目次
「投資マンションを売ったら、どのくらい税金がかかるの?」
「マンションを売ると、税金がっつり取られそうで怖い…負担は減らせるの?」
投資マンションの売却で利益が出た場合、物件の条件に応じて100~400万円ほどの税金がかかります。
想定していたより高くなりそうだと、冷や汗をかいている方も、多いのではないでしょうか。とはいえ、実際に支払う税金の額は、マンションの購入価格や売却価格などの条件によって異なります。
そこでこの記事では、平均的な条件を例に、マンションの購入価格と売却価格に応じた税金の目安額を算出し、早見表を作成しました。
しかし、これはあくまでも、平均的なマンションの購入価格と売却価格を例にとった、税金の目安額です。条件が異なれば、税金額は100万円以下で済む場合もあります。
マンション売却時の税金は、現実に近い形で試算することが重要です。そうすることで、今後のお金の算段ややりくりがしやすくなり、投資での資産形成がさらに効果的になります。
そこで、以下の税金について、それぞれいくらかかるのか、ご自身のマンションの詳細な条件を加味して、実際に計算することをおすすめします。
・印紙税 ・譲渡所得税(所得税・住民税) ・登録免許税(抵当権抹消費用) ・消費税(※2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合のみ) |
この記事では、投資マンションの売却にかかる税金について、その種類や計算方法を解説しています。モデルケースを例に、分かりやすく説明するので、手順に従って、誰にでも簡単に計算できますよ。
合わせて、投資マンションの売却でできる税金対策と、税金の支払い方やタイミングについても解説します。
この記事を読むと分かること |
・投資マンションの売却にかかる税金の種類と計算方法 ・複雑な譲渡所得税のシミュレーション ・投資マンションの売却でできる4つの税金対策 ・投資マンションの売却にかかる税金の支払い方とタイミング |
この記事を読めば、投資マンションの売却にかかる税金がいくらで、いつ、どのように支払わなければならないかが分かります。
さらに、投資マンションの売却の際にできる税金対策を知り、実行することで、税金の負担を抑えることもできるでしょう。
投資マンションの売却にあたり、税金の支払いが気になっている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.【売却額別の早見表で確認】投資マンションの売却に必要な税金
投資マンションを売却して利益が出た場合、税金を支払わなければなりません。
実際に支払う税金の額は、マンションの購入価格や売却価格などの条件によって異なりますが、100~400万円ほどかかると、想定しておいた方がよいでしょう。
「とりあえず今すぐ、大体どのくらいかかるか、目安を知りたい!」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、平均的な条件を例に、マンションの購入価格と売却価格に応じた税金の目安額を算出し、早見表を作成しました。
早見表を使うと、ご自身のマンションの購入価格と売却価格から、税金の目安額が分かります。
1つ目の早見表は、マンションの所有期間が8年の場合の、税金の目安額をまとめています。
2つ目の早見表では、マンションの所有期間が12年の場合の、税金の目安額をまとめています。
早見表の場合、マンションの売却にかかる税金は、以下のような内訳です。
早見表の条件でマンション売却した場合にかかる税金の内訳 |
・印紙税:1万円 ・譲渡所得税:マンションの価格によって異なる ・登録免許税:2,000円 ・登録免許税の手続き代行料:1万円 |
いずれも、購入時は新築で、鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションという前提です。
なお、表内にも記載している通り、購入価格を売却価格が下回った場合、すなわち売却で利益が出なかった場合には、譲渡所得税がかかりません。
そのため、表内の空欄部分の条件でかかる税金は、今回の条件下では、全て2万2000円となります。
マンションの売却にかかる税金の種類については、「2.投資マンションの売却にかかる税金は主に3種類」でくわしく解説しますので、そちらをご確認ください。
2.投資マンションの売却にかかる税金は主に3種類
「1.【売却額別の早見表で確認】投資マンションの売却に必要な税金」では、投資マンションの売却時にかかる税金を試算しました。
しかし、これはあくまでも、平均的なマンションの購入価格と売却価格を例にした、税金の目安額に過ぎません。
ご自身のマンションを売却した際の税金額を知りたい場合には、3つの税金について、それぞれどのくらいかかるのか、実際に計算する必要があります。
投資マンションの税金にかかる、主な税金の計算式は、以下の通りです。
印紙税+譲渡所得税(所得税・住民税)+登録免許税(抵当権抹消費用)+登録免許税手続き代行料 |
