家賃収入で不動産所得を稼いだオーナーは、確定申告で1年間の利益や税金を明らかにする必要があります。
申告を怠った場合には追徴課税が課され、本来より余計に多くの税金を納めなくてはいけません。
悪質なケースでは懲役を命じられる可能性もあるため、不動産投資で稼ぎたい人は確定申告の正しい知識が求められます。
今回は不動産投資で確定申告を怠った時のペナルティや、申告漏れが発覚した時の対処法を紹介します。
家賃収入の納税手続きにまつわる基礎的な知識が得られ、意図せぬ法律違反を防ぐためにすべきことが分かるため、ぜひご一読ください。
不動産投資で確定申告が必要な場合
不動産のオーナーは入居者から受け取った家賃収入や経費、税金の申告が求められます。
確定申告はすべての事業主に課された義務ではありませんが、不動産投資で稼ぎを得ているなら所得額に関わらず申告するのが望ましいです。
ここでは、不動産投資で確定申告が必要なケースを紹介します。
不動産所得が年間20万円を超えたら確定申告の義務がある
入居者からの家賃は税法上、不動産所得に含まれ、年間20万円を超えた人は確定申告が必須です。
上記の基準は毎月の振込額ではなく、経費を控除した所得になることに注意しましょう。
しかし家賃収入が年間20万円を下回るケースでも、できる限り申告はした方が良いとされます。不動産オーナーの事業主は収入に課される所得税以外にも、住民税を納付します。
住民税の金額は税務署に提出された確定申告書を用いて算出するため、申告しないと正しい税額を算出できなくなる可能性があります。
稼いだ金額に関わらず、家賃収入の申告をすると認識しておくと間違いありません。
赤字が出た時も申告した方が良い
マンションやアパートの経営では、ローンの返済や経費の支払いが収入を上回り、赤字が出る時があります。
不動産所得がなく所得税が課されない赤字経営の局面でも、確定申告をすると節税につながります。
損益通算と呼ばれる税法の制度を使い、不動産所得の赤字と他の所得の黒字を相殺して課税所得を減らせるからです。
例えばサラリーマン大家の場合、給与所得とマンション経営の赤字を合算して所得税や住民税を節税できます。
不動産所得の損失は翌年に繰越すことも認められます。「今年は利益が出なかったから省略しよう」と自己判断せず、確定申告は毎年実施する意識で臨みましょう。
不動産投資で確定申告しないと追徴課税や刑事罰の対象
年間20万円以上の不動産所得がある人が申告をしなかった場合、状況に応じて次の追徴課税が課されます。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
ここでは、各種税金の対象額、条件を解説します。
無申告加算税
無申告加算税は、期限内に申告をしなかった場合や申告漏れに気付いてから申告をした場合に課される税金です。
税率は、本来の納税額が50万円以下の場合は15%です。納税額が50万円超え300万円以下では20%、300万円超えでは30%に変わります。
ただし、税務調査が入る前に自主的に期限後申告をした場合、適用となるのは上記で挙げた無申告加算税の税率から5%減じた軽減税率です。
なお確定申告の期限から1ヵ月以内に申告した時や無申告について正当な理由がある時は、無申告加算税が免除される場合があります。
延滞税
期限内に確定申告をしないと期日の翌日から納付日までの延滞税が発生します。
期限後申告の他、過少申告の指摘を受け不足分の税金がある場合や、更生や決定処分を受け納付すべき税金がある場合も対象です。
延滞税の税率は、納期限から2ヵ月以内は延滞税特例基準割合+ 1%、もしくは7.3%のいずれか低い方です。
2ヵ月を超えた時は延滞税特例基準割合+ 7.3%と14.6%の低い方が課されます。
過少申告加算税
過少申告加算税は申告内容に誤りがあり、税務署から更生や修正申告を命じられた場合に納める税金です。
税率は申告漏れの不足分の税金×10%ですが、追加で納める税金が50万円を超える場合は15%に上昇します。
過少申告加算税は税務署からの通知を受ける前に、自主的に修正申告を申し出た時には納税の必要はありません。
また税務調査の事前通知を受けた後に修正申告をした時は、5%減じた加算税が課されます。
重加算税
重加算税は納税義務を知りながら納税を怠った、納税額を過少に偽装した時など無申告が悪質だと判断される場合の税金です。
無申告加算税や過少申告加算税に代わって、重い罰金が課されます。
- 無申告加算税:40%
- 過少申告加算税:35%
単なる納税義務の無知やし忘れと比較して、故意や意図的に納税しない、税金を過少に申告する行為は悪質です。
10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金
納税義務者が納めるべき税金を違法に逃れ納税しない時は脱税に問われ、刑罰の対象となる恐れがあります。
確定申告の義務から逃れた場合の最高刑罰は10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、または併科です。
