とは、収入から一定の金額を引くことです。課税される金額が減ることから、節税効果があります。青色申告の特別控除は、一定の条件を満たせば、最大65万円の控除を適用できます。
65万円の控除を受けるためには、複式簿記でe-Tax申告または電子帳簿保存を行うことが条件となっており、電子帳簿保存をするには税務署へ届け出が必要です(令和4年分から事前承認が不要で届出書の提出へ変更)。
なお、複式簿記でe-Tax申告または電子帳簿保存を行わない場合は55万円控除、簡易帳簿(e-Tax申告または電子帳簿保存も行わない)の場合は10万円控除となります。また、白色申告には控除額はありません。
赤字の場合には3年間の繰り越しが可能
不動産投資で赤字になった場合は、青色申告しておけば、翌年以後3年間繰り越せます。当年度赤字でも、翌年度以降の黒字から差し引くことができるので、節税効果を期待できます。
初期投資や大規模修繕をした年度は赤字になりがちな不動産投資ですが、青色申告の繰越控除を活用すれば、投資効果を向上させられるでしょう。
青色事業専従者給与を経費にできる
青色申告では、配偶者や一定の親族に支払う給与を、全額経費とすることができます。白色申告では、配偶者は86万円、配偶者以外の親族は50万円という上限が設けられていますので、節税効果がより期待できます。
青色事業専従者給与を経費とするためには、期日までに青色事業専従者給与に関する届出書を提出しなければなりません。青色事業専従者には、青色申告者と生計を一にする配偶者や15歳以上(その年の12月31日時点)の親族が該当します。
また、6ヶ月超の間、その事業に専ら従事していなければならず、給与も不当に高すぎると認められません。
なお、配偶者控除や配偶者特別控除と青色事業専従者給与との併用はできません。
配偶者が受け取る給与の額によっては、税や社会保険料の負担が発生しますので、総合的に判断する必要があります。
不動産投資で青色申告をするための条件!
ここでは、青色申告をするための様々な条件について、詳しく解説します。
事業的規模の不動産所得であるか
青色申告は、不動産所得を生ずべき業務を行う必要があります。賃貸収入は不動産所得に該当します。
青色申告の不動産所得で事業的規模の場合、配偶者や一定の親族へ支払う給与を全額経費にできます。
事業規模と認められる基準は、不動産所得の場合は以下の基準をもとに形式的に判断可能です。
マンション・アパートの場合 | 部屋数が10室以上であること |
戸建ての場合 | 物件数を5棟以上であること |
駐車場の場合 | 50台以上であること |
所有する不動産が複数ある場合は、アパートの室に換算して計算します。駐車場5台分はアパート1室と同等。戸建て1棟はアパート2室と同等になります。これらを基準に算出しましょう。
青色申告の不動産所得で事業的規模でない場合は配偶者や一定の親族へ支払う給与を経費にできません。
青色申告承認申請書を提出する
青色申告の適用を受けるためには、期限までに青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。申請書は、不動産投資を始めた日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
白色申告から青色申告に変更する場合は、青色申告をする対象年の3月15日までに提出します。
なお承認却下の通知が来なければ、青色申告が認められたことになります。
複式簿記をつける
55万円もしくは65万円の控除を受けるには、複式簿記で帳簿をつける必要があります。複式簿記は、貸方と借方で同じ金額を仕訳する方法で、家計簿のように単に項目と金額を記録する方法とは異なります。
簿記の知識がない人にとって、複式簿記で帳簿をつけるのはハードルが高いと思われるでしょう。そのような場合は、会計ソフトを使えば誰でも簡単に記帳できます。
また、確定申告では、複式簿記による記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書も必要です。
青色申告で経費として計上できる項目・できない項目
確定申告時に経費として計上できる項目とできない項目があります。それぞれの項目を解説します。
計上できる項目
経費として計上できる項目を漏れなく計上することで、節税に繋がります。不動産投資に関わる税金や保険料、金利まで多くのものが該当するので一つずつ確認していきましょう。
固定資産税や不動産取得税
不動産投資に関する税金は、経費として計上できる項目です。代表的な税金では、固定資産税や都市計画税が挙げられます。
マンションを購入した初年度は、不動産取得税や登録免許税、印紙税がかかりますが、これらも経費計上の対象です。
