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サブリース契約は不動産投資のリスクを軽減できる一方で、多くの問題点を抱えています。
これから不動産投資をはじめようと思っているものの、サブリース契約の是非に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。安定した収入が得られるという魅力的な言葉に惹かれつつも、契約の複雑さや長期的なリスクに不安を感じるのは自然なことです。
この記事では、サブリースの基礎知識と契約リスクについて詳しく解説します。サブリース契約の基礎知識から契約時の注意点まで、幅広い情報を網羅しています。
サブリース契約を検討している方はぜひ最後までお読みください。
サブリースとは?基礎知識5つを紹介
サブリースとは、物件の経営や管理のリスクを回避する賃貸管理の一種です。
サブリース会社(不動産管理を行う管理会社)が、物件を所有するオーナーから建物を一括で借り上げ、部屋を第三者に貸す(転貸・又貸しする)などの賃貸経営を一元管理してもらうことができます。
サブリース契約には家賃保証制度があり、物件を所有するオーナーは、物件の入居状況に関わらず保証賃料が支払われるのが大きな特徴です。
この章では、サブリースについて、以下の内容を解説します。
・サブリースの仕組み
・他の管理方法との違い
・サブリースの種類
・サブリースの費用相場
・サブリースの契約期間
サブリースの仕組み
サブリースは、サブリース会社が一括借り上げ、入居希望者に部屋を転貸する一連のシステムのことです。
オーナーとサブリース会社の間で結ばれる「マスターリース契約」と、サブリース会社と入居者間の「サブリース契約」をまとめて、サブリースと言われています。
サブリースでは、一括借り上げをして管理や運営も担うため、手間がかからず、空室があっても収入を得ることができます。具体的には、以下のような業務をオーナーに代わって対応してくれます。
- 入居者の募集
- 入居者との賃貸借契約の締結
- 入居者から得た家賃、敷金、共益費などの金銭の管理
- 物件の清掃
- 物件の定期的な点検と修繕
通常、オーナーが各部屋の入居者と直接賃貸の契約をするため、入居者とのやり取りが生じます。しかし、サブリースの場合は、オーナーと契約するサブリース会社と入居者で賃貸契約をするため、入居者と直接やり取りをする必要がないのも特徴です。
入居者が支払う賃料も、サブリース会社経由で受け取るため、仮に入居者が家賃を滞納してもサブリース会社から賃料を受け取ることができます。
手数料は必要ですが、運営や管理にかかる手間を一手に引き受けてくれるのは、サブリースの大きなメリットです。
サブリース契約のお金の流れ
次にサブリース契約のお金の流れを見てみましょう。
先ほど少し触れましたが、サブリース契約では、入居者がサブリース会社に家賃を支払います。サブリース会社は、家賃保証(リース料金)という形で「一定の金額」をオーナーへ支払います。
以下の図で収入がどのように生まれるのか、確認してみましょう。
※敷金は建物の原状回復のためサブリース会社が管理
サブリース会社とオーナーの取り分は、下記のようになっています。
サブリース会社 | ・満室時の賃料合計から「10~20%」の管理手数料を差し引いた金額 ・礼金 ・更新料 |
オーナー | ・満室時の賃料合計「80~90%」 |
オーナーは、家賃保証(リース料金)として満室時の賃料合計「80~90%」が月々定額で支払われ、それが収入となります。
想像できるように、下記の条件で具体的に見てみましょう。
【前提条件】
・オーナーの所有物件数:7部屋
・1部屋あたりの家賃:10万円
・満室時の合計家賃:70万円
この前提条件の場合、月々の満室の家賃の合計「700,000円」が丸ごと入ってきたとすると、サブリース会社の収入は70,000~140,000円。オーナーの収入は「560,000~630,000円」です。
たとえ、空室があったとしても、サブリース会社がオーナーへ支払う「560,000~630,000円」は変わりません。
しかしサブリース会社は、入居者から受け取る賃料は空室が発生すればするほど、収入が減ってしまいます。
空室が多くなり過ぎると、オーナーへ支払う賃料よりもサブリース会社の取り分が低くなってしまいます。
その結果、家賃保証の見直しが行われ、想定よりも収入が減ることを覚えておきましょう。
他の管理方法との違い
先述の通り、サブリースは、賃貸管理の一種です。管理方法は、大きく分けるとサブリースの他に、「自主管理」「管理委託」があります。
サブリースは、他の管理方法と比べると以下のような特徴があります。
・家賃保証がある
・建物の管理や経営を委託できる
・委託する業務の範囲が広い
サブリースには家賃保証がついており、空室があっても家賃収入を得られます。
また、手数料を支払うことで、サブリースのサービスを行う不動産会社が、オーナーに代わって建物の管理や経営を行う点は、他の管理方法と大きく異なる特徴です。
入居者の募集、契約の管理から、大変な入居後の家賃・建物管理、トラブルへの対処まで、建物の管理・経営まで、幅広い業務の全てを任せることができます。
サブリースの種類
サブリースには、大きく分けると「家賃保証型」と「パススルー型」の2つの形態があります。
① 家賃保証型(空室・滞納によるリスクなし) |
空室や入居者の滞納などに関わらず、一定の家賃収入が保証される |
② パススルー型(空室・滞納によるリスクあり) |
入居者から回収した賃料に応じた金額が保証されている |
一般的なサブリースは家賃保証型ですが、一部の不動産会社ではパススルー型のサービスを展開しています。
家賃保証型とパススルー型の違いは、家賃収入がない場合の家賃保証の有無です。
家賃保証型は、名前の通り、空室や滞納により家賃収入がない状況でも、サブリース会社から一定の家賃収入を得られるのが特徴です。
一方のパススルー型は、管理運営は行ってくれますが、家賃保証がありません。パススルー型の場合、空室や滞納によるリスクが生じますが、サブリース会社から支払われる賃料の利率が家賃保証型よりも高く、入居率が高いほど高収入が期待できます。
サブリースの費用相場
一般的な家賃保証型のサブリースの費用は、家賃の10〜20%が相場です。
家賃収入だけで比較すると、サブリースは他の管理方法よりも家賃収入の金額が低くなります。
ただし、サブリースには家賃保証があります。空室や家賃の滞納があっても、満室時の80〜90%分の家賃収入を安定して得ることができます。