2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合には、ここに消費税も加わります。
そこでここからは、投資マンションの売却にかかる、以下3種類の税金について、解説していきます。
・印紙税 |
消費税については「2.投資マンションの売却にかかる税金は主に3種類」の最後で解説します。気になる方は、そちらも併せてチェックしてくださいね。
2-1.印紙税
投資マンションの売却に必要となる1つ目の税金は、印紙税です。
▼印紙税とは
マンションの売買が成立した際に、売主と買主が交わす「売買契約書」に貼付する印紙代。 |
印紙税は、マンションの売却価格によって異なります。
ご自身のマンションの売却価格から、いくらの印紙が必要になるか、確認しましょう。
マンションの売却価格 (契約金額) | 印紙代 | 印紙代 (2024年3月まで軽減措置) |
500~1,000万円 | 1万円 | 5,000円 |
1,000~5,000万円 | 2万円 | 1万円 |
5,000万~1億円 | 6万円 | 3万円 |
1~5億円 | 10万円 | 6万円 |
2024年3月までは、印紙税に軽減措置がなされており、本来の半分ほどの印紙税の支払いで済みます。
2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)
売却に必要となる2つ目の税金は、譲渡所得税です。
▼譲渡所得税とは
マンションの売却で利益(譲渡所得)が出た際に、支払わなければならない税金。一般的に、所得税と住民税の2つを総称して、譲渡所得税と呼ぶ。 |
譲渡所得税がかかるのは、売却額全体ではなく、売却によって得た利益「譲渡所得」に限られます。
そこでまずは、譲渡所得を求めなければなりません。譲渡所得は、マンションの売却額から、マンションの購入や売却にかかった費用を差し引いて、算出します。
▼譲渡所得税がかかる「譲渡所得」の計算式
譲渡所得=マンションの売却価格ー(取得費+売却にかかった費用) |
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
上記の計算式に含まれる、マンションの「取得費」は、単なる「マンションの購入費用」ではありません。取得費用を算出するには、減価償却費を加味した計算が必要です。
▼減価償却とは
経年によって下がっていく、マンションの建物や設備の価値を、算出する方法。 |
くわしい計算方法については、「3.【5ステップで計算できる】投資マンションの売却にかかる譲渡所得税」で紹介するので、そちらをご確認ください。
2-3.登録免許税(抵当権抹消費用)
売却に必要となる3つ目の税金は、抵当権を抹消する際に必要となる、登録免許税です。
▼登録免許税(抵当権抹消費用)とは
マンションの抵当権を抹消する際に、必要となる税金。1つの不動産(建物、土地)に対して、それぞれ1,000円ずつ、税金が課せられる。 |
抵当権とは、投資マンションの購入でローンを組む際に、金融機関などが、その不動産を担保にする権利です。抵当権が設定されると、マンションの登記簿にその旨が記載されます。
マンションを売却する時点で、ローンの支払いが途中であれば、売却したお金で一括返済することになります。ローンを完済したら、登記簿に記載されている抵当権を抹消します。
「抵当権が抹消されている=ローン完済している」という証拠になるので、売却前に手続きが必要です。
肝心の登録免許税は、前述した通り、1つの不動産(建物、土地)に対して、1,000円かかります。
建物が1つでも、土地の区画が1つ以上にまたがっている場合には、その分加算されます。
計算例は以下の通りです。
・マンション1室を売却する場合 ⇒ 建物1つ+土地1筆=計2つで2,000円 ・戸建て1軒(土地2つ分)を売却する場合 ⇒ 建物1つ+土地2筆=計3つで3,000円 ・マンション1棟(土地4つ分)を売却する場合 ⇒ 建物1棟+土地4筆=計5つで5,000円 |
登録免許税の上限は、2万円と定められています。
抵当権の抹消は、複雑で難しい手続きが伴うため、司法書士などに依頼するのが一般的です。依頼の費用相場は、1~2万円程度と考えておくとよいでしょう。
なお、はじめからローンを組んでいない場合や、すでにローンを完済していて、抵当権を抹消している場合には、この手続きは必要なく、費用もかかりません。
マンション売却に、消費税の支払いが必要となるケースがある! |
