不動産投資は相続税対策になる!節税対策になる物件の特徴も解説

不動産投資で適切に相続税対策をするには、基礎知識や仕組みを把握しておくことが欠かせません。そこで本記事では、不動産投資が相続税対策になる理由や、節税に失敗しないために押さえておくべき注意点などを解説します。

この記事は約8分で読み終わります。

不動産投資が相続税対策になる4つの理由

不動産投資をすることが相続税対策になる主な理由は、次の4つです。

・不動産購入により相続税評価額が下がる

・「小規模宅地等の特例」を受けられる

・賃貸事業により相続税評価額が下がる

・借入金により財産を圧縮できる

それぞれについて解説していきます。

不動産購入により相続税評価額が下がる

不動産を購入すると、現金と比べて相続税評価額を下げることが、税金対策になる大きな理由の一つです。

相続税は、相続税評価額に対して一定の税率をかけて課税されます。一般的に、不動産の相続税評価額を算出するために使用される路線価は、実勢価格の80%程度に設定されているので、相続税評価額が低くなるのです。

例えば、現金5,000万円の評価額はそのまま5,000万円ですが、5,000万円で購入した土地を相続すれば、評価額は4,000万円程度まで下がります。

このように、現金を不動産に換えれば相続税評価額を圧縮できるため、相続税対策が可能になります。

「小規模宅地等の特例」を受けられる

被相続人の所有していた土地が条件に当てはまれば、「小規模宅地等の特例」を受けられることから、相続税を減らすことができます。

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が住居にしていた土地や事業をしていた土地について、条件を満たせば相続税評価額を50~80%減額できる制度です。条件が複雑なので、活用を検討する際は国税庁のホームページなどをよく確認しておきましょう。

減額率は大きいですが、対象となるのは土地に限られるため、物件だけを購入しても相続税対策にならないことに注意が必要です。

賃貸事業により相続税評価額が下がる

所有している不動産で賃貸事業を行うことによって、相続税評価額を下げることができます。

不動産を人に賃貸すると、活用の選択肢が限られることにより資産価値が低くなるため、評価額が下がるのです。賃貸用の物件を建てた土地(貸家建付地)の相続税評価額の計算式は以下の通りです。

【貸家建付地相続税評価額計算式】

貸家建付地の相続税評価額=自用地の場合の土地の相続税評価額-(自用地の場合の土地の相続税評価額×借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)

借地権割合は、国税庁の路線価図で確認することができます。賃貸割合とは、専有部分の床面積のうちどのくらいが賃貸されているかを示す割合です。空室の場合は、賃貸割合に含まれません。

借入金により財産を圧縮できる

土地を購入・活用する際にローンを利用することでも、相続税額を減らせます。相続時に借入金の残額が残っていると、相続税評価額を算定する際にマイナス計上され、被相続人の財産全体の課税標準額を下げることができるためです。

不動産投資を行う際は、無理なく返済できる範囲でローンを利用して、相続時に借入金が残るようにしておくことで相続税対策に活用する方法があることを覚えておきましょう。

不動産の評価額の計算方法を知ろう

不動産の相続税評価額を算定する際は、土地と建物(家屋)に分けてそれぞれ異なる計算方法で評価します。ここでは、各評価での計算方法を具体的に説明します。相続税評価額がどのように決まるのか把握しておきましょう。

土地

土地の相続税評価額の算定方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。

路線価の設定がある地域では、路線価方式で相続税評価額を計算しましょう。路線価方式では、その土地に隣接する路線(道路)の路線価に土地面積をかけることで、相続税評価額を計算します。なお、路線価とは、国税庁が道路ごとに設定している価格のことで、国税庁の路線価図で確認が可能です。

路線価方式

土地の相続税評価額=路線価×面積

路線価の設定がない地域では、倍率方式で計算します。評価倍率表に定めのある倍率を、固定資産税にかけることで算出が可能です。

倍率方式

土地の相続税評価額=固定資産税額×評価倍率表の倍率

建物

建物の相続税評価額は、被相続人が利用していた場合は「固定資産税評価額×1.0」で計算します。つまり、この場合、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額になるということです。

なお、第三者に建物を賃貸していた場合などは、以下の通り、固定資産税評価額にかける倍率が変わります。

第三者に家屋を賃貸

固定資産税評価額×(1−借家権割合(30%))

賃貸アパート

固定資産税評価額×(1−借家権割合(30%)×賃貸割合)

不動産を相続するなら!相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫へ生存贈与をする場合に2,500万円まで非課税にすることができる制度のことです。2,500万円を超えた部分の税率は20%になります。

この制度を利用した場合、相続の際に、贈与時の評価額を相続財産評価額に合算した金額に対して、相続税が発生します。

例えば、2,500万円の土地を親から生前贈与され相続時精算課税制度を活用した場合、以下の通りです。

・生前贈与時の贈与税は非課税

・親からの相続発生時、相続財産の評価額が3,000万円なら「3,000万円+2,500万円(生前贈与の評価額)=5,500万円」の相続税評価額に対して、相続税が発生する

