京都の地価動向

京都は日本のみならず、世界的にも有名な都市となっています。古くから日本の都がおかれ、伝統的な建築物も数多くあります。観光客も世界中から多く訪れ、大変な人でにぎわっています。しかし新型コロナの影響もあり地価が大きく変わってきています。 2023年の公示地価の中から、大阪圏の中でも地価の回復の早い京都の地価動向について見てみましょう。 <公示地価は1月1日現在の地価として発表されますので、前年の1~12月の動向を示しています。つまり2023年の公示地価と言った場合は、2022年1~12月の動向を示します。>

この記事は約9分で読み終わります。

①大阪圏で最も地価上昇率が高い京都府

大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の地価変動率を見ると、住宅地では兵庫県1.2%に次いで京都府は0.9%と2番目に高く、商業地では京都府は3.0%の上昇で最も高くなりました。大阪圏の中でも地価の回復が早く進んでいる事が分かります。

大阪圏の県別地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2022

2023

2022

2023

大阪圏

0.1%

0.7%

0.0%

2.3%

京都府

0.2

0.9

0.7

3.0

大阪府  

0.1%

0.7%

△0.2%

2.5%

兵庫県

0.4%

1.2%

0.5%

2.3%

奈良県

△0.7%

△0.4%

△0.8%

0.2%

<国土交通省「令和5年地価公示」>

②近年の地価の動きは

近年の地価の推移を見てみると、<住宅地>では全国や三大都市圏が2020年にかけて緩やかな上昇が続き2021年には新型コロナの影響で一時下落、2022年以降に再び上昇に転じ2023年には2年連続の上昇となりました。

京都府の<住宅地>では同じように2022年まで緩やかに上昇、2021年に下落の後は2022年、2023年と2年連続で上昇となっています。

このように京都府の住宅地においては「実需」としての住宅の人気の高さがうかがえます。

公示地価 全国及び三大都市圏の地価変動率の推移<住宅地>

 

2018

2019

2020

2021

2022

2023

全国

0.3%

0.6%

0.8%

△0.4%

0.5%

1.4%

三大都市圏

0.7%

1.0%

1.1%

△0.6%

0.5%

1.7%

京都府

0.6

1.1

1.0

0.6

0.2

0.9

<国土交通省「令和5年地価公示」>

<商業地>では住宅地よりも地価の動きが大きくなっています。全国及び三大都市圏の地価は2020年まで上昇が続き上昇率も拡大していましたが、2021年には新型コロナの影響で地価上昇率が縮小しました。2022年にも地価上昇率が縮小しており、全国及び三大都市圏の<商業地>は新型コロナやインバウンドの減少の影響が大きかったと考えられます。その後2023年には地価上昇率が拡大し、地価が回復傾向となりました。

京都府の<商業地>は2018年に7.7%、2019年に11.2%、2020年には9.5%と高い上昇率が続いていました。これはインバウンドを始め観光客の増加などによる商業施設の需要増なども要因と考えられます。しかし2021年には新型コロナの影響で1.9%の下落となりました。翌年2022年にはすぐに上昇に転じ、2023年には3.0%の上昇と全国や三大都市圏を上回る上昇率となっています。このように京都府の地価は回復傾向が早く、また今後のインバウンドの増加などでは新型コロナ前のような、高い地価の上昇となる可能性もあるのではないでしょうか。

公示地価 全国及び三大都市圏の地価変動率の推移<商業地>

 

2018

2019

2020

2021

2022

2023

全国

1.9%

2.8%

3.1%

0.8%

0.4%

1.8%

三大都市圏

3.9%

5.1%

5.4%

1.3%

0.7%

2.9%

京都府

7.7

11.2

9.5

1.9

0.7

3.0

<国土交通省「令和5年地価公示」>

③京都市の地価動向<住宅地>

京都市の地価動向を見てみると、<住宅地>では2020年には1.8%の上昇となりましたが2021年は新型コロナの影響で0.4%の下落となりました。しかしその後すぐに上昇に転じ2022年には0.5%、2023年には1.2%と地価上昇率が拡大しています。さらに京都市の中心5区ではさらに地価上昇率が高く2023年には1.4%の上昇となっています。