ここまで、投資マンションの売却に必要な、3種類の税金について、解説してきました。 その中に含まれていないのが、「消費税」です。 実は、マンションの売却では、建物部分に消費税が発生します。 2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、課税対象となるので、注意が必要です。 具体的には、以下のようなケースが考えられます。 ・個人事業主として、不動産投資以外にも収入がある ・マンションのほかに、オフィスや店舗などの賃料収入がある ・2年前にも不動産の売却をして、まとまった収入を得た 2023年現在、消費税は10%です。 単純計算でも、建物の売却価格が1,000万円を超えれば、消費税は100万円を超えると分かります。 消費税がかかるかどうかで、手元に残るお金、あるいは損失額が大きく変わる可能性があります。 「2年前の課税売上高が1,000万円を超えている」可能性がある方は、マンション売却の前に、税務署や税理士に確認しておきましょう。 国税に関する質問は、国税庁の「税についての相談窓口」が便利です。 |
3.【5ステップで計算できる】投資マンションの売却にかかる譲渡所得税
次に「2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)」で紹介した譲渡所得税について、くわしい計算方法を以下の5ステップに沿って、解説します。
【STEP1】マンションの購入と売却にかかった費用を確認する 【STEP2】減価償却費を算出する 【STEP3】マンションの取得費を計算する 【STEP4】マンションの譲渡所得を計算する 【STEP5】マンションの所有期間に応じた税率をかける |
実際に支払う譲渡所得税の額が分かれば、マンションの売却時に必要となる税金額の全体像がつかめます。
以下のモデルケースを例に、実際の手順を踏んで計算していくので、ご自身のケースと照らし合わせて、計算してみてくださいね。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 ・所有期間:12年 ※購入時は新築 ・構造:鉄筋コンクリート造(RC造) |
3-1.【STEP1】マンションの購入と売却にかかった費用を確認する
まずは、マンションの購入と売却にかかった費用を確認しましょう。
マンションの購入にかかった費用は、マンション自体の購入価格以外に必要となった費用を指します。
購入にかかる費用は、主に以下の4つです。
・仲介手数料 ・印紙税 ・登録免許税 ・不動産取得税 |
上記4つの費用は、購入当時の領収書などで確認できます。
マンションの購入費用は、一般的に、購入価格の約7~10%かかるといわれています。もし購入費用が分からなければ、ひとまず購入価格の10%だと仮定すると、計算がしやすくなります。
今回のモデルケースでも、購入価格の10%に当たる300万円の費用がかかっていたと仮定します。
一方、売却にかかる費用は、主に以下2つです。
・仲介手数料(売却価格×3.3%+6.6万円) ・印紙税(2-1.印紙税を参照) |
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
以下の計算式で、最低限の売却費用が算出できます。
▼マンションの売却にかかる費用の計算式
売却にかかる費用=仲介手数料(売却価格×3.3%+6.6万円)+印紙税 |
今回のマンションの売却価格は4,000万円なので、以下の計算が成り立ちます。
【仲介手数料】=【売却価格】4,000万円×3.3%+6.6万=約139万円 【仲介手数料】約139万円+【印紙税】1万円=約140万円 |
モデルケースの売却にかかった費用は、約140万円だと分かります。
3-2.【STEP2】減価償却費を算出する
次に、減価償却費を算出します。
「2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)」でも述べたように、減価償却とは、以下のような会計の処理方法のことです。
▼減価償却とは
経年によって下がっていく、マンションの建物や設備の価値を、算出する方法。 |
減価償却費の計算をするには、償却率が必要です。
償却率はマンションの構造によって、以下のように異なります。
マンションの構造 | 償却率 | |
木造 | 0.046 | |
金属造 | 骨格材の肉厚3mm以下 | 0.053 |
骨格材の肉厚 3mm超4mm以下 | 0.038 | |
骨格材の肉厚3mm以下 | 0.030 | |
れんが造・ブロック造 | 0.027 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) 鉄筋コンクリート造(RC造) | 0.022 |
出典:国税庁「「減価償却費」の計算について」
マンションの減価償却費の計算式は、以下の通りです。
▼減価償却費の計算式
減価償却=マンションの購入価格×0.9×償却率×経過年数 |
今回のマンションは鉄筋コンクリート造(RC造)なので、償却率は0.022です。
また、購入価格は3,000万円、新築時購入なので、経過年数は12年です。
よって、以下の計算が成り立ちます。
【購入価格】3,000万円×0.9×【償却率】0.022×【経過年数】12年=約713万円 |
3-3.【STEP3】マンションの取得費を計算する
次に、マンションの取得費を計算します。
