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沖縄県の公示地価動向
国土交通省「令和7年地価公示」によると、沖縄県の地価は引き続き上昇基調を維持しています。観光需要の力強い回復とコロナ禍を経て加速した移住需要が、県全体の地価を押し上げる主な要因となっています。
沖縄県全体の地価動向
沖縄県の地価上昇率は全国平均を大きく上回り、特に住宅地と商業地において顕著な伸びを示しています。地域ごとに見ると、那覇空港・那覇港へのアクセスが良好な西海岸エリアが特に高い需要を集めており、地価上昇を牽引しています。
この背景には、インバウンド観光の回復や国内観光客の増加、そして県外からの移住希望者の増加という複合的な要素があります。また、政府の「GW2050 PROJECTS」や基地返還跡地の再開発など、大型プロジェクトへの期待も地価を押し上げる要因となっています。
用途別にみる沖縄県の地価動向
沖縄県の公示地価を用途別に見ると、それぞれ特徴的な動きを示しています。住宅地は県平均で+7.3%(前年+5.5%)と上昇幅がさらに拡大しました。商業地も県平均+7.0%(+5.0%)で上昇傾向を強めています。
工業地については+6.9%(+9.5%)となり、上昇は続いているものの、伸び率はやや縮小傾向にあります。那覇市や西海岸エリアですでに地価が高騰していることから、今後は東海岸や内陸部への需要シフトが予想されます。
各用途における地価動向の詳細は以下の表のとおりです。
用途区分 | 2025年上昇率 | 2024年上昇率 | 変化 |
---|---|---|---|
住宅地 | +7.3% | +5.5% | 上昇幅拡大 |
商業地 | +7.0% | +5.0% | 上昇幅拡大 |
工業地 | +6.9% | +9.5% | 上昇幅縮小 |
沖縄県における住宅地の公示地価分析
2025年の沖縄県住宅地価格は、県平均で前年比+7.3%と上昇率が拡大しています。この背景には複数の要因が存在します。
住宅地における主な上昇要因
住宅地の地価上昇の主な要因としては、以下の3点が挙げられます。まず、木造戸建住宅の普及が進み、マンションよりも戸建てへの需要が高まっていることが挙げられます。次に、那覇市内の需要が周辺地域へと波及し、南風原町や宜野湾市などのベッドタウンにも地価上昇の影響が及んでいます。
また、コロナ禍を経て加速した移住需要や別荘需要も住宅地の地価上昇を後押ししています。特に自然環境に恵まれた離島部や海岸近くのエリアでは、県外からの購入希望者が増加傾向にあります。
那覇市では供給が限られる一方で需要が集中しており、住宅地価格は+5.9%(+4.0%)と上昇幅が拡大しています。この需要は市外縁部にも波及し、南風原町では+9.6%(+7.7%)、北中城村では+8.5%(+5.3%)という高い上昇率を記録しています。
那覇市以外の主要都市における住宅地の動向
那覇市以外の主要都市における住宅地価格の動向も注目に値します。特に離島エリアの上昇率が顕著で、石垣市では+19.4%(+12.1%)、宮古島市では+16.0%(+12.3%)と、いずれも2桁の高い上昇率を示しています。
これら離島部の高い上昇率の背景には、供給不足に加え、区画整理事業への期待や移住・観光需要の増加があります。特に中心市街地では土地の供給が限られていることから、価格上昇が続いています。
本島中南部のうるま市(+8.1%)や宜野湾市(+8.2%)でも、区画整理事業区域を中心に需要が強く、価格上昇が続いています。また、名護市では+2.7%(+1.3%)と、上昇幅は比較的小さいものの、区画整理地区を中心に需要が強まりつつあります。
住宅地価格上昇率トップ5の地域
住宅地価格の上昇率が特に高い5地域は以下の通りです。
- 石垣市:+19.4%(+12.1%)
- 宮古島市:+16.0%(+12.3%)
- 南風原町:+9.6%(+7.7%)
