宅建の資格とは
そもそも宅建とは何か、宅建の概要や資格試験について解説します。
宅地建物取引士について
宅建の正式名称は、宅地建物取引士です。不動産取引において必要な業務を行う国家資格で、宅地建物取引士にしかできない独占業務が定められています。
宅地建物取引士が独占的に行えるのは、以下の3つです。
1.契約前の重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.契約内容書面の記名・押印
宅建の資格試験について
宅地建物取引士になるには、資格試験の合格が必要です。宅建の資格試験の合格率は、約15%と難易度は高めです。
試験では、以下の範囲から出題されます。
・不動産の権利関係(借地借家法や民法など)
・宅地建物取引業法
・法令上の制限(建築基準法や都市計画法など)
・不動産の税金(所得税や固定資産税など)
不動産の取引に関することから、不動産における制限、不動産に関わる税金と、幅広い知識が求められる試験となっております。
宅建に合格するための勉強時間はどれくらい?
個人差はありますが、勉強時間の目安は200~300時間です。少ない人で100時間ほど、初めて受験する人は500時間ほどかかるケースも珍しくありません。
行政書士や社会保険労務士の勉強時間が1000時間前後なので、法律系の資格の中では、勉強時間は少ない部類に入るといえます。
宅建の受験シーズン
宅建の試験は毎年10月第3日曜日に行われます。受験申込開始は毎年7月1日からで、インターネットと郵送で受け付けています。郵送による受付期間は約1か月間ですが、インターネットによる受付期間は20日間前後となっているため事前確認が大切です。
不動産投資をする人が宅建資格を持つメリット
不動産投資をするにあたって、宅建の資格を持っていることで以下の4つのメリットがあります。
不動産に関する幅広い知識を身につけられる
宅建の試験では、不動産取引などに関連して広い知識が問われるため、宅建の資格試験の勉強をすれば、不動産に関する知識も身につきます。
そして、不動産に関する知識が身につけば、専門用語が使われた不動産情報の確認も容易になったり、知識を活用して良い物件を見極められたりもします。不動産投資でのリスク軽減にも役立てられるでしょう。
違法な物件や取引を見抜ける
既存の物件であっても、法的条件を満たさない違法物件が存在します。例えば、高さ制限、建ぺい率(敷地面積における建築面積)、耐火性などの違反です。この違反は、一見問題なさそうに見えることもあるため、売主本人も物件の違法性に気づいていないケースがあります。
その点、宅建の資格があれば、宅建業法で規制される物件も見分けられます。物件のほかに、違法行為にも敏感になるでしょう。宅建業法で規制される違法な営業や顧客に不利になる営業など、違法性を見抜くことができるため、リスクの回避に役立ちます。
重要事項説明書の内容をよく理解できる
不動産の契約前に重要事項説明書の配布と重要事項の説明があります。ただ、説明書に記載されている内容は専門的なものも多く、知識がなければ理解に苦しむこともあります。
宅建の資格があれば専門的な内容も理解できるため、契約前に不利な内容や物件のリスクに気づけるでしょう。
重要事項説明書には、特に注意を必要とする建ぺい率や抵当権(契約する土地や建物を担保とする際の金融機関が設定する権利)についても記載がありますので、しっかり確認しておくことが大切です。
引渡しまでに抵当権が解除されていないと、取引は成立してもリスクが残ります。宅建の知識があれば、抵当権の解除は問題なく行われるか事前の確認もできるでしょう。
交渉が有利になる
宅建の資格があると、不動産に関する知識を元に取引を進められるため、取引相手からの信頼度が上がります。
契約時は、物件の不備や問題に気づけることから、相手も慎重に提案や説明をしてくれるでしょう。うまくいけば交渉を有利に進めることもできます。
また、契約時だけでなく、不動産売却の際も、宅建の資格があれば法律を熟知していることがアピールできます。宅建を持っていれば、契約時にも売却時にもプラスに働くということです。
購入物件の管理に役立つ
物件を購入すると、管理そのものは管理会社に委託することになります。その際、不動産取引に関する専門的な知識があると、管理会社の担当者と円滑にやりとりできます。また、管理会社が適切に物件を管理しているか判断できるため、管理会社を選ぶ際にも活用できます。
宅建の勉強をすると、入居者の権利についても学べるため、入居者の立場に立った不動産経営を考えられるようになります。入居者に寄り添った環境を整えることは、入居率のアップにもつながります。
宅地建物取引業の開業という選択肢が増える
宅建資格を保有していると、宅建取引業の開業ができます。副業として不動産投資を行っている場合、一歩踏み込んだ選択ができるのです。
不動産業者になれば、所有する物件を売買する際の仲介手数料がかからなくなるうえ、他者が所有する物件の売買を仲介して手数料収入を得ることもできます。
さらに、不動産投資の専門家ライターやコンサルタントとして活動するなど、収入を得る選択肢を増やせます。
不動産投資に宅建資格が必要となるケースは?
