市街化調整区域とは? 不動産投資に向いていない理由を解説

不動産投資は、マンション・アパート・一軒家・オフィスなどさまざまな物件を投資対象にできるため、つい「どのエリアでも問題ないだろう」と考えてしまいがちです。特に郊外の物件は価格も安く、手を出しやすいと感じる方もいるのではないでしょうか。 しかし、市街化調整区域に限っては不動産投資に向かないとする考え方があります。 今回は、市街化調整区域とは何か、不動産投資に向いていない理由を解説します。

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市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」として指定されているエリアです。該当するエリア内では、原則として居住用住宅や商業施設の建設が認められていません。

特に田園地帯や森林、河川などの自然が多いエリアが、市街化調整区域に指定されていることが多いです。

最近では、市街化調整区域でも規制緩和が進められており、ガソリンスタンド・コンビニ・スーパーといった近隣住民の生活を最低限守るための施設や、世帯分離のための住宅など、自治体から許可を得た施設は建設可能なケースがあります。

市街化調整区域の物件は購入をおすすめしない理由

ここでは市街化調整区域の物件が不動産投資に向いていない理由を解説します。

一見すると競合が少なく不動産投資の可能性があるように感じるかもしれません。しかし、いくつかのリスクがあるため、把握しておきましょう。

原則建物を建てられない場所のため

市街化調整区域には、原則として建物を建設できません。

都道府県知事の許可を得て建設する場合でも、建物の高さ・広さ・用途などに制限が付きます。そのため、土地そのものの価値が低い傾向があります。市街化調整区域の不動産を購入しても、希望通りの運用ができない可能性もあります。

電気・ガスといったインフラ整備が十分ではないため

市街化調整区域は居住目的の土地ではないことから、水道・ガス・電気などのインフラが整備されていないケースもあります。不動産を居住用住宅として活用する際に影響が出るため、インフラの整備を行わなければなりません。

場合によっては、インフラ整備に膨大な工事費用がかかります。土地・建物の安さを差し引いても、赤字になる場合もあるでしょう。

水道や電気以外にも、道路が舗装されていない、スーパーや駅から極端に遠いなどの事情が考えられるのが市街化調整区域です。

市街化調整区域の賃貸需要が低いため

周囲に商業施設や公的施設が少なく、かつインフラも整備されていないため、賃貸のニーズは低い傾向にあります。そのため稼働率が低くなったり、稼働率を上げるために想定以下の家賃に設定しなくてはいけなかったりするケースも多いです。

入居者が現れても生活の不便さに耐えられず、早期に退去されてしまうことも想定しなければなりません。空室率対策に苦戦する可能性が高く、収益化できないままコストばかりがかさんでしまうことも考えられます。

売却が難しいため

市街化調整区域の物件は一般的に売却しづらいといわれています。例えば、土地の資産価値が低く、金融機関から融資が出づらいケースが考えられます。融資を受けられなければローンも組めず、現金で購入するしかありません。そうなると、自然と購入できる層が絞られてしまい、購入者が見つからないのです。

さらに、賃貸用の不動産投資物件であれば、ニーズが少ない市街化調整区域ならではの特性を知っている人ほど購入を避けようとします。

不動産会社に高い手数料を支払ったり、売却金額を抑えたりしても売れずに不良債権化してしまう可能性があるのです。出口戦略が限定されることをリスクのひとつとして把握しておきましょう。

金融機関からの融資が難しいため

上述したように、市街化調整区域の物件を購入する場合、金融機関からの融資を受けづらい傾向にあります。賃貸ニーズが低く、かつ売却の可能性も限られているためです。

金融機関側は「収益化できず貸し倒れするかもしれない」と懸念します。融資を受けるためにより多くの自己資金を準備する必要が生じる場合があります。そのため、あらかじめ担当者に相談して、融資の条件を探っておくと良いでしょう。

市街化調整区域の物件を買っても良いケース

ここまで解説したように、市街化調整区域は一般的に不動産投資には向かないエリアです。特に不動産投資初心者の方が手を出せるエリアではないでしょう。しかし、物件を投資対象としてもよいも良いケースが、例外として存在します。

下記で具体例を紹介します。

少額から不動産投資を始めたい

少額から不動産投資を始めたいなら、市街化調整区域の物件も選択肢に入ります。市街化区域と比べて、市街化調整区域の土地・建物は安価に設定されている場合が多く、自己資金が少なくても購入しやすいのがメリットです。

市街化区域で多額のローンを組んで、リスクを取りながら利益を目指すよりも、まずは不動産投資の経験を積みたい方の投資先として適しています。

長期保有を想定している

長期保有を想定しているのであれば問題ありません。市街化調整区域の物件は、出口戦略が難しいことがあげられますが、すぐに売却しないのであれば、出口戦略を考慮しなくても良いためです。

また、市街化調整区域の物件は、物件も安く固定資産税のような土地の維持にかかるコストを抑えられるメリットがあります。コストを抑えられる分、高利回りを期待できるでしょう。長期保有によってインカムゲインを得ることも戦略のひとつです。

不動産投資を行うのにおすすめのエリアは地方都市

ここまで市街化調整区域のエリアについて解説してきました。物件が安く投資を始めやすいメリットはあるものの、不動産投資の経験が浅い方が手を出せる物件は多くありません。

不動産投資を始めるなら、まずは地方都市を狙うことをおすすめします。地方都市は東京23区ほど地価が高くないものの、企業も人も集まるエリアであり、十分な賃貸ニーズが想定されるためです。

大阪・名古屋・福岡などの通勤エリアであれば会社員のニーズも高く、空室率対策も講じやすくなります。

まずは、エリアごとの特徴・直筋の傾向などを学ぶことが大切です。名古屋の不動産動向については、下記の記事で詳しく解説しています。

【名古屋】不動産投資で今後注目すべき再開発エリア

まとめ

市街化調整区域では、原則として建物の建設が認められていません。賃貸ニーズが低く出口戦略が限られているからこそ、ローンの審査が通りづらいなどの弊害も生じます。

また、インフラが整備されていなかったりスーパーや駅が遠かったりと、生活するうえで不便さを感じやすい点にも注意しましょう。

不動産投資を始めて行う方や経験が浅い方は、市街化調整区域での不動産投資を避け、地方都市などに焦点を当てるのがおすすめです。地域ごとの特徴を知り、不動産投資に向いている物件をピックアップして比較検討することが成功への第一歩となります。