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不動産投資の法人化とは?
不動産投資の法人化とは、不動産投資を個人ではなく、法人として行うことです。融資を行う金融機関と投資家の間に「資産管理会社」を設立します。これまで個人で所有していた不動産は、資産管理会社が所有することになります。
資産管理会社とは、一般の法人のように営業はせず、資産の管理を目的とした会社のことです。投資家本人が資産管理会社の代表者となるため、業務内容自体に変化はありません。これまで通り、不動産を購入し、それを運用して収益を上げていきます。
個人投資家と副業の違い
不動産投資は個人ではじめている人も多く、必ずしも法人化しなければならないというわけではありません。
不動産投資で法人化するためには手間や費用がかかりますが、節税効果が期待できることから、検討する人が多いと考えられます。
個人投資家に比べると、法人は経費として計上できる支出の範囲が広く、課税所得が抑えやすいことが特徴です。
不動産投資で得た所得を家族に役員報酬として分散させれば、オーナーにすべての所得を集中させるよりも納税額が抑えやすくなります。
また、法人は個人と課せられる税金の種類が異なっており、所得に課せられる税率も異なります。
個人であれば不動産投資で得た所得に対して所得税が課せられますが、法人の場合は法人税が課せられるのが一般的です。
通常の所得税に比べ、法人税は税率が低い傾向にあるため、より高い節税効果が期待できます。
一定以上の所得を得ながら個人のままで不動産投資をしていると、法人税より高い税率が適用される恐れがあるため、一定額以上の課税所得がある場合は法人化を検討してみましょう。
不動産投資で法人化に向いている人
不動産投資で法人化に向いているのは、次のような人です。
課税所得が900万以上ある人
所得税は、所得が大きいほど税率が高くなる累進課税制度を採用しています。所得が4,000万を超えると、45%の所得税が課税されます。
一方で、普通法人の場合、所得税率は最大でも23.2%と、個人と比べて低く設定されています。そのため、所得が大きくなるほど法人化による節税効果が期待できるのです。状況に応じて異なりますが、目安として、課税所得が900万を超えたあたりから法人化のメリットが生じます。
不動産投資を本業として行いたい人
個人と法人では、金融機関などの第三者からの信用度が大きく異なります。
一般的に、個人よりも法人の方が金融機関からの評価が高く、融資を受けやすくなったり、大きな融資額を借り入れやすくなったりするため、投資の規模を拡大したい人に向いています。
不動産投資で法人化に向いていない人
不動産投資をしている場合、法人化をする恩恵は大きいですが、すべての人が法人化に向いているとは限りません。
法人化の恩恵を最大限活かすためには一定額以上の所得が必要となるため、検討する際は所有している不動産の状況や収入などが十分か確認しておきましょう。
ここでは、不動産投資で法人化に向いていない人の特徴を紹介します。
所有物件が会計上赤字の人
現在所有している不動産が会計上赤字の状態で、サラリーマンとして900万円以上の給与所得がある場合は、法人化に向いていないといえます。
理由としては、不動産の赤字と個人の給与所得を損益通算することで、課税される税金を減らすことができるからです。
損益通算とは、赤字の所得を黒字の所得から差し引くことであり、不動産所得と給与所得を相殺することで、課税所得を圧縮できます。
また、不動産を5年以上所有していて、土地や建物を譲渡する場合は、個人であれば物件の譲渡税を20%で抑えられるため、実際の納税額を少なくすることが可能です。
所有物件が会計上赤字の状態で法人化した場合は、個人のときよりも納税額に50万円以上の差が出ることもあるため、法人化を検討しているのであれば注意しましょう。
不動産所得が330万円以下の人
専業で不動産投資をしている人で、不動産所得が330万円以下の場合は法人化が向いていない可能性があります。
不動産所得が330万円以下の状態でかかる個人の税率は20%、法人の場合は15%と、法人の方が税率は低いです。
しかし、法人化にかかるコストや手間を考えると、法人化することで得られる恩恵は多くはありません。
この状態の場合であれば、個人も法人も最終的に支払うコストに大差はないため、手間と費用をかけずに、個人のままで活動するのが良いといえるでしょう。
また、不動産所得が195万円以下の場合は、個人と法人ともに税率は15%のため、法人化するメリットはほとんどありません。
法人化は多くの不動産所得を得ている場合に有用な手段のため、個人投資家や副業として不動産投資をしている場合は、法人化する必要性はないといえます。
不動産投資で法人化するメリットとデメリット
そもそも不動産投資の法人化とは、不動産の所有者が代表となり、株式会社などの法人を立てて資産管理会社を設立することです。個人で運営するのではなく、法人として不動産投資を運営します。
