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東京の土地は希少性が高い
まず、日本においては土地に対する価値観が非常に高いという特色があります。
これは日本の国土面積が地球上の全地表面積のわずか約0.24%しかないと言われ、しかも日本の国土の中で住宅建設が可能な面積、いわゆる「可住地面積」は約30%前後と言われています。さらに47都道府県の中の1つである東京都に日本の全人口の約10分の1が集中するなど、住宅はもとより土地・不動産の需要は衰える事はありません。
地価の変動要因は
地価の変動要因としては、人口、再開発、企業の集積度、さらにインバウンドを始め様々な要素が絡み合いながら動いていく傾向があります。地価は株価のように日々変動するものではなくある一定の期間(再開発など)の影響を受けて後々じわじわと上昇したりする傾向があります。つまり地価の動きにおいては一定のタイムラグが介在する傾向となっています。
過去の地価の動きは
地価は大きく分けて上昇局面、調整局面、安定局面と3つの傾向があります。
過去において大幅に上昇した時期としては、1980年代のバブル期、2008年のリーマンショック前の数年間、さらに2013年のアベノミク以降等が挙げられますが、今回の上昇局面は過去に類例がない程、長期に及んでいます。
但しコロナ禍においては若干の調整局面はあったものの、短期に収束し、影響も比較的軽微であったという事が言えます。
三大都市圏で地価は上昇に
3大都市圏の地価変動率の推移を見ると、もちろん大阪圏、名古屋圏も上昇傾向となっていますが、東京圏においては特に駅周辺の商業地の上昇が顕著となっています。
これはアフターコロナという事で、また人の流れが再開し街の活力が増大し商業施設を始め多くの施設で売上・収益力が高まった事がその背景となっています。
<公示地価>三大都市の商業地の地価上昇率
地価上昇率 | |
東京都 | 3.3% |
大阪府 | 2.5% |
愛知県 | 3.6% |
<国土交通省「令和5年地価公示」>
東京都の地域別の地価動向
東京都における地域別の地価動向を見ると、そこには意外性も垣間見る事ができます。
地価の上昇というと、東京区部都心部を想像する方も多いと思いますが、今回のデータでは東京都における区部南西部、例えば品川区・目黒区・大田区・中野区・杉並区などの区の上昇幅が高くなっています。これは元々住宅地としても人気があるエリアですが、さらに再開発などの影響も相まって地価が上昇している訳です。
また商業地において最も高い上昇幅を示したのが、区部北東部、いわゆる東京における下町と言われる墨田区・江東区・北区・荒川区・板橋区・足立区・葛飾区・江戸川区などです。
これらのエリアは元々都心への鉄道アクセスなどが優れていたにも関わらず、株に例えると、いい意味で出遅れ感があったエリアです。
それらのエリアに都市再生緊急整備地域、を始めとする国行政開発ファンドも含め多くのセクターの投資が加速し駅周辺の表情が急速に変わってきたという共通点があります。
<公示地価>東京都の地域別地価変動率の推移
住宅地 | 商業地 | |||
2022年 | 2023年 | 2022年 | 2023年 | |
東京都 | 1.0% | 2.6% | 0.6% | 3.3% |
東京都区部 | 1.5% | 3.4% | 0.7% | 3.6% |
区部都心部 | 2.2% | 4.1% | 0.0% | 3.1% |
区部南西部 | 1.4% | 3.2% | 1.4% | 4.0% |
区部北東部 | 1.3% | 3.5% | 1.3% | 4.2% |
多摩地域 | 0.5% | 1.6% | 0.5% | 2.1% |
区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区の各区
区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区の各区
区部北東部:墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区の各区
<国土交通省「令和5年地価公示」>
東京都区部で地価の高い地点は
東京における商業地の標準地価格高順位一覧表を見ると、上位10位の中でなんと、銀座アドレスのエリアが6ヵ所も占めています。特に価格が全国で1位となっている銀座4丁目5-6は㎡当たり5380万円、1坪当たりに換算すると約1億7,700万円となります。1坪は畳2枚分に相当しますので、畳一枚分の土地の面積が約8,800万円となる訳です。
銀座4丁目周辺を歩く時は8,800万円の畳の上を歩いていると想像するとリッチな気分になるかもしれません(笑)。そのほかでは丸の内・大手町などの都心エリア、これらのエリアは三菱地所、三井不動産など大手財閥系不動産会社が投資を加速し、街の魅力が格段に上がっていく事を示しています。
また新宿3丁目周辺では伊勢丹を始めとする商業施設が多く集積しており、また丸ノ内線だけではなく副都心線が利用でき、さらに多くのインバウンドにより街の活性化した事が挙げられます。
また渋谷宇田川町は銀座6丁目と同水準の価格となっており、渋谷における100年に一度の再開発の恩恵を受けた結果と言えます。
<公示地価>東京都区部の標準地価格高順位一覧表(商業地)
