住宅ローンと不動産投資ローンの違い
住宅ローンと不動産投資ローンは、目的や性質が異なることもあり併用自体は可能です。まずは、ふたつのローンにどのような違いがあるのかを理解しておきましょう。
用途
住宅ローンは自己居住用の物件購入を目的とするローンで、不動産投資ローンは第三者に貸し出す収益物件を購入するための事業用ローンです。
投資用物件の購入には、住宅ローンは利用できず、不動産投資ローンを利用しなければなりません。
住宅ローンを借りて住宅用の物件を購入した後に、用途を賃貸運用に変更するのも契約違反とみなされます。
用途外の利用をすると、金融機関からローンの一括返済を求められる可能性があるため注意が必要です。用途をしっかり理解して、誠実な利用を心がけてください。
金利
居住用物件には事業性がなく、金融機関の貸し倒れリスクがないことから、住宅ローンは不動産投資ローンと比べてかなり金利が低く設定されています。
一方、不動産投資ローンは事業目的のため、比較的高めの金利が設定されています。金利水準は住宅ローンの約3倍です。
審査基準
住宅ローンの審査は、職業や年収、勤続年数などの個人属性が対象です。会社員や公務員など安定した収入があると評価が高くなる傾向があります。
不動産投資ローンでも個人属性が審査されますが、加えて購入予定の物件の評価も加味されます。物件の立地や築年数、構造などから、資産価値が高いと評価されれば、融資を受けやすくなるでしょう。
融資額
住宅ローンの融資可能額は、年収の5~6倍ほどが一般的です。不動産投資ローンは、年収とあわせて購入物件から得られる家賃収入も加算されるため、条件によっては年収の10~20倍ほどの融資が受けられる可能性もあります。
不動産投資ローンの金額の目安は以下の記事でもご紹介しています。
【年収別】不動産投資ローンの金額目安と審査時のポイントを紹介
返済期間
返済期間は、どちらも最長35年が一般的です。ただし、不動産投資ローンでは、物件の法定耐用年数内の融資となることがあります。
また、住宅ローンには借入時と完済時の年齢上限が設定されますが、不動産投資ローンでは年齢が設定されていないこともあります。これは不動産投資ローンが家賃収入から返済が行われることに関係しています。
対象年齢
住宅ローンのほとんどは、申込時や完済時の年齢に制限が設けられています。融資を行う金融機関によって異なるものの、申込時は20歳以上70歳未満、完済時は75~80歳未満としている場合が多いです。
このような年齢の範囲内でも、健康状態に問題がある場合は完済できない可能性があると判断されて、借入できないときもあります。
一方で、不動産投資ローンの場合は申込時の年齢に条件がなく、完済時の年齢に制限がないことがほとんどです。高齢の方でもローンを組んで不動産投資ができ、相続対策にも活用できます。
不動産投資ローンと住宅ローンを組む順番で影響がある?
マイホーム購入には住宅ローンを組むのが一般的です。マイホームを購入しながら不動産投資を行いたい場合、住宅ローンと不動産投資ローンのふたつを併用することになりますが、先に組むローンが後に組むローンの審査に影響を与えます。
そこで問題となるのが、先に住宅ローンを組んでマイホームを購入するのか、先に不動産投資ローンを組んで不動産投資を始めるかという点です。
一般的には不動産投資を先に始めたほうが良いとされますが、どちらもメリット・デメリットがありさまざまな見方ができます。将来的なことまでよく検討した上で決定することが重要です。
住宅ローンを先に組むメリット・デメリット
まず、住宅ローンを先に組んだ場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
住宅ローンを先に組むメリットは、ほかに借入がなければ希望額の融資を受けられる可能性が高いことです。自宅に多くの予算を充てられるため、マイホームの選択肢が増えます。
職場や学校から近い場所が良い、子育てがしやすいエリアに済みたい、立地が良いなど、希望に応じた住宅を選びやすくなります。
住環境を重要視したい場合には、先に住宅ローンを組んでマイホームを購入するほうが良いでしょう。
デメリット
住宅ローンを先に組むデメリットは、不動産投資のスタートが遅くなるおそれがあることです。マイホーム購入には住宅ローンが利用できるものの、頭金を一定額入れなければならず、自己資金が減ることになります。資金状況によっては不動産投資のための費用を確保するのに時間を要するでしょう。
また、住宅ローンを組んでいることで、不動産投資ローンの審査にマイナスの影響をおよぼすことがあります。返済額が多くなりすぎると返済不能に陥るリスクが高まるからです。
そのため、先に不動産投資ローンを組む場合に比べ、限られた資金しか調達できないかもしれません。後々不動産投資を始めたいと考えているなら、不動産投資ローン利用を前提とした資金計画を立てる必要があるでしょう。
不動産投資ローンを先に組むメリット・デメリット