代表となった不動産所有者は、資本管理会社に資本を出資して、管理会社が不動産を購入、管理、運営をします。収入は会社から役員報酬という形で受け取ります。
ここでは、そんな不動産投資事業の法人化によるメリットとデメリットを紹介します。
メリット
メリットは、主に以下の5つが挙げられます。
節税効果が高い
法人化によって高い節税効果が期待できます。
たとえば、不動産所得が高額になった際、課される税率は個人事業主として支払う所得税よりも、法人として支払う法人税の方が低くなります。そのため、法人化することで税率を下げ、課税額を抑えられるのです。
そのほかにも、相続税対策ができるなど、法人化には個人事業主ではできない節税対策が行えます。
より多くの経費を計上できる
法人化は個人事業主よりも経費計上できる科目が多くあります。法人になると、退職金の積み立てや家族を役員として役員報酬を支払うことも可能になり、これらは経費として計上できます。
また、個人事業主が減価償却費を毎月決められた額で償却しなければならないのに対し、法人化は任意で償却できます。これにより利益の調整が可能となるなど、これも法人化ならではのメリットです。
不動産投資で経費になる支出については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
→不動産投資における経費の判断基準は?経費になる支出とならない支出を詳しく解説!
決算月を任意に設定できる
個人事業主は原則、2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。しかし、法人の場合は、決算月を任意に設定できるため、繁忙期と決算月を重ならないようにできます。
決算では、帳簿付けや決算書類の作成、税金の計算など、多くの作業が必要です。そのため、入退去が多い3月・4月などを避けて決算月を設定すれば、決算作業によって本業がおろそかになることがありません。
損失の繰越期間が長い
確定申告の際、青色申告を選び申告している場合は投資運用で出た損失を翌年以降に繰り越すことが可能です。これは個人でも法人でも同じですが、個人と法人とで繰り越せる期間が異なります。
個人の場合は3年間、法人化なら最大10年と、法人化の方が繰り越せる期間は長くなります。
融資を受けやすくなる
個人事業主と法人では、法人のほうが銀行などの金融機関から融資を受けやすくなります。
個人事業主は、開業届を出せば誰でもなることができますが、法人には一定の資本金を用意したり、法務局で設立登記をしたり、設立のために多くの手続きが必要になります。
つまり、法人は資金力があると判断され、第三者からの信頼が高くなり、融資を受けやすくなります。融資を受けやすくなれば、新たに事業を拡大したり、急な修繕などの資金を確保できたりと多くのメリットが生じます。
デメリット
メリットがある一方、法人化にはデメリットもあります。主に以下の3つがあります。
開業に手間や費用がかかる
法人設立にはさまざまな準備と手続きが必要なので手間がかかります。しかし、法人設立に必要な資料作成や手続きは専門家に依頼する方法もあります。
ただ、法人化への費用が25~30万円程度かかるので、専門家へ依頼となると、さらに費用がかかります。
赤字でも法人住民税の負担がある
法人化すると法人住民税の支払い義務が発生します。法人住民税は赤字であろうと納税しなければいけません。自治体によりますが、おおよそ年間7万円を負担します。
ランニングコストがかかる
法人化することで税務処理や会計処理が複雑化します。確定申告や決算書の作成のため税理士や会計士に依頼することにもなるでしょう。
さらに、従業員への社会保険加入など、法人を維持するための必要コストが出てきます。
副業と判断される場合がある
会社員の傍ら不動産投資を行っている場合など、本業と不動産投資を兼業している場合、不動産投資を副業と判断されることがあります。
勤務先の会社が副業を禁止している場合、不動産投資が副業と判断されれば、就業規則違反として処分を受けるおそれがあります。とくに公務員は原則、副業が禁止となっているため注意が必要です。
不動産投資で法人化する適切なタイミング
不動産投資での法人化は、基本的に任意のタイミングで行えますが、いつでも良いというわけではありません。
法人化のメリットを最大限活かすためには、適切なタイミングで行うことが重要です。
ここでは、不動産投資で法人化する適切なタイミングを紹介します。
物件購入時に法人化
不動産投資で今後規模を拡大して、収入を増やしていこうと考えている人であれば、物件を購入するタイミングで法人化すると良いでしょう。
法人化する際は、登記費用として30万円、税理士費用として年間約20万円が必要です。
個人投資家から法人化する場合は、通常の不動産売買と同様に、登記費用と不動産所得税がかかるため、余分なコストがかかってしまいます。
これから不動産投資に力を入れていく予定なのであれば、はじめから法人化することで、個人投資家から法人にシフトする際の費用を抑えることが可能です。
