ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる?年収別シミュレーション

目次1 ふるさと納税と住宅ローン控除について1.1 ふるさと納税とは?1.2 住宅ローン控除とは?2 ふるさと納税と住宅 … 続きを読む ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる?年収別シミュレーション

この記事は約8分で読み終わります。

ふるさと納税と住宅ローン控除は、多くの人が活用している税制優遇制度です。

しかし、これらを同時に利用できるのか、そしてどのような効果があるのかについては、疑問に思う方もいるでしょう。

この記事では、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用が可能かどうか、さらに年収別のシミュレーションを通じて、具体的な節税効果を解説します。

ふるさと納税と住宅ローン控除について

ふるさと納税と住宅ローン控除は、それぞれ異なる目的と仕組みを持っていますが、適切に活用することで、納税者に大きなメリットをもたらします。

ここでは、ふるさと納税と住宅ローン控除の基本的な概要を解説します。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、納税者が選択した自治体に寄付を行うことで、税金の控除を受けられる制度です。この制度は、2008年に創設され、地方創生や自治体間の税収格差是正を目的としています。

生まれ故郷に限らず、応援したい地域や興味のある取り組みを行っている自治体を、自由に選んで寄付できます。

教育、福祉、環境保護など、様々な分野から寄付金の使い道を指定できる場合があります。

税制面では、寄付金額から2,000円を引いた額が、原則として全額控除されます。ただし、控除には上限があり、年収や家族構成によって異なるため注意が必要です。

また、多くの自治体が返礼品を用意しており、寄付者は地域の特産品などを受け取れることも、ふるさと納税の魅力の一つです。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した人の税負担を軽減する制度です。

正式名称は『住宅借入金等特別控除』といい、一定の条件を満たすと、最長13年間にわたり所得税から控除を受けられます。

この制度の特徴は、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から差し引けることです。ただし、控除額には上限があり、住宅の種類や取得時期によって異なります。

適用条件として、10年以上の返済期間があること、自己居住用であること、床面積が50㎡以上(一部例外あり)などが挙げられます。

また、2024年からは新築住宅に対して省エネ基準を満たすことが要件に加わりました。

控除を受けるには確定申告が必要で、所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税からも控除されます。

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用はできる?

税金の節約に関心のある方にとって、ふるさと納税と住宅ローン控除は非常に魅力的な制度です。

ここでは、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用について詳しく解説し、効果的な活用方法や注意すべきポイントを解説します。

併用は可能

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は可能です。両制度は異なる仕組みで税金を軽減するため、同時に利用できます。

住宅ローン控除は主に所得税から控除され、控除しきれない分は住民税から控除され、ふるさと納税は寄付金控除として所得税と住民税から控除されます。

ただし、確定申告を行う場合は住宅ローン控除の効果が若干減少する可能性があるため注意が必要です。これは、ふるさと納税の控除が優先されるためです。

しかし、ワンストップ特例制度を利用すれば、この影響を最小限に抑えられます。

ワンストップ特例制度の利用

ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する際、ワンストップ特例制度の利用が効果的です。ワンストップ特例制度を活用すると、確定申告せずにふるさと納税の控除を受けられます。

ワンストップ特例制度では、ふるさと納税の控除が住民税からのみ行われ、住宅ローン控除は主に所得税から控除されるため、両制度の控除の影響を最小限に抑えられます。

ただし、ワンストップ特例制度は、年間のふるさと納税先が5自治体以内で、確定申告が不要な給与所得者などが対象です。

また、住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須なため、この制度は利用できません。

ふるさと納税をした後、翌年1月10日までに各自治体に申請書を提出するだけで簡単に利用できることも魅力です。

確定申告をする場合

住宅ローン控除の初年度は、確定申告が必須となるため、ふるさと納税のワンストップ特例制度は利用できません。

確定申告を行う場合、ふるさと納税の控除が優先して適用され、その後に住宅ローン控除が計算されます。

所得税と住民税の両方から控除を受けられますが、住民税からの控除には上限があるため、控除額が上限を超えると一部が控除されない『控除ロス』が発生する可能性があります。

一方で、確定申告はふるさと納税の寄付金控除を所得税から受けられるため、より大きな節税効果が期待できるでしょう。

どちらの方法を選ぶべき?

