目次
不動産投資による節税の仕組み
不動産投資による節税の仕組みは、主に減価償却と損益通算を活用することで実現します。ここでは、減価償却と損益通算を活用した節税のしくみについて解説します。
減価償却
減価償却とは、不動産のような長期にわたって使用される資産の取得費用を、翌年以降も耐用年数の間、実際の支出を伴わずに分割して経費として計上できる制度です。
経費として計上することで、課税所得金額を減らし、納税額を抑える効果が得られます。
土地は減価償却の対象外ですが、建物部分の償却費が節税のポイントとなります。
損益通算
損益通算は、不動産投資結果が赤字だった場合、給与所得や他の事業の収益などの他の収入と合算して税金を計算できる仕組みです。
赤字額を給与所得から差し引くことで、納税額を減らせます。赤字額が他の収入額を超えてしまった場合は、最長3年間繰越して計上できます。
ただし、土地取得にかかるローンの利子など、経費の一部は損益通算の対象外となるため、注意が必要です。
この仕組みにより、特に高所得者は大きな節税効果を獲得できる可能性があります。
不動産投資の所得にかかる税金については、以下の記事でも詳しく解説しています。
不動産投資の所得にかかる主な税金は所得税と住民税!節税のポイントも紹介
税節効果が得られにくいケース
節税をしようと思って不動産投資を始めてみたものの、期待していたほどの節税効果が得られないケースも少なくありません。
すべての不動産投資が同じように節税効果を生み出すわけではないためです。
ここでは、不動産投資で節税効果が得られにくい代表的なケースについて詳しく解説します。
高額の持ち出しが必要な場合
高額の持ち出しが必要な場合は、節税効果が得にくいケースの一つです。持ち出しとは、不動産投資の収支がマイナスになった際に、その不足分を自己資金で補填することをいいます。
持ち出しが発生する原因は、家賃収入がローン返済や管理費、修繕費などの支出を上回らない場合です。
持ち出しが続くと、節税効果よりも資金繰りの負担が大きくなり、節税どころか資産が減ってしまうことになります。
物件選びや資金計画を慎重に行い、持ち出し額を正しくコントロールすることが重要です。
新築区分マンションへの投資
新築区分マンションへの投資は、一見魅力的に見えますが、節税効果という観点からは効果が得られにくいといわれています。
その主な理由は、減価償却費の少なさにあります。
新築区別マンションの多くは鉄筋コンクリート造(RC造)で建てられており、法定耐用年数が47年と長いため、年間の減価償却費が少ないです。
例えば、5,000万円の新築マンションを購入した場合、年間の減価償却費は約110万円(5,000万円 × 0.022)に留まります。
同じ金額の新築木造アパートを購入した場合、年間の減価償却費は約230万円(5,000万円 × 0.046)となり、この金額を22年間計上可能です。
建物の構造によって、購入費用が同じでも計上できる減価償却費が大きく異なることがわかります。
ローンの返済が進んだ物件
不動産投資に関して、ローン返済が進んだ物件は節税効果が得られにくいケースの一つです。主な理由は、ローン返済が進む一方、利息が減少していることにあります。
不動産投資ローンの利息は経費として計上できるため、初期段階では大きな節税効果をもたらします。
しかし、返済が進むと元金の割合が増加し、利息の割合が減少していくと、経費として計上できる金額が年々減少し、節税効果も弱くなっていきます。
課税所得が900万円以下の場合
課税所得が900万円以下の場合、不動産投資による節税効果は限定的となり、投資のリスクに見合った節税上のメリットが得られにくいのが現状です。
主な理由として、収益税・住民優遇と譲渡差異が小さいことが挙げられます。5年以上保有して売却する際の長期譲渡結果は約20%です。
この差はわずか3%程度であり、節税効果としては微々たるものといえます。
さらに、減価償却費による利益通算で結果を圧縮しても、適用される方がどんどん安くなるために、節税額は思ったほど大きくなりません。
節税効果を得やすいケース
不動産投資は、適切な戦略を立てることで効果的な節税手段になります。ただし、すべての不動産投資が同じように節税効果を得られるわけではありません。
ここでは、特に節税効果が得やすいケースについて詳しく解説します。
課税所得が900万円以上の場合
課税所得が900万円以上の場合、不動産投資による節税効果が大きく表れやすくなります。
国税庁で発表している、所得税の税率は以下の通りです。
課税所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円~194万9千円 |
5% |
