不動産投資での減価償却の仕組みとは?節税になる理由や注意点を知ろう!

不動産投資には、投資目的だけではなく、節税を目的に購入する方もいます。不動産投資に節税をもたらすのが減価償却です。しかし、具体的にどうすれば税金を抑えられるのか、減価償却の仕組みにわかりにくさを感じている方も多いかもしれません。この記事では、効率的に不動産投資をしたい人のために、減価償却の意味や節税につながる仕組み、計算方法を解説します。

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減価償却が不動産投資に与える影響

不動産投資では、減価償却費を経費として計上することで、課税所得を減少させることができ、結果として所得税や住民税の負担を軽減できます。

減価償却費は実際の支出を伴わない経費であるため、キャッシュフローを維持しながら節税効果を得ることが可能です。

一方で、減価償却を行うことで物件の簿価が減少し、将来的に売却する際の譲渡所得税が増加する可能性があります。また、減価償却期間が終了すると、経費として計上できる額が減少し、キャッシュフローに影響を与えることもあります。

このように、不動産投資における減価償却はさまざまな影響を与えるため、適切に理解し、計画的に活用することが重要です。

減価償却の仕組みを正確に把握し、適切な税務処理を行うことで、長期的な資産運用において大きなメリットを得ることができます。

【節税効果】不動産投資における減価償却の仕組み

不動産での減価償却が節税につながるのは、仕組みによるものです。また、全額が対象になるわけではなく、対象ごとにも法的耐用年数が定められているため、減価償却の仕組みについて知っておくことが重要です。

ここでは、不動産投資における減価償却の仕組みについて詳しく解説します。

減価償却が節税につながる理由

不動産は購入して月日が経つと同時に少しずつ古くなっていきます。その「古くなった分」を確定申告で経費にするのが減価償却の考え方です。

この仕組みは、不動産の価値が時間とともに減少することを認識し、その減少分を税務上の経費として計上することを可能にします。

減価償却の開始時にはすでに不動産の購入は終わっているため、申告する経費は実際に生じた出費にはなりません。そのため、減価償却を適切に行えば実際よりも少ない収入を申告でき、結果として納税額を抑えることができます。

課税所得が少なくなるほど節税につながります。減価償却ができれば実際よりも少ない収入を申告できるので、場合によっては黒字のところが減価償却によって赤字計上できるケースもあるでしょう。

また、事業所得などと損益通算することで、さらなる節税効果を狙える可能性もあります。

不動産投資でも全額が対象になるわけではない

不動産投資で購入するものは物件だけではありません。不動産投資をはじめるには、物件と一緒に土地も購入することになりますが、土地は減価償却の対象外となっています。

本来、減価償却は固定資産を経費として処理する仕組みです。なので、土地も減価償却の対象だと勘違いしてしまう人も多いかと思いますが、実際は違うようです。

減価償却の対象となる固定資産は、年月の経過とともに価値が減少するものとされています。土地に関わる費用は対象外ということを覚えておきましょう。

対象ごとに法的耐用年数が決まっている

減価償却が適用されるのは、不動産をはじめ、機械や車両などさまざまな固定資産です。固定資産の種類や素材、構造によって価値の下がり方が異なるため、経費計上できる期間は固定資産ごとに定められています。その期間を耐用年数といいます。

不動産の場合、木造や鉄筋コンクリート造といった構造、住宅や店舗などの用途で、耐用年数と償却率(その年に経費化する割合)が異なります。

例えば、木造アパートは耐用年数22年で償却率は0.046、鉄筋コンクリート造のマンションは47年で0.022という償却率になっています。ただし、中古物件を購入した場合は、新築から経過した時間分を逆算し、耐用年数を計算し直す必要があります。

不動産投資での減価償却計算方法

減価償却は法改正によって仕組みが少しずつ変化しています。特に2007年の税制改正では、不動産を同年3月31日までと4月1日以降のどちらで取得したかで、減価償却の計算方法が異なるため注意が必要です。

ここでは税制改正後の、現在の減価償却で主流となっている定額法と定率法、中古物件を取得した場合の簡便法について、不動産投資における計算方法を確認します。

定額法での計算方法

定額法は、減価償却資産の耐用期間にわたって、毎年均等に償却を行い経費に計上する方法です。

減価償却するには、まず土地、建物、建物附属設備の価格を明確にしなければなりません。土地は減価償却の対象にならないこと、建物と建物附属設備では減価償却の耐用年数が異なるためです。