管理委託や自主管理の場合、空室の数だけ収入は0になるため、空室が多い物件は、手数料を差し引かれてもサブリースのほうが安定した収入を得られる可能性があるでしょう。
サブリースの契約期間
サブリースの契約期間は、各管理会社によって異なりますが、10年以上が一般的です。
2年間契約などの短期契約もありますが、10年・20年・30年など、長期契約となるケースが多く見られます。
新築や築年数が浅いほど長期契約となりやすい傾向があり、築年数が古い物件でも10年以上となることが多い状況です。
サブリース契約の基本項目4つ
冒頭でも紹介した通り、サブリース契約とは、サブリース事業を営む不動産会社(以下、サブリース会社)が賃貸物件をオーナーから借り上げ、入居者へ転貸(又貸し)するための契約です。
通常の賃貸契約では、あなたと入居者で賃貸借契約を締結しますが、サブリースでは、オーナーのあなたとサブリース会社と賃貸借契約を締結します。
契約におけるポイントを押さえておかなければ、期待通りの収入が見込めなくなるだけでなく、大きな損失を被る可能性があるため、基本項目について正しく理解することが重要です。
サブリース契約を行うときは、次の4つの基本項目をよく確認しましょう。
▼サブリース契約の基本項目
① 賃料
② 契約内容・契約解除
③ 契約の期間
④ 免責期間
※各見出しへリンクできるようになっているため、もし気になる項目があれば、クリックしてご確認いただけます。
次章以降で、詳しく解説します。
サブリース契約の項目①|賃料
サブリース契約でまず確認すべき項目は、賃料です。
サブリース契約では、サブリース会社へ手数料を支払うことで、賃貸の管理・運営と毎月一定の賃料を家賃保証として受け取る仕組みとなっています。
家賃保証の賃料は、サブリース会社が設定した賃料から10〜20%の手数料を差し引いた80〜90%が相場です。
ですが、サブリース会社から賃料の見直しを伝えられ、不当な家賃保証額の値下げで収入が減るケースや、家賃保証の契約自体が取り消しになるリスクがあります。
そのため、サブリース契約の賃料では、次の2つをしっかりと確認することがポイントです。
▼サブリース契約の賃料で確認すべきポイント2つ
・賃料の根拠
・賃料の更新タイミングや条件
賃料の根拠
賃料に対する根拠を確認して、周辺エリアの相場と比較したときに正当な価格かを確認しましょう。
サブリースの賃料は、満室の家賃を100%とした場合の80〜90%が相場ですが、相場よりも低い場合や高い場合があります。
通常、賃料は物件のある地域や駅からの距離、入居者のニーズなどで判断されます。ニーズが高いエリアで空室のリスクが低い場合は、85〜90%の高めに設定されるのが一般的です。
ただし、賃料が違えば、家賃収入の金額は大きく変わってしまいます。
⚫︎家賃8万円、総戸数10戸の場合を例に考えてみると…
・(家賃8万円*80%)*10戸=64万円
・(家賃8万円*90%)*10戸=72万円
→10%違うだけで、収入が家賃1か月分の差がある!
実際、同じ条件の物件でも、80%と90%とでは、家賃1ヶ月分も差があります。
サブリース会社の中には、自社の利益を得るために、ニーズがある立地や環境であるのに、80%程度やそれより低い賃料を提示してくるケースもあります。
その賃料となった根拠をしっかりと聞き、納得した上で契約をしないと、あなたが大きな損をしてしまうことになるかもしれません。
サブリース契約の際には、必ず根拠を確認するようにしましょう。
\家賃の妥当性を判断するためのコツ/
家賃の金額や賃料の利率の相場感を知らなければ、サブリース会社の言う賃料が
妥当なのか判断できず、損をしてしまう可能性があります。
賃料の相場感は、周辺地域の家賃相場や空室状況を調べることで把握可能です。
賃貸物件のポータルサイトなどを活用し、物件周辺の家賃事情を確認しておくようにしましょう。
また、複数のサブリース会社へ問い合わせ、相場を比較することもおすすめです。
賃料の更新タイミングや条件
サブリースでは契約前に、以下のような賃料の更新タイミングや条件を確認しましょう。
・契約期間中の賃料見直しは何年ごとか
・土地や建物の価格変動があったときはどうなるのか
サブリースの契約期間は、10年以上が一般的ですが、契約当初に決めた賃料が契約期間中、ずっと固定されるわけではありません。賃貸の需要に応じて、賃料更新が行われる可能性があるのです。
新築当時にサブリース契約した物件も、築年数を重ねると経年劣化により物件の魅力が低下します。魅力が低下した賃貸物件では、賃貸物件の状況や需要に応じて値下げされるのが一般的です。
「〇年にわたって、賃料を確実に保証する」という契約をしていたとしても、借地借家法(第32条)により、賃料の減額請求をされる可能性があります。
サブリース会社によってタイミングや条件が異なるため、契約前に賃料更新の有無やタイミング、条件などを、可能な限り確認するようにしましょう。
サブリース契約の項目②|契約内容・契約解除
サブリース契約においては、契約内容と契約の解除もしっかりと確認しましょう。
契約内容で確認すべきポイントは、次の4つです。
▼サブリース契約の「契約内容・契約解除」で確認すべきポイント4つ
・共益費(管理費)などの取り扱い
・室内改装や建物改修の責任範囲
・マスターリース契約とサブリース契約の整合性
・解約条件
ポイントを知らず、内容をよく理解しないまま契約をすると、次のようなリスクを招く可能性があります。
▼サブリースの契約内容や契約解除について把握していなかった場合に起こり得るリスク
・想定よりも収入が少なく、計画通りに不動産の返済ができなくなる
・想定外の費用を支払うことになり、ローンや借金が増えてしまう
サブリース契約では、立場の弱い賃借人を守る内容の借地借家法が適用されます。サブリース契約における賃借人はサブリース会社で、オーナーは賃貸人です。
サブリース会社は法律で守られる立場にあるため、契約前に内容や解除について確認しておかなければ、あなたが不利になる可能性が高いです。
これから紹介する4つのポイントを押さえて、「勝手な思い込みで、収支計画通りに行かなくなった」「想定外のコストがかかってばかり」といった状況を回避しましょう。
共益費(管理費)などの取り扱い
共益費(管理費)などを、家賃に合算してあなたの賃料(収入)にするかどうかを確認しましょう。
通常、入居者が支払う敷金・礼金・更新料などの家賃以外の収入は、サブリース会社の取り分となるのが一般的です。
ただし、共益費(管理費)の取り扱いは、サブリース会社によって異なります。
▼共益費の取り扱いパターン
1.家賃と共益費を合わせた金額の80〜90%を賃料とするパターン
2.共益費は全額サブリース会社の取り分で、
