不動産投資の返済比率の計算方法
返済比率は以下の計算方式によって求められます。
返済比率=毎月のローン返済額 ÷ 満室時の毎月の家賃収入 × 100
例えば、満室時で年間800万円の家賃収入があり、金融機関に年間320万円の返済をしている場合は以下のとおりです。
返済比率(%)=320万円÷800万円×100=40%
不動産投資を始める前に知るべき返済比率の知識
先ほど計算した返済比率はあくまでも目安であり、いつ比率が上昇するかわかりません。そこで、ここでは返済比率について知っておきたいポイントを2つ解説します。
返済比率は変化する
物件の購入前に算出した返済比率と、購入時での返済比率で変化することを理解しておきましょう。
金利が上昇すれば、返済比率にも影響が及びます。そのほか、空室の増加および家賃の下落も賃料収入の減少に繋がることから、返済比率に大きく関わってくるでしょう。
返済比率が低ければフルローンでもリスクは低い
不動産投資は銀行からの融資を利用しますが、フルローンやオーバーローンでの借り入れも可能です。
中には、「フルローンやオーバーローンだとリスクが高いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、満室収入に対する返済比率を抑えることでリスクを低減できます。
返済比率の目安は50%が妥当!
気になる返済比率の目安ですが、おおよそ50%を目指すとよいでしょう。返済比率が高いほど手持ちの資金が不足し、返済比率が低いほどゆとりのある経営ができます。
返済比率が高い(50%以上)リスク
返済比率が高くなると手元の金額が少なくなってしまうことから、突発的な支出に対応できない事態になりかねません。具体的にどのようなキャッシュフローとなるのか、返済率60%でシミュレーションをしてみましょう。
満室時の家賃収入 | 150万円 |
毎月の経費(20%) | -30万円 |
空室による損失(空室率15%) | -22.5万円 |
毎月のローン返済(返済比率60%) | -90万円 |
手元に残る金額 | 7.5万円 |
満室時の家賃収入が150万円あったとしても、空室時の損失やローン返済、経費等を差し引くとわずか7.5万円にしかなりません。
そのため、予測できない支出(設備の故障やメンテナンスなど)が生じた際に手持ち金額で賄うことが困難になってしまいます。安定した不動産経営を目指すためにも、返済比率は50%未満となるように心がけましょう。
返済比率が高いリスクについては、次の注意点も考慮する必要があります。
空室に注意が必要
返済比率は、毎月のローン返済額を「満室時」の毎月の家賃収入で割って求めています。空室によって、返済比率の満室という前提が狂ってしまうと、資金繰りや返済が苦しくなるでしょう。最悪の場合は、赤字の状態で、毎月ローン返済を行わないといけない危険性もあります。
空室が出た場合は、早急に入居者を確保したり、返済比率を現状で計算しなおし、資金繰りや返済可能性を確認したりするなどの手立てが必要です。
金利上昇に注意が必要
返済比率を考える際には、金利上昇にも注意が必要です。ローンの返済を変動金利で設定している場合は、返済期間中に金利が変動します。当然、金利が上がれば毎月の返済額は増えます。現状が低金利化であることを考えると、今後は金利が上昇する可能性も高いです。
金利が上げられる際は、ニュースや新聞などで報道がされます。常に金利の上昇がないかを注意しておく必要があるでしょう。また、金利が高くなった場合は、返済比率の見直しも行いましょう。
想定外の支出に注意が必要
不動産投資では常に修繕費のリスクが伴います。修繕費は支出の中でも大きく、経年劣化による修繕はもちろん、退去による内装工事やクリーニング代も必要です。
想定外の支出が大きくなると、返済が苦しくなるなどの支障が生じます。想定外の支出に備えて、少しずつ積み立てをしておくなど、普段からの計画的な資金繰りが重要です。
返済比率が50%未満だとゆとりある経営が実現できる
返済比率を40%〜50%程度に設定すれば、空室の発生による損失が出ても、手元に一定の金額を残すことができます。
返済率40%でシミュレーションをすると次のとおりです。
満室時の家賃収入 | 150万円 |
毎月の経費(20%) | -30万円 |
