不動産投資で繰り上げ返済するメリットは?注意点や向いている人の特徴

不動産投資はローンで物件を購入し、家賃収入でローンを返済していくことが一般的です。キャッシュフローが安定してくると、少しでもローンの負担を抑えるために早く残債を減らしたいと考える方もいるでしょう。 キャッシュフローに余裕のあるときに試したいのがローンの「繰り上げ返済」です。今回は、不動産投資ローンの繰り上げ返済の方法やメリット・デメリット、注意点について解説します。

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【不動産投資】繰り上げ返済の方法はふたつ

不動産投資ローンを繰り上げ返済すれば、返済額は全額元金にあてられるため以降の利息が縮小し、総返済額が減少します。

繰り上げ返済の方法には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」のふたつのタイプがあります

ので、それぞれどのような特徴があるか見ていきましょう。

返済期間を短縮する「返済期間短縮型」

「返済期間短縮型」とは、返済期間を短くする返済方法です。繰り上げ返済後の月々の返済額を変えることなく、返済期間が短くなることにより利息額が減少します。次項の「返済額軽減型」に比べて高い利息軽減効果を得られます。

月々の返済額を減らす「返済額軽減型」

「返済額軽減型」は、繰り上げ返済後に返済期間を変えずに月々の返済額を減らす返済方法です。返済期間短縮型と比べると利息軽減効果は小さくなりますが、手元に現金を残せて、キャッシュフローを改善できます。

メリットは、急な出費が発生した場合にも余裕をもてることです。月々の返済を無理なく行いたい方に向いています。

【不動産投資】繰り上げ返済する場合のメリット

不動産投資で繰り上げ返済する場合のメリットを5つ取り上げます。

トータルの返済額を減らせる

繰り上げ返済の大きなメリットは、利息を軽減することにより返済総額を減らせることです。繰り上げ返済により元金が減るため、以降元金に対して計算される利息も少なくなります。返済額やタイミングによっては、大きく利息負担を削減できます。

このように、繰り上げ返済は通常のローン返済とは異なり、すべて元金に適用されるため、トータルの返済額を減らせるのがメリットです。

返済期間の短縮になる(期間短縮型の場合)

期間短縮型で繰り上げ返済をした場合、返済期間を短くできます。返済期間が短くなることで、最終的な利息は返済額軽減型よりも少なく済むことが多いです。期間返済型の繰り上げ返済を選択すると、借金を早期に払い終えることができ、借入のリスクから解放される点がメリットといえるでしょう。

月々の返済における負担を軽減できる(返済額軽減型の場合)

返済額軽減型で繰り上げ返済をする場合、返済期間に変更はありませんが、月々の返済負担を減らせるメリットがあります。返済額が減ることによって、不動産投資が無理なくできるようになるほか、リスクヘッジとして貯金に回せる額も増加するでしょう。

期間短縮型と比べるとその効果は小さくなるものの、返済額軽減型でも利息の負担軽減につながります。

金利上昇のリスクに備えられる

繰り上げ返済は、金利上昇リスクへの対策としても有効です。

不動産投資ローンは、変動金利で融資を受けることが一般的なため、返済が完了するまでの間、常に金利の変動リスクにさらされることになります。

金利の見直しが行われても、基本的に5年間は返済額が変わらないとされていますが、大きく上昇した場合は返済額が増える可能性も否定できません。元金や金利状況次第では、返済額が増えることがあります。

低金利のうちに元金を減らしておくことで、金利上昇リスクを抑える効果も期待できるでしょう。

なお、金利の負担が上昇すると利用者の負担が大きくなることから、大幅な金利上昇があっても返済額の増加は最大1.25倍までとされています。

金利上昇のリスクについては、以下の記事でもご紹介しています。

金利上昇と不動産価格下落の関係性とは?金利上昇の影響を抑える方法

精神的な余裕ができる

人によっては、ローン残債を早く減らすことによって、心理的な負担が軽くなる効果も期待できます。

ローン返済額が減少したり、ローン返済の期間が短縮されたりすると、完済までのプレッシャーも減るうえ、不安も軽減されます。

【不動産投資】繰り上げ返済する場合のデメリット

不動産投資の繰り上げ返済にはメリットもありますが、注意しなければならない点もあります。ここでは、繰り上げ返済の4つのデメリットを見ていきましょう。

自己資金が減ってしまう

繰り上げ返済には手数料や手間の面から、ある程度まとまった資金で行うことが一般的です。利息軽減効果ばかりを考えて無理な繰り上げ返済をすると、突発的な出費が必要になった場合、備えが足りなくなることもあるため注意が必要です。

例えば、繰り上げ返済を行った後に、長期間の空室が発生したり、経年劣化により想定外の修繕が必要になったりするケースです。

また、プライベートでの急な出費も考慮しておく必要があります。自身や家族が病気をした場合や、結婚や出産でライフイベントが発生した場合などです。

今後の見通しを立てつつ、繰り上げ返済を検討することをおすすめします。

不動産投資において急な出費が起こるケースについては、以下の記事でもご紹介しています。

不動産投資にはデメリットもある?失敗を避ける方法も紹介!

