不動産投資に宅建の資格は必要?資格を取るメリットとは

不動産投資を調べていく中で、宅地建物取引士(宅建)を持っておくと良いという情報を耳にしたことがある人もいるでしょう。不動産投資において資格は必須ではありませんが、持っているとメリットのある資格もあります。 宅建の資格も不動産投資をする際にメリットとなるのでしょうか。この記事では、宅建の概要と不動産投資との関係を紹介していきます。

この記事は約14分で読み終わります。

目次

宅建の資格とは

そもそも宅建とは何か、宅建の概要や資格試験について解説します。

宅地建物取引士について

宅建の正式名称は、宅地建物取引士です。不動産取引において必要な業務を行う国家資格で、宅地建物取引士にしかできない独占業務が定められています。

宅地建物取引士が独占的に行えるのは、以下の3つです。

1.契約前の重要事項説明

2.重要事項説明書への記名・押印

3.契約内容書面の記名・押印

独占業務に携わることがなければ宅地建物取引士の取得は基本的に必要ありません。不動産取引において必要な知識を得ることで有利に運用できる可能性は高まりますが、資格がなくても不動産投資は可能です。


不動産投資において専門的な知識を必要とする場合は、宅地建物取引士である専門家へ依頼すれば基本的には問題ないでしょう。

宅建の資格試験について

宅地建物取引士になるには、資格試験の合格が必要です。宅建の資格試験の合格率は、約15%と難易度は高めです。

試験では、以下の範囲から出題されます。

・不動産の権利関係(借地借家法や民法など)

・宅地建物取引業法

・法令上の制限(建築基準法や都市計画法など)

・不動産の税金(所得税や固定資産税など)

不動産の取引に関することから、不動産における制限、不動産に関わる税金と、幅広い知識が求められる試験となっております。

なお、試験は50問4択式です。合格点は年度によって異なりますが、令和5年度の合格ラインは36点となっていました。

宅建の合格率

宅地建物取引士資格試験は毎年1回行われますが、合格率は15%前後と難易度の高い資格です。不動産投資運用のために受験するのであれば、それなりの試験対策が必要になるでしょう。

宅地建物取引士資格試験の直近10年の受験者数および合格率は以下の通りです。

実施年度

受験者数

合格率

令和5年度

233,276

17.2%

令和4年度

226,048

17.0%

令和3年度(12月試験)

24,965

15.6%

令和3年度(10月試験)

209,749

17.9%

令和2年度(12月試験)

35,261

13.1%

令和2年度(10月試験)

168,989

17.6%

令和1年度

220,797

17.0%

平成30年度

213,993

15.6%

平成29年度

209,354

15.6%

平成28年度

198,463

15.4%

平成27年度

194,926

15.4%

平成26年度

192,029

17.5%

出典:一般社団法人不動産適正取引推進機構 試験実施概況(過去10年間)

宅建に合格するための勉強時間はどれくらい?

個人差はありますが、勉強時間の目安は200~300時間です。少ない人で100時間ほど、初めて受験する人は500時間ほどかかるケースも珍しくありません。

行政書士や社会保険労務士の勉強時間が1000時間前後なので、法律系の資格の中では、勉強時間は少ない部類に入るといえます。

宅建の受験シーズン

宅建の試験は毎年10月第3日曜日に行われます。受験申込開始は毎年7月1日からで、インターネットと郵送で受け付けています。郵送による受付期間は約1か月間ですが、インターネットによる受付期間は20日間前後となっているため事前確認が大切です。

宅建の試験地

宅建の試験地は、原則住民票のある場所になります。

ただし、学生や単身赴任中などの事情があり、住民票のある都道府県での受験が難しい場合には、現在居住している地域での受験も可能です。

令和6年宅地建物取引士資格試験のスケジュール

令和6年宅地建物取引士資格試験は10月20日(日)に行われます。細かなスケジュールについては毎年若干異なりますが、基本的な受験の流れに大きな違いはありません。

 

令和6年宅地建物取引士資格試験のスケジュールや流れは以下の通りです。

 

  • 6月7日(金)官報公告
  • 7月1日(月)インターネット・郵送申し込みおよび試験案内の配布
  • 8月下旬 試験会場の確認
  • 10月2日(水)受験票の発送
  • 10月20日(日)試験日
  • 11月26日(火)合格発表

ここでは、令和6年宅地建物取引士資格試験のスケジュールについて見ていきましょう。

6月7日(金)官報公告

令和6年6月7日(金)に官報公告が行われました。

例年6月の第一金曜日に官報公告が行われ、申込期限や受験料、試験日などが公開されます。

試験を受ける予定のある方は、全体の流れを把握しておく必要があるため、官報公告が行われたら忘れずに確認しておきましょう。

7月1日(月)インターネット・郵送申し込みおよび試験案内の配布

令和6年宅地建物取引士資格試験は、7月1日(月)からインターネット・郵送申し込みおよび試験案内の配布が開始されました。申し込み開始時期はどちらも同様ですが、期限がそれぞれ異なるため注意が必要です。

