利回りの最低ラインは何%?不動産投資で損をしないためのポイント

不動産投資を始める際に、利回りを試算しても「結局その数値が良いか悪いかわからない」と躓いてしまう人は多いものです。そこで今回は、実際の収益性と予測にギャップが生まれて損をすることのないよう、不動産投資の利回りで意識しておきたい「最低ライン」を紹介します。

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利回りの最低ラインの目安は「5%〜10%」

「不動産投資で利回りを算出しても高いか低いかよくわからない」と戸惑う場合があります。結論からいうとアパートやマンションの利回りの最低ラインは5%、または10%です。

 

5%に満たないと投資をしてもリターンが期待できないと判断され、多くの投資家が撤退します。不動産投資の収益率を正確に算出するには、表面利回りの他、実質利回りを合わせてチェックした方が良いでしょう。

 

この記事では利回りの最低ラインや不動産投資で損をしないためのポイントを解説します。

 

不動産投資の利回りとは?

利回りとは投資した金額に占める収益の割合で、不動産投資では物件の購入額と家賃収入の比率を表します。投資対象の収益性を測る際の判断材料の一つですが、利回りには複数の指標があることに注意を払いましょう。

 

具体的には表面利回り、ネット利回り、投下資本利回り、総合収益利回りの4つです。物件同士の収益性を比較しようにしも指標が揃っていないと適切な結果は得られません。

 

利回りは不動産投資の収益性を測る重要な数値には間違いないとはいえ、信頼し過ぎるのは危険です。利回りを計算式では満室時の家賃収入が続くと仮定していて、空室が発生するリスクを考慮していないためです。

 

実際に不動産のオーナーになると実感しますが、年がら年中すべての部屋が入居者で埋まっているとは限りません。

 

家賃収入の変動を考慮すると、実際の利回りは算出した利回りを下回る場合が多々あります。利回りの示す意味を理解した上であくまでも判断の目安程度に捉えて過度に頼り過ぎないようにしましょう。

利回りの最低ラインの目安は「5%〜10%」

不動産投資における利回りの最低ラインとして挙げられるのが5%または10%です。最低でも5%をクリアしていない場合、積極的に投資する人は少ないでしょう。

 

ただし、妥当といえる最低ラインは、物件のあるエリアや物件の状態などによっても変わります。物件の立地や築年数などを含め、総合的な見地から利回りが妥当かどうか判断することが大切です。

 

利回りの最低ラインに違いが出やすい代表例として、次の4つのパターンがあります。

 

  • エリアによる違い
  • 建築年数による違い
  • 建物の構造による違い
  • 用途による違い

 

それぞれ、なぜこのような違いが出てくるのか説明します。ポイントを把握し物件の見極めに活かしましょう。

都心は低く、地方は高い

不動産投資における利回りは、物件のあるエリアが都心であるほど低く、地方になるほど高くなる傾向にあります。当然、利回りの最低ラインも都心ほど低くなるのです。

このような違いが出るのは、物件の購入価格は都心に近いほど高額になるものの、家賃相場については、都心と地方を比較しても大幅に差が出ることはないからです。

基本的に利回りは、物件の購入価格と家賃額によって決まります。例えば、家賃額が同じであるなら、物件の購入価格によって利回りに影響があります。

物件の購入価格

不動産投資の利回り

高額

低い

リーズナブル

高い

以上のとおり、都心と地方においては、家賃はほぼ変わらない一方で物件価格の相場の差が大きいため、利回りにも違いが出てきます。

新築は低く、中古は高い

不動産投資における利回りは、新築の物件では低く、中古の物件であれば高くなる傾向にあります。

これも都心と地方の物件で利回りの差が出るのと同様、物件価格の差によるものです。

新築物件は、中古物件に比べると物件を購入するときの費用が高額になります。もちろん新築物件は中古物件に比べて、多少は高い家賃を設定できますが、中古物件との購入時の価格差をカバーするほど家賃を高く設定することはできません。

あまり家賃を高く設定し過ぎると、今度は入居者を集めるのに難航するようになり、利益を出すのが難しくなるからです。

その結果、新築の物件においては、中古物件よりも利回りは低くなってしまうのです。

建物の構造による違い

不動産の利回りは建物の構造が木造(鉄筋コンクリート)かどうかにも左右されます。価格が低めの木造物件はエリアや新築・中古の別と同様、購入コストの減少分が賃料の低下分を上回ることから利回りは高いです。

 

