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資産運用で納税義務が生じる条件
資産運用で所得が発生した場合、給与所得者は年間20万円以上、個人事業主などの非給与所得者は年間48万円以上で税金を納めなければなりません。
なお、所得とは利益から経費を差し引いた金額のことであるため、資産運用にかかった経費がある場合は利益から差し引けます。
例えば、サラリーマンが資産運用で年間25万円の利益を得たとして、投資セミナーの参加費や交通費に10万円かかっていたら税金はかかりません。
また、源泉徴収がある特定口座の場合は特別な理由がない限り確定申告は不要で、iDecoや非課税期間に得たNISA口座の利益は非課税です。
関連記事:不労所得に税金はかかる!? 種類別のパターンと計算法を解説
資産運用で得た所得の課税方式
資産運用で得た所得の課税方式は、投資の種類によって申告分離課税と総合課税に大きく分けられます。
ここでは、それぞれの所得の課税方式を紹介します。
申告分離課税
申告分離課税とは、給与所得などの他の所得と合算せず、分離して税額を計算し、確定申告を行って納税する制度のことです。
なお、申告分離課税の税率は投資の種類によって異なり、投資信託や株式投資、債権などの資産運用だと20.315%の税金がかかります。
20.315%の内訳は、所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、住民税が5%です。
また、不動産売却を行って得た所得に対しては、復興特別所得税・住民税を含む譲渡所得税が適用されます。
譲渡所得税は、不動産を売却した年の1月1日時点から数えて5年を超えていれば税率は20.315%、超えていなければ39.63%です。
このように資産運用の種類によって課税方式や税率が異なるため、投資を始める前にチェックしておく必要があります。
総合課税
総合課税とは対象となるすべての所得を加算し、所得税の税率をかけて税額を算出する課税方式のことです。
資産運用においては、総合課税が適用される所得として、不動産投資による家賃収入が挙げられます。
総合課税の所得税率は所得が増えるごとに税率が高くなる累進課税で、他に総合課税の対象となる所得がある場合は合算して計算します。
総合課税における所得税の税率と控除額は以下の通りです。
課税所得金額 |
所得税 |
復興特別所得税 |
住民税 |
控除額 |
1,000円以上195万円未満 |
5% |
0.315% |
10% |
0円 |
195万円以上330万円未満 |
10% |
0.315% |
10% |
9万7,500円 |
330万円以上695万円未満 |
20% |
0.315% |
10% |
42万7,500円 |
695万円以上900万円未満 |
23% |
0.315% |
10% |
63万6,000円 |
900万円以上1,800万円未満 |
33% |
0.315% |
10% |
153万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 |
40% |
0.315% |
10% |
279万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 |
45% |
0.315% |
10% |
479万6,000円 |
表を見てもわかるように、総合課税で税率が変化するのは所得税のみとなります。
また、年間所得が330万円までなら申告分離課税に比べ、控除が適用される総合課税の方が税金はお得です。
資産運用で発生する所得と税金のシミュレーション
ここでは、資産運用で発生する所得と税金のシミュレーションを紹介します。
預貯金や債券の利息
預貯金や債券で発生した利息は『利子所得』に分類され、税率20.315%の分離課税の対象となります。
ただし、利子所得で発生した税金は自動的に差し引かれているため、運用者自身が申告や納税する必要はありません。
例えば、預貯金の利息として年間に30万円が発生した場合、税金に該当する6万945円を差し引いた23万9,055円が預金口座に入金されます。
株式や投資信託の売却益
株式や投資信託の売却で発生した所得は『譲渡所得』に分類され、税率20.315%の分離課税の対象です。
株式や投資信託の売却益は『売却金額-(取得費+手数料)』で計算されます。
例えば、300万円で購入した投資信託を351万円で売却し、手数料が1万円かかったのであれば50万円が課税対象です。
このケースだと確定申告を行い、10万1,575円の税金を納める必要があります。
関連記事:不動産投資と株式投資の特徴|自分に合った投資方法を選ぼう
株式や投資信託の配当金や分配金