相続税対策に向いている不動産の3つの特徴

相続税対策に向いている不動産の特徴は下記の3つです。

・市場価格と相続税評価額に乖離がある不動産

・流動性が高い不動産

・利回りが高い不動産

それぞれを下記で詳しく解説します。

市場価格と相続税評価額に乖離がある不動産

市場価格と相続税評価額の乖離が大きいほど相続税対策の効果が大きくなります。そのため、市場価格と相続税評価額の乖離が大きい都市部の物件の方が、相続税対策で有利です。

立地条件なども評価に影響するため、下記のような不動産を投資対象にすることをおすすめします。

・人口が多い都市部にある

・公共交通機関へのアクセスが良い

・整形地である

・接道条件が良い

立地条件が良い不動産は市場価格が高くなるため、相続税評価額の乖離が大きくなります。

流動性が高い不動産

流動性が高い不動産は、金融機関の融資を受けやすく、投資効果を得るタイミングも早くなります。その結果、購入希望者も見つかりやすくなり、売却処分にも時間がかかりにくい特徴があります。

流動性が高い不動産を選ぶ際には、将来的に相続人が売却することも考慮して、下記の3つの特徴がある不動産を選びましょう。

・都市部の中心地に近い

・公共交通機関へのアクセスが良い

・売買しやすい価格帯

流動性の高い不動産の特徴は市場価格の高い不動産の条件と同じと言って良いでしょう。地方では人口減が進んでいる現在、売りたい時に買い手がなかなか見つからない傾向にあります。

また、築年数が浅く専有面積が広いなどの高額な不動産の場合、現金に換金しようとした際に、好きなタイミングで売却することが困難になります。そのため、同じ費用をかけて複数の不動産を購入することも考える必要があります。

利回りが高い不動産

利回りは不動産投資の成否を左右する重要な要素です。不動産投資では、利益を下記の費用に充てる必要があります。

・ローンの返済

・物件の管理委託費

・固定資産税や都市計画税

・保険料(火災保険や施設賠償責任保険など)

・建物修繕費

・水道光熱費

・入居者募集の広告費

これらの費用を全て利益から支払う必要があるため、利益を得られる高利回りの物件を選ぶ必要があるのです。

相続税対策に向いている不動産投資の物件

どのような物件が相続税対策に向いているのでしょうか。ここでは、相続税対策に向いている不動産投資物件を紹介します。

アパートやマンションなどの一棟物件

アパートやマンションなどの一棟物件を購入または建築した場合、土地と建物のどちらも相続税評価額を引き下げられます。

また、土地の購入後にアパートを建設すると、貸家建付地として評価され、相続税評価額は大幅に引き下げられます。貸家建付地とは、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている土地のことです。

ワンルームマンション

ワンルームマンションは、実際の売買価格と相続税評価額の差が大きいため、相続税対策に適しています。少ない初期費用で始められるため、不動産投資初心者の方でも始めやすいです。都心の新築か築浅の物件なら、流動性も高くおすすめです。

タワーマンション

タワーマンションは、実際の売買価格と相続税評価額の差が大きいため、相続税対策に向いています。購入したマンションが高層階にあるほど、実勢価格と相続税評価額の差は大きくなり、相続税の節税に大きな効果があります。

相続税対策で不動産投資をする際の注意点

相続税対策で不動産投資をする際は、次の2点に注意しましょう。

・相続までの期間と利回りを考慮する

・築年数が古いとリスクが大きい

詳しくは以下で解説します。

相続までの期間と利回りを考慮する

相続税対策で不動産投資を行う際は、保有する期間や利回りも考慮し、収益性のある不動産を選ぶように注意しましょう。

せっかく現金を不動産に置き換えて相続税を減らしても、不動産を所有した後に修繕や改装などが必要になって赤字が発生すれば、対策した意味が薄れてしまうからです。

相続発生まではもちろんのこと、相続後も保有するのが負担にならないよう、表面利回りではなく維持・管理コストを含めた実質利回りに着目して、不動産を選ぶようにしましょう。

築年数が古いとリスクが大きい

購入価格がリーズナブルだからといって、安易に築年数の経過した物件を投資対象に選ばないように注意してください。

築年数の古い建物は耐震・防火性能が低い場合があるため、リフォームに余分な費用が発生したり、賃貸事業を行う場合は入居者の確保が難しかったりと、維持管理の難易度が上がります。

相続人の負担にならないように、管理が難しすぎる不動産を遺さないよう配慮することも、相続対策をするうえで大切です。

まとめ

不動産投資をして現金を不動産に換えておくことで、相続税評価額を抑えることができます。しかし、2024年1月1日からマンションの相続税評価額が戸建てと同じ6割程度まで引き上げる動きがあります。これによって、駆け込み贈与の需要増加が考えられますが、税務署に否認される可能性もあるため慎重さが求められます。

相続税対策にばかりとらわれず、不動産の収益性や維持管理のしやすさにも考慮して、相続人の負担にならない物件を選ぶことが大切です。