さらに融資が受けやすく、修繕や改良が必要な時でも修理コストを抑えやすいことから、不動産投資の初心者に推奨する物件です。日本では戸建てやアパート、3階建てまでの低層住宅において木造がよくみられます。

 

RCは鉄筋の型枠にコンクリートを流し込んで完成した材料を用いる建築手法です。強靭で災害に強く耐久性が高い反面、高価で資金力がないと手に入りづらい側面があります。

 

RCは地震や家事への備えから人気があり、家賃を高めに設定しても入居者は集まりますが、購入コストの高さによって利回りは低めです。耐用年数が長めで長期にわたり資産価値を維持しやすく、長期的に考えれば収益性が高いタイプでもあります。

 

RCはマンションやビル、4階建て以上の住宅など大規模な建造物で積極的に採用されています。

 

用途による違い

不動産の利回りは居住用物件のアパートやマンションよりも、事業用の建造物の方が高くなる傾向にあります。家賃に加えて事業で得た収益の一部を徴収できるため、賃料の設定を高めにしても入居者は集まるからです。

 

居住用物件はエリアごとに大体の相場が決まりますが、事業用物件は賃借人の資金力に応じた柔軟な料金設定が可能です。「どうしてもこの場所で事業を営みたい」という強い希望があれば、近隣より高めの金額でも相手方は契約に応じるでしょう。

 

集客力の高い駅前や商業エリアに構える物件は、立地の優位性を材料として家賃交渉を有利に進められます。将来的に再開発の話が出ているエリアの場合、資産価値の上昇後に売却に出せば、キャピタルゲインで大きな一時金を得られるのも特徴です。

 

事業用の物件は腰据えて長く事業を営もうとして、入居期間が長くなる傾向があります。オーナーの視点では長期的に安定した利益が入ることに他ならず、おすすめの投資対象です。

不動産投資の目的によっても最低ラインは異なる

どの数値を利回りの最低ラインに設定するかは、不動産投資の目的次第で異なります。中・長期的な視点で収益を上げたい場合と、短期的に利益を得る目的である場合とでは、利回りの最低ラインの考え方を変える必要があります。

①中・長期的な視点で収益を得たい場合(インカムゲイン)

インカムゲインとは、資産を保有していることで得られる利益のことです。不動産投資であれば、物件を保有している期間に得られる家賃収入がインカムゲインに当たります。

中・長期にわたって収入を獲得するインカムゲインの場合、利回りが低くても需要がある都心や駅近物件・新築を購入したほうが、安定して賃料を得やすくなります。都心の駅近にあり、生活環境が整っている地域にある物件は、賃貸の需要が多くなるからです。

このような理由から、インカムゲインでは、利回りが低い物件の方が安定した収入が見込めるため、最低ラインは低めで設定しても良いでしょう。

②短期的に収益を得たい場合(キャピタルゲイン)

キャピタルゲインとは、資産を売買し、その値上がり幅で得られる利益のことです。不動産投資においては、購入した物件を売却したときの差益が該当します。

物件を短期間で売却し、キャピタルゲインを得ることが主な目的であれば、利回りにこだわるよりも、すぐに買い手がみつかる物件かどうかで判断することが重要です。

売却しやすさを追求し、立地が良く設備や環境が整っている物件を選ぼうとすると、利回りという点では低い物件になりがちだからです。

このような理由から、キャピタルゲインの投資なら、利回りの最低ラインはあまり重視せず、物件を検討することがポイントとなるでしょう。

【不動産投資】最低ラインを見極めるための4種類の利回り

不動産投資において最低ラインを見極めたいときは、4種類の利回りについて考える必要があります。物件の収益性を見極めるためにも、以下の4項目をチェックしておきましょう。

表面利回り

表面利回りは、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。物件価格に対してどの程度家賃収入を期待できるか算出する手法です。物件情報で単に「利回り」と表記される場合は、一般的に表面利回りを指しています。

表面利回りの計算式は、次の通りです。

表面利回り=想定される年間家賃収入÷物件の購入価格

満室状態をベースにすることが多く、スピーディーに物件の収益性を判断したいときや最大化の範囲を見定めたいときに役立ちます。

ネット利回り

ネット利回りは、「実質利回り」、「NOI(Net Operating Income)利回り」と呼ばれることもあります。家賃収入から経費を差し引いた利益が、物件価格のうち、どの程度を占めるか計算する手法です。

