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白色申告は不動産投資の確定申告において、小規模オーナーに適した選択肢です。事前申請が不要なうえに、会計処理を簡単に行なえるメリットがあります。
不動産投資を始めたばかりで、申告方法に迷っている方は検討する価値があるでしょう。
しかし、運用する不動産の規模によっては青色申告のほうがよい場合もあります。
この記事では、不動産投資で白色申告を行なうメリット・デメリットをはじめ、青色申告との違い、不動産規模に応じた最適な申告方法の選び方について詳しく解説します。
白色申告とは?
白色申告とは、税務署への特別な申請が不要で始められる確定申告です。個人事業主として開業した場合でも、青色申告承認申請書を提出しなければ自動的に白色申告になります。
白色申告の記帳は、日々の合計金額をまとめて記載する方法が認められています。簿記の知識がなくても簡単にできるのがメリットです。
ただし、帳簿は7年間、領収書は5年間の保管義務があり、収入と経費の記録が必要です。
白色申告の控除額は10万円と青色申告よりも少なくなりますが、会計処理の手間は軽減されます。ワンルーム1戸程度の小規模な不動産投資なら、白色申告を選択するのもよいでしょう。
青色申告との違い
青色申告は事前申請が必要になるほか、複式簿記による正確な会計処理が求められる確定申告です。
白色申告との大きな違いは、最大65万円の特別控除や赤字の繰越が可能な点です。経費処理の面でも、専従者給与の全額計上や貸倒引当金の設定など、多くの優遇措置があります。
税制上で優遇措置の多い青色申告は、5棟10室以上の規模の不動産経営ではメリットが大きくなるでしょう。
一方で、記帳や書類保存の要件は厳格です。税務調査時に不備があれば、承認が取り消される可能性があるため正確に会計処理を行わなければなりません。
青色申告のメリットと注意点については、以下の記事をご覧ください。
→不動産投資は青色申告で節税効果アップ?メリットと注意点を解説!
不動産投資で白色申告を行うメリット
ここでは、不動産投資で白色申告を行うメリットについて解説します。
事前の申請がいらない
不動産投資をスタートしてから手続きをしないと、自動的に白色申告者になります。
青色申告のように、事前手続きの期限を気にする必要がありません。投資をスタートしてから申告方法を検討する余裕もあるため、白色申告は不動産投資を始めたばかりで会計処理に不安がある方に最適です。
一方、青色申告は前年の3月15日までの申請が必要なほか、その年の途中での変更ができません。
会計処理が簡単
白色申告は会計処理が簡単なのがメリットです。日々の取引を合計金額でまとめて記載できるため、複式簿記の知識がなくても気軽に始められます。
また、帳簿様式も自由なため、日々のキャッシュフローを確認して収入と経費を記録できれば問題ありません。入居者からの家賃収入や管理会社への支払い、修繕費など、取引の記録を残すだけでよいため、複雑な仕訳や転記は不要です。
不動産投資で白色申告を行うデメリット
ここでは、不動産投資で白色申告を行うデメリットについて解説します。
青色申告特別控除を受けられない
白色申告では、青色申告特別控除が適用されません。
青色申告は一定の要件を満たせば最大65万円の所得控除を受けられます。一方、白色申告の控除額は10万円に限られるため、節税効果は大幅に低下します。
節税効果を青色申告と比較すると、年間で数十万円の機会を逃すことになります。結果、不動産投資の収益性に影響を与えるでしょう。
多額の家賃収入があり、経費控除を最大限活用したい場合は、白色申告では不十分です。事業規模が大きくなるほど顕著になります。
赤字繰越ができない
白色申告では、赤字が発生した年の損失を翌年以降に繰り越せません。大規模の修繕や空室による収入減で赤字になった場合、その損失は単年度で処理する必要があります。
一方、青色申告では最大3年間の赤字繰越が認められ、将来の黒字と相殺できるのが魅力です。長期的な税負担の平準化や節税計画には、大きな影響を与えるでしょう。
不動産投資は修繕費用の発生時期が偏りやすいため、赤字繰越ができないと、収支計画の柔軟性を損なう可能性が高くなります。
不動産投資で青色申告がおすすめな理由
不動産投資の規模によっては青色申告による確定申告がおすすめです。
ここでは、不動産投資で青色申告がおすすめな理由について詳しく解説します。
最大65万円の青色申告特別控除で節税効果が高い
青色申告のメリットは、特別控除による節税効果です。一定の要件を満たせば、最大65万円の所得控除を受けられます。
特別控除は不動産所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担を大きく軽減します。電子申告の要件を満たさない場合でも、55万円の控除を受けられるため、白色申告の10万円と比べて節税効果は格段に高いです。