はじめから法人化しておけば初年度から節税効果が得られるため、専業として活動していくのであれば、法人化を検討しても良いかもしれません。
ただし、法人化するためには法人設立の手続きや法人名義での不動産所有など、個人投資家では発生しない手間があるため、注意が必要です。
物件の規模で法人化
購入しようとしている物件の規模が大きく、高額な資金を要する場合は、はじめから法人化しておくことで金融機関から融資がおりやすくなる可能性があります。
個人投資家が金融機関で借入をする場合、ローンを利用するための年齢制限や契約期間に制限がかかるケースが多く、思うように資金が借りられないことも少なくありません。
一方で、法人の場合は年齢制限や契約期間の制限がないため、規模が大きい物件を購入するための高額なローンが組みやすくなります。
規模が大きい物件は借入金だけではなく、家賃収入も高額になりやすいため、はじめから法人化しておけば節税効果を高めることが可能です。
規模が大きい物件は法人化のメリットが多いため、これから本格的に不動産投資をする予定があるのであれば、はじめる段階で法人化しておくと良いでしょう。
収入で法人化
不動産投資をしていて、法人化したときの税率と個人として投資したときの税率が逆転した場合は、法人化する良いタイミングといえるでしょう。
以下は、所得税率と法人税率の比較表です。
【所得税率】
所得金額 | 税率 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% |
3,300,000から6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% |
40,000,000以上 | 45% |
【法人税率】
区分 | 適用関係(開始事業年度) | |||||
平成28年4月以降 | 平成30年4月以降 | 平成31年4月以降 | ||||
普通法人 | 資本金が1億円以上の法人 | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | 15% | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||||
年800万円超えの部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.40% | 23.20% | 23.20% |
上記の表からもわかるように、個人で不動産投資をする場合は、課税所得が900万円を超えたあたりから法人税の税率を上回るようになります。
課税所得が900万円を超える状態であれば、法人化した方が税金の負担が軽減できるといえるでしょう。
ただし、上記はあくまで税率の単純な比較のため、実際の税負担は異なる可能性があります。
個人投資家や法人であっても、所得税と法人税以外にも課税される税金があるため、法人化を検討する場合は注意が必要です。
不動産投資で法人化する流れ
不動産投資の法人化はどのように進めるのでしょうか。流れを4つのステップで紹介します。
1.会社設立の準備をする
まずは社名や本店所在地、発起人、代表者、事業目的等を決めます。
社名(商号)は、同一所在地で同一商号をつけることができないというルールがあるので注意が必要です。本店所在地は、事務所やバーチャルオフィス(登記可能か確認要)、自宅でも問題ありません。
事業目的は不動産事業です。事業目的の最後に「前各号に付帯する一切の事業」という文言を入れておくと、事業の幅が広がりますので加えておくと良いでしょう。
法人設立において資本金は1円でも設立可能ですが、設立時の運営コストを考えて数十万円は用意しておくと良いでしょう。
2.印鑑や定款を作成する
会社設立にあたっては代表者印、社印、銀行印の3つの印鑑が必要です。印鑑は即日作成できるものもありますが、手彫りにこだわるのであれば2週間程度かかることもあるので早めに準備しておきましょう。
定款の作成ですが、設立する法人が株式会社の場合は、定款を公証役場に持ち込み、公証人の認証を受ける必要があります。合同会社なら定款認証は不要です。定款認証は、本店所在地の都道府県内のみの公証役場で手続きできます。
定款の作成や認証は初めて取り組む人にとっては難易度が高いものです。書類に不備があれば、何度も出直さなければなりません。公証人に事前確認を依頼してミスを未然に防ぐ、あるいは司法書士に作成を依頼するなど、検討しても良いでしょう。
3.必要書類を準備する
つづいて登記に必要な書類を準備します。登記申請書・取締役の印鑑証明書・資本金の払込みを証明する書類などがあります。
【登記申請書】
登記申請書は申請に必要な書類で、社名などを記入して作成します。フォームは法務局のWEBサイトからダウンロードできます。
【取締役の印鑑証明書】
3ヶ月以内に取得したものを用意します。
【資本金の払込を証明する書類】
資本金を振り込んだ後に通帳の表紙や記帳欄、個人情報欄などをコピーし製本したものです。