共益費を含まない家賃の80〜90%の賃料を支払うパターン
例えば、家賃8万円、共益費1万円、家賃の80%を保証するケースの場合で、上記を比較しましょう。
<パターン1>
家賃8万円+共益費1万円=9万円の80%
賃料:7万2,000円
<パターン2>
家賃8万円の80%(共益費1万円はサブリース会社の取り分)
賃料:6万4,000円
上記の場合、共益費の取り扱いがパターン1か2かで、1戸あたり8,000円も家賃収入が違ってきました。
家賃収入に大きく影響を与えるため、どちらのパターンに該当するのか、よく確認するようにしましょう。
室内改装や建物改修の責任範囲
サブリース契約では、室内改装や建物改修において、あなたの責任範囲を確認しておくことも大切です。
サブリース契約後は家賃収入を得ながら、サブリース会社に業務や運営を任せることができますが、退去時の原状回復費用や老朽化・経年劣化による修繕費は、原則オーナー負担です。
しかし、一部サブリース会社が費用を負担してくれるケースもあります。
▼サブリース会社が負担してくれることもある費用
・入居者入れ替えのための清掃
・入居者が原因で故障した機器の取り替え
契約のときに、サブリース会社と賃貸物件の維持や保全のための費用をどのように分担するのか、必ず確認しておきましょう。
マスターリース契約とサブリース契約の整合性
あなたとサブリース会社、サブリース会社と入居者の契約内容が同じであるかも確認しましょう。
サブリース契約は、オーナーとサブリース会社の間で締結するマスターリース契約をもとに運用されるのが一般的です。
しかし、残念ながら、中には、勝手に条件や制約を書き換えて、入居者と契約してしまうサブリース会社があります。
整合性を確認していなければ、次のようなトラブルを招くかもしれません。
▼契約内容の整合性を確認していない場合に起こり得るトラブル
・ペット不可物件として契約したのに、サブリース会社がペット可として入居者を住まわせた
・入居者による又貸しを禁止していたのに、サブリース会社が又貸しを黙認していた
サブリース会社と入居者の間で結ばれる契約の条件や制約などが、マスターリース契約の内容に沿っているか、しっかりと確認しましょう。
\サブサブリース契約にも気をつけよう/
サブサブリース契約を禁止する条項を追加することも忘れずに行いましょう。
サブサブリース契約とは、オーナーがサブリース会社に貸した物件を、
サブリース会社がさらに別のサブリース会社に貸すものです。
サブリース契約の解約時に、全ての会社と交渉する必要があるだけでなく、
複数社分の解約金が必要なこともあります。事前に対策しましょう。
解約条件
サブリース契約前に、解約条件についてもよく目を通して確認しておきましょう。
サブリースの契約は、期間満了であっても更新が原則となっており、サブリース会社の同意・合意がなければ解約できず、自動的に更新されるのが一般的です。しかし、正当事由があれば解約できる可能性があります。
たとえば、次のような理由です。
▼正当事由として認められているケース
・オーナー本人やその親族が物件に住む場合
・ローンの返済が困難で、物件を売却する必要がある場合
・築年数が古くなり、取り壊すことになった場合
・再開発事業などで取り壊すことが決まった場合
オーナーとサブリース会社の関係は、オーナーと一般の入居者と同じ関係で、借地借家法ではサブリース会社が立場の弱い賃借人になり、法律で守られており、解約は簡単ではありません。
しかし、条件次第では認められるため、将来起こり得る状況を加味し、サブリース会社と解約条件についてよく話し合うようにしましょう。
サブリース契約の項目③|契約の期間
次に紹介するサブリース契約の重要項目は、契約の期間です。
契約の期間では、次の2つを確認しましょう。
▼サブリースの契約期間で確認すべきポイント2つ
・サブリース契約期間のパターン
・契約書に書かれた契約期間
サブリース契約は、10年以上の長期契約が一般的です。
長期間にわたって業務や運営をお願いでき、家賃保証も受けられるのは、オーナーにとってメリットに感じるかもしれませんが、次のようなリスクもあります。
▼サブリースの契約期間に関連するリスク
・契約期間中にも賃料の見直しや契約を解除され、収入減を絶たれる可能性がある
・契約を解除したいのに、いつの間にか更新されている
・契約期間が長く、空室が増えると家賃収入以上に出費が増える可能性がある
築年数の古い賃貸物件の場合、契約期間が長いと、その間にさまざまな費用の負担をすることになり、家賃収入以上にコストがかかってしまう可能性もあります。
一度契約をすると簡単に解除できないからこそ、契約の期間についてよく確認しておく必要があります。
サブリース契約期間のパターン
サブリースの契約期間は、各会社によってさまざまなパターンがあります。
▼契約期間のパターン例
・2年ごとに契約+自動更新
・10年契約+11年目以降は1年ごとに更新
・5年ごとの契約更新で最長35年
長期契約の場合でも、実際には「数年ごとに契約の自動更新があり、最長で30年だった」というケースもあります。
契約時には、契約期間、契約満了以降の更新やその頻度、「最長何年更新か」など期間について、よく確認しておきましょう。
契約書に書かれた契約期間
契約書に書かれた契約期間を必ず確認しましょう。
正確な終了日を把握していないと、解約のタイミングを見誤り、膨大な解約金を支払うことになるかもしれないからです。
サブリース契約は、先述の通り、自動更新が一般的で、契約期間のパターンによって終了日が変わってしまうこともあります。
契約が自動更新の場合も、都度「契約開始日と終了日」を確認し、日付が契約書に記載されているかを確認するようにしてください。
サブリース契約の項目④|免責期間
最後は、免責期間です。免責期間とは、一定期間、サブリース会社の家賃支払いが免除される期間のことです。
サブリース契約における免責期間では、次の2つについて確認しましょう。
▼サブリース契約の免責期間で確認すべきポイント2つ
・初回の免責期間
・契約途中の面責期間とタイミング
サブリース契約では、契約してすぐに家賃保証されるわけではありません。契約日から家賃保証されるまでの間に、免責期間が設けられているケースがほとんどです。
サブリース契約における免責期間について把握していないまま契約してしまうと、次のようなリスクが生じます。
▼サブリース契約の免責期間を理解していないことで起こり得るリスク
・期待していただけの家賃保証が受けられなかった
・1年以内の退去が相次ぎ、家賃収入が年間収入の半分だった
このような事態を避けるためにも、免責期間を忘れず確認しましょう。