空室による損失(空室率15%) | -22.5万円 |
毎月のローン返済(返済比率40%) | -60万円 |
手元に残る金額 | 37.5万円 |
先ほどの返済比率60%の時よりも手残りが、30万円も増えました。これだけの手残りがあれば、空室や急な修繕などにも対応することができます。
この結果を踏まえても、返済比率は低ければ低いほど安定するといえるでしょう。返済比率が50%未満の場合には、次のようなメリットも見込めます。
キャッシュフローに厚みが出る
「キャッシュフローに厚みが出る」ことは、資金繰りに余裕ができるということです。修繕費などの想定外の支出がでた場合にも、容易に対応できます。
また、余ったキャッシュをほかの投資に分散させることも可能です。新たな投資を行うことで、リスク分散などの新たなメリットを生み出すことになります。
空室が出ても安心できる
不動産投資には、必ず空室リスクがともないます。しかし、返済比率が50%未満であれば空室が出ても焦る必要はありません。
返済比率が50%未満の場合はキャッシュに余裕があります。たとえ空室が出ても、入居者を確保するまで資金繰りを回しやすくなり、返済が苦しくなることもありません。
余裕をもって入居者募集ができるため、入居者の属性やニーズなど、戦略面に時間をかけることができます。
返済比率を50%以下に抑える4つの方法!
返済比率は50%以下が理想であることを理解したうえで、どうすれば抑えられるのかわからない人も多いですよね。
そこで、ここでは返済比率を50%に抑える方法を4つ、紹介します。
1.物件購入時の自己資金を多めに用意する
物件購入時に頭金として自己資金を多めに入れることで、金融機関からの借入額を減らせるほか、毎月の返済額と返済比率を下げることができます。
ただし、自己資金を多く入れてしまうと不動産投資のメリットでもある、少ない資金で大きな収益を得るレバレッジ効果が弱まってしまうので注意しましょう。
2.繰り上げ返済をして毎月の返済額を減らす
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済額と別に借入金の一部(または全額)を前倒しで支払うことです。
繰り上げ返済をしたお金はローンの元金部分に充当されるため、その元金に付随する利息に対して支払いがなくなります。そのため、繰り上げ返済をすることで総返済額を減らせるほか、返済比率を下げるのにも有効です。
なお、不動産投資ローンの繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。
■期間短縮型・・・毎月の返済額は変えずに返済期間を短くする方法
■返済額軽減型・・・返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす方法
このうち、期間短縮型は返済期間が短くなることで、その分利息を支払う期間が短くなる一方で返済比率を下げる効果は期待できません。それに対し、返済額軽減型は返済額が下がることからキャッシュフローに余裕が生まれ、結果として返済比率を下げられます。
3.返済期間を延長する
融資期間が長いほど、ローン返済にかかる時間が長くなり、毎月の返済額を減らすことができます。ただし、返済期間の延長をするには金融機関の審査に通過しなければなりません。
その際、主に以下の項目が審査対象となります。
・物件の築年数
・物件購入者の年収
・保有している金融資産など
審査次第では延長が認められないことがあるほか、延長によって金利負担が増え、総返済額も大きくなるため注意が必要です。
4.金利を下げる
返済比率を下げるには、金利を下げ返済額を減らすことが大切です。そのため、借入先を検討する際は必ず複数の金融機関を比較検討し、金利の安いところを探すように心がけましょう。
また、現在利用している金融機関に乗り換えを前提とした交渉をすることで、金利を下げられるでしょう。
まとめ
不動産投資における適切な返済比率についてお伝えしました。キャッシュフローに対する影響を避けるためには返済比率50%以下をキープし、ゆとりある運営を心がけることが大切です。
また、返済比率を低くするためには最初の物件選びもとても重要です。自己資金とのバランスを考慮して、条件に見合った物件を探すようにしましょう。