▼取得費とは
マンションの購入価格や購入にかかったトータルの費用。マンションは経年によって価値が下がるため、減価償却を行って求める。 |
取得費は、マンションの購入価格と諸費用から、「3-2.【STEP2】減価償却費を算出する」で計算した、所有期間中の減価償却費を引くことで求められます。
マンション購入の際に必要となった金額から、減価償却費を控除することで、譲渡所得が増えます。
マンションの取得費の計算式は以下の通りです。
▼マンションの取得費の計算式
マンションの取得費=(マンションの購入価格+購入にかかった費用)-減価償却費相当額 |
今回のマンションの購入価格は3,000万円、購入にかかった費用は300万円です。
そこから減価償却費の713万円を差し引くので、以下の計算が成り立ちます。
(【購入価格】3,000万円+【購入にかかった費用】300万円)-【減価償却費】713万円=2,587万円 |
もし、マンションの購入価格や費用が不明で、取得費が算出できない場合には、売却した金額の5%を相当額とできます。
参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
3-4.【STEP4】マンションの譲渡所得を計算する
続いて、マンションの譲渡所得を計算します。
「3-2.【STEP2】減価償却費を算出する」と「3-3.【STEP3】マンションの取得費を計算する」では、マンションの購入に関する費用を算出しました。
ここからは実際にマンションを売却して得た収入から、費用を差し引くことで、譲渡所得税の課税対象となる「譲渡所得」を明らかにします。
STEP4とSTEP5の計算は、ベンチャーサポート不動産株式会社の「不動産売却税金計算シミュレーション」ツールを使うと、省略できます。 シミュレーション結果には、譲渡所得税だけでなく、「印紙税」の額、1万円が含まれます。 実際に使って確認したところ、「3-3.【STEP3】マンションの取得費を計算する」で算出した、取得費の金額さえ合っていれば、誤差は2,000円程度です。 概算を知りたいのであれば、問題なく利用できます。 |
シミュレーションツールを使わない場合には、自分で計算を続けます。
マンションの譲渡所得の計算式は以下の通りです。
▼マンションの譲渡所得の計算式
譲渡所得=マンションの売却価格ー(取得費+売却にかかった費用) |
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
今回のマンションの売却価格は4,000万円、取得費は2,814万円、売却にかかった費用は140万円です。
よって、以下の計算が成り立ちます。
【売却価格】4,000万円ー(【取得費】2,587万円+【売却にかかった費用】140万円)=1,273万円 |
3-5.【STEP5】マンションの所有期間に応じた税率をかける
最後に、マンションの譲渡所得に、所有期間に応じた税率をかけると、譲渡所得税が分かります。
マンションの所有期間に応じた税率は以下の通りです。
マンションの所有期間(所得区分) | 税率 |
5年以内(短期譲渡所得) | 39.63% (所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
5年以上(長期譲渡所得) | 20.315% (所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
譲渡所得税を、以下の計算式で算出します。
▼譲渡所得税の計算式
譲渡所得税=マンションの譲渡所得×所有期間に応じた税率 |
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
今回のマンションの譲渡所得は1,273万円、所有期間は12年です。
よって、以下の計算が成り立ちます。
【譲渡所得】1,273万円×【所有期間に応じた税率】20.315%=約258万6,000円 |
マンションの譲渡所得税 約258万6,000円 |
4.投資マンションの売却でできる4つの税金対策【実際の節税額もモデルケースで計算】
次に、投資マンションの売却の際にできる、税金対策を4つ、紹介します。
ここまで記事を読んできた方ならお分かりの通り、マンションの売却に利益が出た場合、数百万円の税金がかかることも珍しくありません。
そうなると気になるのが、税金の負担を抑える方法、いわゆる税金対策ではないでしょうか。
そこで、ここからは4つの税金対策について、解説していきます。
可能な場合には、以下のモデルケースを例に、具体的な節税額も紹介します。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 ・所有期間:12年 ※購入時は新築 ・構造:鉄筋コンクリート造(RC造) |
ご自身にはどの対策ができそうか、考えながら、読んでみてくださいね。
4-1.5年を超えたタイミングでマンションを売却する
