不動産投資用物件の地震保険とは?確定申告時の税務上の取り扱いを解説

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日本の高い災害リスクに備えるには、投資用物件に火災保険と地震保険を付帯する必要があります。

 

事業を開始したばかりのオーナーが疑問を抱くのは、税金の申告時における保険料の取り扱いです。

 

控除の対象になるのか経費に含めても良いのか判断できず、戸惑う人は少なくありません。

 

この記事では、不動産投資用物件の地震保険の必要性や補償内容、税務上の扱いについて詳しく解説します。

投資用物件の地震保険料は控除の対象にならない

自身が住んでいない投資用物件の地震保険料は、確定申告で所得を出す際に控除の対象となりません。

 

地震保険料控除は所得税の控除制度の一種で、家賃収入の申告になる不動産所得でも利用できます。

 

しかし、地震保険料控除の対象は自己または自己と生計が同一の配偶者や親族が所有する家屋で常時居住の用に供するもの、または通常生活に必要な生活用動産(家具や什器、衣服など)を補償する保険契約です。

 

端的にいえば、自宅や自宅内にある家財を対象とした保険です。持ち家でも常時使用していない空き家や別荘は保険料控除の対象にはできません。

経費に計上する行為は認められる

控除には入れられない投資用物件の地震保険料でも、経費に含めることは可能です。全額が費用計上できるため、一定の節税効果は認められます。

 

一般的に地震保険は火災保険と一緒に契約して、複数年間にわたる保険料を一括で支払います。

 

減価償却と同様に各年度に案分して控除額を算出するため、初年度の支出額の負担の大きさが特徴です。

 

地震保険の経費計上の仕組みは火災保険と変わりなく、仕訳時にはどちらも損害保険料の勘定科目で記帳します。

投資用物件における地震保険の概要

地震保険は、投資用物件が地震や津波で倒壊・破損した際の損害を補償する保険です。ここでは、一般的な補償内容や特徴を解説します。

火災保険とのセット加入が必須

地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで加入しなくてはいけません。

 

補償金額は火災保険の30〜50%以内の範囲内で、上限額は建物が5,000万円、家財が1,000万円です。加入中の火災保険に後から地震保険を付帯することも可能です。

 

地震保険が通常の保険と異なるのは、各保険会社と国が連帯して実施する公共性の高さにあります。

 

保険金を支払う主体は国であり、地震で失った家屋の再建が目的ではなく、あくまで生活を立て直す資金の捻出を意図しています。

 

また、建物や家財の損害をすべて補償で賄うのは難しいことに注意が必要です。

 

不動産投資で火災保険は入るべき?保証内容や防げるリスクを解説

基礎的な補償内容

地震保険では、家屋や家財の損傷の程度に応じて、以下の区分(全壊/大半損/小半損/一部損)に応じた補償が適用されます。

 

【建物】

認定基準

補償額

全損

以下のいずれかに該当する場合

●      主要構造部(屋根・外壁・基礎・軸組など)の損害が建物の時価の50%以上

●      消失や流出した建物の延床面積の70%以上

地震保険の契約額の100%

大半損

以下のいずれかに該当する場合

●      主要構造部(屋根・外壁・基礎・軸組など)の損害が建物の時価の40%以上50%未満

●      消失や流出した建物の延床面積の50%以上70%未満

 

地震保険の契約額の60%

小半損

以下のいずれかに該当する場合

●      主要構造部(屋根・外壁・基礎・軸組など)の損害が建物の時価の20%以上40%未満

●      消失や流出した建物の延床面積の20%以上50%未満

 

地震保険の契約額の30%

一部損

以下のいずれかに該当する場合

●      主要構造部(屋根・外壁・基礎・軸組など)の損害が建物の時価の3%以上20%未満

●      床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水

地震保険の契約額の5%

 

 

【家財】

認定基準

補償額

全損

家財の損害額が家財全体の時価額の80%以上

地震保険の契約額の100%

大半損

家財の損害額が家財全体の時価額の60%以上80%未満

地震保険の契約額の60%

小半損

家財の損害額が家財全体の時価額の30%以上60%未満

地震保険の契約額の30%

一部損

家財の損害額が家財全体の時価額の10%以上30%未満

地震保険の契約額の5%


ただし、自動車や価格が30万円を超える宝石や貴金属、美術品などは補償の対象から外れます。

保険料はエリアや築年数で変動

地震保険料の保険料は、保険会社や保険商品の種類によらず同じ算定基準が用いられ、主たる金額の変動要因は物件の所在地と築年数です。

 

地震発生リスクに応じて都道府県を1級〜3級に分類し、数字が大きい程保険料が高くなります。

 

例えば、地震が少なく比較的平穏な北海道は1級、反対に地震が多い東京都や神奈川県、埼玉県などは3級です。

 

建物の構造は以下の通り「イ構造」と「ロ構造」に分類され、倒壊や消失の可能性が低いイ構造のほうが保険料が安くなります

 

  • イ構造:鉄骨造、コンクリートブロック造、コンクリート造、耐火建築物、準耐火建築物など
  • ロ構造:木造はじめ、イ構造以外の建築物

 

地震保険には契約期間に応じた長期係数が存在し、契約者は算出した保険料に係数を乗じた金額を負担しなくてはいけません。

 