京都市の地域別の地価動向の推移<住宅地>

 

住宅地

 

2020

2021

2022

2023

京都市

1.8%

△ 0.4

0.5%

1.2%

中心5区

3.0%

0.0%

0.7%

1.4%

その他

△0.1

△0.8

△0.2%

0.6%

京都市の中心5区:北区、上京区、左京区、中京区、下京区

<国土交通省「令和5年地価公示」>

④京都市の地価動向<商業地>

京都市の<商業地>は、2020年には11.2%と地価が大きく上昇していましたが、2021年には新型コロナの影響で2.1%の下落となりました。その後上昇に転じ2022年には0.7%、2023年には3.3%の上昇となりました。京都市中心5区ではさらに上昇率も高く2022年に1.3%、2023年には3.4%の上昇となりました。

京都市の地価は10%以上の上昇から一転して下落となりましたが、地価の回復も早く今後の地価上昇も予想されます。

京都市の地域別の地価動向の推移<商業地>

 

商業地

 

2020

2021

2022

2023

京都市

11.2%

△2.1%

0.7%

3.3%

中心5区

12.1%

△1.1%

1.3%

3.4%

その他

2.0%

△0.7%

0.8%

1.9%

京都市の中心5区:北区、上京区、左京区、中京区、下京区

<国土交通省「令和5年地価公示」>

⑤京都市の区別の地価動向は

京都市の地価動向を区別に見てましょう。

<住宅地>で最も地価上昇率が高かったのは中京区で3.2%、ついで下京区3.0%、上京区2.5%などが続きます。

「中京区」はその名の通り京都市の中心に位置する区で、「京都市役所」や「二条城」などがあるエリアです。鴨川近くには「ザ・リッツ・カールトン京都」や「ホテルオークラ京都」などの高級ホテルもあるエリアです。

商業地では「下京区」が4.8%とトップで、以下南区4.6%、東山区4.2%と続きます。

「下京区」は中京区の南側、京都駅の北側のエリアです。京都駅前の京都の中心的な繁華街となっています。「東本願寺」「西本願寺」を始め多くの史跡もあります。

「南区」は京都駅南側の鴨川の西側エリアです。「東寺」を始め「イオンモール京都」などの商業施設や多くのホテルもあるエリアです。

「東山区」は京都駅西側の鴨川の東側エリアです。「清水寺」「祇園」「東福寺」などの著名な観光地も多くあります。観光客も多く訪れますので、今後インバウンドが増加する中で地価も今後さらに上昇する可能性もあります。

京都市の区別の地価変動率ランキング(住宅地)

順位

変動率

1位

中京区

3.2%

2位

下京区

3.0%

3位

上京区

2.5%

4位

南区

2.4%

5位

西京区

1.6%

<国土交通省「令和5年地価公示」より作成>

京都市の区別の地価変動率ランキング(商業地)

 

変動率

1位

下京区

4.8%

2位

南区

4.6%

3位

東山区

4.2%

4位

西京区

3.1%

5位

上京区

3.0%

<国土交通省「令和5年地価公示」より作成>

⑥京都市の田の字地区とは

京都市の中心部の「田の字地区」と呼ばれるエリアは京都市の中でも特に人気が高く不動産の需要も多い事から地価も高いエリアとなっています。京都駅北側の中京区から下京区のかけてのエリアで、御池通・河原町通・五条通・堀川通に囲まれたエリアです。京都市のビジネスや商業エリアの中心とも言えるエリアでオフィスや商業施設、住宅などの需要が高いエリアです。

しかし近年では地価上昇の波は「南区」「東山区」などを含め、その周辺部にも広がってきています。

京都市の「田の字地区」

⑦地価上昇率の高いエリアは

地価の上昇率を地点別に見てみると、<住宅地>では地価が最も上昇した地点は「京都市上京区」の地点で上昇率は7.5%となりました。京都御所の西側でマンションや低層の住宅などが建ち並ぶエリアです。

以下、JR「丹羽口」駅近くの「京都市中京区」の地点と「梅小路京都西」駅近くの「京都市下京区」の地点が6.1%などと続きます。

 

京都府の地価上昇率地点ランキング<住宅地>

 