不動産投資ローンを先に組むメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
不動産投資ローンを先に組むメリットは、賃貸経営が順調であれば家賃収入をマイホーム購入資金に充てられることです。投資で自己資金を増やしておけば、住宅ローンで有利な金利が適用される可能性があり、マイホーム購入後の返済における負担を減らせるでしょう。
住宅ローンと不動産投資ローンを比較したとき、融資の審査が厳しいのは不動産投資ローンです。そのため、住宅ローンを先に組むと、与信枠が減って不動産投資ローンの審査に通りにくくなりがちです。与信枠とは、個人が金融機関から借りられる金額の上限を指します。与信枠に余裕がある状態で先に不動産投資ローンを借りるほうが、審査に通りやすいともいえます。
また、融資先の金融機関によって収益物件の担保価値や家賃収入が評価されると、住宅ローン審査が有利になる可能性もあります。
不動産投資ローンが先であれば、残債分を家賃収入でカバーできることもメリットです。同時に、安定した家賃収入を得られていれば、返済能力を裏付けるため、住宅ローンの融資にも有利に働くのです。
なお、フラット35なら不動産投資ローンの残債は関係なく住宅ローンを組むことができます。フラット35を借りられるのは「一棟の共同住宅を保有するためのローンに限る」とされていますので、該当する方はチェックしてみてください。
デメリット
不動産投資ローンを組んで賃貸経営を始めたあと赤字経営が続くと、不動産投資が負債とみなされ、住宅ローン審査に悪影響が出るおそれがあります。
結果的に、希望額での融資が叶わず、マイホームを妥協しなければならなくなるおそれもあります。給与収入との損益通算で節税を目的としている場合は特に注意が必要です。
また、収入に対して借入額の割合が高い場合も住宅ローンの審査に影響が出ることがあります。こちらは次項で詳しく説明します。
住宅ローンと不動産投資ローンを併用する際の注意点
住宅ローンと不動産投資ローンは併用が可能です。しかし、ローンの種類が異なることによる取り扱いの違いや、収入に対する借入金の割合に注意しましょう。
不動産投資ローンは「住宅ローン控除」の適用外
住宅ローンを組んだ場合、住宅ローン控除という税制優遇を受けられます。2022・23年は年末のローン残高の0.7%について、13年間所得税の控除を受けられます。
しかし、事業用の不動産投資ローンについては、住宅ローン控除は適用対象外です。
申し込み時の「返済比率」に注意
返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合をいいます。返済額には、不動産投資ローンはもちろん、住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、カードローンなどが含まれます。この返済比率が30~35%を超えた場合、住宅ローンが利用できないケースが多いです。
それに対して、不動産投資ローンは事業用であり物件の収益性も判断されるため、返済比率は重視されない傾向があります。住宅ローンと不動産投資ローンを併用する場合で住宅ローンを後に組む場合には、返済比率にも注意しましょう。
返済比率を抑える方法については、以下の記事でご紹介しています。
投資用物件の「売却リスク」に注意
不動産ローンの返済に行き詰まったときは、物件の売却を検討しましょう。残債を上回る金額で物件を売却できれば、不動産投資ローンを一括返済して負債をなくせるためです。
しかし、不動産は必ず購入価格と同じ金額で売却できるとは限りません。売却価格がローンの残債を下回ってしまうケースも十分予想できます。
売却価格がローンの残債を下回ると、金融機関が売却を許可してくれません。住宅ローンと不動産投資ローンのふたつを返済していく必要が生じ、破綻リスクが一気に高まってしまうためです。
特に、新築マンションをフルローンで購入したときに起こりやすいリスクです。
人生設計を考慮してローンを組む順番を決める
不動産投資ローンと住宅ローンを併用して融資を受けるのは可能です。しかし、どちらを先に借りても、後で受ける融資が不利になる可能性が高いです。そのため、不動産投資ローンと住宅ローンを組む順番は、人生設計に大きく影響を与えます。
ローンを併用したい場合、まずは金融機関に融資上限額を確認することをおすすめします。また、不動産投資による資産形成を優先させるか、それともマイホームを取るのかをしっかり考えておきましょう。
まとめ
マイホーム購入を予定している方が不動産投資を始めたい場合、ローンを併用することになるため、マイホーム購入と不動産投資のどちらを先に行うかをよく検討する必要があります。
一般的には不動産投資を先にするほうがメリットは大きいといわれますが、どちらを先に始めてもメリット・デメリットはあるため一概にはいえません。
迷った際は、金融機関に融資上限額を確認することをおすすめします。人生設計も踏まえて、自分に合った方法を選びましょう。