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地価の上昇は、資産価値の向上や新たな投資機会の創出などのメリットが期待できる一方で、税負担の増加や空室リスクなどのデメリットもあります。
不動産投資家は地価上昇によってどのような影響を受けるのかを理解しておくべきです。
この記事では、地価上昇が不動産投資家に与えるメリットとデメリット、地価上昇に伴う税負担増加への対策、地価が上がる主な要因を詳しく解説します。
地価上昇に適切に対応し、投資戦略を最適化するための知識を得たい不動産投資家の方は、ぜひ最後までお読みください。
地価が上がるとどうなる?不動産投資家のメリット
ここでは、地価が上がるとどうなるか、不動産投資家のメリットを詳しく解説します。
資産価値が上がり売却益(キャピタルゲイン)を期待できる
地価の上昇は、不動産投資家にとって資産価値の向上をもたらすメリットです。
所有する不動産の価値が上がると、将来的な売却時により高い利益(キャピタルゲイン)を得られる可能性が高まります。
例えば、5年前に1億円で購入した物件が、地価上昇により1億5,000万円の価値になれば、5,000万円の売却益を見込めます。
このような資産価値の上昇は、投資家の財務状況を改善し、新たな投資機会を生み出す原動力です。
ただし、キャピタルゲインを実現するためには適切なタイミングでの売却が欠かせません。地価の動向を常に注視し、市場の状況を見極めながら売却のタイミングを計ることが求められます。
担保に入れれば不動産投資ローンを新たに組みやすくなる
地価の上昇は、不動産投資家にとって投資機会を広げる可能性をもたらします。
所有する不動産の価値が上がると、物件を担保として活用できるほか、有利な条件で不動産投資ローンを組めるようになります。
例えば、当初1億円で購入した物件の価値が1億5,000万円に上昇した場合、追加で5,000万円分の担保価値が生まれます。この増加分を活用すれば、新たな物件の購入や既存物件のリノベーションなど、さらなる投資拡大の機会が生まれるでしょう。
また、金融機関は、担保価値の高い物件に対して好条件での融資を提供する傾向があります。そのため、地価上昇によって担保価値が高まった物件を持つ投資家は、低金利でのローン組成や融資枠の拡大といったメリットを受けやすいです。
ただし、過度な借入れはリスクを伴うため、慎重な判断をしなければいけません。市場動向や自身の財務状況を十分に考慮し、適切な投資判断を行いましょう。
不動産ローンの審査基準については、以下の記事をご覧ください。
高い家賃を設定できる
地価の上昇は、不動産投資家にとって家賃収入の増加をもたらす可能性があります。
地価が上昇する地域は、土地の価値や需要が高まっている証拠です。それに伴って、賃貸物件の需要も増加する傾向があります。
投資家はこの需要の増加を背景に、賃貸物件の家賃を引き上げる機会を得られます。
例えば、月額10万円だった家賃を11万円に設定すれば、年間12万円の増収が見込めます。複数の物件を所有している場合、この増収効果はさらに大きくなるでしょう。
ただし、家賃の引き上げには慎重に検討する必要があります。急激な値上げは入居者の反発を招くため、空室率を上げてしまう可能性が高いです。
このような事態を回避するためにも、地域の相場や競合物件の状況を十分に調査し、段階的な値上げを検討するなど、バランスの取れた戦略を取らねばなりません。
地価が上がるとどうなる?不動産投資家のデメリット
ここでは、地価が上がるとどうなるか、不動産投資家のデメリットを詳しく解説します。
収益物件を新たに購入する際の価格が高くなる
地価の上昇は、新規物件の取得を難しくするデメリットのひとつです。
地価が上がると物件の購入価格も上昇するため、投資家の初期投資額は増大します。
例えば、以前なら1億円で購入できた物件が、地価上昇により1億2,000万円になると、追加で2,000万円の資金が必要です。地価の上昇は投資家の資金調達の負担を増やすため、投資計画を見直さなければならない可能性があります。
また、物件価格の上昇は投資利回りの低下にもつながる点に注意しなければいけません。同じ家賃収入であっても、購入価格が高くなれば、相対的に利回りは下がってしまいます。
例えば、年間600万円の家賃収入がある物件を1億円で購入した場合の利回りは6%ですが、1億2,000万円で購入すると5%に低下します。
このような状況下では、物件選びをより慎重にしなければいけません。立地や将来性、収益性などを綿密に分析し、長期的な視点で投資価値を見極めましょう。
固定資産税の増加
地価の上昇に伴うデメリットは、固定資産税の増加です。
固定資産税は土地や建物の評価額に基づいて課税されるため、地価が上がると税負担も比例して増加します。
例えば、評価額1億円の物件に対する固定資産税が、年間100万円だったとしましょう。地価上昇により評価額が1億2,000万円に上がると、税額も120万円に増加し、年間20万円の追加負担が生じます。
複数の物件を所有する投資家にとっては、この増税の影響がさらに大きくなるでしょう。