初回の免責期間
まず確認すべきなのは、契約直後の免責期間です。
契約後は、入居者を募集する期間として免責期間が設けられているケースが多く、しばらくは家賃保証がありません。
免責期間は、サブリース会社によって異なりますが、契約から60~90日程度の期間で設定されることが多く、2~3か月は家賃収入がない状況です。免責期間を考慮した資金計画を立てるようにしましょう。
契約途中の免責期間とタイミング
契約途中の免責期間やタイミングについても、必ず確認しましょう。
一部のサブリース会社では、退去ごとに免責期間を設定しているケースがあるためです。
初回も退去後も、60日の免責期間が設けられていた場合、入居者が1年以内に引っ越しをしてしまうと、1年のうちの120日間は免責期間となってしまいます。
契約途中でも、新たな入居者を探す期間として免責期間が設定しているサブリース会社があるため、どのタイミングに、どのくらいの期間、免責期間となるのかも確認しておきましょう。
サブリースのメリット6つ
サブリースの仕組みや管理委託との違いから、サブリースでは、以下のようなメリットが見えてきます。
サブリースの6つのメリット
・管理・運営業務の手間がかからない
・家賃保証で空室・滞納リスクを回避できる
・広告料や原状回復費の削減につながる
・収益予測を立てやすい
・相続税対策になる
・確定申告の手間が少ない
サブリースについて検討するために、まずはメリットについて確認してみましょう。
管理・運営業務の手間がかからない
サブリースでは、賃貸物件に関する管理・運営業務の手間がかからないところが最大のメリットです。
賃貸物件の管理や運営には、以下のような業務を行わなければなりません。
【賃貸物件の管理・運営で行うこと】
・入居者の募集
・入居者の選定、賃貸借契約
・家賃、敷金、礼金の入金管理
・家賃滞納の催促や回収
・入居者からのクレーム対応
・退去時の立会い
・物件、建物、設備の保守点検やトラブル対応
・物件の清掃やメンテナンス など
サブリース契約を行うことで、上記の入居者のクレーム対応や物件のメンテナンス、トラブル対応など面倒な業務のほとんどすべてを任せられます。
特に、不動産投資とは別に本業があり、副業として不動産投資を行っている人にとって、大きなメリットといえるでしょう。
家賃保証で空室・滞納リスクを回避できる
サブリースでは、空室・滞納リスクを回避できる家賃保証のメリットもあります。
通常、不動産投資では、空室が発生すると当然のことながら収入は得られず、家賃の滞納があった場合も、収入を得ることができません。
空室率の高さは、多くのオーナーが頭を悩ませるポイントですよね。
先ほども述べた通り、サブリースでは、サブリース会社から一定のリース料金が支払われます。空室率や滞納のリスクに関わらず、一定の賃料を確保できるでしょう。
広告料や原状回復費の削減につながる
不動産オーナーはサブリース契約を結ぶと、広告料や原状回復費などの経費を削減できるメリットがあります。
一般的に入居者募集のための広告費用や退去時の原状回復費用は、オーナー負担になるケースがほとんどです。しかし、サブリース契約ではこれらの費用をサブリース会社が負担します。
例えば、入居者が退去する際の清掃費用や設備の修繕費用なども、サブリース会社の負担です。これにより、オーナーは予期せぬ出費を抑えられるほか、安定した収支計画を立てやすくなります。
ただし、契約内容によっては一部の費用をオーナーが負担する場合もあります。契約時には条件を入念に確認しておきましょう。
収益予測を立てやすい
サブリース契約のメリットは安定した収益予測を立てやすい点です。
通常の賃貸契約では、空室期間や家賃滞納などにより収入が不安定になる可能性があります。しかし、サブリース契約では一定の家賃収入が保証されるため、将来の収益を比較的正確に予測できます。
例えば、満室時の家賃収入の保証は80%から90%程度が多く、保証額をもとに長期的な収支計画を立てられます。また、固定費用も予め把握できるため、ローンの返済計画や税金対策なども立てやすくなるでしょう。
ただし、将来的な家賃の見直しや契約更新時の条件変更には注意が必要です。
相続税対策になる
サブリース契約は相続税対策として有効な手段になり得ます。
不動産の相続税評価額は、一般的に賃貸中の方が自用の場合よりも低くなりやすいです。サブリース契約を結んでいる物件は常に賃貸中とみなされるため、相続税評価額を抑える効果が期待できます。
例えば、相続税評価額が市場価格の約50%から70%程度に抑えられるケースもあります。
また、サブリース契約により安定した収入が見込めるため、相続税の納税資金を確保しやすい点がメリットです。
確定申告の手間が少ない
サブリースでは、確定申告の手間が少ない点もメリットの1つです。
通常の不動産投資であれば、入居者ごとに賃貸借契約を行います。そのため確定申告の際に、入居者ごとに賃料や経費を申告しなければならず、手間がかかります。
【確定申告の項目】
・家賃収入
・礼金・更新料
・入居者募集のための広告宣伝費
・原状回復や維持費にかかる修繕費 など
しかし、サブリースでは、オーナーにとっての契約者はサブリース会社のみとなり、確定申告の際の手間を少なくすることができます。
サブリースのメリットについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
サブリースのメリット5つ!デメリットも踏まえて実際の問題を紹介
サブリース契約をすることで起こり得るリスク8つ
ここまでサブリース契約の仕組みや特徴について見てきました。
サブリース会社が物件の管理や運営にかかる手間を一手に引き受け、家賃保証により安定した収入が見込めるというのは、とても魅力的ですよね。
しかし、メリットばかりではありません。サブリースを契約することで次のようなリスクもあります。
- 途中解約や倒産により収入がなくなる
- 免責期間は家賃保証がない
- 一度契約をすると契約解除が難しい
- 保証される家賃の金額は一定ではない
- 想定外のコストが発生する
- 一般賃貸契約よりも賃料が安くなる
- 想定外のコストが発生する
- 入居者を選定できない
メリット部分だけで判断してしまうと、契約後に後悔することになるかもしれません。魅力的だからこそ、デメリットについても把握し、正しく判断することが重要です。
途中解約や倒産により収入がなくなる
サブリースの契約は、サブリース会社の都合で解除されてしまう可能性がある点に注意が必要です。
経済情勢により、サブリース会社の経営が悪化し、最悪の場合には倒産する可能性があります。