株式や投資信託における配当金や分配金などの所得は『配当所得』に分類され、税率20.315%の分離課税の対象です。
源泉徴収される口座の場合は、株式や投資信託で発生した税金は自動的に差し引かれるため、運用者自身が申告や納税する必要はありません。
例えば、株式投資で年間に50万円の配当金が発生した場合、10万1,575円の税金が差し引かれた状態で口座に振り込まれます。
一方で、配当控除の適用を受けるなど総合課税制度で納税したい場合や、株式や投資信託の売却益と合算したいときは自身で確定申告を行います。
不動産売却の譲渡所得
不動産売却で発生した所得は『譲渡所得』に分類され、税率20.315%もしくは税率39.63%の分離課税の対象です。
不動産の売却益は『売却金額-(取得費+手数料)』で計算されます。
例えば、10年前に1,000万円で購入した不動産を1,300万円で売却し、手数料が150万円かかった場合は150万円が課税対象所得です。
このケースだと確定申告を行い、30万4,725円の税金を納める必要があります。
また、不動産を購入してから5年未満に売却する場合だと税率は39.63%になるため、150万円の所得に対して59万4,450円の税金が発生します。
不動産投資の家賃収入
不動産投資で得た家賃収入は『不動産所得』に分類され、所得に応じて税率が変動する総合課税の対象です。
課税対象となる家賃収入の所得は『家賃収入-必要経費』で計算されます。
例えば、年間に120万円の家賃収入があり、50万円の必要経費がかかった場合は70万円が課税対象所得です。
このケースだと所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた税率は15.315%になるため、確定申告を行い10万7,205円の税金を納める必要があります。
なお、家賃収入には、家賃以外にも礼金や更新料、管理費、共益費、駐車場代などが含まれます。
資産運用の税金で注意するポイント
資産運用の方法によっては確定申告が必要になるケースがあるため、申告時の注意点を把握しておく必要があります。
ここでは、資産運用の税金で注意するポイントを紹介します。
損失が出ても確定申告をする
給与所得者だと資産運用の年間利益が20万円を超えなければ確定申告は不要ですが、赤字の場合は確定申告することで節税につながる場合があります。
例えば、不動産投資における家賃収入は総合課税となるため、赤字になった場合は他の所得と合算して総所得を減らすことも可能です。
仮に給与所得が300万円あった場合に、家賃収入が100万円の赤字だったとすると、給与所得から赤字100万円を差し引いた200万円が課税対象となります。
確定申告をしなければ300万円に対して税金がかかりますが、確定申告をすれば課税対象所得が200万円となって節税できるというわけです。
経費を正しく計上する
資産運用の中でも、不動産投資の家賃収入のように経費が多くかかる投資は経費を正しく計上することで節税につながるでしょう。
そもそも課税対象となる所得は利益から経費を差し引いた金額であるため、経費が増えると課税対象所得は低くなります。
例えば、不動産投資を行ううえで必要な通信費や修繕費、交際費、交通費、固定資産税なども経費として認められる可能性は高いです。
一方で、土地の取得費用や事業者の給料、敷金の返還金などは経費として計上できないため注意しましょう。
関連記事:不動産投資で雑費として認められる費用や目安は?混合されやすい経費も紹介
関連記事:不動産経費はどこまで計上できる?節税を実現するポイント
脱税には注意する
資産運用を行う際に納めるべき税金があるにも関わらず、納めないことは脱税となり、罰則を受ける可能性もあるため注意が必要です。
預貯金や債券の利息、源泉徴収される特定口座なら自動的に税金が差し引かれるため、脱税になることはありません。
しかし、源泉徴収されない投資で資産運用を行っている場合は、自身で損益の管理をして確定申告を行う必要があります。
脱税でも金額が大きい場合や悪質とみなされる場合は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金となり刑事罰の対象です。
脱税は知らなかったでは済まされる問題ではないため、資産運用を始めるときには税金のルールもきちんと理解しておきましょう。
まとめ
資産運用で所得が発生した場合は、投資の種類に応じて分離課税方式、もしくは総合課税方式で税金を納める必要があります。
預貯金や債券の利息、特定口座を利用している場合は源泉徴収されるため、確定申告を行う必要はありません。
しかし、それ以外の場合は自分で確定申告を行い税金を納めなければならず、日々の収支管理や書類整理なども必要となります。
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