1つ目の税金対策は、5年を超えたタイミングで、マンションを売却する方法です。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 |
モデルケースの場合には、この方法で、約245万円の節税が可能となります。
この方法で節税ができるのは、マンションの所有期間が5年を超えると、譲渡所得税の税率が下がるからです。
「3-5.【STEP5】マンションの所有期間に応じた税率をかける」で紹介したように、マンションの所有期間に対する税率は、以下の表のとおりです。
マンションの所有期間(所得区分) | 税率 |
5年以内(短期譲渡所得) | 39.63% (所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
5年以上(長期譲渡所得) | 20.315% (所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
マンションの所有期間が5年以内の場合の税率は約40%、5年以上だと約20%だと分かります。
つまり、5年を過ぎると、それまでの約半分の税率で済むということです。
それでは、実際にモデルケースを例に、節税額を計算してみましょう。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 ・所有期間:◯年 ※購入時は新築 |
「3.【5ステップで計算できる】投資マンションの売却にかかる譲渡所得税」で計算した際には、モデルケースのマンションの所有期間は12年で、譲渡所得税は約259万円でした。
【譲渡所得】1,273万円×【所有期間に応じた税率】20.315%=【譲渡所得税】約258万6,000円 |
所有期間が5年以下の場合を計算すると、譲渡所得税は約504万円という結果が出ました。
【譲渡所得】1,273万円×【所有期間に応じた税率】39.63%=【譲渡所得税】約504万円 |
つまり、モデルケースの場合、所有期間が5年を超えたタイミングでマンションを売却すると、それ以前に売却した場合と比較して、約245万円の節税が可能となります。
なお、所有期間が「5年」を超えたかどうかの判断は、マンションを売却した年の1月1日時点を基準として、判断します。
仮にマンションを2018年3月に購入した場合、2023年3月以降であれば、実際の所有期間は5年を超えています。
しかし、基準となる2023年1月時点では、まだ5年以下です。たとえ3月以降に売却したとしても、規定上、短期譲渡所得と判断され、税率が高くなってしまいます。
マンションの購入の5年目に、売却を検討されている場合には、基準の1月1日時点で5年を過ぎているかどうか、十分にお確かめください。
4-2.マンションの売却にかかった費用を漏れなく計上する
2つ目の税金対策は、マンションの売却にかかった費用を漏れなく計上する方法です。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 |
仮に、売却にかかった費用に50万円の漏れがあった場合、この方法で、11万円の節税が可能となります。
この方法が節税になるのは、「3-4.【STEP4】マンションの譲渡所得を計算する」で紹介したように、マンションの譲渡所得が、以下の計算式で求められるからです。
▼マンションの譲渡所得の計算式
譲渡所得=マンションの売却価格ー(取得費+売却にかかった費用) |
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
つまり、売却にかかった費用が多いほど、譲渡所得税の課税対象となる金額を減らせ、節税につながるのです。
ここからは、売却にかかった費用の算出に、漏れがあったと仮定して、譲渡所得税を計算します。
モデルケースの場合、マンションの売却価格は4,000万円、取得費は2,587万円、売却にかかった費用は140万円なので、以下の計算が成り立っていました。
【売却価格】4,000万円ー(【取得費】2,587万円+【売却にかかった費用】140万円)=1,273万円 |
譲渡所得税の課税対象となる、マンションの譲渡所得は1,273万円です。
しかしもし、売却にかかった費用に50万円の漏れがあったとしましょう。
【売却価格】4,000万円ー(【取得費】2,587万円+【売却にかかった費用】190万円)=1,223万円 |
その場合、譲渡所得税の課税対象となる、マンションの譲渡所得は50万円下がり、1,223万円となります。
それぞれの譲渡所得に、税率20.315%をかけると、以下の譲渡所得税額が算出できます。
・譲渡所得が1,046万円の場合 ⇒ 譲渡所得税額は、約259万円 ・譲渡所得が996万円の場合 ⇒ 譲渡所得税額は、約248万円 |
結果として、譲渡所得税額に、約11万円の差が生じます。
このように、売却にかかった費用を漏れなく計上することが、節税につながると分かります。