所在地

上昇率

1位

京都市上京区小川通一条下る小川町206番1

7.5%

2位

京都市中京区壬生松原町33番13

6.1%

3位

京都市下京区朱雀正会町7番11外

6.1%

4位

長岡京市開田4丁目708番43 「開田4-15-2」

5.3%

5位

福知山市字堀小字堀山573番3

4.8%

<京都府「令和5年地価公示の概要(京都府)」より作成>

<商業地>では「京都市下京区」の地点が13.2%と大きく上昇しました。これはJR京都駅にも近いマンションなどが多く建ち並ぶエリアです。2位も「京都市下京区」の地点で、阪急京都線「大宮」駅、京福嵐山本線「四条大宮」駅などが近い堀川通り沿いのエリアです。

京都府の地価上昇率地点ランキング<商業地>

 

所在地

上昇率

1位

京都市下京区七条通間之町東入材木町481番

(プルミエール生島)

13.6%

2位

京都市下京区堀川通綾小路下る綾堀川町310番1

(ラ・モーダ堀川)

13.2%

3位

京都市下京区大宮通四条下る四条大宮町19番外

(マルヨシビル)

12.3%

4位

京都市下京区寺町通松原下る植松町709番3外

(Len KYOTO KAWARAMACHI)

11.1%

5位

京都市下京区烏丸通七条下る東塩小路町734番外

(中信駅前ビル)

8.4%

<京都府「令和5年地価公示の概要(京都府)」より作成>

⑧京都市は過去にも大きく地価が上昇

京都市では駅周辺の再開発が進んでいます。また今後のインバウンドの増加を見越して高級ホテルなどの建設も多く進んでいます。

新型コロナの発生する前までは京都には多くの観光客が集まり注目を集めていました。その影響もあり新型コロナの影響が出る前の2019年の公示地価では、京都の商業地も大きく地価が上昇し、京都市下京区の地点が39.5%、京都市東山区の地点が39.0%など多くの地点で30%を超えました。

新型コロナの影響で近年は京都に外国人観光客の姿をほとんど見ませんでしたが、2023年に入り大きく増加しています。今後インバウンドが増加すれば、新型コロナ前のように土地・不動産の需要が増加し、地価も大きく上昇する可能性もあります。

⑨京都市周辺でも地価が上昇

また京都市以外でも向日市や長岡京市などの地価上昇率も高くなっています。

京都市及び京都市近郊などでは地価が上昇していますが、周辺エリアでは依然として下落地域も多く、京都府の中でも地価の動きは二極化が進んでいると感じます。

京都府の市別の地価変動率の推移の例

 

 

住宅地

商業地

 

 

2022

2023

2022

2023

京都市域

京都市

0.5

1.2

0.7

3.3

近郊地域

宇治市

0.1

1.2

△ 0.3

1.3

城陽市

0.0

1.2

--

1.7

向日市

0.9

1.1

3.0

3.7

長岡京市

1.3

2.0

3.3

4.7

山城地域

八幡市

△0.5

0.0

1.1

1.7

京田辺市

△0.1

0.7

0.4

2.3

木津川市

△1.5

△0.5

0.9

0.9

南丹地域

南丹市

△0.8

△0.6

0.0

0.0

亀岡市

△0.2

0.4

0.0

0.5

中丹地域

福知山市

△0.3

0.1

△1.5

△1.9

<国土交通省「令和5年地価公示」他より作成>

⑩歴史と非日常を味わる事ができる京都

京都は古くから都が置かれ、その歴史を日常生活に感じる事ができる街と言えます。独自の文化にあふれ、また都会でありながら緑が多い事も特長です。街がコンパクトでありその中に多くの観光地があります。寺社仏閣、京都御所を始め多くの史跡や、美術館や博物館なども多くあります。筆者も年に数回は京都に訪れます。桂川から嵐山、嵯峨野などの自然の風景も日常的に楽しめます。

京都では様々なお祭りが催されます。夏になると京都の街中から「祇園祭」の準備として踊りの稽古や様々な音色が街に響き、新しい季節の到来をお祭りによって感じることができます。

このように千年以上前の歴史に囲まれ、また非日常的なものが日常的に感じられる、そんな魅力が京都にはあると言えます。