ワンストップ特例制度と確定申告のどちらを選ぶかは、個人の状況によって異なります。

以下に、それぞれの制度に向いている人の特徴をまとめます。

ワンストップ特例制度に向いている人

確定申告に向いている人

●      給与所得者で確定申告が不要な人

●      ふるさと納税の寄付先が5自治体以下の人

●      手続きを簡単に済ませたい人

●      住宅ローン控除を受けている人(2年目以降)

●      6つ以上の自治体にふるさと納税をする人

●      医療費控除など他の控除と併用したい人

●      事業所得がある人

●      年収が2,000万円を超える人

●      より大きな節税効果を求める人

ワンストップ特例制度は、確定申告せずにふるさと納税の控除を受けられる簡便な方法です。特に、住宅ローン控除との併用を考えている場合、ワンストップ特例制度を利用すると控除の重複を避けられるメリットがあります。

確定申告では、所得税と住民税の両方から控除を受けられるため、より大きな節税効果が期待できます。

また、医療費控除や雑損控除などのほかの控除を組み合わせたい場合や、高所得者の場合は確定申告を選ぶと良いでしょう。

併用時のシミュレーション

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用効果をシミュレーションしてみましょう。ここでは、年収別の具体的な計算例を紹介します。

年収500万円サラリーマンの場合

年収500万円のサラリーマンを例に、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用効果をシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション条件は以下の通りです。

  • 年収:500万円
  • 所得税:約43万円
  • 住民税:約56万円
  • ふるさと納税額:58,000円
  • 住宅ローン年末残高:3,000万円

ふるさと納税と住宅ローンの控除額は以下の通りです。

ふるさと納税

住宅ローン控除

58,000円-2,000円(自己負担分)=56,000円

3,000万円×0.7%=210,000円

所得税からの控除:136,600円(所得税額の上限)

確定申告の場合、所得税(約43万円)からまずふるさと納税の控除額(56,000円)が引かれ、残りの374,000円から住宅ローン控除(210,000円)が適用されます。

控除しきれない分は住民税から控除されますが、上限があるため一部控除しきれない可能性があるため、注意が必要です。

ワンストップ特例制度の場合、住宅ローン控除(210,000円)が所得税(約43万円)から全額控除され、ふるさと納税の控除(56,000円)は住民税から行われます。

ワンストップ特例は、両制度の控除が互いに影響し合うことを最小限に抑えられるでしょう。

年収300万円サラリーマンの場合

年収300万円のサラリーマンを例に、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用効果をシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション条件は以下の通りです。

  • 年収:300万円
  • 所得税:約16万円
  • 住民税:約30万円
  • ふるさと納税額:28,000円
  • 住宅ローン年末残高:2,000万円

ふるさと納税と住宅ローンの控除額は以下の通りです。

ふるさと納税

住宅ローン控除

28,000円-2,000円(自己負担分)=26,000円

2,000万円×0.7%=140,000円

所得税からの控除:約46,000円(所得税額の上限)

確定申告の場合、所得税(約16万円)からまずふるさと納税の控除額(26,000円)が引かれます。

残りの134,000円分から住宅ローン控除(140,000円)が適用されますが、住宅ローン控除の不足分(約6,000円)は住民税からの控除になるため注意が必要です。

ワンストップ特例制度の場合、住宅ローン控除(約46,000円)が所得税(約16万円)から全額控除され、ふるさと納税の控除(26,000円)は住民税から行われます。

年収300万円のサラリーマンでも、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用することで、かなりの節税効果が得られるでしょう。

ただし、実際の控除額は配偶者の有無や、扶養家族の数などによって変わるため、より正確な計算には専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

ふるさと納税と住宅ローン控除に関するよくある質問

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用に関しては、多くの方がさまざまな疑問を抱えています。ここでは、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

併用で控除が減ることはありますか?

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用で控除が減る場合があります。

確定申告では、ふるさと納税の控除が優先され、所得税が減少するため、住宅ローン控除の一部が住民税から控除されます。

住民税からの控除には上限があり、場合によっては住宅ローン控除の一部が受けられなくなる可能性があるため、住宅ローン控除2年目以降はワンストップ特例制度を利用することが効果的です。

医療費控除との関係はありますか?

医療費控除を申告すると課税所得額が減少するため、ふるさと納税の控除限度額も減少します。

また、医療費控除を受ける場合は確定申告が必要となるため、ふるさと納税のワンストップ特例制度は利用できません。

併用する際は、事前に控除限度額を正確に計算し、自己負担額が2,000円を超えないよう注意しましょう。

iDeCoとの併用はできますか?

iDeCo、ふるさと納税、住宅ローン控除の3つを併用することは可能です。これらの制度を上手く活用することで、より効果的な節税が期待できます。

ただし、iDeCoの掛金は課税所得を減らすため、ふるさと納税の控除限度額に影響を与える可能性があります。

また、住宅ローン控除は所得税から優先的に控除されるため、他の控除との兼ね合いを考慮する必要があります。

まとめ

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は可能であり、適切に活用すれば大きな節税効果が得られます。

ワンストップ特例制度を利用すると、両制度の控除が互いに影響し合うことを最小限に抑えられます。

一方、確定申告では、より大きな節税効果が期待できますが、控除ロスに注意が必要です。

年収や家族構成によって最適な方法は異なるため、個人の状況に応じて選択することが重要です。