0円 |
195万円~329万9千円 |
10% |
9万7,500円 |
330万円~694万9千円 |
20% |
42万7,500円 |
695万円~899万9千円 |
23% |
63万6,000円 |
900万円~1799万9千円 |
33% |
153万6,000円 |
1800万円~3999万9千円 |
40% |
279万6,000円 |
4千万円以上 |
45% |
479万6,000円 |
課税所得が高いほど税率が高くなり、900万円を超えると23%から33%まで大幅に上昇します。
税率の上昇に伴い、控除額も63.6万円から153.6万円まであがることにより、課税所得を抑えられ、節税目的で不動産投資をする意味があるといえるでしょう。
築古物件や木造住宅
築古や木造住宅への投資は、節税効果が得やすいケースとされており、法定耐用年数が短いため、減価償却費を短期間で大きく計上できます。
例えば、木造建物の法定耐用年数は22年ですが、築22年を超えた物件は4年で償却できることにより、初期の数年間で多額の減価償却費を計上し、所得を圧縮できます。
築古物件や木造住宅への投資を検討する際は、短期的な節税効果だけでなく、長期的な収益性や出口戦略も含めて総合的に判断することが重要です。
不動産投資の出口戦略については、以下の記事でも詳しく解説しています。
不動産投資の出口戦略を成功するための5つのポイント!売却時にかかる費用やリスクも解説
土地価格の割合が低い物件
不動産投資において、土地価格の割合が低い物件は、減価償却の対象となるのが建物部分のみのため節税効果が高くなる傾向があります。
例えば、5,000万円の物件で土地価格が1,000万円、建物価格が4,000万円の場合、4,000万円分を減価償却の対象とできます。
一方、同じ5,000万円でも土地価格が3,000万円、建物価格が2,000万円の物件では、減価償却の対象は2,000万円に限定されます。
土地価格の割合が低い物件は、一般的に都心から離れた郊外エリアに多く見られます。
このような物件を選ぶと、大きな減価償却費を計上でき、収益を効果的に圧縮することが可能になります。
複数の物件を運用
複数の物件を運用することで、不動産投資における節税効果をより効果的に得られる可能性があります。
物件数が多いことで、減価償却費や経費の総額が大きくなり、課税所得を圧縮する効果が見込めるでしょう。
また、複数物件の運用は、事業規模の拡大につながります。一般的に、戸建てなら5棟以上、アパートやマンションでは10室以上の賃貸を行っている場合、税務上『事業的規模』と認められ、青色申告特別控除の上限金額が事前にもらえます。
さらに、複数の物件の運用は、リスク分散の観点から有効です。 一部の物件で空室や修繕費用が発生しても、他の物件からの収入で補えるため、全体的なバランスがとりやすくなります。
ただし、複数物件の運用には管理の手間や資金面での負担も増加するため、自分の状況を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に計画を立てましょう。
不動産投資の真の目的を考える
不動産投資の目的は、安定した収入源の確保や節税だけにとどまりません。より長期的かつ総合的な視点でしっかりと考える必要があります。
不動産投資の真の目的は、長期的な資産形成にあります。
安定した家賃収入を得ながら、物件の資産価値も維持・向上させることで、総合的な資産形成を進められます。
不動産は現物資産であり、インフレに強い性質を持っています。
経済情勢の変化に伴い、不動産の価値は一般的に上昇傾向にあるため、長期的な資産価値の保全と成長が期待できるでしょう。
さらに、不動産は子どもや孫にも引き継がれる資産になります。 きちんと管理していれば、何世代にも渡って価値ある資産として引き継がれるでしょう。
不動産投資は生命保険の代わりにもなります。ローン契約時に加入する団体信用生命保険により、万が一の際にも家族の生活を守ることができます。
資産形成としての不動産投資を成功させるには、長期的な視点と戦略的なアプローチが必要です。物件選びや資金、税務戦略など、節税に囚われずに総合的な視点から投資を検討する必要があります。
まとめ
不動産投資が節税になるかどうかは、課税所得や選ぶ物件、ローンの返済状況によって変わります。節税だけに囚われず、総合的な視点から投資を検討し、計画を立てることが成功の鍵となります。
アセットテクノロジーでは、不動産投資の専門家として投資者の不動産運営をサポートします。収支状況の確認や賃貸契約などの不動産管理業務をPCや不動産管理アプリで簡単に行えます。
不動産投資でお困りのことがあれば、アセットテクノロジーにご相談ください。