個人事業主でも不動産投資できる?融資を通過するコツと法人化についても解説

個人事業主で不動産投資を検討されている方に向けて、個人事業主が不動産投資で融資を受けるコツを解説します。 また、個人事業主ではなく、法人化した方が良いタイミングや設立手続きについてもご紹介します。

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目次

個人事業主は不動産投資を始められる?

個人事業主は、会社員や公務員と比べて収入が不安定といえます。クレジットカードの審査なども厳しくなりがちなことから、「不動産投資なんて無理なのでは」と諦め ている方もいるでしょう。しかし、本当に個人事業主は不動産投資ができないのでしょうか。

個人事業主でも不動産投資は可能

結論からいうと、個人事業主でも不動産投資は始められます。不動産投資で重要なのは、投資対象となる不動産が取得できるかどうかです。

金融機関の融資でも、自己資金でも、不動産を取得できれば不動産投資は始められます。会社員であっても個人事業主と兼任して、不動産投資を行うという方法もあります。

個人事業主が不動産投資するメリット

個人事業主が不動産投資を行うことには、様々なメリットがあります。主な3つのメリットを紹介します。

青色申告で65万円の特別控除が利用できる

個人事業主が不動産投資を行うメリットの一つが、青色申告による65万円の特別控除が利用できることです。

5件以上の独立家屋を所有、あるいは10室以上のアパート・マンションの部屋を所有している場合、事業的規模の不動産投資とみなされて青色申告ができるようになります。特別控除が受けられると所得額が下がり、節税に繋がります。

経費計上で節税できる

不動産投資を始めると、経費計上で節税できるのもメリットです。不動産投資では、金融機関からの借入金や不動産会社への仲介手数料などの費用を経費として計上できます。経費計上する金額が多いほど所得額が減るため、税金を減額できます。

手間がかからないため本業と両立しやすい

不動産投資は、物件管理や入居者募集といった作業を不動産会社や管理会社に任せられるため、他の投資手法に比べて手間がかからず、本業と両立しやすいというメリットもあります。

また、株式投資のように常にレートをチェックしたり取引を繰り返したりする必要もないため、余裕をもって本業と並行できるでしょう。

個人事業主が不動産投資するデメリット

メリットがある反面、個人事業主が不動産投資を行うデメリットもあります。

金融機関の融資が受けにくい

個人事業主が不動産投資を行うデメリットの一つが、金融機関の融資を受けにくいことです。個人事業主は会社員や公務員に比べて収入が不安定な傾向にあるため、融資の審査が厳しくなります。

不動産を取得するには高額な費用が必要です。自己資金だけでは賄えないケースも多く、融資が受けられないと不動産投資が始められません。審査に通過しにくい個人事業主は、その分不動産投資を始めるハードルが高いといえます。

急な出費が発生するケースがある

不動産投資は、急な出費が発生することがあるのもデメリットです。不動産投資を始める際には、ついつい初期費用に目がいってしまいます。

しかし、実際には固定資産税、保険料、修繕費など、不動産取得後も何かと費用がかかります。個人事業主は収支計画を立てにくいため、このような急な出費に備えてしっかり資金を用意しておくことが重要です。

個人事業主が不動産投資で融資してもらうコツ

前述のように、個人事業主は金融機関の融資が受けにくい傾向にあります。ここでは、どのような準備をしておけば、よりスムーズに融資を受けやすくなるのか?そのコツを紹介します。

所得や資産が分かる資料を用意しておく

金融機関の融資の審査では支払い能力が重視されます。そのため、個人事業主で融資を受けやすくするには、現在の所得や資産状況を証明できる資料を準備しておくことが大切です。最低でも購入を希望している物件価格の2〜3割相当の資金は準備しておきましょう。

必要以上の節税をしない

必要以上に節税しないことも、個人事業主が融資を受けやすくするためのコツです。個人事業主は、収入から経費を引いた金額が所得になります。

節税するには所得を減らす必要がありますが、過度に節税すると支払い能力があることを証明しにくくなってしまいます。個人事業主にとって節税は重要ですが、不動産投資を始めたいのであれば、やりすぎないようにしましょう。

ローンやクレジットカードなどで滞納や延滞をしない

金融機関の融資の審査では、信用情報がチェックされます。ローンやクレジットカードの延滞・滞納などがあると信用情報に履歴が残り、返済能力がないと判断されて審査に通りにくくなるため、支払いが遅れないようにすることが大切です。

また、過度な借り入れがあると追加融資が受けにくくなるため、不動産投資を始める前にできる限り返済しておいたほうが良いでしょう。

個人事業主でも融資を受けやすい銀行を選ぶ

金融機関はどこも同じではなく、それぞれ融資対象が異なります。個人事業主でも融資が受けやすい金融機関もあるので、比較サイトなどを参考にしながら金融機関は慎重に選びましょう。

不動産投資をしていて、法人化を検討した方が良い場合とは?