サブリースは長期契約が基本ですが、サブリース会社の経営難により、途中解約の申し出があると、オーナー側は拒否できません。サブリースは、サブリース会社が賃借人にあたり、その賃借人からの途中解約は民法で認められているからです。
契約書に「途中解約はしない」と明記していても、契約の途中解約が法律で認められている以上、オーナー側は泣き寝入りするしかありません。
「10年間家賃保証」「20年一括借り上げ」などと謳っていても、いつまでも続く保証はなく、途中解約や倒産により、収入源が断たれるリスクがあることを知っておきましょう。
免責期間は家賃保証がない
サブリース契約は、契約後すぐに家賃保証を受けられるわけではありません。
空室の有無に関係なく、不動産会社が定めた賃料の80〜90%を受け取ることができますが、入居者を募集する期間として「免責期間」が設定されています。
免責期間は、契約日から60〜90日間が一般的です。免責期間中は、家賃が発生しません。
サブリース会社によっては、入居・退去時にも免責期間を設けるケースもあるため、免責期間や条件を事前に確認することが大切です。
一度契約をすると契約解除が難しい
サブリース契約は、一度契約すると契約解除は簡単にはできません。
主な理由としては、次の2つが挙げられます。
・高額な違約金や立ち退き料が必要になるケースがあるから
・法律的にサブリース会社が保護されている状況にあるから
先述の通り、サブリース契約は10年以上の長期契約が基本です。契約の満期以外のタイミングに解約をしようとすると、高額な違約金や立ち退き料が必要になるケースがあります。
違約金の相場は、家賃の数か月分です。契約の残期間によっては、家賃の1年分となる可能性もあるため、金銭的な理由から、サブリースの契約解除は難しいと言われています。
また、サブリース契約は、オーナーが貸主、サブリース会社が借主という関係になり、借地借家法が適用されます。借地借家法は、借主を保護する内容が多く、法律的な観点でも一度契約をすると契約解除が難しいと言われているのです。
保証される家賃の金額は一定ではない
サブリースの大きな特徴と言える「家賃保証」ですが、契約時の家賃がいつまでも続くわけではありません。
30年一括借り上げと謳っていても、実際は2年や5年などの間隔(サブリース会社や契約時の条件による)で契約内容の見直しが行なわれるからです。
サブリース契約では、オーナーが家賃を設定することができません。そのため、2年後の契約見直しのタイミングで、大幅な賃料の値下げを打診され、思っていた通りの収入が見込めなくなる可能性があるのです。
また、最悪の場合には、家賃保証自体の契約を解除される可能性もあります。
長期契約の一括借り上げといっても、契約時の条件を見直されるケースは高い状況です。サブリースは、保証される家賃の金額が変わったり、保証自体がなくなったりする可能性があることを理解しておきましょう。
想定外のコストが発生する
サブリースには、当初予定していなかったコストがかかる可能性があります。
▼サブリース契約中に発生しやすいコスト
・入居者の退去時にかかるクリーニング代
・入居者の退去時にともなう原状回復費用(水回りのパッキン交換やクロスの貼り替えなど)
・空き家を減らすためのリフォーム費用
・老朽化に伴う修繕工事費用
サブリース会社の立場は、入居者と同じです。入居者が汚した部分はその入居者に対して費用の請求をすることができますが、それ以外の費用は、オーナー負担となるケースが一般的です。
サブリース会社によっては、一部費用を負担してくれるケースもありますが、入居者が退去するたびに、クリーニング代や原状回復のための内装工事費用、リフォーム費用がかかります。
老朽化や設備不良などによる修繕費用も、オーナー負担が原則です。
支払っているサブリース手数料で、管理や運営にかかる費用の全てを担ってくれるわけではなく、想定外のコストがかかる可能性があるという点には、注意しましょう。
一般賃貸契約よりも賃料が安くなる
同じ物件でもオーナーが得られる賃料が安くなるのは、サブリースのデメリットです。
サブリースの仕組みで触れた通り、サブリース会社からオーナーへ支払われる賃料は、入居者が支払う賃料から10〜20%の手数料を差し引いた金額です。空き家が多い物件の場合、サブリース会社から賃料の値下げを要求されるケースもあります。
そのため、サブリースの場合は、同じ物件でも自分や管理委託をした場合と比べると、賃料が安くなりやすい傾向です。
入居者を選定できない
サブリース契約では、オーナーは入居者を選べません。
サブリースの契約をすると、サブリース会社が入居者の募集を行い、契約をして転貸することになるからです。
極端な話、オーナーが「ペットがいるとリフォーム費用が高くなりやすいから、ペットは不可にしたい」と思っても、サブリース会社がOKならオーナーは拒否できません。
入居者が選べないことで、ペットや喫煙による部屋の汚れ、入居者同士のトラブルなど、あなたの物件や賃貸経営においてマイナスな影響を与える可能性があることもリスクと言えるでしょう。
売却時の価格が低くなる
サブリース契約を結んでいる物件のデメリットは、将来的な売却時に価格が低くなる可能性があります。
サブリース契約を結ぶと、通常の賃貸契約に比べて家賃収入が低くなりがちで、物件の収益性が低く評価されてしまいます。また、サブリース契約が長期間に及ぶ場合、契約の解除が難しくなり、買主にとって自由な運用ができません。
これらの理由により、売却価格が抑えられる可能性があります。投資用不動産として見た場合の魅力が低下すると、価格の低下は避けられません。
売却を考えている場合は契約期間や解約条件を慎重に検討し、将来的な売却への影響を考慮したうえで契約を結びましょう。
サブリース契約における実際のトラブル事例3つ
ここまで、サブリースにおけるリスクについて紹介しました。
それらのリスクを理解せず、契約を進めてしまうと、大きなトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
契約後に後悔や失敗をしないためにも、サブリース契約において、実際に起こったトラブル事例を知り、最悪の未来を防ぎましょう。
サブリース会社が倒産した
もっとも最悪な事態が、契約していたサブリース会社の財務状況が悪くなり、契約を解除されるケースや倒産するケースです。
2018年のシェアハウス「かぼちゃの馬車」の、賃料不払いのままサブリース会社が倒産した事例が有名です。
事例としては多くありませんが、国土交通省が行った調査で、サブリース会社からの途中解約や倒産によるトラブルを経験したと回答しているオーナーが約6.2%いました。
