オーナーが知っておきたい原状回復トラブルの事例と解決策

原状回復とは、人が入居する前と退去した後の状態を比較し、入居中に汚損・破損した箇所を修繕および清掃することを指します。 入居前に近い状態に戻せるので部屋の寿命が伸びやすく、次の入居者に「きれいな部屋」「手入れが行き届いている」という印象を与えられるので空室対策としても欠かせません。また、借りた部屋を本来あるべき姿に戻して返却することは賃借人の義務とされています。 しかし、原状回復をめぐるトラブルは尽きません。本記事では代表的な原状回復トラブルや対処法を解説します。

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原状回復に関する入居者とのトラブル事例

ここでは、代表的な原状回復トラブルの事例を4つ紹介します。

主に費用負担についてトラブルになるケースが多く、最悪の場合オーナーが自費で修繕しなければいけないこともあるので注意が必要です。

古い物件で予想より高い原状回復費となった

まずは、もともと古い物件だと原状回復費が予想以上に膨らむことがある、という一例を紹介します。

築50年の古い木造アパートで不動産投資を始めて、最初のうちはすでに入居者もいてすぐに家賃収入が入ってきて良かったと思っていたところに、10年以上の長期に渡り入居していた人が退去することになりました。

その際、部屋の状態が想像以上に劣化していたために、原状回復に200万円近い費用が必要となり、取得した賃料のすべてが原状回復代に消えてしまうほどの金額でした。

築年数が経っている古い物件では家賃を低めに設定していることも多く、結果オーナーが自腹を切ることになりこれまでの賃料が消えてしまうことも少なくありません。

原状回復費がかさんで赤字物件になってしまう場合、今後の運用も険しくなります。

室内を勝手にリフォームされていた

賃貸物件と知りつつも、勝手にリフォームされてしまったケースもあります。今回は賃料が低めの物件に、オーナーがさらに付加価値をつけようとペット可にした物件でのトラブルです。

ある入居者が1年半で退去した部屋は、ペットによる汚れや無断で壁をペンキで塗るなどのDIY行為によりひどい有様となっていました。

その結果、原状回復に60万円もの費用を要することとなり、3万円だった家賃収入から考えるとその入居者から得たほとんどの家賃収入が原状回復代に消えることになりました。

通常、賃貸物件の場合リフォームはオーナーの同意がなければ実施できません。しかし、ペット汚れの清掃・小さな子どもによる落書きや破損の修繕・壁紙の張り替えやペンキ塗りなど、「軽微なDIYの範疇だと思っていた」「リフォームというほど大げさなものではない」と捉える入居者がいることも事実です。

入居者側の過失なので原状回復費を請求できますが、「手持ちの資金がない」と支払いに至らないリスクがあることも視野に入れておきましょう。今回の事例では半額回収できましたが、最終的に全額を回収しきれず残った分はオーナーが自費で修繕するなど手痛い出費となっています。

手入れ不足で汚損や異臭がひどかった

次は入居者の手入れ不足で起きたトラブルの事例です。

今回の入居者は愛煙家で部屋中にヤニの臭いが充満しており、壁紙だけでなく部屋の至るところがヤニの色で変色するほどでした。また、エアコンの掃除がされていないなど、通常のハウスクリーニングでは対応できない状態でした。

その結果、特別清掃への依頼が必要になりました。オーナーが可能な限りDIYで済ませて多少費用を抑えられましたが、それでも約16万円の原状回復代が発生しました。

今回のケースでは、入居時に原状回復費や清掃費用の取り決めをしていたことが幸いし、入居者の実費で支払いできました。ですが、取り決めをしていなかったり十分な敷金をもらっていなかったりすると、結局赤字になってしまいます。

通常のハウスクリーニングで対応できない汚れには、特殊清掃が必要になり余計に費用が発生することになる点も把握しておきましょう。

土足生活やボヤで汚損していた

無断で土足生活をしていたり、ボヤを報告せず放置していたりするケースもあります。必ずしも悪意があってやっているとは限らず、「母国が靴文化だったので日本でもそれに倣っていた」「ボヤでも消防署への通報義務があることを知らなかった」ということも考えられます。

今回のケースでは60万円ほどの原状回復代が発生し、入居者が全額負担とならず、折半することになりました。

なかには悪質な事例もあり、トイレのタンクが破損しているのを申告せずそのままにしていたり、便座が盗難されていたりすることもあるようです。入居時には、賃貸借のルールだけでなく生活や万が一のときの通報についてのルールも確認しておくことをおすすめします。

原状回復トラブルにあわないための対策

原状回復トラブルは金銭的なダメージが大きく、今後の賃貸運営に支障が出てしまうケースが少なくありません。原状回復費の請求に納得してもらえず、説得や相談に予想以上の時間と手間がかかるなど思わぬトラブルもつきものです。

ここからは、原状回復トラブルにあわないための対策を紹介します。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にする

原状回復について揉めたときや、ほかの事例を参考にしたくなったときは、国土交通省が作成している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にするのがおすすめです。

過去の原状回復トラブルと判例が掲載されているので、同様の事例を探して提示すると客観性のある説得がしやすくなります。

また、賃貸借契約書の特約事項で防止できるトラブルについては、管理会社や弁護士に相談する方法もあります。

賃貸借契約書での取り決めを徹底する

賃貸借契約書の内容を見直し、あらかじめ入居時に取り決めを交わしておくこともポイントです。一部のリフォームやDIYを可能とするならどこまでが可能な範囲か明確に線引きしておきましょう。

また、タバコや極度のゴミ蓄積などを原因として異臭が染みついてしまった場合、特殊清掃費を請求すると明記しておくのもおすすめです。敷金・礼金をなくすのであれば、代わりに清掃費について記載しておくとトラブル予防になります。

ただし、借主が一方的に不利になる内容は消費者契約法により無効と判断されてしまうこともあるので、弁護士や宅地建物取引士などに相談して定めるのが良いでしょう。

入居時と退去時の状況を記録する

入居時の写真・図面・書面を残すなど、入居時と退去時の違いが一目でわかる資料を記録しておくことも効果的です。設備の損害などを指摘しやすくなります。

証拠を残しておけば退去後に発覚した汚損・破損でも請求できる可能性が高く、費用の回収を効果的に進められます。

賃貸経営は原状回復も視野に入れた計画が重要


賃貸物件を管理する場合、あらかじめ原状回復も視野に入れた計画が欠かせません。

つい「入居者を十分に確保できるか」「広告をどう打つか」など、空室対策にばかり目が行ってしまいます。しかし、退去時に想定外の費用がかかると、これまでに得た賃料収入が激減するリスクが十分考えられます。

不意の退去による出費に左右されない安定した収支計画があれば、いざというときも慌てずに済みます。金銭的な負担を避けることはもちろん、精神的な負担を軽減するためにもあらかじめ対策しておくことが重要です。

まとめ

賃貸経営では、「原状回復」に関するトラブルで思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。入居時のマナーや過失次第では大きな原状回復費がかかるケースがあり、最悪の場合オーナーが自腹を切る可能性があることも知っておきましょう。

本記事で紹介した内容を参考に原状回復トラブル対策をしておくと、未然にトラブルを防ぐことにつながり、安心して不動産投資に取り組めるでしょう。

 

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