不動産投資とふるさと納税の関係は?メリットと控除上限額の計算方法!

ふるさと納税とは、寄附金税制のひとつです。寄付の手続きをすると、2,000円の自己負担で自治体から返礼品を受け取れるだけでなく、税金の控除として活用できます。そのため税金控除の目的でふるさと納税を行う方も少なくありません。たとえば、確定申告やワンストップ特例で申告すると『所得税』『住民税』の控除を受けられます。 しかし、税金控除の対象となる『ふるさと納税額』には上限が設けられており、限度額を超えて寄付すると控除を受けられません。ただし、副業で不動産投資をしている方は、ふるさと納税額の上限があがる可能性が高いです。 そこで今回は、不動産投資で資産運用をしている方に向けて、押さえるべきふるさと納税の仕組みや控除額の算出方法などについて解説します。

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不動産投資をしている人がふるさと納税を行うメリット

ふるさと納税は、任意の自治体へ寄付すると、寄付額の70〜80%相当の返礼品がもらえ、寄付額が翌年度の住民税から控除される制度です。ただし、寄付額には所得によって限度額が設定されています。

不動産所得がある場合は、給与所得などのほかの所得と不動産所得を合算して所得の計算を行わなくてはなりません。所得が増える分、ふるさと納税の寄付金額も増加するということです。

寄付できる額が多くなると、自治体数や返礼品の選択肢が増え、ふるさと納税がより活用しやすくなるメリットがあります。

不動産投資をしている場合はふるさと納税の控除上限額が変動する

不動産投資で得た収入によって、控除の対象となる『ふるさと納税額』は変動します。それはふるさと納税額が本業の所得だけではなく、本業と副業を合算した所得で計算されるためです。

不動産投資の収支状況に応じて、ふるさと納税の上限額は以下のように変動します。

不動産所得が黒字の場合

控除上限額が増加する

不動産所得が赤字の場合

控除上限額が減少する

不動産投資が黒字なら限度額が上がる

不動産投資において家賃収入が安定していて黒字になっていれば、給与所得との合算により、寄付上限額は増えます。

寄付上限額が増えると、受け取れる返礼品が増えたり、被災した自治体に支援ができたり、選択肢の幅が広がるでしょう。

不動産投資が赤字なら限度額が下がる

不動産投資の収支が赤字で不動産所得がマイナスな場合、ふるさと納税の上限額は減少します。うっかり給与所得だけを基準にふるさと納税をして、上限額を超えて寄付してしまわないよう、注意が必要です。

特に、不動産投資を始めた初年度や大規模な修繕が必要になった場合などは支出が多くなるため、その年度は赤字になりやすくなります。

不動産投資が赤字の場合、損益通算し給与所得から不動産所得のマイナス分が引かれる結果、課税対象となる総所得額が減少し、納税額も減少します。それに伴い、ふるさと納税の控除上限額も減少するのです。

不動産投資で赤字が発生している場合、給与所得だけを基準にふるさと納税の控除上限額を判断しては、損をする可能性があることを覚えておきましょう。

【シミュレーション】控除上限額の算出方法を知る!

ふるさと納税の控除上限額は、以下の算定式で算出できます。

ふるさと納税の控除上限額算定式

(住民税の所得割額×0.2)÷(90%-所得税率)+2,000円

上記のとおり、ふるさと納税の控除上限額を計算するためには、住民税の『所得割額』と『所得税率』のふたつを把握しておく必要があります。

所得割額

住民税の所得割額とは、給与所得と不動産所得の合計額にかかる住民税所得割額を指します。なお、不動産所得がマイナスな場合は、給与所得から不動産所得のマイナス分を差し引いてください。算出方法は以下を参照してください。

住民税の所得割額の算定式

住民税の所得割額=(給与所得+不動産所得)×10%

課税対象となる所得金額は、算定時だとまだ当年度分が未確定のため、前年度分を参考にしましょう。

給与所得の場合、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた額が「課税対象となる所得金額」です。不動産所得は以下の算定式で求められます。

不動産所得の算定式

家賃収入-必要経費

上記の必要経費とは、税金や損害保険料・管理費・修繕費・修繕積立金・ローンの支払利息などです。これらを踏まえ、計算の具体例を見てみましょう。

住民税の所得割額の算定例

【例】給与所得が500万円、家賃収入が300万円、経費が100万円の場合

 