特別控除は毎年適用され、長期的な節税メリットをもたらします。不動産収入が安定している場合は、青色申告による節税を積極的に活用すべきです。
赤字繰越が可能
青色申告では、不動産投資で生じた赤字を最大3年間繰り越せます。大規模な修繕や空室による一時的な赤字も、将来の黒字と相殺して税負担を平準化可能です。
また、純損失の繰戻しにより、前年分の所得と相殺して税金の還付を受けられます。これは資金繰りの改善にも役立つでしょう。
修繕計画や入居者の入れ替えに伴う収支変動にも柔軟に対応でき、長期的な事業計画を立てやすくなります。
専従者への給与を経費として計上できる
青色申告では、事業専従者に支払う給与を全額経費として計上できます。配偶者や、15歳以上の親族が不動産経営に6ヶ月以上従事していれば対象です。
扶養控除との関係や社会保険料の負担も考慮できるため、世帯全体での税負担を最適化できるのが魅力です。一方、白色申告の専従者控除は金額に制限があり、柔軟な給与設定ができません。
家族で不動産経営を行う場合は、青色申告のメリットを活かすべきです。
不動産投資で青色申告する際のポイント
ここでは、不動産投資で青色申告する際のポイントについて解説します。
事前に青色申告承認書類を提出する
青色申告を始めるには、前年の3月15日までに所轄の税務署へ青色申告承認申請書を提出しなければなりません。1月16日以降に事業を開始する場合は、開始日から2ヶ月以内の申請が認められています。
申請が遅れると青色申告の恩恵を受けられず、自動的に白色申告になるため注意しましょう。
もし個人事業主として不動産投資を始める場合は、開業届と同時に申請すれば、手続きはスムーズに進みます。
青色申告特別控除を受けるために要件を守る
最大65万円の青色申告特別控除を受けるには、以下の要件を守る必要があります。
- 不動産所得または事業所得がある
- 上記に係る取引を複式簿記で記帳している
- 上記の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を添付して確定申告を行う
- 確定申告期限までに申告書を提出する
- 現金主義による所得計算の特例を選択していない
- e-Taxで申告、または優良な電子帳簿の要件を満たしている
これらの要件を満たせば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。要件を満たさないと控除額が減少したり、青色申告の承認が取り消されたりするため注意してください。
帳簿は原則7年間の保存が必要
青色申告では、帳簿や証拠書類を7年間保存する義務があります。仕訳帳、総勘定元帳、補助簿に加え、領収書や請求書も保管が必要です。
保存期間内に税務調査があった際は、書類の提示ができないと青色申告の承認が取り消される可能性があります。
書類の適切な保存は、青色申告の継続に欠かせません。
会計処理が難しければ会計ソフトの利用や税理士への委託が無難
青色申告の会計処理に不安がある場合は、会計ソフトの利用や税理士への委託を検討しましょう。
会計ソフトは日々の取引を入力するだけで、自動的に仕訳や帳簿作成を行ってくれます。電子申告にも対応しており、特別控除の要件を満たすことも容易です。
また、税理士に委託すれば、専門的なアドバイスを得ながら正確な申告を行えます。費用は発生しますが、複式簿記の負担を軽減でき、確実な節税効果を期待できます。
会計処理は投資規模に応じて、適切なサポート体制を整えましょう。
白色申告はあくまでも小規模な不動産投資オーナー向け
白色申告が適しているのは、会計処理の少ないワンルーム1戸程度の小規模な不動産投資のオーナーです。また、帳簿付けの時間が取れない方や、簿記の知識に不安がある方にもおすすめできます。
しかし、5棟10室以上の物件を所有する場合は、青色申告のメリットが大きくなります。特別控除や赤字繰越による節税効果は、事業規模が大きいほど顕著になるでしょう。
しかし、青色申告によって会計処理の負担が増えるのは事実です。そのため、会計ソフトや税理士のサポートを活用して、会計処理の負担を軽減しましょう。
まとめ
不動産投資の確定申告は、事業規模に応じて適切な方法を選択しましょう。
白色申告は小規模投資向きで、青色申告は本格的な不動産経営におすすめです。特に、5棟10室以上の物件を所有する場合は、青色申告による節税メリットを最大限に活用すべきです。
青色申告には会計処理の負担がありますが、会計ソフトや税理士の活用で軽減できます。投資を始めたばかりの方も、将来の事業拡大を見据えて早めに青色申告への移行を検討しましょう。
アセットテクノロジーでは、不動産投資における管理業務全般をサポートし、オーナー様の手間を軽減します。さらに、スマートフォンアプリやパソコンからいつでも物件の契約内容や収入状況を確認できるため、確定申告に必要な書類整理の手間も大幅に削減します。
不動産投資を始めたあとの確定申告をより簡単に済ませたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。