宅建資格がなくても不動産投資はできます。しかし、不動産投資の中には宅建資格が必要な行為も存在します。それは宅建建物取引業に該当する行為です。ここでは宅建資格が必要となるケースの例として、下記の2つを紹介します。
反復継続性がある売却
短期間で購入と売却を繰り返したり、土地を分割して複数の人に販売したりするような行為は「反復継続性がある売却」と見なされ、宅地建物取引業に該当する行為に当たります。
一方、家賃収入を得るために収益物件を購入したり、個人資産である土地や建物を売却したりするケースは、宅地建物取引業に該当しません。
事業性が高い売買
転売を目的に競売物件を安値で仕入れたり、購入者を募って物件を直接販売したりする行為は「事業性が高い売買」として宅地建物取引業に該当し、宅建資格が必要です。
事業性が高いかどうかは、取引の対象者や目的、物件の取得経緯などから判断されます。広く購入希望者を募る、収益を上げたり転売したりすることを目的とした購入といった行為は、いずれも事業性が高いとみなされます。
一方、宅地建物取引業者を通して物件を販売(売却)する場合は、事業性は低いとみなされます。
宅建の資格を取る方法
不動産投資において、宅建の資格はないよりあった方がメリットは大きいと紹介しました。それでは、宅建の資格はどのようにして取得すれば良いのでしょうか。独学、通信教育、スクール、の3つの手段を紹介します。
合格率約15%と難易度の高い宅建の資格取得において、どのような勉強が効果的か見ていきましょう。
独学で勉強する
宅建は人気の資格だけあって、市販の参考書やテキスト、問題集、過去問も手に入れやすいです。そのため、独学で学習することができます。
宅建を独学で学ぶことのメリットは、学習にかかる費用を抑えつつ、自分のペースで学習を進められることです。
一方、試験までのスケジュール立てや参考書は自分で調べて準備する必要があるため、なかなか思い通りの学習ができなかったり、モチベーションを維持できなかったり、といったデメリットもあります。
通信教育を利用する
宅建の資格試験に特化したテキストや、講座が用意された通信教育による学習も選択肢のひとつです。テキストで学習するもの、動画などの視覚的な講座を視聴できるものなど、さまざまな通信教材があります。
独学と比べてコストはかかりますが、講師に質問できたり、添削してもらえたり、学習面でのサポートが独学よりも充実しているのが通信教育の特徴です。
スクールに通う
宅建に特化したスクールに通学して資格取得を目指す方法もあります。独学や通信教育と異なり、宅建に特化したカリキュラムが組まれており、スケジューリングされているため、より勉強に力を入れることができます。
費用は独学や通信教育よりも高額ですが、その分、専門の講師からレクチャーを受けられる、効率良く学べる点でメリットは大きいです。
宅建士として仕事をするには資格登録が必要
宅建の試験に合格すると合格証がもらえますが、それだけでは宅建士として仕事ができるわけではありません。資格登録をして宅建士証の交付を受けて初めて仕事ができます。
試験に合格後、資格登録をする方法は、宅建業での実務経験の有無によって異なります。
宅建業の実務経験が無い人
宅建業の実務経験がない場合、試験合格後に登録実務講習を受ける必要があります。講習を受けたあと、終了証が送付されます。これで2年以上の実務経験と同等の扱いになり、資格登録ができます。
・受講場所…全国の資格予備校など。実施機関は国土交通省のホームページで確認できます
・講習内容…通信講座1か月+座学2日間、座学の最終日に修了テストあり
・講習費用…2万円前後(実施機関によって異なる)
宅建業の実務経験が2年以上ある人
2年以上の実務経験がある人は、実務経験をした会社から「実務経験の証明書類」を出してもらう必要があります。厳密には実務経験をした会社の従業員名簿に名前があることに加え、下記のような実務を経験していなければなりません。
・契約書、重要事項説明書の作成業務
・不動産の決済立ち合い
・契約現場に立ち会い、重要事項以外の説明を行った
・物件の調査
宅建業を営む会社での経理や人事などの仕事は、実務経験に含まれないので注意しましょう。
まとめ
不動産投資において、宅建の資格は必須ではありませんが、宅建を持っていることで不動産投資への理解が深まるなどさまざまなメリットがあります。
宅建の資格取得は不動産投資を行う上で「自身で判断できる」「交渉が有利になることがある」と利点も多いです。
宅建は、人気の資格で独学でも学習を進めることができます。
自分に合った学習法を模索し、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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