株式会社か合同会社かによって揃えるものが異なりますので、確認しておきましょう。
4.会社設立の届け出を提出する
登記申請は本店所在地を管轄する法務局で行い、設立登記の申請と法人実印登録をします。申請方法は窓口・郵送・オンラインの3つです。
登記申請日が会社設立日になります。会社設立日に希望日があるなら、その日に間に合うように準備を進めましょう。郵送の場合は法務局に申請書が届いて受付された日が会社設立日になるので注意が必要です。
登記が完了した後に、税務署・市町村役場・年金事務所などに会社設立の届け出を提出します。税務関連の手続きは期限があるので、速やかに手続きしましょう。
法人化した後の手続き
不動産投資における法人化は、会社を設立して終わりではなく、その後もさまざまな手続きがあります。
適切に法人として不動産運営していくためにも、必要な手続きは漏れがないように確認しておくことが大切です。
ここでは、法人化した後の手続きを紹介します。
税務署・都道府県税事務所の書類を提出
法人化の手続きが完了した後は、法人税を支払うための手続きを税務署や都道府県税事務所で行わなければなりません。
税務署や都道府県税事務所には、法人設立届出書と源泉所得税関係の届出書、消費税関係の届出書の提出が必要です。
また、状況次第では青色申告の承認申請書や減価償却資産の償却方法に関する書類など、さまざまな書類の提出が必要になる場合もあるため、漏れがないように確認しておきましょう。
必要書類については、国税庁『No.5100 親切法人届出書類』にて確認できるため、ぜひご覧ください。
年金事務所に書類を提出
不動産投資で法人化した場合は、オーナーの社会保険の加入が必要になります。
年金事務所では、健康保険や介護保険、厚生年金保険などに加入する手続きを行わなければなりません。
社会保険に加入しておかなければ、オーナーが従業員として1人で事業を営む場合でも、役員報酬として給料が受け取れないため、忘れずに手続きをするようにしましょう。
労働基準監督署とハローワークに書類を提出
不動産投資で法人化した後に、従業員を1人以上雇用する場合は、労働保険に加入しておく必要があり、労働基準監督署とハローワークで手続きを行います。
ここでいう労働保険とは、雇用保険と労働者災害補償保険を総称したものです。
労働基準監督署には労働保険成立届と概算保険料申告書、ハローワークには雇用保険適用事務所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出します。
働いてくれる従業員を守るための重要な手続きとなるため、雇用する予定がある人は必ず手続きをするようにしましょう。
法人化する際に注意しておきたいこと
個人投資家が法人化する際には、いくつかの注意点があります。法人化する際に特に注意しておきたいことは、次の2点です。
長期保有後の売却に税制優遇制度がない
個人と法人では、所得や税金の考え方が異なります。
個人は収入の種類によって所得の区分が決められており、所得に応じて税金の計算方法が異なります。一方、法人はすべての収入を合算して税金を計算するため、収入の種類に応じた税金の計算方法に違いはありません。
個人の場合、保有期間が5年を超えると、税率が低くなる優遇制度があります。しかし、法人は収入の種類に応じた税金の計算方法に違いがないため、個人のように長期保有後の売却に税制優遇制度はありません。
法人のお金は自由に使えない
個人の場合、税金を計算するために便宜上、事業のお金とプライベートのお金を分けますが、個人のお金であることには変わりありません。そのため、投資により得たお金は、ある程度、個人が自由にお金を使えます。
一方、法人の場合、法人と代表者である個人とはまったくの別人格です。そのため、法人のお金を個人が自由に使うことはできません。代表者は、法人から役員報酬という形で受け取ったお金の中からやりくりをする必要があります。
まとめ
不動産投資での法人化は、設立のための手続きや費用などの手間はかかりますが、税金面のおけるメリットが多くあり、節税対策として有用な手段です。
法人の設立は任意のタイミングで行えますが、いつでも良いというわけではありません。
法人化には適切なタイミングや状況というものがあり、設立するタイミングや時期を誤れば、かえって損をするリスクがあります。
不動産投資で法人化を検討する際は、タイミングに加え、法人化が自分にとって悪影響にならないか吟味することが大切です。
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不動産の入居状況や管理状況、毎月の収入状況など、不動産投資で必要な情報が一目で確認できる便利なスマートフォンアプリをご用意しているため、不動産管理を効率化させることが可能です。
不動産管理で不安がある方やこれから不動産投資をはじめようと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。