計算する際は、差し引く経費の項目に注意してください。登記にかかる手数料や不動産会社に支払う仲介手数料など購入時にかかる諸費用はもちろん、定期的に発生する都市計画税・管理費・修繕積立金等も含まれます。

ネット利回りの計算式は、下記の通りです。

ネット利回り=年間家賃収入-年間経費÷物件の購入価格+購入時諸経費

営業純利益をベースにパーセンテージを算出する方法のため、空室リスクや経費も加味できることがポイントです。

投下資本利回り

投下資本利回りは、「ROI(Return On Investment)利回り」と呼ばれることもあります。事業活動のために投じた金額がどの程度の利益を生み出すか計算する手法であり、不動産投資以外のビジネスでも多分に活用されています。

前述したネット利回り(NOI利回り)は、実質的な現金での手出しがないことから、減価償却費や修繕積立費が加味されていません。一方の投資資本利回り(ROI利回り)では、計算式に含む点が異なります。

投下資本利回りの計算式は、下記の通りです。

投下資本利回り=年間家賃収入-年間経費÷購入総額(物件価格+諸費用)×100


時間の経過とともに物件の価値が目減りすることも含めて、詳しい利回りを計算したいときに便利な手法です。

総合収益利回り

総合収益利回りは、最終的に売却することも視野に入れて利回りを計算する手法です。物件の所有期間全体における賃料収入と維持管理コストを計算し、収支総額に売却収益を加えることで、トータルでの収益を試算できます。

総合収益利回りの計算式は、下記の通りです。

総合収益利回り=所有期間全体の収益(賃料収入-維持管理コスト+売却収入)÷投資した自己資金金額

総合収益利回りを参考にする場合、不動産売却(物件を手放す)タイミング次第で譲渡所得税および住民税が大きく異なることに注意しておきましょう。

譲渡所得税は、長期の場合税率が20%、短期の場合は税率が39%と大きな開きがあります。なかには総合収益利回りにかかる譲渡所得税対策として、取得から5年以内に売却する前提で物件選びをする投資家もいます。

最低ラインを考えるときは表面利回りとネット利回りを重視しよう

前述のように、不動産投資に関する利回りは複数の種類や考え方があります。最も手軽かつスピーディーな種類は、公開されている物件情報から試算できる表面利回りです。

投資用物件であればあらかじめ情報公開されていることが多いため、専門知識がなくとも表面利回りであれば計算できます。

収益性をより詳しく知りたいときは、ネット利回りの考え方を採用しましょう。万が一、空室が長く続いたときのリスクを算出しやすく、投資を始めてから「思っていた収益と違った」と後悔する事態を防げます。

まずは表面利回りを計算し、良さそうだと思える物件があればネット利回りを計算して検討する流れが理想です。ネット利回りを正確に計算できるかどうかが、投資成否の分かれ目となります。

資産価値を左右する3つのポイント

利回りが良いからとはいえ、高い収益性が見込めるとは限りません。ただ購入費用が安すぎるために数値が良く見えるのかもしれません。表面的な利回りが良くても需要がなく、売り手がつかないと無意味です。

 

また高い利回りを誇張する物件は、アクセスの悪さや設備の故障などの難点が裏に隠れている可能性があります。一つの指標にまどわされず、複合的な視点をもち幅広い視野で物件の収益性を測りましょう。不動産の資産価値を左右する3つのポイントを紹介します。

立地や形状

不動産の立地は投資先を決める際に最重要となる項目の一つです。駅は徒歩圏内か、近隣に商業施設や病院、郵便局などはあるかなど生活する上で不便さはないか住人の視点で考えましょう。

 

さらに一戸建ての場合、広さや形状、接道状況、法律の規制も重視したい検討材料です。住宅の建設地にするには間口が広い整形地が土地の有効利用を考えると適しています。

 

不整形地はどうにも活用しようがない中途半端な部分のせいで使い勝手が悪く、資産価値は低くなります。間口が広く、奥行きも十分な長方形の土地は住宅地におすすめです。

 

不動産投資は物件と土地をセットで購入するとは限らず、更地を取得して自己資金でアパートやマンションを建設しても問題ありません。

 

さらに都市計画上の用途の指定がないかどうか確認する必要があります。特定の用途にしか利用できない土地は必然的に購入者の範囲が狭まり、つられて資産価値も低くなるでしょう。

 

反対に制限がなくさまざまな用途が認められる土地は取得後の価値の高さから価格が吊り上がる傾向にあります。

築年数

築年数は購入者や入居者が物件を購入する決め手となる重要な要素です。仮に外観や内装が全く同じ物件が2つあった場合、建築確認から年数が経過していない、新しい物件に住みたいと思う人が多くなるでしょう。