- 北中城村:+8.5%(+5.3%)
- 宜野湾市:+8.2%(+6.0%)
特筆すべきは離島部の石垣市と宮古島市が1位と2位を占めている点で、県内でも離島部の住宅地価格上昇が特に顕著であることがわかります。これらの地域では、観光関連需要の回復や移住希望者の増加が地価を押し上げています。
沖縄県における商業地の公示地価動向
沖縄県の商業地における公示地価は、県平均で前年比+7.0%(+5.0%)と上昇幅が拡大しています。全17市町村で上昇が見られる点が特徴的です。
商業地価格上昇の主要因とエリア別傾向
商業地価格上昇の主な要因として、インバウンドを含む観光需要の急速な回復が挙げられます。特に那覇市の国際通りや久茂地界隈では、観光客増加に伴う収益性向上により、地価が上昇しています。
那覇市の商業地は+6.8%(+4.6%)と上昇幅が拡大しており、県外企業や投資家の参入も引き続き堅調です。中心商業地では収益性の高い物件への需要が強く、投資目的の購入が地価上昇を後押ししています。
離島部の商業地も高い上昇率を示しており、宮古島市では+17.1%(+12.4%)、石垣市では+14.5%(+4.8%)と、県平均を大きく上回る上昇率を記録しています。これらの地域では、中心商業地の供給不足や島外資本からの需要増加が要因となっています。
観光需要の回復と商業地価格の関係
観光需要の回復は商業地価格に直接的な影響を与えています。特にホテルや商業施設の開発が活発なエリアでは、地価上昇が顕著です。本部町では国道沿いの観光・店舗需要により+8.5%(+8.2%)の上昇となりました。
宜野湾市では、観光客の回復に加え、医療関連店舗の出店競争が活発化していることが地価上昇(+8.3%)の要因となっています。また、糸満市(+8.3%)では西海岸周辺の経済活性化に伴い、高額取引が見られるようになっています。
商業地では、観光関連産業の回復と地元商圏の回復が相まって、店舗需要や投資需要が活発化しています。特に観光客の多いエリアでは、収益性の向上期待から地価上昇がより顕著に表れています。
商業地の地域別上昇率一覧
各地域における商業地の地価上昇率は以下の通りです。
地域 | 2025年上昇率 | 2024年上昇率 | 変化 |
---|---|---|---|
宮古島市 | +17.1% | +12.4% | 上昇幅拡大 |
石垣市 | +14.5% | +4.8% | 上昇幅大幅拡大 |
本部町 | +8.5% | +8.2% | 上昇幅やや拡大 |
宜野湾市 | +8.3% | +5.6% | 上昇幅拡大 |
糸満市 | +8.3% | +6.4% | 上昇幅拡大 |
那覇市 | +6.8% | +4.6% | 上昇幅拡大 |
特筆すべきは離島部の宮古島市と石垣市が1位と2位を占めている点で、県内でも離島部の商業地価格上昇が特に顕著であることがわかります。これらの地域では、観光客増加と本土系企業の購入意欲上昇が地価を大きく押し上げています。
沖縄県における工業地の公示地価分析
沖縄県の工業地における公示地価は、県平均で前年比+6.9%(+9.5%)と上昇を続けているものの、その幅はやや縮小傾向にあります。
工業地の地価変動要因と地域特性
工業地の地価変動の主な要因は、貨物輸送量の増加に伴う倉庫や工場用地への需要の高まりです。特に那覇空港や那覇港へのアクセスが良好な西海岸エリアでは地価高騰が進んでいますが、高額化による投資採算性の低下から、上昇幅はやや頭打ち傾向にあります。
高騰した西海岸エリアから、比較的価格の安い東海岸や内陸部へと需要がシフトし始めています。これにより、地域間の地価格差が徐々に縮小する兆しも見られます。
物流施設の需要増加や製造業の拠点化により、工業用地の需要は今後も底堅く推移すると予想されます。ただし、地価の高騰により採算性重視の傾向が強まっており、立地や価格のバランスが重要視されるようになっています。
主要エリアにおける工業地の動向