(500万円【給与所得】+(300万円-100万円)【不動産所得】)×10%

=70万円【住民税の所得割額】

所得税率

所得税率とは、課税対象となる所得金額に応じて設定される税率です。国税庁ホームページで確認することができます。

課税される所得金額

所得税率

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

40,000,000円 以上

45%

※国税庁「No2260 所得税の税率」より

なお上記に加えて、復興税率を一律102.1%乗じる必要があります。先ほどの『住民税の所得割額の算定例』では、課税される所得額の合計が700万円(給与所得500万円+不動産所得200万円)のため、所得税率は23%×1.021です。No.2260 所得税の税率

これらを踏まえると、課税対象となる所得金額が700万円(給与所得500万円+不動産所得200万円)の場合、ふるさと納税の控除上限額は、212,472円になります。

(70万円【住民税の所得割額】×0.2)÷(90%-23%×1.021【所得税率】)+2,000円 =212,472円

不動産投資をしている人がふるさと納税を行うときの注意点!

不動産投資をしている人がふるさと納税をするときの注意点を4つ紹介します。

不動産経営を会社に知られる可能性がある

ふるさと納税で住民税の控除額が多くなると、会社に別に収入があるのではないかと思われる可能性があります。住民税をすべて給与から天引きにしている場合、控除額が多いと気づかれやすいためです。

会社から不動産投資を指摘されないようにするには、不動産所得の確定申告時に普通徴収を選択するなどの対策を取っておくと良いです。

返礼品は「一時所得」として課税対象になる

ふるさと納税の返礼品は、一時所得の対象になります。一時所得は最大50万円の特別控除があるため問題ないケースが多いですが、高額の返礼品を受け取る場合などは注意が必要です。

また、懸賞や生命保険の一時金・満期返戻金などのほかの一時所得がある場合は、返礼品分を加えることで特別控除の50万円を超えることもあります。返礼品が一時所得になり課税される可能性がある点にも注意しましょう。

一時的に大きな支出が発生する

ふるさと納税は税金の前払いの性質があるため、その年に利用した分の控除は翌年の住民税や所得税の額から行われることになります。上限額いっぱいまで利用する場合は、一時的に支出が増えるため注意しましょう。

一時的な支出が大きいと、不動産投資のキャッシュフローにも影響をおよぼす可能性があります。キャッシュフローにも気を配りながら、計画的にふるさと納税を利用すると良いです。

年間所得を予測して寄附する必要がある

収入が給与だけの場合は年間所得を予想しやすいですが、不動産所得は給与と違って変動する可能性があります。設備の突然の故障などで思わぬ経費が発生することもあるでしょう。

年末近くに想定していなかった経費が発生すると、予想していた不動産所得を下回ることもあります。変動があることも見越して、余裕をもって利用すると良いです。

不動産投資をしている場合は「確定申告」が必須

ふるさと納税を行ったあとは、税金控除を受けるためにも申告手続きが必要です。一般的に、ふるさと納税で控除を受けるには、「確定申告」と「ワンストップ特例」のふたつがあります。

「ワンストップ特例」とは

ワンストップ特例とは、給与所得者など確定申告を必要としない人が、ふるさと納税での寄附金の額を控除できるようにした制度です。翌年の住民税の額からふるさと納税分が控除されます。

ワンストップ特例を利用するには、ふるさと納税時にワンストップ特例の申請書の送付を申し込むことが必要です。書類を受け取ったら、翌年の1月10日まで(必着)にふるさと納税をした自治体に書類を返送します。

ふるさと納税と確定申告の流れ

不動産投資で所得がある場合は確定申告が必要になるため、ワンストップ特例は利用できません。ふるさと納税をした翌年の3月15日までの確定申告により、ふるさと納税分を含めた申告を行います。

自治体から受け取る寄附金受領証明書を利用するため、ふるさと納税を行った際は忘れずに保管しておくようにしましょう。

寄附金受領証明書をもとに確定申告書への記入を行い、寄附金受領証明書を添付(e-Taxは不要)して提出します。その後、1〜2ヶ月後に申告内容に合わせて所得税の還付、6月以降に住民税の控除が適用される流れです。

まとめ

ふるさと納税は控除上限額の範囲内で行わないと控除を受けられません。不動産投資をしている場合、収支が赤字か黒字かで控除上限額が変動するため、注意が必要です。寄付をする前に必ず控除上限額をシミュレーションしましょう。