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イールドギャップとは「投資利回りと長期金利の差」のこと
イールドギャップは、投資によって得られる利回りと長期金利の差のことを指します。不動産投資の場合、長期金利は借入金の金利のことと捉えて良いでしょう。
では、このイールドギャップからどんなことを判断できるのか、正確な計算方法とあわせて説明していきます。
イールドギャップの概要
イールドギャップ(Yield gap)は、利回りの意味がある「イールド」と、相違という意味がある「ギャップ」を合わせた言葉です。
投資の収益性を示す利回りと不動産投資の借り入れ金利の差がイールドギャップであり、投資の効率性を判断するうえで重要となります。
イールドギャップの値は、大きいほど投資の効率性は高く、低ければ投資の効率性が低いと判断できます。
例えば、イールドギャップがプラスの場合はローン返済を除いても、収益が期待できる投資と判断できるでしょう。一方、イールドギャップがマイナスの場合はローン返済とのトータルでは収益が期待できないといえます。
イールドギャップで判断できること
イールドギャップにより、不動産投資のレバレッジ効果を測ることができます。レバレッジ効果とは、少額の資金で大きな金額の投資を行える仕組みのことです。テコの原理にたとえて、そのような名称で呼ばれています。
不動産投資なら、借入をすることで自己資金だけでは購入できない物件を購入できます。その物件から利回りを得ることで、レバレッジ効果を得ていることになります。
ただし、借入を利用する際は金利を支払わなければなりません。金利の支払いが利益を縮小させるため、利回りから金利を差し引いたイールドギャップでレバレッジ効果の大小を判断できます。
レバレッジ効果について詳しくはこちらをご覧ください。
「これから不動産投資を始める人へ|レバレッジ効果について解説」
イールドギャップの求め方
イールドギャップの計算方法は大きく分けて3種類あります。
表面利回りとローン金利の差を求める
表面利回りというのは、物件の取得費用や維持費などを無視して家賃収入のみを考慮した利回りのことです。年間の家賃収入の合計額を物件の購入価格で割ることで算出できます。たとえば、年間の家賃収入の合計額が350万円で、物件の購入価格が5,000万円なら7%です。
【計算式】
350万円÷5,000万円=0.07 |
ローン金利が3%ならイールドギャップは4%と計算できます。
この計算方法は非常にシンプルで分かりやすいですが、実体と合わない可能性があるため注意が必要です。
実質利回りとローン金利の差を求める
実質利回りというのは、物件の取得費用や維持費などを考慮に入れた利回りのことです。家賃収入から物件の維持にかかる年間支出を差し引き、物件価格には購入時に支払った諸経費を加えたうえで計算します。
年間支出というのは次のような費用のことです。
・管理委託費
・修繕費
・火災保険料
・固定資産税
物件の購入時には次のような諸経費がかかっています。
・ローン事務手数料
・物件の仲介手数料
・登記費用
・不動産取得税
たとえば前述の例で、年間支出が合計100万円で、購入時の諸経費が400万円かかったと仮定すれば、実質利回りは約4.6%です。
【計算式】
(350万円―100万円)÷(5,000万円+400万円)=0.0462 |
ローン金利が3%なら、イールドギャップは1.6%ということになります。
実質利回りとローン定数の差を求める
ローン定数とは、年間の返済額をローン残高で割った数字のことです。返済額は元利を合わせた金額を用いて計算します。返済期間が長いほどローン定数の数字が小さくなるのが特徴です。
年間返済金額の計算方法は複雑になりますが、金融機関などで提供しているローンシミュレータを使うと確認できます。
たとえば、借入金残高が5,000万円で年間返済金額が214万円と仮定すると、ローン定数は約4.28%です。
【計算式】
214万円÷5,000万円=0.0428 |
前述の例と同じく実質利回りが約4.6%なら、イールドギャップは0.32%ということになります。
この計算方法はキャッシュフローが回るかどうかを判断する際に用いられることが多いです。
イールドギャップの変動要因
イールドギャップはさまざまな要因で変動する場合があります。
ここでは、イールドギャップの変動要因を紹介します。
賃料
イールドギャップの変動要因として挙げられるのは、入居者から受け取る賃料です。
賃料は利回りに影響を与える要素となるため、賃料が多くなれば利回りが高くなり、イールドギャップも高くなります。不動産投資の利回りを計算する際に、満室を想定していると、空室が発生した際には賃料が減少し、イールドギャップの低下につながるでしょう。
また、空室の有無に関わらず、周辺環境やエリアの物件価格の変動、経年劣化によって賃料が変動する際にもイールドギャップが変動します。
ローンの金利
計算式からもわかるように、ローンの金利もイールドギャップの変動要因の一つです。
不動産投資ローン金利には、変動金利型・固定金利型・全期間固定型の3タイプがあります。このうち、全期間固定型は完済まで金利が変わることはないため、イールドギャップは利回りが変わらない限り一定です。