順位 | 区 | 標準地の所在 「住居表示」 | 価格(円/㎡) |
1位 | 中央区 | 銀座四丁目2番4 「銀座4-5-6」 | 53,800,000 |
2位 | 中央区 | 銀座五丁目103番16 「銀座5-4-3」 | 46,000,000 |
3位 | 中央区 | 銀座二丁目2番19外 「銀座2-6-7」 | 39,500,000 |
4位 | 中央区 | 銀座七丁目1番2外 「銀座7-9-19」 | 38,600,000 |
5位 | 千代田区 | 丸の内二丁目2番1外 「丸の内2-4-1」 | 36,700,000 |
6位 | 新宿区 | 新宿三丁目807番1外 「新宿3-24-1」 | 36,600,000 |
7位 | 新宿区 | 新宿三丁目30番13外 「新宿3-30-11」 | 35,000,000 |
8位 | 千代田区 | 大手町二丁目4番2外 「大手町2-2-1」 | 28,800,000 |
9位 | 中央区 | 銀座四丁目103番1外 「銀座4-2-15」 | 28,600,000 |
10位 | 中央区 | 銀座六丁目4番13外 「銀座6-8-3」 | 28,200,000 |
10位 | 渋谷区 | 宇田川町77番14外 「宇田川町23-3」 | 28,200,000 |
<東京都「令和5年地価公示価格(東京都分)」>
多摩エリアでは吉祥寺の地価がトップに
東京多摩地域の商業地の地価を見ると、特に目立つのがトップとなった武蔵野市の吉祥寺本町です。元々「住みたいエリア」に常に上位にランクするエリアとして有名ですが、多くの商業施設、自然豊かな街並み、複数路線が乗り入れ井の頭線の始発駅という事も上昇している理由となります。
また立川エリアにおいても巨大商圏を有し、近年では高級マンションも多く建ち並ぶエリアとなっています。他に大規模な商業エリアを持つ町田エリアなど、商業施設が発展しているエリアの地価などが高くなっています。
<公示地価>東京都市部の標準地価格高順位一覧表(商業地)
順位 | 市 | 標準地の所在 「住居表示」 | 価格(円/㎡) |
1位 | 武蔵野市 | 吉祥寺本町一丁目2071番42内 「吉祥寺本町1-9-12」 | 7,250,000 |
2 | 立川市 | 曙町二丁目91番6外 「曙町2-7-20」 | 5,400,000 |
3 | 武蔵野市 | 吉祥寺南町一丁目2728番9内 「吉祥寺南町1-5-5」 | 3,410,000 |
4 | 三鷹市 | 下連雀三丁目256番14 「下連雀3-26-10」 | 2,770,000 |
5 | 町田市 | 原町田六丁目782番5外 「原町田6-3-9」 | 2,760,000 |
<東京都「令和5年地価公示価格(東京都分)」>
東京都区部の地価上昇率トップは中野
東京都区部の商業地の地価上昇率の上位を見てみると、一位が中野区となりました。今現在「中野」駅周辺は駅前のオフィスビル建設や駅ビルの建設やプラットホームの延長を始め、中野サンプラザ建替え計画も進行しているなど北口・南口を含めて広範囲において大規模な再開発が加速しており、区全体の商業地域にも影響を及ぼしています。
また2位の北区は王子・赤羽エリアなど都心に近い割には住宅が買いやすい価格帯でもありとても人気があります。
3位の荒川区においては上野東京ラインの乗り入れなどの効果も徐々に出ており、交通利便性の高さから不動需要も健在化していると考えられます。
<公示地価>東京都区部の地価上昇率(商業地)
順位 | 区 | 変動率 |
1 | 中野区 | 5.2% |
2 | 北区 | 5.2% |
3 | 荒川区 | 5.2% |
4 | 杉並区 | 4.7% |
5 | 文京区 | 4.6% |
6 | 目黒区 | 4.6% |
7 | 豊島区 | 4.6% |
<国土交通省「令和5年地価公示」>
今後の地価動向はどう変わる
2023年夏以降、地価が上昇するエリアのキーワードは
(1)何と言っても地価に最も影響を与えるのは「再開発」です。現在東京では東京駅を中心とした都心や品川・虎ノ門・新宿・渋谷・池袋などを始め多くのエリアで再開発が進んでおり、それらのエリアにアクセスしやすい場所も当然の事ながら地価上昇の恩恵を受ける事になります。
(2)次に上昇する可能性のあるエリアは新線計画・延伸計画が進むエリアです。具体的には新空港線(蒲蒲線)、「白金高輪」駅から「品川」駅まで延伸される南北線、江東区における有楽町線の延伸を始め多くの計画があります。
(3)東京都都内には今でも多くの開かずの踏切がありますが、鉄道の高架化事業の計画があるエリアは地価が上昇する可能性を秘めています。
高架が誕生するという事は一般的に道路幅も拡張され、駅周辺の容積率が向上し、さらに高架下には最も価値の高い、駅前という土地が誕生する訳です。当然の事ながらそのようなエリアは地価が上昇する事になります。
地価動向は多様化の時代へ
不動産の将来価値は建物は減価償却において確実に価値が下がっていきますので、それを中和する要素としては地価の価値上昇が求められます。
今後の地価動向においては下落する場所、かろうじて横ばいをキープする場所、先に述べたように持続的に上昇している場所と三者三様の様相を呈していきます。
今後の土地動向、不動産購入の参考にしていただければ幸いです。