そのため、サブリース契約をする場合は、サブリース会社の経営状態や財務状況、ビジネスモデルについて、よく下調べすることが重要です。
サブリース会社が破綻して取り返しがつかなくなる前にできる対処法
日頃から契約したサブリース会社の売上を確認しつつ、賃料不払いがあれば、
それを理由にサブリース会社へ契約解除を申し立てましょう。
賃料も直接入居者から受け取ることができます。
破綻するようなサブリース会社は、金融機関の借り入れ金額が大きく、
返済が間に合っていないような状況に陥りやすい傾向があります。
サブリース会社から支払われるはずの賃料が支払われなくなったら要注意です。
高額なリフォーム費用を要求された
サブリース会社に任せっきりにしていると、高額なリフォーム費用を要求されることになるかもしれません。
国土交通省の調査で、想定外の修繕費用などの請求をされた経験があるオーナーは、約10.8%となっており、約10人に1人が被害にあっている状況です。
サブリースのリスクとして紹介した通り、入居者が退居するとリフォームなどを行う必要があり、その費用は原則オーナー負担となります。その仕組みを悪用したトラブルが、実際に起こっています。
▼トラブル事例
・サブリース会社主導で、入居促進のためのリフォーム計画が進められ、後から高額なリフォーム費用を請求される
・実際にはハウスクリーニング程度しか行っていないのに、過剰なリフォーム代を請求された
とくに、サブリース会社が内装業者を指定してくる場合は、工事会社と結託して割高になっているケースが一部あります。見積もりを示さず、勝手に工事まで進めようとする場合も要注意です。
サブリース会社からの高額なリフォーム費用の請求を防ぐための対処法
費用が掛かるケースは可能な限り相見積もりを取り、高額な見積もりの場合は交渉をして、
金額の妥当性を判断することが大切です。
オーナー負担になるからこそ、任せきりにせず、
正しい情報と判断で金銭トラブルを防ぎましょう。
家賃の減額を要求された
家賃の減額トラブルも、オーナーにとっては死活問題です。
▼トラブル事例
家賃保証の見直しにより、当初予定していた収入計画の通りにはいかず、一般賃貸契約よりも収入が減った
国土交通省の調査によると、想定外の大幅な賃料の減額を求められた経験があるオーナーは、約15.8%となっています。
それに加え、契約内容の変更など、十分な説明がないまま契約の変更を求められるケースも約22.8%もあり、想定通りの収入が見込めない状況に陥るケースが少なくないようです。
先述の通り、サブリースの家賃保証は、契約期間中、契約当時の家賃が保証されるわけではありません。
空室の状況によっては、サブリース会社から家賃の減額を要求されることがあります。借家借地法によりサブリース会社側には賃料減額請求権があるため、オーナー側が拒否することは難しい可能性が高いです。
家賃の減額をされたときの対処法
賃料の減額を要求されても、すぐに受け入れる必要はありません。
地域の家賃相場を調べたり、減額以外の施策は難しいのかを検討したりして、
まずはしっかりと情報を精査し、サブリース会社と話し合うことが重要です。
一筋縄でいかないときは、法律の専門家などに相談することをおすすめします。
【基本おすすめできない】サブリース契約を唯一検討しても良いケース
ここまで紹介してきた通り、サブリース契約はオーナーにとって不利な条件やリスクをともないやすい賃貸の管理方法です。
そのため、基本的にはおすすめしません。
ただ、立地や建物的に満室になる見込みが少ない物件を所有しており、なかなか安定した収入を得られず、経営が困難な状況に陥っているケースは、サブリース契約を検討しても良いかもしれません。
たとえば、以下のような悩みを持っている人です。
・入居数よりも空室の方が多い状況が続いている
・ローンの返済や経営的に、安定した収入が不可欠な状況にある
・不動産投資の初心者で全くノウハウがなく、管理の怠慢で退去者が続出している
サブリース契約をすることで、一時的に安定した収入を得られる可能性が高いためです。優秀なサブリース会社を見つければ、経営のノウハウも得られるでしょう。
ただし、サブリース会社の提案を100%信じ切ってしまうと、後からトラブルとなることがあります。
一度契約をすると解約が難しいため、まずは短期間で契約できるところを探すのがおすすめです。サブリース会社からの提案から適切な内容だけを見極められるよう、自分で情報を調べて精査することも意識しましょう。
サブリースを契約する前に注意したいポイント2つ
ここでは、サブリースを契約する前に注意したいポイントを2つ解説します。
サブリースを契約する前に注意したい2つのポイント
・契約内容が本当に履行されるのか、マイナス面はないのか確認する
・サブリース会社の財務状況が悪くないか確認する
サブリースは、契約内容に関わらず家賃保証の見直しがあり想定よりも収入が少なくなったり、一度契約してしまうと解約が困難であったりなどリスクが伴います。
法的な問題上、避けて通れないこともありますが、事前に知っておくことで、できるだけリスクを避けることができるでしょう。
早速解説します。
契約内容が本当に履行されるのか、マイナス面はないのか確認する
契約内容が本当に履行されるのか、オーナーにとって、マイナス面はないのか確認しておきましょう。
具体的には、以下の項目について、納得のいくまで話し合いをして確認することをおすすめします。
契約内容で特に注意して確認したい項目 | |
解約 | ・解約の条件 ・中途解約の条件 ・違約金、立退料の金額 |
保証賃料 | ・保証賃料の金額(一般的に80~90%が多い) ・賃料の見直しの時期 ・賃料値下げ目安 ・賃料値下げに対する下限額の有無 |
免責期間 | ・入居者、退去者の免責期間日数(一般的に1~2ヶ月が多い) |
修繕・工事 | ・補修費、修繕費、管理費の負担区分 ・修繕費、工事費などの費用目安 ・大規模修繕の目安周期 |
特に、借地借家法の関係上、解約が難しくなることや免責期間があることなど、避けて通れない問題について事前に確認してください。
事前に確認することで、資金のやりくりやローン返済の見積もりを立てて備えられ、リスクをなるべく避けられます。
サブリース会社の財務状況が悪くないか確認する
サブリース会社の財務状況が悪くないかどうか確認しておきましょう。
財務状況が悪いと、途中解約や倒産などのリスクが高まるからです。
極端なケースでいうと、悪質なサブリース会社では、すでに経営が破綻している状況にも関わらず、一時の資金を得るために、新たにサブリース契約を締結しようとする可能性もあります。