契約書でそれぞれの価格がわからない場合は、固定資産税評価額をもとにそれぞれの割合を算出します。

減価償却資産の区分をしたら、耐用年数を確認しましょう。法定耐用年数は、国税庁の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」より確認できます。

以下は、定額法で計算した場合の減価償却の例です。

(例)5,000万円の鉄筋コンクリート造の新築マンションの場合

5,000万円×0.022=110万円を47年にわたって経費計上できる

定額法は定率法に比べて、初期の節税効果があまり見込めないこともある点は留意しておきましょう。

定率法での計算方法

定率法は、建物部分の購入費用から前年までの減価償却累計額を差し引いた金額に、定率法の償却率をかけ合わせて計算します。

毎年同じ金額と償却率を用いる定額法と違い、減価償却をするたびに翌年の減価償却額が少しずつ減っていくのが特徴です。運用初期ほど経費にできる金額が多いため、不動産投資の理にかなった計算方法といえるかもしれません。

しかし、2007年4月1日以降に購入した物件、あるいは2016年4月1日以降に購入した建物の設備には、定額法のみが適用されているので注意して下さい。

簡便法での計算方法

減価償却資産の法定耐用年数は、あくまで新品または新築のものを取得した場合のものです。中古資産に適用すると実際の耐用年数と乖離が生じてしまいます。

そこで、中古物件の取得においてよく用いられるのが簡便法です。簡便法では、次の計算によって耐用年数を算出します。

1)法定耐用年数をすべて経過した場合

 耐用年数=法定耐用年数×20%

2)法定耐用年数を一部経過した場合

 耐用年数=法定耐用年数-経過年数(築年数)+経過年数(築年数)×20%

減価償却の選定方法

前述のとおり、減価償却には定額法、定率法、簡便法の3つの方法があり、それぞれ利点や適用条件が異なります。

ここでは、減価償却の選定方法について詳しく解説します。

定額法と定率法の違い

不動産投資における減価償却には、主に定額法と定率法の2つの方法があります。

定額法は毎年同じ金額を償却する方法で、計算が簡単で予測しやすいのが特徴です。一方、定率法は初年度の償却額が大きく、年々減少していく方法で、早期の節税効果が高いメリットがあります。

ただし、平成10年4月1日以降に取得した建物については定額法のみが認められているため注意が必要ですが、設備などの償却資産はどちらの方法も選択可能です。

簡便法の利用条件

中古物件を取得した場合、簡便法を用いて耐用年数を算出できます。

前述のとおりこの方法は、法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に、経過年数の20%を加えて計算します。

ただし、簡便法の適用には条件があり、中古資産を事業用に供するために支出した資本的支出が、再取得価額の50%を超える場合は適用できません。

また、無形固定資産や生物には適用できないため、注意が必要です。

適切な減価償却方法を選択することで、不動産投資の節税効果を最大化できるため、自身の投資戦略に合わせて最適な方法を選びましょう。

減価償却による節税効果が高いのはどんな物件?

減価償却が節税につながる仕組みや減価償却の仕組みについて説明してきましたが、特にどのような物件でその効果が高いのでしょうか。節税効果が期待できるふたつの物件を紹介します。

木造物件

建物は構造により法定耐用年数が異なりますので、構造に注目して取得するのも方法のひとつです。

例えば、鉄筋コンクリート造だと法定耐用年数は47年ですが、木造は22年と、ほかの構造と比べて法定耐用年数が短くなります。建物価格と築年数が同じであれば、法定耐用年数が短い構造の建物を取得した方が減価償却を最大限に活かせます。

築年数が古い物件

築年数の古い物件も減価償却による節税効果が高くなります。先述した簡便法によると、築年数が経過しているほど減価償却における耐用年数が短くなるためです。

特に、法定耐用年数をすべて経過している中古物件は減価償却の税圧縮効果が高くなります。法定耐用年数の20%で耐用年数を見積もるため、例えば法定耐用年数22年の木造であれば4年という短期間で減価償却できてしまうためです。

節税効果が低い物件

不動産投資において、減価償却を利用して節税を図ることは有効な戦略ですが、すべての物件が同じように節税効果を発揮するわけではありません。

まず、新築区分マンションは避けるのが望ましいです。このような物件は、建物価格が高く、法定耐用年数も長いため、減価償却費が少なくなりやすいです。その結果、節税効果が限定的となります。

次に、土地の割合が高い物件も注意が必要です。土地は減価償却の対象外であり、建物部分のみが減価償却の対象となるため、節税効果が低くなります。そのため、土地の割合が大きい物件は避けた方が良いでしょう。