一方、固定金利型は3年や5年など一定期間が経過すると金利が異なるタイプであり、固定金利の期間が過ぎて金利が更新されるとイールドギャップも変動します。
また、変動金利型は年2回の金利見直しがあり、金利が安定しないため、長期的な収益性を判断するという目的でイールドギャップを用いるのは適しません。
管理コストの変動
実質利回りを考慮したイールドギャップの場合、管理コストの変動によってイールドギャップの数値が変わることもあります。
なぜなら、管理会社の変更や方針の変更、修繕箇所の増加によって管理費が増えると、実質利回りが低下し、イールドギャップも低下するためです。
ただし、表面利回りでイールドギャップを算出する際には、管理コストが利回りに考慮されていないため数値に変動はありません。
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イールドギャップを活用するポイント
ここでは、イールドギャップを活用するポイントを紹介します。
イールドギャップで不動産投資の実態が掴みやすくなる
イールドギャップを意識しておくことで、不動産投資の実態をつかみやすくなり、物件選びの判断がしやすくなります。
例えば、築年数や立地条件が同じ物件Aと物件Bがあり、表面利回りや金利が以下だったとします。
- 物件A:表面利回りが9%、ローン金利が3.0%
- 物件B:表面利回りが8%、ローン金利が1.5%
物件の表面利回りだけ見ると、物件Aを選んだ方がいいようにみえるでしょう。しかし、イールドギャップを考えると、物件Aは6%であるのに対し、物件Bは6.5%となるため、物件Bの方が有利となります。
このように、イールドギャップを考えることによって表面利回りだけでは見えてこない不動産投資の実態が見えてきます。
イールドギャップで投資資金の早期回収を図る
イールドギャップを意識することによって、投資資金の早期回収を図りやすくなるのもメリットです。
イールドギャップが高いということは、利回りに対して低い金利で資金調達できているといえます。そのため、低い金利で多くの資金を調達し、レバレッジをかけた投資がしやすくなるというわけです。
投資した自己資本に対して回収できる金額も大きくなると、収益率の向上に加え、投資した金額の回収期間の短縮にもつながります。投資資金の回収ができれば、その資金を新しい物件に投資し、より大きな収入を得られるでしょう。
このような理由からもイールドギャップは不動産投資において大切な指標であるため、投資を行う前にはチェックすることが大切です。
現実的な計算前提を行う
イールドギャップは現実的な計算前提を行うことも大切です。
表面利回りで計算されたものか、実質利回りで計算されたものかによって、イールドギャップの数値も変わってきます。また、実質利回りを用いる場合も、計算時にどのような諸経費が含まれているかも数値に影響を与える要素です。
自分で計算を行う際にも、より具体的で現実的な諸経費などの条件を含めたうえで、イールドギャップを求めましょう。
リスクを盛り込んだキャッシュフロー表も作成しておく
イールドギャップで投資の収益性を確認する際には、あわせて修繕費や将来の空室リスクなども盛り込んだキャッシュフロー表を作成しましょう。不動産投資は長期にわたって行う投資であり、新築の物件を取得したとしても、定期的な修繕や将来的には大規模修繕が必要となります。
イールドギャップだけでは長期の収益性を測ることはできないため、無理なく不動産投資を続けられるかどうかを把握しなければなりません。
そのため、リスクを盛り込んだキャッシュフロー表もあわせて作成しておきましょう。
イールドギャップの目安は「3%」
イールドギャップの目安は3%程度といわれています。では、その理由について新築と中古に分けて見ていきましょう。
【新築の場合】購入価格が高く、表面利回りが低くなる
新築物件は中古物件と比べて年間コストは低めの傾向にあります。最初の数年間では、修繕費などはほとんどかからないためです。
しかし、新築物件は購入価格が高めであることから、表面利回りはどうしても低くなってしまいます。また、中古物件と比べて不動産価値の下落幅が大きく、それだけ家賃の下落リスクも高めです。
そのような事情を考慮すると、イールドギャップは3%以上ないと厳しいでしょう。
【中古の場合】修繕にかかる費用が大きくなりやすい
中古物件は、新築物件と比べると購入価格は低く抑えられますが、その反面で築年数が経っています。経年劣化により修繕が必要になる箇所が比較的早い段階で出てくるでしょう。そのため、新築物件よりも修繕費が高くなる傾向にあります。
また、一般的に賃貸物件に入居しようとする人は古い物件よりも新しい物件を好む傾向があり、古い物件は敬遠されがちです。空室リスクが発生することもあるでしょう。
そのような事情から、表面利回りは高くなるかもしれませんが、実質利回りは低くなる傾向があります。イールドギャップが3%以上の物件を選ばないと、後々十分な収益を得られなくなる可能性は高いです。
イールドギャップだけで投資判断するのは避けるべき!