繰り上げ返済の効果が薄いケースもある

低金利で借り入れしている場合には、手数料分を考慮すると大きな利息軽減効果は発揮しにくいかもしれません。

繰り上げ返済は、元本への充当による利息分の負担軽減が目的となります。そのため、低金利で融資を受けている場合は、そもそもの利息軽減効果が小さくなるのです。

また、不動産投資は融資によるレバレッジ効果を活用した投資です。利回りが低い物件は、繰り上げ返済をするメリットが小さくなることも念頭に置いておきましょう。利回りの低い物件は繰り上げ返済をするよりも、次の利回りの高い物件の購入資金へ回す方が投資としては効率的です。

金融機関からの評価を得にくくなる

繰り上げ返済を行うと、手元の資金が減少してしまいます。ほかの投資のために新しい融資を受けたいと思った場合に、手元の資金が少ないと金融機関の評価に影響を与えます。

融資審査の判断基準には、収入、勤務先、勤続年数などが挙げられますが、最も重要視されるのは返済能力です。そのため、自己資金の額によって審査が不利になることがあるのです。

新しい不動産の購入を考えているような場合は、繰り上げ返済をせずに、自己資金として保有しておく選択肢もあります。

不動産投資の繰り上げ返済が向いている人

不動産投資での繰り上げ返済が向いている人は、以下の3つに該当する人です。

不動産投資物件の追加購入予定がない人

まず、不動産投資物件の追加購入予定がない人です。大きな資金を手元に置いておく必要がなければ、繰り上げ返済で返済額を抑えるのも良いでしょう。

今後も物件の購入予定がある人は、繰り上げ返済を行うと手元に資金がなくなり、購入機会が遠のいてしまうかもしれません。金融機関の評価も手元資金がある方が有利です。資金は繰り上げ返済せず、次の物件の購入資金に残しておくことをおすすめします。

複数の物件を所有している人

すでに複数の物件を所有している人も、繰り上げ返済に向いています。

ローンは物件ごとに設定されるため、金利はそれぞれ異なるでしょう。金利負担の大きいローンから優先して繰り上げ返済することで、総返済額の負担を効率良く減らすことができます。

資金に余裕がある人

ライフイベントや修繕用の資金に余裕がある人も、繰り上げ返済を行った方が良いでしょう。

いざというときのための資金が潤沢にあれば、わざわざ高い金利を支払って、ローンを借りておく必要はないからです。

不動産投資の繰り上げ返済で注意すべきポイント

不動産投資での繰り上げ返済は総返済額を減らすことはできますが、必ずしも行ったほうが良いとは限りません。繰り上げ返済を選択する際に注意すべきポイントを4つ紹介します。

物件のローン金利

もともと低金利で借りているローンを繰り上げ返済しても、大きな利息削減効果を得ることはできません。繰り上げ返済を行う場合には、高金利で借りているローンから優先して返済を行うようにしましょう。

確定申告による税金のバランス

繰り上げ返済を行えば、利息負担を削減できます。借入金の利息は賃貸経営の経費とすることができますが、利息が減るということは、経費計上可能額も減少することになります。

本人の所得状況によっては、繰り上げ返済を行ったことで所得税や住民税の負担がかえって大きくなることも想定されます。利息の負担と税金の負担とのバランスも確認しておく必要があるでしょう。

想定される物件の修繕資金

収益物件は一定の間隔でメンテナンスや修繕が必要なため、まとまった費用がかかります。資金をすべて繰り上げ返済へあててしまうと、突発的に修繕が発生した場合に対応できない事態に陥ります。

繰り上げ返済する際には手持ちの資金を確保しておき、無理のない範囲で行いましょう。

繰り上げ返済を行うタイミング

基本的に、返済開始からあまり期間が経っていない段階で繰り上げ返済を行ったほうが、残債が多い分利息削減効果が高いです。資金に余裕があれば、なるべく早く繰り上げ返済を行って返済総額を抑えることも、より多くの収益を確保するためのひとつの方法といえます。

まとめ

不動産投資でのローンの繰り上げ返済は、メリットもデメリットもあります。余裕資金の状況や今後の投資計画、ライフプランなどを踏まえたうえで、利息削減効果が大きければ取り組んでみると良いでしょう。融資状況によっては大きな効果を得られない場合もあるため、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。