目次
退去費用とは「物件を退去する際にかかる費用」のこと
入居者が物件を退去する際に支払う費用である退去費用の内訳は、主に以下のふたつです。
・原状回復費用
・ハウスクリーニング費用
ここでは、それぞれがどのような理由で発生する費用なのか、注意すべき点はあるのかについて解説します。
原状回復費用
原状回復費用とは、物件に入居している間に、故意や過失で汚したり壊したりした部分を元に戻すために、入居者が負担する費用のことです。
退去する際に、入居者には民法第621条に基づく「原状回復義務」が生じるため、原状回復にかかった費用の負担が求められます。
・賃借人(入居者)は、賃借物を受け取ったあとに賃借物にできた損傷を、賃貸借を終えるタイミングで、借りる前の状態に戻す義務がある
・ただし、通常の使用などで起こった損耗や経年変化は対象外になる
・また、地震で窓ガラスが割れたなど、損傷について賃借人(入居者)に帰責事由がない場合も対象外になる
参考:「民法621条 賃貸借人の原状回復義務」
入居者の故意や過失で故障したり汚れたりした部分とは、次のとおりです。
【原状回復費用に含まれる例】
・模様替えなどで家具を移動させた際に床や壁についた傷
・喫煙による着色汚れや部屋のにおい
・結露を放置して増えたカビ
一方で、次のような入居者の通常の使用で傷んだ部分や経年劣化が起きた部分の修理費用は、オーナーが負担します。
【オーナーの費用負担になる例】
・日焼けによる変色
・家具設置時のへこみ
・エアコンや冷蔵庫の設置跡
・経年劣化による設備や配管の故障・傷み
ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニングに要した費用も、入居者が退去時に負担する代表的な費用です。ハウスクリーニング費用とは、専門業者による清掃費用を意味します。
主な清掃内容は、次のとおりです。
【ハウスクリーニング内容の一例】
・床材や壁紙の清掃・消毒
・ワックスがけ
・壁紙やフローリング・カーペットなどの床材の張り替え
・ベランダの清掃
・エアコン内部の清掃
・換気扇の清掃
・トイレ・浴室・キッチンなど水回りの清掃・消毒
・カビの除去
ハウスクリーニングで行う作業の内容は、部屋の状態や業者によって異なります。なお、ハウスクリーニング業者の選択・手配は、オーナーもしくは管理会社が行います。
ワンルームマンションの退去費用の相場は「5万円程度」
ワンルームマンションの退去費用の一般的な相場は「5万円程度」です。ただし、間取り以外にも以下の要素によって、費用は変動する傾向にあります。
・居住年数
・修繕内容
入居者や入居希望者から退去費用の相場を質問された場合は、上記のような変動要素があることを含めて説明しておくと、トラブル回避につながるでしょう。以下では、これらの変動要素が、具体的にどのように退去費用に影響するのかを解説します。
居住年数
退去費用総額の相場は居住年数によって変動し、一般的に居住年数が長くなるほど高くなる傾向です。具体的には、以下のとおり、居住年数とともに退去費用の相場は変化します。
居住年数 | 退去費用の相場 |
3年以内 | 5万円程度 |
4~6年 | 6万円程度 |
7年以上 | 8万円程度 |
居住年数が長くなると退去費用の相場が上がる理由として、以下のふたつが挙げられます。
・長く住めば住むほど、不注意で部屋を汚損する機会も増えるから
・長期間になるほど、掃除が行き届かない部分の汚れが蓄積するから
ただし、居住年数が10年を超えてくると、国が定める耐用年数を超える設備が増える関係で、相場が「7年以上」を大幅に下回る可能性もあります。
居住年数が長くなるほど、どこまでも相場が上がり続けるとは限らないことを覚えておきましょう。
修繕内容
退去時に必要となる修繕の内容によっても、退去費用の相場は変わります。
修繕内容 | 費用の相場 |
壁紙の張り替え | 30,000~60,000円程度 |
壁の下地ボードの取り替え | 25,000~60,000円程度 |
フローリングの張り替え | 8,000~15,000円程度 |
キッチンのクリーニング | 15,000~25,000円程度 |
費用の相場は、修繕する部分の面積(㎡)や汚れの範囲・程度によって変動するので、注意が必要です。修繕する箇所や汚損箇所が少なければ少ないほど、費用相場は下がります。
一方で、汚損の状態が激しく、特殊な薬品や専門業者が必要になる場合などは、費用が格段に高くなる傾向にあります。
退去費用のトラブルを防ぐには?
原状回復費用の負担をめぐって入居者とトラブルが起きるケースはまれにあるため、注意が必要です。ここでは、トラブルを回避するために実践すべき次のポイントを紹介します。
・原状回復の取り決めを契約書に記載する
・立会い時には、写真やチェックシートを活用する
それぞれどのように対策しておくべきか、確認しておきましょう。
原状回復の取り決めを契約書に記載する
入居者とのトラブル回避には、入居前からの対策が欠かせません。特に、原状回復に関する取り決め内容を契約書に記載しておくと効果的です。
原状回復費用の中には、入居者とオーナーのどちらが負担するのか不明確な費用もあります。そのような場合は、「ハウスクリーニング代は借主の負担とする」などと契約書に明記することで、前もって入居者も認識することができます。万一、トラブルになった場合にも有利になるでしょう。
ただし、契約内容は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿ったものにしておく必要があります。
立会い時には写真やチェックシートを活用する
トラブルを予防するには、入居時と退去時の立ち合いをする際に、写真やチェックシートを活用しましょう。
立ち合い時に、オーナーと入居者がチェックシートで確認することで、見落としを防ぐことができます。入居時と退去時の違いを把握するために、部屋の状態を写真撮影しておけば、後から「この汚損は入居前からあった」「いや、なかった」などという揉め事も回避できます。
まとめ
ワンルームマンションの退去費用の主な内訳は、原状回復費用とホームクリーニング費用です。これらの費用は、修理内容や汚損の程度などにより増減するため、入居者によって退去費用は変動します。退去費用で入居者と揉めないためのポイントを押さえて、スムーズに賃貸経営を行いましょう。
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