また、2〜5年の複数年契約ができ、係数の値は契約期間が長くなる程高くなります。

売却時は解約返戻金の受け取りが可能

投資用物件を売却する際には地震保険の解約が必要です。途中解約の場合、残りの契約期間に応じた解約返戻金を受け取れるため、保険料は完全には無駄になりません。

 

保険料と同じく、保険会社や商品にかかわらず返戻率は一定です

 

ただし、契約期間が1ヵ月を切った状態で解約を申し出ても解約返戻金は受け取れません。売却時の地震保険の解約は、自ら保険会社に連絡を取る必要があります。

 

連絡をせずに第三者に物件を売却しても解約返戻金は受け取れないため、主体的に手続きを進めなくてはいけません。

投資用物件に地震保険を付帯すべき理由

「投資用物件に地震保険を付けるのはやり過ぎでは」と疑いを抱く人もいるかもしれませんが、空き室リスクを減らして、入居者に適した環境を提供するには保険が大切です。

 

とりわけ地震大国と呼ばれる日本で賃貸経営に挑むならば、必須と断言して過言ではありません。投資用物件に地震保険を付帯すべき理由をさまざまな観点から解説します。

日本固有の地震発生リスクの高さ

政府の地震調査委員会が公表する予測地図によると、今後30年間に震度6以上の大地震が起きる可能性は決して小さくありません。

 

地球上でみても動きが非常に活発な環太平洋火山帯に属する首都圏の都道府県や静岡、愛知、岐阜、和歌山、四国地方の各県には発生率26%以上のエリアが多数みられます。

 

近いうちに起きると想定される首都直下型地震や南海トラフ地震に備えて、蓄えを用意して災害ルートを確保しようと注意喚起がなされる光景も日常的です。

 

世界的にも日本ほど地震が多い国は少なく、マンションやアパートのオーナーには突発的な事故に備えた火災保険にとどまらず、地震保険を付帯する心がけが求められます。

 

【不動産投資】地震保険への加入は必要?仕組みを知って地震リスクを軽減!

倒壊した投資用物件に対する公的な補償の手薄さ

日本の公的補償は地震で倒壊した投資用物件に対するものが手薄で、地震保険の代わりとなる存在がありません。

 

人的な被害には労災保険や災害弔慰金の対象となる可能性がありますが、家屋や家財の補償はほぼない状況です。

 

被災者生活再建支援法に基づく生活再建支援制度では、地震や建物が災害で倒壊した時、最高300万円の受給が可能です。

 

しかし、その名の通り被災者の生活再建に重点を置く制度のため、投資用物件は補償対象から外れています。

 

主体的に地震保険を付帯しないと、マンションやアパートが崩れた時の修復費用は自己負担で賄わなくてはいけません。

迅速な修繕による入居者離れ対策

保険金を活用した迅速な修繕は、壊れた物件に住み続けたくないという入居者のニーズに合致し、空き室の防止につながります。

 

地震保険では必ずしも損害の全額が補填できるとは限らないにしろ、応急処置を施して最低限の居住環境を確保するのは十分可能です。

 

一度離れた入居者を呼び戻すのは至難の業です。不動産投資は家賃収入が利益の大半を占めるため、空き室が発生すると経営状態が厳しくなります。

 

空き室リスクに備えた地震保険の活用はすべてのオーナーに必要な対応です。

解約時に受け取れる解約返戻金

保険の解約時に受け取れる解約返戻金は、万一のセーフティーネットの役割があります。

 

災害が発生した時、地震で倒壊した物件で収益をあげ続けるのは不可能と判断して売却に出すと想定されます。

 

しかし、ボロボロのマンションやアパートは競売に出しても高値での取引は期待できず、損害額を大きく下回る金額しか受け取れない可能性が高いです。

 

経済的に厳しい状況に置かれると推測されるなか、解約返戻金は救いの手を差し伸べます。資金力があれば別の物件を調達して、不動産投資を再開する道も拓けるでしょう。

確定申告の地震保険料控除とは?

最後に、関連知識として地震保険料控除について簡単に触れましょう。自分や家族が住む物件の地震保険料は、不動産所得の申告時に控除の対象です。

 

ここでは、控除額や適用を受けるための手続きを解説します。

控除額

地震保険料控除の金額は、支払った保険料に応じて以下の通りです。

 

  • 5万円以下:保険料の全額が控除対象
  • 5万円超:一律5万円

 

また、2007年に廃止された長期損害保険契約の保険料も以下のすべてに該当する限り、地震保険料控除に含められます。

 

  • 2006年12月31日までに締結した契約で2007年1月1日以降、変更がないもの
  • 満期返戻金のある契約で保険期間が10年以上におよぶもの

 

旧長期損害保険を合算しても、控除上限額は5万円です。

適用を受けるための手続き

地震保険料控除の適用を受けるには、確定申告書の所定の欄に控除額を記載した上で、添付書類として保険会社から発行される地震保険料控除証明書を提出します。

 

ただし電子申告の場合、証明書の省略が可能です。

まとめ

投資用物件の地震保険料は控除の対象にはならず経費に計上でき、複数年契約でも年度ごとに計算した金額を毎年度申告します。

 

自分が居住していないマンションやアパートでも、日本の災害リスクや災害発生時の倒壊リスクへの備えの手薄さを考えると、地震保険の付帯はほぼ必須です。

 

保険料を負担しても契約する必要はあるため、賃貸経営を検討中の人はぜひ本記事の知識を参考に手続きを進めましょう。

 

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