不動産投資における税金対策とは?節税するときのポイントを解説

不動産投資は、税金対策としても有効です。ただし、高い節税効果を期待できる人は限られるため、節税の仕組みをしっかり理解してから取り組みましょう。 今回は、不動産投資で節約できる税金や節税の仕組み、メリットを紹介します。あわせて不動産投資に取り組むときの注意点も解説します。

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不動産投資で節税できる税金とは

マンションやアパート経営といった不動産投資は、将来の資産形成に役立ちます。なぜなら、税金を最小限に抑えて、安定した家賃収入が得られるからです。

ここでは、不動産投資で節税できる税金の種類を紹介します。

所得税・住民税

不動産投資で節約できる税金としてまず挙げられるのが、所得税と住民税です。このふたつは毎年納税する必要があるため、大きな節約効果が期待できます

所得税は、収入から経費を差し引いた金額、すなわち所得に課せられる税金です。不動産投資では、不動産管理にかかわる費用を経費として計上できるため、その分所得を減らして税金の負担を軽くできます。

住民税は、住んでいる都道府県と市区町村から課される税金です。本人の所得額に応じて算出される税金なので、所得税を抑えることで住民税の節税につながります。

贈与税

不動産投資では、贈与税も最小限に抑えることが可能です。将来的に投資物件を家族に贈与するときは売却するのではなく、不動産のまま贈与するほうが節税につながります。

贈与税は、財産を他人から無償で譲り受けたときに、課される税金です。受け取った財産額のうち、年間合計110万円までは控除されるものの、それ以上を超えると納税の義務が発生します。

贈与税は、受け取る金額に対して税率が決まります。ただし、不動産の贈与の場合は算出基準が国税庁の定める相続税評価額であり、時価よりも2~3割金額を抑えられるため、納税額を大きく減らせます。

相続税

相続税も、不動産投資で節税が可能な税金です。最終的に投資物件を家族に相続するときにも、大きな節税効果を期待できます。

相続税は相続財産の評価額から基礎控除を引いたものに税率をかけて算出され、相続される遺族に納税義務があります。配偶者の税額軽減制度によって一定の条件を満たした配偶者は税額の免除を受けられるものの、相続額が大きいほど負担が大きくなります。

不動産のまま相続する場合は、現金に比べて評価額を2~4割低く抑えられるため、少ない負担で相続可能です。

不動産投資の節税の仕組み

不動産投資は、なぜ税金対策に有効なのでしょうか。ここでは、不動産投資の節税の仕組みを解説します。

減価償却による節税

不動産投資が節税に役立つのは、減価償却による長期間の経費計上ができるからです。

減価償却とは、購入した建物にかかる費用を一度に処理するのではなく、使用可能期間にわたって分割して経費計上する会計処理のことをいいます。減価償却は会計上経費であっても、支出を伴いません。

不動産投資では長期間にわたって経費計上することで所得税と住民税を安く抑えることが可能です。結果として効率良く資産形成を期待できます。

損益通算による節税

不動産投資では、損益通算による節税ができるのもポイントです。

損益通算とは、所得の赤字と黒字を相殺することを会計処理といい、不動産投資では不動産を購入したときの赤字額を給与所得などと相殺することが可能です。減価償却費が大きいほど赤字も大きくなり、相殺できる額も増加して、節税効果が高まります。

法人化による節税

不動産投資の収支を申告する場合、個人として申告するよりも、法人として申告する方が、高い節税効果を期待できます。法人として申告するため、不動産投資事業を法人化する必要があります。

法人化には、把握しておくべきメリットとデメリットがあります。下記で詳しくご紹介しますので、参考にしてみてください。

法人化のメリット

不動産所得が大きいほど、法人化による節税効果は高まります。個人と法人では、所得税として課税される最大税率が異なります。最大税率とは、所得税として課せられる税金の上限のことです。

個人の場合、4,000万円以上の所得に対し45%の所得税が最大税率となります。一方で、普通法人の場合、年800万円以上に対して課せられる税金は23.2%です。

不動産投資から大きな所得がある場合、法人税として納税することで、個人と比べて納税額の削減が期待できます。

 また、法人化によるメリットは節税効果だけではありません。個人投資家に比べると、融資を受けやすくなります。また青色申告をしている場合、損益通算の赤字繰り越しを10年まで延長できるメリットもあります。

法人化のデメリット

法人化は高い節税効果が期待できる分、複雑な会計処理や税務処理が求められます。

事業の合間に複雑な処理を行うことは困難なため、多くの場合は外部の専門家へ委託することとなります。当然、相応の委託費用が必要です。

また、社会保険への加入も求められるため、収益によっては法人の維持費でかえって負担が増える可能性もあります。

不動産投資による節税効果が高いのがこんな人!