 

国は物件の資産価値を表す基準として法定耐用年数という指標を設けています。例えば木造戸建ての耐用年数は22年です。22年を過ぎると会計上の資産価値がほぼゼロになると示しています。売却の査定を依頼しても値がつかないため、経営したマンションを売りに出しても収益にはなりません。

 

不動産の築年数と資産価値の関係では木造戸建ては建築後10年で半分ほどの価値に低下します。一方のマンションは購入後1年で大きく下落するもののその後の減少率は木造より緩やかで10年後も70~80%の資産価値を保ちます。

 

築年数が浅いマンションやアパートは設備が整っていて、内装も綺麗なため、新築時と大きく変わらない価格での取引が期待できます。

耐震性や地盤

地震大国日本において、建物の耐震性は資産価値を左右する重要な要素です。1980年以前に建設された建物は基準が緩い旧耐震基準を基に設計されているため、大規模な地震が起きた時倒壊するリスクがあります。

 

したがって資産価値は低く、安値で購入しても危険だと判断して入居者に敬遠される可能性が高いです。

 

1981年に制定された新耐震基準では震度5の地震に耐え、震度6〜7でも崩れ落ちない十分な強度を誇ります。国が定めた基準をクリアした優良住宅は安心して住めるため、入居者は家賃を負担して住みたいと思うでしょう。

 

豪雨を契機とした水害や土砂災害が頻発する我が国では、地盤も物件の資産価値を測る重要な要素です。浸水の影響を避けられる高台にある物件の需要が高いのは自明の理です。

 

地盤が弱いとされる埋立地は地震発生時に液状化の恐れがあるため、価値が低くなる傾向があります。その他に注意が必要な土地の種類は、地盤沈下を起こす切土と盛り土の境目にある土地や、有効面積が少なく危険な崖下にある土地です。

【不動産投資】利回り以外の重要な指標

不動産投資で投資すべきか正しい判断を下すためには利回り以外の指標にも目を向けなくてはいけません。ここでは参考になる総収益率とイールドギャップの定義や算出方法を解説します。

総収益率

総収益率とは表面利回りからさまざまな要素を調整した最終的な利回りを表し、総営業収益÷トータルの投資金額で算出します。複雑な計算が必要となるため、順を追ってみてみましょう。

 

表面利回りは紹介した通り「常に満室だと仮定した時の家賃収入÷物件の購入費用×100%」です。

 

次に空室や滞納で家賃を確保できない分を加味した「実効総収入」を算出します。表面利回りの1年間満室だった時の家賃収入のうち、徴収できるか不確実な分を除外しましょう。

 

さらに実効総収入から固定資産税や管理費、修繕費などのランニングコストを控除して、純営業利益を算出します。会計上の用語で税引前当期純利益と呼ばれる指標です。

 

金融機関から融資を受けている場合、ローンの元金や利息を控除するのを忘れないようにしてください。最後に純営業利益を諸経費を含めた購入費用で除すことで、実質的な利回りを把握できます。

イールドギャップ

イールドギャップとは金融機関からの借り入れで自己資本を超える運用ができる「レバレッジ効果」を測定する指標です。

 

簡易的な計算では、表面利回りと借り入れ金利の差をとれば測定できます。

 

表面利回りが5%、借り入れ金利が2%ならイールドギャップは3%です。差分が大きくなるほど融資を有効活用して効率的に利益を上げていることを表します。表面利回りではコストを加味した手元に残る利益額を算出できません。

 

より正確な値を知りたい人は実質利回りと借り入れ金利の差分をとると良いでしょう。イールドギャップの目安は中古・新築ともに3%だといわれています。

 

上記の算定式では金利しか考えていませんが、借り入れによる影響を正確に算出するには期間や金額を考慮に入れなくてはいけません。年間の返済額をローンの残高で除してローン定数を把握することで、レバレッジ効果の正確な算定が可能です。

まとめ

不動産投資における利回りの最低ラインは5~10%です。この基準を下回った(上回った)事実をもって投資すべきか判断を下すのは早計です。

 

あくまでも目安程度にとらえ、イールドギャップや総収益率なども鑑み、資金を投じる価値があるか吟味しましょう。

 

資産価値の正確な把握には、投資の収支以外にも、立地や建築年数、災害に対する強度が関わることも忘れてはいけません。