那覇市の工業地は+7.6%(+8.8%)と、高価格水準を維持しつつも上昇幅は縮小しています。那覇港に近接した立地条件の良さから需要は底堅いものの、価格面での割高感から上昇率は緩やかになりつつあります。
浦添市の工業地も+7.6%(+10.9%)と、那覇港や空港へのアクセス向上により需要は強いものの、上昇幅は縮小しています。同様に、豊見城市では+6.7%(+13.9%)と上昇率が半減し、高価格帯への接近による取引鈍化が見られます。
一方で、うるま市では+2.6%(+1.5%)と上昇幅が拡大しており、中城湾新港地区の分譲進捗が進んでいることがその要因と考えられます。ただし、売却件数はまだ少ない状況です。
工業地の地域別上昇率比較
各地域における工業地の地価上昇率を比較すると、以下のような傾向が見られます。
地域 | 2025年上昇率 | 2024年上昇率 | 変化 |
---|---|---|---|
糸満市 | +9.1% | +11.0% | 上昇幅縮小 |
那覇市港町 | +7.6% | +8.8% | 上昇幅縮小 |
浦添市 | +7.6% | +10.9% | 上昇幅縮小 |
豊見城市 | +6.7% | +13.9% | 上昇幅大幅縮小 |
うるま市 | +2.6% | +1.5% | 上昇幅拡大 |
特徴的なのは、前年まで高い上昇率を示していた地域で上昇幅が縮小している一方、比較的上昇率の低かったうるま市では上昇幅が拡大している点です。これは西海岸エリアの価格高騰に伴い、投資先が東海岸や内陸部にシフトしつつあることを示唆しています。
宮古島・石垣島など離島エリアの公示地価動向
沖縄県の離島エリア、特に宮古島市と石垣市では、本島を上回る高い地価上昇率が記録されています。その実態と背景を詳しく見ていきましょう。
離島エリアにおける住宅地の動向
離島エリアの住宅地価格は、本島を大きく上回る上昇率を示しています。石垣市では+19.4%(+12.1%)、宮古島市では+16.0%(+12.3%)と、いずれも県内トップクラスの上昇率です。
この急激な上昇の背景には、コロナ禍を経て加速した移住需要の高まりがあります。自然環境に恵まれた離島部での生活を希望する県外からの移住者が増加し、住宅需要を押し上げています。特に中心市街地では供給が限られていることから、価格上昇が顕著です。
石垣市や宮古島市では、区画整理事業への期待も地価上昇の要因となっており、特に計画が進行中のエリアでは先行して価格が上昇する傾向にあります。また、民泊や別荘需要も住宅地価格を押し上げています。
離島エリアにおける商業地の動向
離島エリアの商業地も住宅地と同様に高い上昇率を示しています。宮古島市では+17.1%(+12.4%)、石垣市では+14.5%(+4.8%)となっており、県内でトップクラスの上昇率です。
宮古島市の商業地では、中心商業地の供給不足と島外資本からの需要が続いており、特に観光客向けの商業施設やホテル開発に伴う用地需要が顕著です。石垣市でも観光客増加と本土系企業の購入意欲上昇により、商業地価格が大幅に上昇しています。
両市とも観光産業の回復が商業地価格上昇の大きな要因となっていますが、特に石垣市では前年の+4.8%から+14.5%へと大幅な上昇率の拡大が見られます。これは新型コロナウイルスからの回復が急速に進んだことを示しています。
小規模離島における地価の動向
宮古島市や石垣市以外の小規模離島では、地価の動向は比較的安定しています。島尻郡北大東村字中野や島尻郡伊平屋村字前泊、宮古郡多良間村字仲筋、島尻郡粟国村字浜などでは、地価の変動率は±0.00%となっており、大きな変動は見られません。
これらの小規模離島では、宮古島市や石垣市のような観光需要の急増や移住需要の高まりが見られず、地価は安定的に推移しています。具体的な地価水準は以下の通りです。
- 島尻郡北大東村字中野:1,530円/m²(5,057円/坪)
- 島尻郡伊平屋村字前泊:2,830円/m²(9,355円/坪)