不動産投資で節税効果が高いのは、課税所得の高い人です。

不動産投資で減税できる所得税や住民税をはじめ、贈与税や相続税も、課税額が高いほど税率が上がる累進課税方式を採用しています。そのため、課税所得が高いサラリーマンの方が効率良く納税額を減らせます。

目安となる課税所得は、900万円です。年間の課税所得が900万円を超える人は不動産投資による節税効果が高いため、長期的に運用できる物件を探してみると良いでしょう。

一方、課税所得900万円以下の場合は、大きな節税効果が得にくい傾向があります。所得が低い場合は節税目的よりも、収益を上げることを意識した物件選びが重要です。

【不動産投資】節税効果は物件によって異なる

節税効果を重視して投資用不動産を選ぶときは、物件の状態や種類に注意しなくてはなりません。物件によって、節税効果は大きく異なります。

ここでは不動産投資において人気の高い「木造かつ築古物件」と「新築区分マンション」に分けて節税効果の違いを解説します。

木造かつ築古物件は節税効果を期待できる

木造かつ築古物件が高い節税効果を期待できる理由として、減価償却の存在が挙げられます。減価償却は年々少額ずつ計上します。そのため減価償却をいかに大きくとるかが節税のコツともいえます。

木造と築古物件には、それぞれ下記のとおり減価償却を大きくとれる可能性があります。

・木造:ほかの構造よりも法定耐用年数が短い分、大きく計上しやすい

・築古物件:法定耐用年数×20%の年数で計上できる(法定耐用年数切れの場合)

法定耐用年数は建物の構造ごとに異なります。木造建築は22年で、鉄筋などほかの構造に比べると短く設定されています。ほかの構造の物件と同価格かつ同程度の築年数であれば、木造を購入した方が減価償却を短期間で行うため、1回ごとの償却が大きくなります。

築古物件は、法定耐用年数切れとなっている物件が多いのが特徴です。法定耐用年数切れの物件は償却率が高くなるため、同じ構造でも1回ごとの償却を大きくとれるメリットがあります。

新築区分マンションは節税効果が出にくい

前述のとおり、不動産の減価償却は構造や法定耐用年数が大きく関係しています。新築区分マンションの場合、木造ではないことや法定耐用年数が多く残っていることから、節税効果は出にくいのが特徴です。

同じ階数や間取りの物件であっても、法定耐用年数が残っている分、新築区分マンションの方が中古マンションよりも1回に償却できる金額が小さくなります。

不動産投資で節税をするときの注意点

節税も視野に入れた不動産投資を行うときは、いくつかの注意点を念頭において事業プランを立てることが重要です。

ここでは節税で失敗しないためのコツとして、不動産投資を行うときの注意点を3つ紹介します。

賃貸ニーズのある物件を選ぶ

物件選びの観点からすると、節税効果の高い物件が必ずしもメリットをもたらすとは限りません。そもそも減価償却して赤字になる物件は、収益性が低い傾向にあるためです。

物件を安く購入して毎年節税できたとしても、収益につながらなければ不動産を所有するメリットがなくなります。

賃料による収益も求めるためには、賃貸需要も視野に入れた物件選びが欠かせません。需要の高いエリアを中心に、入居が期待できる物件を購入しましょう。

銀行から融資を受けられない場合がある

節税目的だから赤字状態が続いても良いと思うかもしれませんが、不動産投資を本格的に行うつもりであるなら効果的な手法とはいえません。節税効果を発揮させるためには、赤字計上が必要です。しかし、赤字が続けば銀行から融資を受けられなくなる場合があります。

銀行が融資の判断を行う際に重視するのは、申込者の返済能力です。赤字計上が続けば銀行は「不動産経営がうまくいっていない」「返済が期待できない」と判断して、融資を断る可能性が高くなります。

ほかの節税方法も考慮する

住民税や所得税は、所得全体に対して課税額が算出されます。そのため不動産投資のみで節税をする必要はありません。ほかの節税方法も考慮して、自分に合う選択肢を増やすことが無理なく続けるコツです。

例えば、iDeCoを活用した資産形成および節税方法が挙げられます。

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、任意で加入できる私的年金制度のことです。掛金、運用益、給付金それぞれに税制優遇が設けられており、節税しつつ将来の資産を積立できる仕組みです。

もちろん、不動産投資との併用もできます。不動産投資のみに節税効果を期待せず、ほかの方法も取り入れて長期継続できる運用を目指しましょう。

不動産投資のプロに相談する

不動産投資は節税や資産形成に役立つ反面で、デメリットやリスクもあります。少しでも不安がある場合は一人で悩まず、不動産投資のプロに相談することも検討しましょう。

不動産投資は初めて投資する方でも取り組めるものの、節税や税制に関する知識がないと、思わぬ損をするリスクがあります。万が一のときに相談できる専門家を見つけておくだけでも、自信をもって投資できるでしょう。

不動産投資は、長期的な運用です。困ったときは自分だけで決断せず、プロの意見も聞きながら、確実な資産運用に取り組んでください。

まとめ

マンションなどの不動産投資は、安定した家賃収入や将来的な売却益で、資産形成に役立ちます。同時に税金対策もできるため、効率良く収入アップを目指したい人におすすめです。

税金の仕組みに関しては不動産のプロの意見も聞きながら、前向きに不動産投資に取り組むようにしましょう。