  • インターネット申込:令和6年7月1日(月)9時40分から7月31日(水)23時59分まで
  • 試験案内配布期間:令和6年7月1日(月)から7月16日(火)まで
  • 郵送申し込み:令和6年7月1日(月)から7月16日(火)まで

なお、郵送申し込みする場合は事前に試験案内を入手しておく必要があります。各都道府県の宅地建物取引業協会、書店などで配布されているため確実に入手しておきましょう。

各都道府県の試験案内の配布場所については一般社団法人不動産適正取引推進機構の試験案内(申込書)の配布場所をご覧ください。

また、令和6年宅地建物取引士資格試験の受験料は8,200円です。申込時にクレジットカード払い・コンビニエンスストア払い・ペイジー払いのいずれかを選択したうえで支払ってください。

8月下旬 試験会場の確認

8月下旬から決定した試験会場の確認が可能になります。例年は8月下旬ごろにハガキによる通知が行われていましたが、令和6年の試験からは通知が行われません。

そのため、8月下旬以降、10月はじめに試験会場を知りたい場合は、以下の方法で確認してください。

  • インターネット申込みの方:ウェブサイト『宅建試験マイページ』にて確認
  • 郵送申し込みの方:試験案内に記載の専用お問い合わせダイヤルにて確認

なお、郵送申し込みの場合は10月初頭に郵送される受験票にも試験会場の記載があります。

10月2日(水)受験票の発送

10月2日(水)に受験票が発送されます。

インターネット申込みの場合は、ウェブサイト『宅建試験マイページ』での確認になります。

郵送申し込みで10月9日(水)までに受験票が届かない場合は一般財団法人 不動産適正取引推進機構へ問い合わせください。

10月20日(日)試験日

令和6年宅地建物取引士資格試験は、10月20日(日)が試験日です。

試験時間は13時から15時までの2時間となりますが、受験前に重要事項の説明が行われるため、12時30分までに着席できるように予定を組んでおきましょう。

なお、登録講習修了者の試験時間は13時10分から15時までの1時間50分となっており、12時40分までに自席に着席していなければなりません。

11月26日(火)合格発表

令和6年宅地建物取引士資格試験の合格発表は11月26日(火)です。

9時30分から一般財団法人 不動産適正取引推進機構のホームページに掲示されるため、受験した際は必ず確認しておきましょう。

不動産投資をする人が宅建資格を持つメリット

不動産投資をするにあたって、宅建の資格を持っていることで以下の4つのメリットがあります。

不動産に関する幅広い知識を身につけられる

宅建の試験では、不動産取引などに関連して広い知識が問われるため、宅建の資格試験の勉強をすれば、不動産に関する知識も身につきます。

そして、不動産に関する知識が身につけば、専門用語が使われた不動産情報の確認も容易になったり、知識を活用して良い物件を見極められたりもします。不動産投資でのリスク軽減にも役立てられるでしょう。

違法な物件や取引を見抜ける

既存の物件であっても、法的条件を満たさない違法物件が存在します。例えば、高さ制限、建ぺい率(敷地面積における建築面積)、耐火性などの違反です。この違反は、一見問題なさそうに見えることもあるため、売主本人も物件の違法性に気づいていないケースがあります。

その点、宅建の資格があれば、宅建業法で規制される物件も見分けられます。物件のほかに、違法行為にも敏感になるでしょう。宅建業法で規制される違法な営業や顧客に不利になる営業など、違法性を見抜くことができるため、リスクの回避に役立ちます。

重要事項説明書の内容をよく理解できる

不動産の契約前に重要事項説明書の配布と重要事項の説明があります。ただ、説明書に記載されている内容は専門的なものも多く、知識がなければ理解に苦しむこともあります。

宅建の資格があれば専門的な内容も理解できるため、契約前に不利な内容や物件のリスクに気づけるでしょう。

重要事項説明書には、特に注意を必要とする建ぺい率や抵当権(契約する土地や建物を担保とする際の金融機関が設定する権利)についても記載がありますので、しっかり確認しておくことが大切です。

引渡しまでに抵当権が解除されていないと、取引は成立してもリスクが残ります。宅建の知識があれば、抵当権の解除は問題なく行われるか事前の確認もできるでしょう。

交渉が有利になる

宅建の資格があると、不動産に関する知識を元に取引を進められるため、取引相手からの信頼度が上がります。

契約時は、物件の不備や問題に気づけることから、相手も慎重に提案や説明をしてくれるでしょう。うまくいけば交渉を有利に進めることもできます。

また、契約時だけでなく、不動産売却の際も、宅建の資格があれば法律を熟知していることがアピールできます。宅建を持っていれば、契約時にも売却時にもプラスに働くということです。