売却にかかる費用を漏れなく計上するには、どのような費用が計上できるのか、あるいはできないのかを把握しておく必要があります。
計上できる費用と、できない費用には、主に以下のようなものがあります。
売却にかかる費用として計上できる費用 |
・仲介手数料 ・印紙税(2-1.印紙税を参照) ・売却のための立退料 ・売却のための不動産鑑定料 ・買主を探すための広告料 ・契約書作成や売買契約のための、弁護士依頼費 ・買主から要求されたクリーニング代やリフォーム代 ・売却のために必要となった、交通費や通信費 ・売買契約に関わる振込手数料 |
売却にかかる費用として計上できない費用 |
・維持管理のための修繕費、クリーニング代やリフォーム代 ・固定資産税 ・売却金の取立てにかかる費用 ・抵当権抹消や住所変更などのための登録免許税 ・確定申告の税理士依頼費 |
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
売却にかかる費用を算出する際には、漏れなく計上できているか、確認しましょう。もし計上できるのか分からない費用があれば、税務署や税理士に確認することをおすすめします。
国税に関する質問は、国税庁の「税についての相談窓口」が便利です。
4-3.特定事業用資産の買換え特例を利用する
3つ目の税金対策は、特定事業用資産の買換え特例を利用する方法です。
投資マンションのような収益物件の場合、特定事業用資産の買換え特例を利用できます。
▼特定事業用資産の買換え特例とは
収益物件を売却し、一定期間内にほかの物件を買い替えた場合、特定の要件を満たせば、譲渡益のうち最大80%の課税を、繰り延べできる制度。 |
参考:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」
モデルケースの場合には、最大で約200万円以上の譲渡所得税を、繰り延べできます。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 |
注意点は、この方法は支払うべき税金を、将来に先送りするだけで、税負担そのものが減らせるわけではないという点です。
一方で、「買換え特例」を利用するメリットは、買い替えにかかる税負担の支払いを先延ばしすることで、物件を買い替えるハードルが下がる点です。
例えば、いま所有しているマンションを売却して、より利益の出そうなマンションへの買い替えを考えている場合には、大きなメリットとなるでしょう。
ここからは、モデルケースを例に、具体的な繰り延べ額を算出してみます。
モデルケース |
・マンションの購入価格:3,000万円 ・購入にかかった費用:300万円 ・マンションの売却価格:4,000万円 ・売却にかかった費用:140万円 ・所有期間:12年 ※購入時は新築 ・構造:鉄筋コンクリート造(RC造) |
モデルケースの譲渡所得は1,273万円。課税額は、約259万円です。
特定事業用資産の買換え特例を利用し、特定の要件を満たして、譲渡所得のうち最大80%の課税を、繰り延べたとすると、以下のような計算式が成り立ちます。
【本来の譲渡所得】1,273万円×【繰り延べ税率】80%=【繰り延べられる譲渡所得】約1,018万円 【本来の譲渡所得】1,273万円-【繰り延べる譲渡所得】約1,018万円=【今回の譲渡所得】約255万円 【今回の譲渡所得】約255万円×【所有期間に応じた税率】20.315%=【今回の譲渡所得税】約52万円 |
本来であれば約259万円支払う予定だった譲渡所得税が、約52万円に抑えられます。
くわしい計算方法や手続きについては、国税庁の「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」でご確認ください。
4-4.【相続物件の場合】相続税の取得費加算を利用する
4つ目の税金対策は、相続税の取得費加算を利用する方法です。
この方法は、所有している投資マンションが、相続物件の場合に限り、利用できます。
▼相続税の取得費加算とは
相続または遺贈によって取得した土地や建物などの財産を、3年10ヵ月以内に売却した場合、相続税額の一部を、譲渡所得の取得費に加算できる制度。 |
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続によって得たマンションを、相続してから3年10ヵ月以内に売却すると、相続税の一部をマンションの取得費に加算できます。
▼マンションの譲渡所得の計算式
譲渡所得=マンションの売却価格ー(取得費+相続税の一部+売却にかかった費用) |
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
相続税を取得費に加算すると、譲渡所得が減り、課税対象額を抑えられます。
この方法は、相続額や相続税によって、節税できる金額が大きく異なるため、「これだけ節税できる」と、一概に言い切ることはできません。