このまま契約してしまい、サブリース会社が倒産してしまうと、収益化できずに物件のローン返済だけ残ってしまいます。最悪、自己破産しなければならないなどのトラブルが発生してしまう可能性も考えられるのです。
「契約内容に問題なさそう」、「担当者が誠実に対応してくれた」としても、財務状況が悪くないかどうか、必ず確認しておきましょう。
財務状況を確かめる方法 |
◆上場企業の場合 上場企業は、財務諸表開示義務があります。 会社のホームページの「IR情報」から決算報告を確認できます。 1つの指標として、損益計算書を見て過去2~3年の「純利益」が 多ければ多いほど、財務状況が良好といえるでしょう。 ◆未上場企業の場合 未上場企業は、財務諸表開示義務がなく、一般公開している企業は多くありません。 しかし、「会社四季報 未上場会社版」には、 約13,000社と多くの未上場企業が載っており、財務状況が分かる可能性があります。 上場企業のIR情報に比べて詳しく書かれていないことが多いですが、 トラブルを回避するためにも、業績を確認することをおすすめします。 ※『会社四季報 未上場会社版』は、編集部記者の取材記事をはじめ、 業務内容・業績・役員・取引先・採用数など多数の項目を 収録した約4,000社、コンパクトに企業情報をまとめた約9,000社、 合計約13,000社の未上場企業情報を掲載しています。 |
サブリースの注意すべきことについて、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
サブリース契約の15の注意点!契約前から後までの重要ポイント解説
サブリース契約が向いている人
ここでは、サブリース契約が向いている人について詳しく解説します。
初めての不動産投資で知識がない人
サブリース契約は不動産投資の初心者や知識が乏しい人にとって有効な選択肢です。
不動産投資には、物件の選定から入居者の募集、日常的な管理業務まで、多岐にわたる知識と経験が必要です。しかし、サブリース契約を結べば、複雑な業務をサブリース会社に任せられます。
例えば、入居者とのトラブル対応や家賃の集金、建物の維持管理などを専門家に委託できるため、不動産投資の知識がなくても安心して投資を始められます。
管理業務の手間を極力減らしたい人
サブリース契約は不動産の管理業務に時間を割けない人や、手間をかけずに投資を行いたい人に最適です。
通常の賃貸経営では入居者の募集や契約、日常的なメンテナンス、トラブル対応など多くの管理業務が発生します。これらの業務は時間と労力を要し、物件数が増えるほど負担が大きくなりやすいです。
しかし、サブリース契約では、管理業務のほとんどをサブリース会社が担当します。深夜の緊急トラブル対応、家賃滞納者への対応などもすべて代行してくれるでしょう。
したがって、本業が忙しい会社員や複数の事業を展開している経営者など、不動産管理に多くの時間を割けない人におすすめです。
安定した収入を確保したい人
サブリース契約は安定した収入を求める人に最適です。
通常の賃貸経営では空室や家賃滞納のリスクがあるため、収入が不安定になる可能性があります。しかし、サブリース契約では入居者の有無に関わらず、一定の家賃収入が保証されます。
一般的に満室時の家賃収入の80%から90%程度が保証されるケースが多いため、安定した収入をもとに長期的な資金計画を立てられるでしょう。
例えば、ローンの返済計画や生活資金の確保、将来の資産形成など、安定した収入を前提とした計画が立てやすくなります。とくに退職後の安定収入を求める人や、副収入として不動産投資を考えている人にとっては魅力的な選択肢となるでしょう。
自らシミュレーションを行える人
サブリース契約を成功させるためには、自らシミュレーションを行える能力が重要です。サブリース会社が提示する収益シミュレーションは、楽観的な見通しを示す傾向があるため自身で客観的な分析を行う必要があります。
例えば、将来の家賃相場の変動、物件の経年劣化による価値低下、税制の変更などを考慮に入れた長期的なシミュレーションを行うことが大切です。
また、サブリース契約の条件変更や解約時のリスクなども含めて、総合的な判断ができる能力が求められます。
自らシミュレーションを行える人は契約内容の妥当性を判断し、有利な条件での契約締結や、将来的なリスク管理を適切に行えるでしょう。
不動産等において重要になる損益分岐点の計算方法については、以下の記事をご覧ください。
確定申告を簡単に済ませたい人
サブリース契約は確定申告の手続きを簡素化したい人にとっておすすめです。
通常の賃貸経営では複数の入居者からの家賃収入や、さまざまな経費の管理が必要となり、確定申告の際に複雑な計算や書類作成が求められます。しかし、サブリース契約では、契約先が1社のサブリース会社のみとなるため、収支の管理が非常に簡単です。
例えば、毎月一定額の家賃収入が入金され、経費も定額で計上できるケースは少なくありません。
また、入退去に伴う費用や修繕費なども、サブリース会社が負担するケースが多いです。経費の計上漏れなどのリスクが減少するでしょう。
このような特徴から、サブリース契約は確定申告の手続きを簡素化したい人にとって魅力的な選択肢といえます。
サブリース契約が向いていない人
ここでは、サブリース契約が向いていない人について詳しく解説します。
高い収益性を求める人
サブリース契約は高い収益性を求める人には適していません。
サブリース契約では安定した収入が保証される反面、市場相場よりも低い家賃設定になるケースが一般的です。例えば満室時の家賃収入の80%から90%程度が保証されるケースが多く、市場相場と比較すると10%から20%程度低い水準になります。
さらに、入居者から得られる礼金や更新料などの付帯収入も、サブリース会社の収入となるケースも少なくありません。
これらの要因により、サブリース契約では通常の賃貸経営に比べて収益性が低くなる傾向があります。高い利回りや積極的な収益拡大を目指す投資家にとっては、サブリース契約よりも自主管理や一般的な管理委託の方が適しているでしょう。
短期的な目線で利益を求める人
サブリース契約は短期的な視点で高い利益を求める人には適していません。不動産投資のなかでもとくにサブリース契約は、長期的な視点で考える必要があります。
例えば、サブリース契約の期間は通常10年から20年と長期に設定されるケースが多く、期間中は契約条件の変更や解約が困難になります。
また、短期間で高い利益を得ようとすると、無理な運用や過度なリスクテイクにつながる可能性があるでしょう。
さらに、不動産市場の変動や税制の変更など、短期的には予測困難な要因も多いため、短期的な利益追求は危険です。