購入物件の管理に役立つ

物件を購入すると、管理そのものは管理会社に委託することになります。その際、不動産取引に関する専門的な知識があると、管理会社の担当者と円滑にやりとりできます。また、管理会社が適切に物件を管理しているか判断できるため、管理会社を選ぶ際にも活用できます。

宅建の勉強をすると、入居者の権利についても学べるため、入居者の立場に立った不動産経営を考えられるようになります。入居者に寄り添った環境を整えることは、入居率のアップにもつながります。

宅地建物取引業の開業という選択肢が増える

宅建資格を保有していると、宅建取引業の開業ができます。副業として不動産投資を行っている場合、一歩踏み込んだ選択ができるのです。

不動産業者になれば、所有する物件を売買する際の仲介手数料がかからなくなるうえ、他者が所有する物件の売買を仲介して手数料収入を得ることもできます。

さらに、不動産投資の専門家ライターやコンサルタントとして活動するなど、収入を得る選択肢を増やせます。

不動産投資に宅建資格が必要となるケースは?

宅建資格がなくても不動産投資はできます。しかし、不動産投資の中には宅建資格が必要な行為も存在します。それは宅建建物取引業に該当する行為です。ここでは宅建資格が必要となるケースの例として、下記の2つを紹介します。

反復継続性がある売却

短期間で購入と売却を繰り返したり、土地を分割して複数の人に販売したりするような行為「反復継続性がある売却」と見なされ、宅地建物取引業に該当する行為に当たります。

一方、家賃収入を得るために収益物件を購入したり、個人資産である土地や建物を売却したりするケースは、宅地建物取引業に該当しません。

事業性が高い売買

転売を目的に競売物件を安値で仕入れたり、購入者を募って物件を直接販売したりする行為「事業性が高い売買」として宅地建物取引業に該当し、宅建資格が必要です。

事業性が高いかどうかは、取引の対象者や目的、物件の取得経緯などから判断されます。広く購入希望者を募る、収益を上げたり転売したりすることを目的とした購入といった行為は、いずれも事業性が高いとみなされます。

一方、宅地建物取引業者を通して物件を販売(売却)する場合は、事業性は低いとみなされます。

宅建の資格を取る方法

不動産投資において、宅建の資格はないよりあった方がメリットは大きいと紹介しました。それでは、宅建の資格はどのようにして取得すれば良いのでしょうか。独学、通信教育、スクール、の3つの手段を紹介します。

合格率約15%と難易度の高い宅建の資格取得において、どのような勉強が効果的か見ていきましょう。

独学で勉強する

宅建は人気の資格だけあって、市販の参考書やテキスト、問題集、過去問も手に入れやすいです。そのため、独学で学習することができます。

宅建を独学で学ぶことのメリットは、学習にかかる費用を抑えつつ、自分のペースで学習を進められることです。

一方、試験までのスケジュール立てや参考書は自分で調べて準備する必要があるため、なかなか思い通りの学習ができなかったり、モチベーションを維持できなかったり、といったデメリットもあります。

通信教育を利用する

宅建の資格試験に特化したテキストや、講座が用意された通信教育による学習も選択肢のひとつです。テキストで学習するもの、動画などの視覚的な講座を視聴できるものなど、さまざまな通信教材があります。

独学と比べてコストはかかりますが、講師に質問できたり、添削してもらえたり、学習面でのサポートが独学よりも充実しているのが通信教育の特徴です。

スクールに通う

宅建に特化したスクールに通学して資格取得を目指す方法もあります。独学や通信教育と異なり、宅建に特化したカリキュラムが組まれており、スケジューリングされているため、より勉強に力を入れることができます。

費用は独学や通信教育よりも高額ですが、その分、専門の講師からレクチャーを受けられる、効率良く学べる点でメリットは大きいです。

宅建士として仕事をするには資格登録が必要

宅建の試験に合格すると合格証がもらえますが、それだけでは宅建士として仕事ができるわけではありません。資格登録をして宅建士証の交付を受けて初めて仕事ができます。

試験に合格後、資格登録をする方法は、宅建業での実務経験の有無によって異なります。

宅建業の実務経験が無い人

宅建業の実務経験がない場合、試験合格後に登録実務講習を受ける必要があります。講習を受けたあと、終了証が送付されます。これで2年以上の実務経験と同等の扱いになり、資格登録ができます。