固定資産税の増加は、不動産投資の収益性を直接的に圧迫します。家賃収入が変わらないなかで税負担が増えれば、純利益は減少ばかりです。
そのため、税負担の増加を見越した長期的な収支計画の見直しが欠かせません。
また、固定資産税の評価額は3年ごとに見直されるため、地価上昇が続く地域では、定期的に税負担が増加する可能性があります。
相続税や贈与税の増加
地価の上昇は、不動産投資家や相続人にとって相続税や贈与税の負担を増加させるデメリットがあります。
税金は財産の評価額に基づいて計算されるため、地価上昇によって不動産の価値が高まると、税負担も比例して増加します。
例えば、相続時に評価額1億円だった不動産が、地価上昇により1億5,000万円に上昇したとしましょう。相続税の課税対象になる財産額が5,000万円増加するため、結果として相続税額も大幅に上昇します。
同様に、不動産を贈与する場合も、地価上昇によって贈与税の負担が増加します。高額な贈与税は、世代間での円滑な資産移転を困難にする可能性があるため注意が必要です。
税負担の増加は、不動産投資家の長期的な資産計画に大きな影響を与えます。相続や贈与を考慮した資産運用戦略の見直しが必要になるでしょう。
家賃アップの影響で空室リスクがともなう
地価上昇に伴う家賃の値上げは、不動産投資家にとって空室リスクを高めるデメリットです。
家賃が上昇すると入居者の負担が増加し、安価な物件への移動を検討する入居者が現れる可能性があります。
例えば、月額10万円だった家賃を12万円に値上げした場合、年間24万円の負担増です。この増加額は多くの入居者にとって無視できない金額であり、転居を検討する大きな要因となり得ます。
特に、周辺地域の家賃相場と比べて著しく高い設定をした場合、入居者の流出や新規入居者の確保が困難になる可能性が高いです。その結果、空室期間が長期化し、家賃収入の減少につながる恐れがあります。
このリスクを軽減するためには、段階的な家賃値上げや、物件の価値向上施策の実施が重要です。設備のアップグレードやリノベーションを行い、家賃値上げに見合う付加価値を提供すれば、入居者の満足度を維持しつつ、適切な家賃設定を実現できるでしょう。
地価上昇にともなう税負担増加への備え
ここでは、地価上昇にともなう税負担増加への備えについて詳しく解説します。
休有地であれば何かしらの利用方法を検討する
地価上昇に伴う税負担増加に備えるため、休有地の有効活用は不動産投資家からすると欠かせない戦略です。
未利用の土地は、固定資産税や都市計画税などの負担が生じるだけでなく、地価上昇によってその負担が増加する可能性があります。
休有地の活用方法としての定番は、賃貸物件の建設です。アパートやマンションを建設すれば、定期的な家賃収入を得られるほか、税負担の増加をカバーできる可能性があります。
また、駐車場やコインパーキングとしての活用も効果的です。初期投資が比較的少なく、管理も容易なため、小規模な土地でも収益を上げられます。都市部では特に需要が高く、安定した収入源となる可能性があります。
さらに、太陽光発電施設の設置も選択肢のひとつです。再生可能エネルギーへの注目が高まる中、長期的な収益が期待できます。初期投資は大きくなりますが、固定価格買取制度を利用すると、安定した収入を得られるでしょう。
賃貸物件であれば付加価値を高めて空室リスクに備える
地価上昇に伴う税負担増加に対応するためには、賃貸物件の付加価値を高め、空室リスクを軽減する取り組みが重要です。
物件の魅力を向上させれば、入居率を維持し、安定した収益を確保できます。
例えば、セキュリティシステムの導入や共用スペースの充実化、設備のアップグレードなどが効果的です。
また、24時間対応の緊急連絡窓口の設置や家具家電レンタルサービスの提供など、入居者のニーズに合わせたサービスを展開するのも有効でしょう。
これらの付加価値は競合物件との差別化を図り、入居希望者の関心を引けるはずです。さらに、定期的なメンテナンスや清掃サービスを提供すると、物件の長寿命化と入居者満足度の向上につながります。
地価が上がる主な要因も知っておこう
地価の上昇には、さまざまな要因があります。
なかでも、経済成長や人口増加、インフラ整備や交通網の発展は定番といえるでしょう。
他にも、地域の魅力やブランド力も地価に影響を与えます。教育機関や医療施設の充実、安全な環境、文化的な魅力などは、居住希望者にとって欠かせないポイントです。
これらの要素が揃った地域では、地価が上昇しやすくなります。
なた、政策や規制の変化も見逃せません。都市計画や土地利用規制の緩和、新たな開発プロジェクトなどは、地価に直接的な影響を及ぼします。
これらの要因を把握し、自身の投資戦略に活かすことが成功への近道といってよいでしょう。
まとめ
地価上昇に伴う税負担増加に備えるには、休有地の有効活用と賃貸物件の付加価値向上が欠かせません。
休有地は賃貸物件や駐車場、太陽光発電施設としての活用を検討してみましょう。賃貸物件では、セキュリティ強化や共用スペースの充実、エネルギー効率向上、24時間対応の緊急連絡窓口設置などが効果的です。
投資判断の際は、立地や市場動向、ターゲット層のニーズを分析し、長期的視点で戦略を選択してみてください。