さらに、築年数が浅い物件も節税効果が低い傾向にあります。築年数が浅いと法定耐用年数が長く設定されるため、年間の減価償却費が少なくなります。そのため、築浅の物件は節税目的には向いていません。

減価償却と税務申告

確定申告する際の書類は適切に作成し、減価償却についても適切に記載する必要があり、その後は保管も必要です。

ここでは、減価償却と税務申告について解説します。

確定申告での減価償却の記載方法

確定申告での減価償却は、青色申告決算書(一般用)』の3ページ目にある「減価償却費の計算」欄に情報を記載します。

確定申告で減価償却を記載する内容は以下のとおりです。

  1. 減価償却資産の名称、面積または数量、取得年月日の記入
  2. 取得価額を記載し、償却の基礎となる金額を計算
  3. 定額法や定率法などの計算法に基づき、毎年の減価償却費を計上

減価償却の計算方法には、定額法と定率法がありますが、税務署に届け出をしない場合は定率法(法定償却方法)が適用されます。

反対に、新たに業務を開始した場合や特定の定額法を選択したい場合には届出が必要です。

減価償却費の計算が完了したら、その金額を確定申告書に記載し、必要な書類とともに提出します。

減価償却に関する書類の保管

減価償却に関連する書類は、税務調査や申告の証拠として重要です。

特に青色申告者の場合、固定資産台帳や減価償却資産台帳、現金出納帳などの帳簿は原則として7年間保管する必要があります。

この保管期間は、過去の申告内容を証明するために重要な役割となるため、経理や税務関連の書類は事業年度ごとに整理し、税法の改正に注意を払いつつ保管する必要があります。

また、環境を整備することによって、電子データでの保存も可能です。

このように、減価償却に関する書類を適切に保管することで、税務調査に対応しやすくなり、過去の申告に対する追徴課税を回避することができます。

減価償却に関する書類の保管は、適切な税務管理のために欠かせない手続きです。

不動産投資で減価償却を活用する際に注意したいこと

減価償却と聞くと耳慣れない方には難しく感じられますが、定額法の計算式はシンプルで、意外と簡単に減価償却を活用できるでしょう。

しかし、減価償却ではいくつか注意したいポイントがあります。

売却時の税金が高くなる可能性がある

不動産投資では、安定した家賃収入(インカムゲイン)に加え、物件の売却による譲渡益(キャピタルゲイン)も大きな魅力となっています。このとき気を付けたいのが譲渡益にかかる税金です。

不動産の売却で得た利益は、譲渡所得として所得税の対象となります。譲渡所得は、物件の購入費用からこれまで計上してきた減価償却費を売却価格から差し引いて計算されます。そのため、減価償却の恩恵を受けてきた人ほど譲渡所得が大きくなり、高い税金を課されるおそれがあります。

計上できる期間が決まっている

減価償却は、国の定める耐用年数によって活用できる期間が決まっています。

そのため、特に中古マンションを購入すると、耐用年数がほとんど残っていないということもあります。中古マンション購入の際は、残りの耐用年数が過ぎてしまえば減価償却を活用できなくなり、課税額がふくらむことを想定しておく必要もありそうです。

減価償却については、減価償却後に起こりやすいデッドクロスにも注意しておきましょう。デッドクロスとは、ローンの返済額が減価償却費を上回ることをいいます。ローンの元金部分は経費にできないため、節税効果が薄まり資金繰りの悪化にもつながりやすいです。

新たな不動産を購入して運用先を増やす、リフォームなどで付加価値をつけて家賃をあげる、物件の売却を検討するなど、耐用年数後の対応や、デッドクロスの対応はあらかじめ検討しておきましょう。

白色申告と青色申告で違いがある

減価償却を利用するかどうかに関わらず、不動産投資で収入を得たら、1年の収入を確定申告によって申告します。

確定申告には大きく2種類あり、白色申告と青色申告から選びます。複式簿記が必須になるなどある程度の会計知識を求められる青色申告ですが、最大65万円の控除をはじめ、納税者にさまざまな恩恵があります。

なかでも給与所得などの黒字と相殺できる損益通算や、赤字を翌年以降(最長3年間)繰り越せる繰越控除は、青色申告を行う大きなメリットといえるでしょう。

一方、白色申告はシンプルに書類を作成できるため、確定申告に時間をかけたくない人にはおすすめです。しかし、損益通算や繰越控除といった青色申告の特典を利用できません。