・受講場所…全国の資格予備校など。実施機関は国土交通省のホームページで確認できます

・講習内容…通信講座1か月+座学2日間、座学の最終日に修了テストあり

・講習費用…2万円前後(実施機関によって異なる)

宅建業の実務経験が2年以上ある人

2年以上の実務経験がある人は、実務経験をした会社から「実務経験の証明書類」を出してもらう必要があります。厳密には実務経験をした会社の従業員名簿に名前があることに加え、下記のような実務を経験していなければなりません。

・契約書、重要事項説明書の作成業務

・不動産の決済立ち合い

・契約現場に立ち会い、重要事項以外の説明を行った

・物件の調査

宅建業を営む会社での経理や人事などの仕事は、実務経験に含まれないので注意しましょう。

不動産投資に役立つ宅建以外の資格

宅建以外にも不動産投資に役立つ資格はたくさんあります。国家資格だけでなく民間資格だったりと、種類によって内容や難易度が異なります。

不動産投資に役立つ知識を得られる代表的な資格は以下の通りです。

  • 賃貸不動産経営管理士
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • ファイナンシャル・プランナー
  • 簿記検定

ここでは、それぞれの資格の特徴について解説します。

賃貸不動産経営管理士

試験日

11月第3日曜日

試験方法

四肢択一、50問

受験資格

制約なし

受験手数料

12,000円

合格率

28.2%(令和5年度)

賃貸不動産経営管理士は、賃貸物件に関する知識を幅広く得られる資格です。とくに賃貸借契約後の管理運営に関する知識を得られるため、管理業務を自分で行いたい方にはおすすめです。

また、賃貸不動産経営管理士は2021年4月から国家資格として認められています。不動産管理業務のスペシャリストを目指せば、不動産投資を行ううえでも役立つでしょう。

マンション管理士

試験日

11月最終日曜日

試験方法

四肢択一、50問

受験資格

制約なし

受験手数料

9,400円

合格率

10.1%(令和5年度)

マンション管理士は、マンションの管理や運営の相談を行える資格です。コンサルタントのような立ち位置となり、管理組合の管理者やマンション区分管理者へアドバイスをできます。

ただし、合格率が宅建以上に低く、難易度の高い資格だといえます。

管理業務主任者

試験日

12月第1日曜日

試験方法

四肢択一、50問

受験資格

制約なし

受験手数料

8,900円

合格率

21.9%(令和5年度)

管理業務主任者は、マンション管理業者が管理組合に対して、契約に関する重要事項の説明や事務報告を行う際に必要な資格です。

独占業務を行うために必要な資格で高い需要がありますが、マンション管理士と試験内容が重なる部分があるため同時に取得する方が多くいます。

ファイナンシャルプランナー(2級)

試験日

2級:年3回(5月・9月・1月)

試験方法

学科:マークシート方式

実技:記述方式

受験資格

3級合格者やFPの実務経験2年以上など

受験手数料

11,700円

合格率

学科:56.12%(令和5年度)

実技:59.53%(令和5年度)

ファイナルシャルプランナー(FP)は、お金に関する知識を豊富に持った専門家です。資格の取得によって、資産形成や運用、ローン、税制など幅広い知識を得られます。

さまざまな知識を得ることによって、不動産投資のリスクを最小限に抑えた運用の手助けとなるでしょう。

なお、ファイナンシャルプランナー(FP)には1級~3級があります。

日商簿記検定(2級)

試験日

年3回(6月・11月・2月)

※ネット試験あり

試験方法

記述式

受験資格

制約なし

受験手数料

5,500円

合格率

2級:22.9%(令和5年度統一試験)

日商簿記検定は企業の経済活動を記録し、計算するスキルを証明する資格です。不動産投資では、さまざまなお金の動きがあり、確定申告時に日商簿記検定のスキルが役立ちます。

確定申告書の作成を委託してしまえば問題ありませんが、コスト削減のために自分で作成したい場合には取得しておいて損はありません。

まとめ

不動産投資を始めるにあたって宅建の資格は必要ありませんが、不動産に関する知識を深めることで運用時にさまざまなメリットを得られます。

例えば、不動産投資を行う際に自己判断で決断ができたり、交渉が有利になったりと、さまざまな利点を得られるでしょう。

しかし、宅建の合格率は15%前後と低い数値となっているため、資格を得るためには相応の努力が必要です。独学や通信教育、スクールでも学べるため、自分にあった学習法で資格取得を目指してください。

アセットテクノロジーでは、不動産管理業務をオーナー様に代わってサポートいたします。宅建の資格をお持ちでなくても、管理業務のプロにおまかせいただければ、入居者様の満足と入居率アップを実現します。

宅建の資格取得が難しいとお悩みであれば、不動産管理のプロであるアセットテクノロジーへお気軽にご相談ください。

 

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