サブリース契約を検討する際は、10年、20年先を見据えた長期的な資産運用の一環として捉えましょう。
業者の言われる通りに動いてしまう人
業者の言われる通りに動いてしまう人は、サブリース契約に適していません。サブリース会社は営利企業であり、時に自社に有利な条件を提示する場合があります。
例えば、楽観的な収益シミュレーションを示したり、契約の不利な点を十分に説明しなかったりするケースです。具体的には、将来の家賃減額や高額な修繕費用の負担、中途解約時の高額な違約金などが隠れている可能性があります。
これらの条件を見落とすと、将来的に大きな損失を被る可能性があります。
サブリース契約を検討する際は業者の提案を鵜呑みにせず、契約内容を細かく確認する姿勢が重要です。自ら判断できない場合は、必要に応じて専門家のアドバイスを求めましょう。
自分で経営戦略を考えたい人
サブリース契約は自ら積極的に経営戦略を立てたい人には適していません。
サブリース契約では物件の運営や入居者の選定、家賃の設定など、ほとんどの経営判断をサブリース会社に委ねます。入居者のターゲット層や募集条件の設定、リフォームの時期や内容の決定など、通常のオーナーが行う判断の多くをサブリース会社が行うでしょう。
そのため、自らの戦略や判断で物件の価値を高めたり、収益を最大化したりする機会が限られます。また、市場の変化に応じて柔軟に戦略を変更することも難しくなるでしょう。
自身の経験や知識を活かして積極的に不動産経営に関与したい人や、独自の経営手法を実践したい人は、サブリース契約よりも自主管理や一般的な管理委託の方が適しています。
全てを自分で行う時間がなければ管理委託を検討しよう
サブリース契約が向いていない人や、やめておこうと思ったものの、全てを自分で行うのは時間も労力もかかります。
そのような場合におすすめなのが、管理委託です。
管理委託は、賃貸の管理を行う会社に業務を委託する管理方法の一種です。一定の管理費用が発生しますが、サブリースと比べるとコストが安いため、費用的な負担は比較的軽いという特徴があります。
特に、築浅物件や新築など、入居者の需要が高い場合は管理委託が向いています。
管理委託には、下記の入居者の募集から入居中の対応、退去までの全ての業務を行ってもらえる「一括管理」と、一部の管理業務のみをお願いできる「部分管理」があります。
サブリースのように、貸主としての義務の大部分を減らせる訳ではありません。しかし、兼業オーナーや複数の立地に物件を所有している場合、管理委託をうまく活用すれば、時間的な余裕を作ることができ、負担を軽減できます。
「自分だけでは対応しきれないし、不安だ」
「対応を間違えて、入居率の低下を招く事態は避けたい」
このように考えるのであれば、管理委託を検討しましょう。
管理委託を行う不動産管理会社を選ぶときの基準3つ
実際に、管理委託を活用して不動産の管理・運営をしようと思っていても、選び方を間違えると予定していた収益が見込めなくなります。
また、入居者への対応の怠慢で評判が下がり、空室率が改善できない状況になる可能性もあるため、不動産管理会社選びがとても重要です。
信頼できる不動産管理会社を選び、今抱える問題や課題を解決するためにも、これから紹介する3つのポイントを参考にして、委託先選びの失敗を防ぎましょう。
客付け力(入居者の成約率)が高いかどうか
不動産管理会社の、空室になったら次の入居者を見つける「客付け力」の高さは、管理委託を任せるうえでとても重要です。
不動産管理会社の客付け力が高ければ、空室による収入減のリスクを回避することができるからです。
管理委託は、サブリース契約と異なり、家賃保証がないため、空室状態が続けば家賃収入が入ってきません。そのため、早く次の入居者を見つけることが鍵となります。
客付け力の高い不動産会社を探すポイントは、空室になったタイミングですぐに入居者を探し出せるような体制が整っているかどうかです。
賃貸管理業に加え、自社で賃貸の紹介や空室対策のための情報提供などを行っている不動産管理会社など、管理から募集までをまとめてサポートしてくれる不動産管理会社を選びましょう。
今や今後の課題に見合った業務が可能かどうか
「滞納者の対応に困っている」「入居者のトラブル対応が手間」など、あなたが今負担に思っている業務や課題を解決するサービスを提供しているかどうかも、管理委託先を探すうえで重要な基準となります。
先述の通り、賃貸業務は複数あり、請け負い可能な業務内容は、不動産管理会社ごとに異なります。
今は、負担になっている家賃収入の管理業務だけを依頼しようと思っていたとしても、後から「やっぱり清掃業務やトラブル対応などもお願いしたい」となる可能性もあります。
現時点で不動産管理会社へ依頼する予定がなかったとしても、後々依頼せざるを得ない状況になることもあるかもしれません。
そのときに困らないよう、将来、発生し得る課題に見合った業務を依頼できる不動産管理会社を選ぶようにしましょう。
トータルの管理費用に見合った業務内容かどうか
管理委託もコストが発生するため、依頼する業務に対する費用が妥当かを判断することが大切です。
管理委託コストの目安は、家賃の3~8%となっています。「家賃の〇%」ではなく、「1戸当たり〇〇円」といった料金体系の不動産管理会社もあるため、実際の金額で計算して詳細を把握しましょう。
また、一部の業務をオプションとしているケースもあり、いろいろな業務を依頼することで、相場以上のコストがかかってしまう可能性もあります。
管理手数料に含まれる業務や、オプション追加となる業務とその費用などを把握し、トータルコストを確認した上で、コストが業務に見合っているかを判断しましょう。
管理委託を検討しているならアセットテクノロジーへご相談ください!
弊社は、大阪エリアを中心に賃貸管理を行っている不動産会社です。
賃貸事業も行っており、空室が出た際には、募集状況をオーナー様に共有しながら入居者を紹介することができます。
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まとめ
サブリース契約は不動産投資の選択肢として魅力的ですが、同時に多くのリスクも考えられます。安定した収入や管理の手間の軽減といったメリットがある一方で、収益性の低下や契約の柔軟性の欠如などのデメリットも存在します。
不動産投資の初心者や管理の手間を省きたい人、安定した収入を求める人などにサブリースは適している一方で、高い収益性や短期的な利益を求める人、自ら積極的に経営に関与したい人には適していません。
サブリース契約を検討する際は、自身の投資目的や経済状況、リスク許容度などを十分に考慮し、契約内容を慎重に確認しましょう。