くわしい計算方法や手続きの方法については、国税庁の「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」でご確認ください。
投資マンションを売却して利益が出なかった場合、譲渡所得税の支払いは不要 |
ここまで4つの税金対策を紹介してきました。 その中でも最も高額な「2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)」を支払わなければならないのは、売却によって利益が出た場合のみです。 マンションを売却したとしても「3-4.【STEP4】マンションの譲渡所得を計算する」で算出できる譲渡所得がゼロ、あるいはマイナスの場合には、税金の支払い義務は発生しません。 以下の図で、左のグラフは利益が出た場合、右は損失が出た場合を表しています。 右のグラフのように、マンションの取得費と売却にかかった費用の合計を、売却価格が下回った場合には、税金を支払う必要はありません。譲渡所得の算出や、確定申告も不要です。 ただし、以下の場合には、確定申告をしましょう。 ・マンションを売却した年に、賃料収入を得ている場合 ・該当のマンションを売却したのと同じ年に、ほかの不動産を売却して、利益が出た場合 特に、後者に当てはまるケースでは、確定申告をすることで、利益の出たほかの不動産の譲渡所得から、該当のマンションの損失を控除できます。 |
5.【税金の支払い忘れにはペナルティも!】支払い方やタイミングは、税金の種類によって違う
上の図からも分かるように、投資マンションの売却に必要な税金は、支払い方や支払うタイミングが、税金の種類によって異なります。
税金の申告漏れや支払い忘れがあった場合、ペナルティが科せられる場合もあるので、注意が必要です。
そこでここでは、どの税金をいつ、どのように支払うのかを、税金の種類ごとに解説します。
紹介する税金は、「2.投資マンションの売却にかかる税金は主に3種類」で紹介した4種類です。
なお、「2-2.譲渡所得税」は、所得税と住民税の2つに分かれています。
・印紙税 ・所得税 ・住民税 |
それぞれの税金の支払い方とタイミングを把握して、支払い忘れや延滞のないように気をつけましょう。
5-1.印紙税は売買契約の際に支払う
印紙税は、マンションの買主と「売買契約書」を交わす、売買契約の場で支払います。
▼印紙税とは
マンションの売買が成立した際に、売主と買主が交わす「売買契約書」に貼付する印紙代。 |
出典:国税庁「令和5年5月印紙税の手引」
契約書は、売主と買主が、それぞれ手元に置くため、各1通ずつ、合計2通作成します。よって、自分の手元に保管する分の、契約書に貼付する印紙代を、自分で支払います。
収入印紙は、コンビニや郵便局で購入できます。しかし、不動産会社の元で契約を交わす場合には、印紙は不動産会社が持参しているのが一般的です。
あらかじめ印紙代がいくら必要か確認して、契約の際に現金を持参しましょう。
マンションの売却額 (契約金額) | 印紙代 | 印紙代 (2024年3月まで軽減措置) |
500~1,000万円 | 1万円 | 5,000円 |
1,000~5,000万円 | 2万円 | 1万円 |
5,000万~1億円 | 6万円 | 3万円 |
1~5億円 | 10万円 | 6万円 |
2024年3月までは、印紙税に軽減措置がなされていますので、注意してください。
5-2.登録免許税はマンション引き渡しの際に支払う
登録免許税は、マンション売却の決済と引き渡しを行う際に支払います。
▼登録免許税(抵当権抹消費用)とは
マンションの抵当権を抹消する際に、必要となる税金。1つの不動産(建物、土地)に対して、1,000円の税金がかかる。 |
登録免許税は、マンションの売主から買主に名義変更をする前に、支払う必要があります。
実際には、マンションの登記簿から抵当権を抹消する手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。
そのため、引き渡しの場で、手続きの費用と税金の合計額を現金で支払うか、事後に振り込む場合が多いようです。
5-3.所得税は翌年の確定申告で支払う
「2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)」のうち、所得税は、マンションを売却した翌年の、2月中旬~3月中旬に行われる確定申告をしてから、支払います。
確定申告は、自分でするか、税理士などに依頼して代行してもらうこともできます。税理士などに依頼した場合には、手数料が5万円ほどかかります。
自分で行う場合には、主に以下のような方法があります。
・手書きで作成して、郵送か税務署の窓口に提出する ・会計ソフトで作成して、オンラインで提出する ・「e-Tax」で作成して、オンラインで提出する |
参考:国税庁「確定申告書等作成コーナー」
マンションを売却した年度の確定申告では、以下の書類が必要です。
概要 | 必要書類 | 書類(書式)の入手方法 |