申告の義務を怠り税務署から再三の通知を受けたにもかかわらず納税しないケースや、意図的に売上を低く申告して還付金を不正に受け取るケースが代表例です。
悪意で課税を免れる行為のみならず、期限内に申告書の提出を怠った場合でも5年以下の懲役、500万円以下の罰金、または併科に課される恐れがあります。
ペナルティ以外の確定申告をしないと被るリスク
確定申告の義務を無視した時の不利益は追徴課税にとどまりません。
追加で税金を納めたから事なきを得るとは限らず、申告漏れによって、以後の経営に支障をきたす程の致命的な事態を招く場合もあります。
無申告や期限後申告に伴うリスクは次の通りです。
青色申告の承認が取り消される
所得や損失額を隠ぺいした時や、税務署長の指示に従わない時は青色申告の承認が取り消される場合があります。
白色申告を余儀なくされると赤字の繰込しや繰戻しが認められなくなり、不動産所得の損失を翌年以降の黒字と相殺する行為は認められません。
上限65万円の青色申告特別控除や、親族や配偶者に支払う給与を対象とした青色事業専従者給与の控除を受けられなくなります。
青色申告が取り消された時のもう一つのデメリットは少額減価償却資産の特例から外れることです。
取得価額が30万円未満でも取得年度に一括で損金計上する扱いが認められず、各年度で按分した通常の減価償却をしなくてはいけません。
金融機関の融資が受けられなくなる
確定申告をせず納税義務を無視した事実が融資先の金融機関に漏れれば、以後借り入れを断られる可能性があります。
投資用不動産の購入には莫大な資金が必要なため、不動産投資を始めるオーナーは資金調達をするケースが大半です。
事業当初に限らず、別のマンションやアパートの購入時や大規模修繕の予定がある時に、追加で融資を受ける局面も珍しくありません。
金融機関は審査時に申込人の信用調査を実施して、返済能力の有無を見極めます。
過去に税金を滞納した事実が明るみに出れば、資金力や申込人の人間性に疑問を抱かれ、審査に通過しにくくなる可能性があります。
⇒不動産投資ローンで審査落ちになる理由と通過するためのコツを解説
収入証明の書類がなくなる
確定申告書の控えは、納税義務者の収入証明として使える書類です。
しかし未申告の場合、対外的に収入を証明する書類がなくなり、日常生活のさまざまな局面で不便を感じることになるでしょう。
- 住宅ローンを組む時
- 保育園の入園審査を受ける時
- 賃貸契約を契約する時
- クレジットカードを申し込む時
公的に無収入となり不利な立場に立たされないためには、毎年欠かさず確定申告する必要があります。
国民健康保険料の減免措置が受けられない
個人事業主の不動産オーナーが申告を怠ると、国民健康保険料の減免措置を受けられなくなる可能性があります。
国民健康保険には、所得が一定の金額を下回った時に申し出により保険料の減額を認める制度があります。
審査を通過するには収入証明の提出が求められますが、確定申告書の控えがないと公的に収入を証明する手だてがなくなります。
また、年間の所得が赤字になった時は住民税の非課税世帯として認められる場合があります。
確定申告しなかった時の対処法
意図せず申告をしなかった時や申告書の誤りに気づいた時は、早めの対処が肝要です。税務署の指摘を受ける前に自ら再申告すれば、大事に至る前に済ませることが可能です。
ここでは、期限内申告と期限後申告の場合で申告漏れが発覚した際の対処法を紹介します。
申告期限内なら再提出が可能
確定申告後に納税額が間違っていたと気づいた時は、期限内であればペナルティなしで再提出が可能です。
本来より税額が少ない過少申告は修正申告、多く申告したと分かった時は更生の請求をします。ただし訂正の過程で追加で納める税金が発生した場合、修正申告書の提出と合わせて納税する必要があります。
過少申告と過大申告のいずれのケースでも、申告書の内容に誤りがあると余計な業務の発生は免れません。期限内の正確な申告を念頭に置いて、日々の仕訳や申告書の作成に取り組むことが大切です。
期限後でも過去5年分遡って申告できる
納税額の間違いに気付いた時は、過去5年以内であれば遡って修正が可能です。
ただし追加で支払う税金が発生した時は、本来の納期限の翌日から起算した延滞税や過少申告加算税を合わせて負担しなくてはいけません。
税務署の通知を受ける前に自主的に訂正すれば、追徴課税の税率は軽減されます。
申告後の修正は、申告書の提出を忘れていて無申告加算税が課されるケースと比べても、ペナルティが少なくて済みます。
一度申告したからと安心せず、納税額に誤りがないか申告書を見返すことが重要です。
まとめ
不動産投資で得た家賃収入が年間20万円以上に達した場合、確定申告の義務があります。
申告漏れや申告書の内容に誤りが生じた時は無申告加算税や延滞税、過少申告加算税を負担しなくてはいけません。
不動産のオーナーには税金や確定申告の知識を身に付け、期限内の正しい申告が求められます。とはいえ不動産の税金関連の知識は難解です。
法改正が頻繁に行われる分野でもあり、最新の制度にキャッチアップするのは容易ではありません。
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