青色申告と白色申告の違いを十分に理解して、どちらが自分にとってメリットが大きいか、検討しておきましょう。

ちなみに青色申告を選択するには、申告したい年の3月15日までに、税務署へ「青色申告承認申請書」の提出が必要になります。確定申告は前年1年の所得を申告するため、思いたったときには手遅れになることもあるので要注意です。

税務調査が入る可能性もある

不動産投資においても税務調査が行われることがあります。時期については明確に公表されませんが、一般的には4月~5月ごろ、または7月~11月ごろに行われることが多いです。税務調査があった場合でも、申告内容が適切であれば問題ありません。

しかし、法定耐用年数や償却方法などに誤りがある場合は税務調査で指摘を受けることがあります。

計算ミスや申告漏れなどがあった場合は、ペナルティとして納税額に上乗せして支払わなければならない可能性もありますので、正しく申告することを心がけましょう。

デッドクロスに注意する

不動産投資において、減価償却を活用することは節税効果を得るために重要ですが、デッドクロスに注意する必要があります。

デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態のことです。この状態になると、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、実際のキャッシュフローが悪化し、最悪の場合、黒字倒産に陥るリスクがあります。

デッドクロスが発生する原因は、減価償却費が毎年定額で計上されるのに対し、ローンの元金返済額は年々増加するためです。特に築年数の古い物件や木造の物件を購入する際には、デッドクロスのリスクが高まります。

不動産投資を成功させるためには、デッドクロスのリスクを理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。

関連記事⇒不動産投資でデッドクロスにならないためには?発生原因や10個の回避方法を紹介!

減価償却を利用して不動産投資で節税するポイント!

減価償却を活用した不動産投資での節税のポイントをふたつ紹介します。

土地と建物の価格を分けて減価償却費を計算しておく

先述したように、減価償却の際には、減価償却ができない土地と、減価償却の対象になる建物や建物附属設備を分ける必要があると説明しました。

この区別を怠ると、減価償却費の見積もりが実際の金額と大きく乖離してしまう可能性があります。

また、建物部分の減価償却費を正確に計上することで、節税効果を最大限に活用できるため、土地と建物の正確な価格を知って計算するようにしましょう。

土地と建物の正確な価格を知るためには、売買契約書や譲渡対価証明書の確認、固定資産税評価証明書の取得、不動産鑑定士による評価などが有効です。

これらの書類や専門家の評価が入手できない場合は、販売元や不動産仲介業者に直接問い合わせて、正確に把握できるようにしておくと良いでしょう。

出口戦略を立てて不動産投資をする

不動産投資においては、減価償却による節税効果だけでなく、出口戦略を適切に立てることが重要です。節税に固執してしまうと、リスクの高い物件を所有し将来的な転売が困難になる可能性があります。

出口戦略には、物件の売却や長期保有、改修後の短期売却など、さまざまな選択肢があります。これらを組み合わせることで、リスクを分散し、投資の成功確率を高めることが可能です。

適切な物件選びや保険加入などのリスク対策を講じつつ、将来の利益を見据えた投資計画を立てることが重要です。

節税効果を最大限に活用しながら、収益性とキャッシュフローのバランスを保つことで、長期的に成功する不動産投資が実現できます。

減価償却費を最大化するための物件選び

減価償却費を最大化するには、適切な物件選びが重要です。

木造や軽量鉄骨造など、耐用年数が短い構造の物件を選ぶことで、毎年の減価償却費を大きくできます。

さらに、設備や内装にも注目し、減価償却の対象となる資産を多く含む物件を選ぶことで、節税効果を高められます。

このように、減価償却費を最大化するためには、耐用年数が短い構造の物件や設備や内装が充実している物件を選ぶことが重要です。

減価償却を利用したキャッシュフローの最適化

減価償却は、実際には現金の流出を伴わない費用のため、減価償却費を計上することで、課税所得を減らしながら手元のキャッシュを確保できます。

特に、不動産所得がマイナスになった場合、損益通算によって他の所得から差し引くことができ、大きな節税効果が得られます。

ただし、過度な節税策は税務調査のリスクを高める可能性があるため、適切な範囲で活用することが重要です。

また、将来的な修繕費用や空室リスクに備えて、節税効果で得られた資金を計画的に積み立てることで、長期的な資産運用の安定性を高めることができるでしょう。

まとめ

不動産投資で効率よく収益をあげたいなら、減価償却を活用して節税に備えるのがおすすめです。不動産の種別や構造ごとに異なる耐用年数と償却率を把握しておけば、自分でも簡単に減価償却費を計算できます。

ただし、減価償却は期限のある節税方法ですから、耐用年数が過ぎたあとのキャッシュフローも想定しておくことが大切です。