不動産投資である程度の収入を得ている場合、法人化したほうが有利になるケースがあります。

ここでは、法人化するメリット、デメリットとタイミングについて解説します。

法人化するメリット

法人化した場合のメリットについてご紹介します。

節税ができる

法人化することで節税しやすくなります。個人事業主の場合、所得税率が最大45%まで上がります。

対して、法人税の最大税率は23.2%であるため、それよりも所得税率が高い場合は節税になります。

経費にできる幅が広い

法人化すると、経費計上できる費用の幅が広がります。例えば、個人事業主では事業主本人が加入している生命保険は個人の出費とみなされるため、経費計上はできません。

一方、法人の場合は生命保険の契約者を法人に、保険金の受取人を役員にすれば生命保険料を経費計上できます。経費にできる項目が増える分、節税しやすくなるでしょう。

相続税や贈与税がかからない

法人の場合であれば資産は法人のものであり、個人の資産とはみなされません。そのため、相続税や贈与税がかからなくなります。個人事業主の資産は個人のものとして扱われるため、金額に応じて相続税や贈与税がかかります。

しかし、法人の場合でも株式を持っている方が亡くなった際、その株の評価がなされ、評価額が相続財産になるので注意が必要です。

損失の繰り越し期間が長い

個人事業主の場合、損失の繰り越し期間は3年間ですが、法人の場合は2017年4月1日以降に開始する事業年度に生じたものであれば、10年間にわたって繰り越しが可能です。そのため、不動産投資で損失が出ても、節税効果によって取り返しやすくなります。

法人化のデメリット

法人化した際のデメリットについてご紹介します。

設立や会社の維持に費用がかかる

法人化に必要な書類の作成など、設立の際に発生する行政書士への支払いや、法人住民税など、個人事業主のときにはかからなかった費用がかかります。

社会保険料などの支払いが必要になる

法人化すると、社会保険に加入する義務が発生します。社会保険に加入すると、家族を扶養に入れられるなどのメリットがある一方で、保険料の支払いが負担になることがあります。

法人住民税の支払いが必要になる

法人化すると、法人住民税の支払いも必要になります。赤字の場合でも法人住民税を納付しなくてはならないため、社会保険料の支払いと合わせると負担が大きくなる可能性があります。

5年以上の物件は売却の際に税率が高い

5年以上保有し続けた不動産を売却する場合、個人が20%、法人が30%と売却益の税率が上がります。

法人化するならこのタイミングがおすすめ!

不動産投資で法人化するなら、次の2つのタイミングがおすすめです。

タイミング1「課税所得が900万円を超える場合」

個人の所得にかかる所得税と、法人の利益にかかる法人税は税率が異なります。課税所得が低い場合には、個人の所得税の方が有利ですが、高くなればなるほど法人税の方が有利です。そのため、法人税の方が安くなるタイミングで、法人化するのが良いでしょう。

具体的には課税所得が900万円を超えるタイミングです。法人税は課税所得が800万円以上で最大税率の23.2%になります。これに対して、所得税は課税所得が900万円を超えると税率が23%から33%に上がります。

タイミング2「不動産投資を始めるとき」

不動産を取得する際には、購入代金だけでなく不動産取得税や登記費用なども発生します。

一方で、不動産投資を行っている個人事業主が途中から法人化した場合には、不動産の名義を個人から法人に移す際に、不動産取得税と登記費用が再び発生するため、二重に負担することになります。

それらを考慮すると、将来的に900万円以上の課税所得を見込めるなら、最初から法人化して始めるのが望ましいです。

不動産投資法人化の手順と手続き

不動産投資で法人化する際の手順と手続きについてご紹介します。

会社の設立準備をする

法人にも株式会社・合同会社・合名会社・合資会社など様々な形態があります。最初に、どの形態の会社を設立するかを決める必要があります。

それぞれの会社の形態の違いは、出資者が負う責任の範囲や、所有と経営の分離がなされているかどうかなどです。例えば、株式会社なら出資の範囲内でのみ責任を負い、所有と経営が分離されています。

会社の形態が決まったら、社名も考えましょう。それから、代表者印・社員・銀行印などの印鑑を作成し、本店所在地を設置したり事業目的を設定したりします。

定款の作成と認証

定款とは、会社のルールや規則などを定めたものです。従業員を雇わずに自分ひとりだけで仕事をする際にも、定款を作成しなければなりません。

定款には絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項があります。このうち、絶対的記載事項は、必ず規定をした上で定款の中に盛り込まなければなりません。

相対的記載事項を定めるかどうかは自由です。しかし、規定をする場合には、定款にも記載しなければならない事項です。

任意的記載事項は、規定をするかしないかも定款に記載するかしないかも自由に決められる事項です。

また、株式会社の定款は作成後に公証役場において認証を受ける必要があります。

資本金の払込

定款の認証を受けたら、資本金の払込を行いますが、この時点ではまだ法人名義の銀行口座はありません。そのため、発起人名義の銀行口座に資本金を払い込みます。

法人設立後に法人名義の銀行口座を開設したら、資本金を発起人名義の口座から移します。

また、現行の会社法では、まとまった金額の資本金を用意しなくても、株式会社や合同会社の設立が可能です。資本金1円でも問題ありません。ただし、資本金の金額が少なすぎると、信用度も低く扱われる場合があります。

法務局に登記書類の作成と申請

法人の設立には登記が必要です。登記書類を作成し、会社所在地を管轄している法務局に提出して申請手続きを行いましょう。書類に不備がなければ申請後1〜2週間程度で登記手続きが完了します。登記の申請を行った日が会社の設立日になります。

各種書類の提出

登記の手続きを行ってから、2ヶ月以内に納税地を管轄する税務署に「法人設立届出書」を提出しましょう。青色申告での確定申告をしたい場合には、青色申告承諾申請書も併せて提出する必要があります。

また、「法人設立届出書」は都道府県税事務所と市町村役場にも提出しなければなりません。

まとめ

個人事業主であっても不動産投資を行うことは可能です。個人事業主は収入が不安定であり、金融機関で融資が受けにくい場合もありますが、無理だとあきらめてしまわずに、資産形成の一環としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。また、状況によっては法人化も選択肢の一つとして検討してみてください。