自分で作成するもの | ・確定申告書様式 ・申告書第三表(分離課税用) ・譲渡所得の内訳書 | ・国税庁「確定申告書等作成コーナー」 ・税務署の窓口 ・お住まいの自治体の窓口 |
新たに取得するもの | 売却したマンションの謄本 (登記事項証明書) | 最寄りの法務局(600円) |
住民票の除票 | お住まいの自治体(300円) | |
手元にあるもの | マンション購入時の売買契約書 | ― |
購入にかかった費用の領収証など | ― | |
マンション売却時の売買契約書 | ― | |
売却にかかった費用の領収証など | ― |
納税義務があるのに確定申告をしなかった場合、罰則が科せられる可能性があります。マンションの売却をした翌年には、確定申告を忘れずに行いましょう。
なお、所得税は、基本的に、確定申告の期限内に支払わなければなりません。税務署からの納付書や、納税通知書の送付はないので、注意が必要です。
支払方法は以下の7つあります。
・指定した金融機関の預貯金口座から振替を行う ・ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)を利用して納付する ・インターネットバンキングやATMを利用して納付する ・クレジットカードを利用して納付する ・スマホのアプリを利用して納付する ・QRコードによりコンビニエンスストアで納付する ・納付書を使って、現金で納付する |
参考:国税庁「税金の納付」
支払方法についてのくわしい内容は、国税庁の「税金の納付」ページでご確認ください。
期限内に支払いができなかった場合、利息に相当する延滞税が課せられます。期限内に支払いができるように、確定申告は早めに済ませましょう。
5-4.住民税の支払い方は2通りある
「2-2.譲渡所得税(所得税・住民税)」のうち、住民税には、以下2つの支払い方があります。
・確定申告で「特別徴収」を選択した場合 ⇒ 毎月の給与から天引きされる ・確定申告で「自分で納付」を選択した場合 ⇒ 自宅に届いた納付書で支払う |
確定申告をした際、書式の住民税の欄に、「住民税の徴収方法」について問う箇所があります。
出典:東京都北区「徴収方法(住民税の納め方)」
ここで給与所得者が「特別徴収」を選択すると、給与から天引きされるように手配されます。
ただし、給与所得者であっても、「自分で納付」を選んだ場合や、自営業者など、給与所得者以外の場合には、自宅に届いた納付書を使って、住民税を支払います。
納付書を使うと、コンビニや銀行窓口、お住まいの自治体の役所などで支払いができます。
納付書は全部で4枚あり、支払い時期が4回に分かれています。マンションを売却した翌年の6、8、10月、そしてその翌年の1月です。
ただし、4回分を一括で支払っても、特に問題はありません。支払いを忘れそうであれば、一括で支払った方が安心です。
6.投資マンションの売却ならアセットテクノロジーにおまかせ!
投資マンションの税金が高くて困っているのなら、アセットテクノロジーへの売却をご検討してはいかがでしょうか。
アセットテクノロジーでは、投資物件の出口戦略を含めた、賃貸経営のサポートを行っています。
不動産の購入から売却まで、ワンストップでサポートしているため、物件の高額買取を実現できます。
さらに仲介手数料をいただいておらず、売却時の金銭的なご負担を軽くします。
例えば、2,500万円の物件を10年後に2,500万円で売却した場合、売却時の費用を、他社の半分以下に抑えられます。
高額な仲介手数料の支払いが必要ないため、マンション売却後も、次のステップへと進みやすくなりますよ。
投資マンションの売却のみのご依頼も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
7.まとめ
投資マンションの売却で利益が出た場合、物件の条件に応じて100~500万円ほどの税金がかかります。
この記事では、平均的な条件を例に、マンションの購入価格と売却価格に応じた税金の目安額を算出し、早見表を作成しました。
早見表の場合、マンションの売却にかかる税金は、以下のような内訳です。
早見表の条件でマンション売却した場合にかかる税金の内訳 |
・印紙税:1万円 ・譲渡所得税:マンションの価格によって異なる ・登録免許税:2,000円 ・登録免許税の手続き代行料:1万円 |
ご自身のマンションを売却した際の税金額を知りたい場合には、以下3つの税金について、それぞれどのくらいかかるのか、実際に計算する必要があります。
・印紙税 ・譲渡所得税(所得税・住民税) ・登録免許税(抵当権抹消費用) |
また、投資マンションの売却の際にできる、税金対策には、以下のような方法があります。
・5年を超えたタイミングでマンションを売却する ・マンションの売却にかかった費用を漏れなく計上する ・特定事業用資産の買換え特例を利用する ・【相続物件の場合】相続税の取得費加算を利用する |
少しでも税金の負担を減らしたいという方は、対策を検討するとよいでしょう。