イールドギャップだけで投資判断をすると失敗してしまうこともあります。では、その理由について見ていきましょう。
イールドギャップは状況によって変化するため
イールドギャップは、金利の上昇や家賃収入の減少などに伴って変化します。物件購入時はイールドギャップが高くても、数年後は下がってしまうかもしれません。
そのため、物件購入時のイールドギャップだけを前提に判断するのは危険です。状況の変化によるイールドギャップの変化も織り込んだうえで判断する必要があります。
計算方法によって数値が異なるため
イールドギャップは計算方法により数値が異なります。表面利回りで計算したイールドギャップが高くても、実質利回りで計算すれば低くなることも多いです。場合によってはマイナスになることもあるかもしれません。
また、ローン定数を用いて計算する方法だと、融資期間の長さで差が生じます。ひとつの計算方法でイールドギャップが高かったとしても、それだけで投資判断をするのは避けましょう。イールドギャップを投資判断に用いるなら、複数の計算方法で検証してみることが大切です。
ローン金利と返済期間に注目する
イールドギャップだけでは、不動産投資の収益と返済のバランスを正確にはかるのは難しいため、ローン金利や返済期間にも注目しなければなりません。
例えば、不動産物件の表面利回りが10%でローン金利が3%の場合、イールドギャップは7%になります。
しかし、この計算方法だけではローン返済は考慮できても、返済期間の要素が入っていないため、収益性を正しく判断することは難しいでしょう。
この求め方だと、ローン金利が低くイールドギャップの数値がよくても、返済期間が短いことで返済負担が大きくなる可能性もあります。
正確なイールドギャップを求めるためには、返済期間まで考慮しなければなりません。
そのため、イールドギャップを参考にするのであれば、実質利回りとローン定数の差から算出するイールドギャップがよいでしょう。
目的によってはイールドギャップを気にする必要はない
不動産投資の目的によっては、イールドギャップを気にしすぎる必要はありません。
不動産投資が老後の安定収入確保が目的であれば、イールドギャップが低くてもローン返済が終わるころにはローン完済が済んで安定した収入が得られます。
不動産投資を始めようと思っている方の中には、少しでもイールドギャップの条件がいい物件を探す方もいるでしょう。
しかし、イールドギャップにこだわればこだわるほど物件探しの条件も厳しくなり、好立地で優良な物件を見落としてしまう可能性も出てきます。
この場合であれば、イールドギャップよりも「高い入居率が維持できる物件かどうか」の要素の方が重要です。
あくまでも一つの指標として参考にする程度にとどめ、目的に応じた物件選びを行う必要があります。
イールドギャップを向上させる方法
イールドギャップは向上させることもできます。
ここでは、イールドギャップを向上させる方法を紹介します。
家賃引き上げ
イールドギャップを向上させるために、家賃引き上げを行って利回りを上げる方法があります。
家賃の賃料の増額は法律で認められているため、大家さんの判断で値上げすることは可能です。ただし、家賃の引き上げができるのは、土地や建物の税金が増えたり、物価が上がったりなど経済事情が変化したときのみとなります。
また、家賃の値上げに成功したとしても、それによって空室率が発生してしまうと意味がありません。家賃の値上げ交渉を巡って入居者と訴訟に発展するリスクもあるため、十分に注意する必要があります。
イールドギャップを向上させるためだけに家賃の引き上げをするのは、現実的とはいえないでしょう。
なるべく低い金利の金融機関を選ぶ
イールドギャップを向上するためには、なるべく低い金利の金融機関を選んでローンを組むことも方法の一つです。
不動産投資において建物の購入価格や利回りが同じであった場合、金利が低いほどイールドギャップが高くなります。不動産投資は大きなお金が動く投資であるため、1%の金利差が数百万円の違いを生むこともあるでしょう。
そのため、イールドギャップを向上するためには利回りだけに目を向けるのではなく、金融機関が設定している金利に目を向けることも大切です。
金融機関のローン金利を比較する際には、金利タイプにも注意しましょう。金利タイプによって金利は大きく変わるため、変動金利なら変動金利、3年固定なら3年固定のように、同じ金利タイプで比較する必要があります。
不動産投資における金利相場については、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
⇒金利の相場は?不動産投資の金利を決める要因と低金利で借りる7つのコツを紹介
まとめ
この記事では、不動産投資におけるイールドギャップの概要や計算方法、活用のポイント、注意点などを解説しました。
イールドギャップは、不動産投資における物件の実質利回りから不動産投資ローンを差し引いた差額です。イールドギャップが高いほど物件の収益率や投資効率がよく、長期的に安定した利益が期待できます。
ただし、イールドギャップが高い物件を選んだものの、建物の修繕や入居者の低下によって収益が下がるようなケースもあるため注意が必要です。
事前に情報をしっかりと集め、自分が納得できる物件を選びましょう。
不動産投資のことなら、アセットテクノロジーにお任せください。
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