保険料
投資している不動産が加入している、火災保険や地震保険の保険料も経費として計上できます。
しかし、注意しなければならないのは、複数年分を一括払いしている場合です。当該年度分しか計上できないため、支払った金額を契約年数で割った額がその年に計上できる経費となります。
金利
不動産投資をする際に借入した分の金利は、経費に計上できる項目です。あくまでも金利部分のみが経費となり、元本は経費として計上できません。
また、土地部分の金利に関しては、不動産所得が赤字になっている場合は、損益通算できないので注意しましょう。
管理会社への委託手数料
入居者の対応や家賃の回収などを管理会社に委託している場合は、管理会社への委託料が経費計上の対象となります。
ただし、サブリースの場合は入居者の賃料を管理会社が受け取り、管理料を差し引いた金額が入金されるため、管理委託料として経費計上できません。
管理費・修繕費
管理組合に支払う管理費や修繕積立金も経費計上できます。管理費を経費計上していても、修繕積立金は経費対象にならないと思っている方も多いですが、その年の修繕費ではなく将来の修繕のために積立てておくもので要件を満たせば経費計上できるのです。
国税庁も要件を満たす修繕積立金であれば、経費計上できると認めています。
減価償却費
不動産の建物部分にかかった費用は、減価償却費として毎年計上可能です。経費として計上できる金額は、購入した不動産の耐用年数によって算出されます。
その他業務上必要な経費
上記の他にも管理会社とのやり取りに使用した切手代や電話代は通信費として、物件の巡回で使用したガソリン代や電車代は旅費交通費として、不動産に関する専門誌を購入した場合や書面を書く際に使用したボールペンの購入費なども経費として計上できます。
客観的に見て納得できる範囲で、不動産管理業務に必要な費用は、基本的に経費計上できると考えましょう。
計上できない項目
基本的に、不動産投資に関係ない費用はすべて経費計上できません。例えば、私生活に関わる費用が該当します。自宅の住宅ローンやプライベートな外食などが挙げられます。
事業とプライベートで併用しているインターネット費用や電話料金は、按分して経費計上できますが、事業で使っている部分のみが経費として認められるため注意しましょう。
また、土地や建物を手放すときにかかる費用は、経費対象外です。一部経費となるケースもあるため、迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。
不動産投資で青色申告をする際の注意点
初回に青色申告承認申告書を提出していても、毎年の記帳や確定申告も条件を満たさなければなりません。
ここでは、不動産投資で青色申告をする際の注意点を解説します。
期日までに正しく確定申告を行う
確定申告は、原則2月16日から3月15日まで、55万円もしくは65万円の特別控除を適用するためには、期日までに確定申告しなければなりません。青色申告であっても期日に間に合わなければ、10万円控除になります。
また、青色申告に限らず、確定申告をしなかった場合には、無申告加算税が課されます。申告に虚偽があった場合には、過少申告加算税や重加算税の対象となる恐れがあるので注意しましょう。
帳簿やレシートは保管しておく
青色申告の場合、以下の保存期間は7年となっています。
・帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など)
・決算関係書類(損益計算書・貸借対照表など)
・現金預金取引等関係書類(領収証・預金通帳など)
また、請求書や見積書などの書類については5年間の保存期間が義務付けられています。
前々年分の不動産所得(及び事業所得)の金額が300万円以下の場合、現金預金取引等関係書類の保存期間が5年になるなど一部例外はありますが、領収証やレシートなども捨てずに保管しておきましょう。
失業手当や再就職手当がもらえなくなる
不動産投資で青色申告する場合は、事業として行う必要があります。その際、開業届と青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
開業届を提出すると個人事業主となるため、本業で失業した際に、会社員なら当たり前にもらえるはずの失業手当や再就職手当が受け取れなくなるのです。
会社員が副業として不動産投資を行う際は、注意する必要があるでしょう。
まとめ
不動産投資をする場合、青色申告で確定申告すれば、白色申告よりも節税効果が期待できます。しかし、申告するのに帳簿の付け方が複雑で、様々な要件があるので、注意しましょう。
青色申告の条件を満たせるなら、青色申告による確定申告を検討してみてください。