- 宮古郡多良間村字仲筋:5,470円/m²(18,082円/坪)
- 島尻郡粟国村字浜:1,960円/m²(6,479円/坪)
ただし、今後の観光振興策や交通アクセスの改善によっては、これらの小規模離島でも地価に変動が生じる可能性があります。特に、交通インフラの整備や観光施設の充実が進む地域では、地価上昇の可能性に注目する必要があるでしょう。
沖縄県公示地価から読み解く今後の不動産市場予測
2025年の公示地価データから、沖縄県の不動産市場の今後について予測していきましょう。地価の変動要因を分析し、今後の市場動向を探ります。
観光需要と移住需要の影響予測
沖縄県の不動産市場において、観光需要と移住需要は引き続き重要な要因となるでしょう。インバウンド観光の回復が進む中、特に那覇市の国際通りや久茂地界隈、宮古島市や石垣市といった観光地の商業地では、地価上昇が続くと予想されます。
コロナ禍を経て加速した移住需要は、今後も沖縄県の住宅地価格を押し上げる要因となるでしょう。特に自然環境に恵まれた離島部や西海岸エリアでは、移住者の増加による住宅需要が高まり、地価上昇が続く可能性があります。
ただし、すでに高騰している那覇市や西海岸エリアでは、価格面での割高感から上昇幅が緩やかになる可能性もあります。その一方で、比較的価格が安定している北部や東海岸エリアでは、今後需要シフトにより地価上昇が加速する可能性があります。
地域別の投資機会と注目エリア
投資機会という観点では、いくつかの注目エリアが浮かび上がります。まず、宮古島市や石垣市などの離島部は、観光需要の回復や移住需要の高まりから、今後も高い地価上昇率が期待できるエリアです。
今後のインフラ整備や開発計画が進む名護市や本部町、読谷村などの北部・中部西海岸エリアも注目に値します。特に国道58号名護東道路の延伸計画が進む本部半島エリアでは、交通アクセスの向上により地価上昇が加速する可能性があります。
また、「GW2050 PROJECTS」による開発が進む那覇市西部や浦添市、宜野湾市なども投資機会が見込まれるエリアです。基地返還跡地の再開発が具体化するにつれ、周辺地域の不動産価値は上昇する可能性が高いでしょう。
リスク要因と市場変動の可能性
沖縄県の不動産市場には、いくつかのリスク要因も存在します。まず、すでに高騰している地域では、価格面での割高感から上昇幅が縮小したり、場合によっては調整局面に入る可能性もあります。
また、全国的な金利上昇傾向や建設資材の高騰は、不動産開発コストを押し上げる要因となり、市場に影響を与える可能性があります。特に、工業地や商業地では、投資採算性の低下から需要が減少するリスクも考えられます。
さらに、世界情勢の不安定化や経済環境の変化によって、観光需要や投資需要が減少するリスクも無視できません。特に観光業に大きく依存する宮古島市や石垣市といった離島部では、観光需要の変動によって不動産市場が影響を受ける可能性があります。
こうしたリスク要因も考慮しつつ、地域ごとの特性や将来的な開発計画を踏まえた投資判断が重要となるでしょう。
まとめ
2025年の沖縄県公示地価データからは、観光需要の回復と移住需要の増加を背景に、県全体で地価上昇が続いていることが明らかになりました。特に宮古島市や石垣市といった離島エリアでは、本島を上回る高い上昇率を記録しています。住宅地・商業地・工業地すべてにおいて上昇傾向が続いていますが、特に高需要の西海岸エリアでは地価高騰に伴い、上昇幅がやや頭打ちになる兆しも見られます。
今後の沖縄県不動産市場は、「GW2050 PROJECTS」や道路網整備などの大型プロジェクトの進展によってさらなる変化が予想されます。投資や移住を検討している方は、地域ごとの特性や将来的な開発計画を踏まえた判断が重要です。特に、今後インフラ整備が進む北部・中部エリアや、まだ上昇余地のある東海岸エリアなどは注目に値するでしょう。専門家のアドバイスを参考にしながら、長期的視点での不動産選びをおすすめします。