目次
- 1 不動産投資のキャッシュフローの重要性|マイナスでも問題ない?
- 2 不動産投資におけるキャッシュフローについて
- 3 なぜキャッシュフローが重要視されるのか
- 4 不動産投資でキャッシュフローがプラスになるメリット
- 5 不動産投資でキャッシュフローがマイナスになるリスク
- 6 不動産投資でキャッシュフローに影響を与える3つの要素
- 7 キャッシュフローの計算方法
- 8 キャッシュフローがマイナスでも大丈夫?
- 9 不動産投資で持ち出しが発生する原因
- 10 持ち出しありでも物件を所有したほうがよいケース
- 11 不動産投資でキャッシュフローをプラスにする方法
- 12 不動産投資で貯めたキャッシュを有効活用する方法
- 13 キャッシュフローのマイナスが続く場合の対処法
- 14 まとめ
不動産投資のキャッシュフローの重要性|マイナスでも問題ない?
不動産投資におけるキャッシュフローは、投資の成否を左右する重要な指標です。プラスのキャッシュフローを維持すれば、安定した収益と将来の資産形成が可能になります。
しかし、多くの投資家はキャッシュフローの重要性を理解しているものの、実際にどのように管理し活用すべきか悩んでいる方も少なくありません。
この記事では、キャッシュフローの重要性をはじめ、プラスになるメリットやマイナスになるリスクなどについて詳しく解説します。
専門知識を身につければ、効果的な不動産投資戦略を立てられます。最後までお読みいただき、不動産投資の成功につなげてください。
不動産投資におけるキャッシュフローについて
不動産投資ではキャッシュフローが重要といわれていますが、「そもそもキャッシュフローって何?」と思う方もいるのではないでしょうか。
キャッシュフローの重要性を知る前に、まずはキャッシュフローの仕組みや概要を理解しておくことが重要です。
ここでは、キャッシュフローについて解説します。不動産投資について詳しく知りたい方は、合わせて以下の記事もご覧ください。
⇒不動産投資とは?始める前に知っておくべきメリットとリスクを分かりやすく解説
不動産投資のキャッシュフローとは
不動産投資におけるキャッシュフローとは、家賃収入から経費やローン返済などの現金支出を除いた手元に残るお金の流れのことです。
キャッシュフローは手元資金の金額を計算する役割があり、不動産投資を安定的に、なおかつ継続的に行うために考慮しなければなりません。
一般的には、手元に残るお金が多いほどキャッシュフローは良好、少ないほど悪いと表現されます。
キャッシュフローが安定していると、空室が発生したり家賃滞納が発生したりしてもローンの返済ができるため、急なトラブルにも対応できるというわけです。
同じ利回りでもローンの条件や物件の状態、築年数などによってキャッシュフローは異なる点に注意しましょう。
不動産投資のキャッシュフローと利回りの違い
キャッシュフローは実際に使える現金を示すものであるのに対し、利回りは投資に対する利益率を示す指標という違いがあります。
不動産の利回りは、年間の不動産収入から経費を差し引き、さらに購入価格で割った支出に対する利益の割合です。
不動産経営を行う際には、「利回り〇%」という数値を目にすることもありますが、この数字はキャッシュフローとは異なるため注意しましょう。
また、利回りが大きいほど利益も大きくなるため、「利回りが大きいほどキャッシュも多いのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、利回りが高い物件だからといって大きなキャッシュフローになるとは限らず、これらに相関関係がみられない場合もあります。
例えば、同じ利回りの物件でもローンの返済年数が異なると、返済年数が短いほど1回あたりの返済額も大きく、キャッシュフローも悪化しやすくなります。
帳簿上の数字との違い
不動産投資におけるキャッシュフローと帳簿上の数字の違いとして挙げられるのは、減価償却費の有無です。
投資用不動産を購入すると、建物の耐用年数に応じて毎月の経費として減価償却費を計上できるため、その分利益が減少します。
その分、課税対象となる所得が減るため、キャッシュフローは良好な状態が続くというわけです。
しかし、不動産投資を長期に渡って行っていると、経費にできない元金返済が減価償却費を上回ってしまう場合があります。
そうなると、帳簿上は黒字になっていても経費が減少することで所得が増えてしまい、所得税や住民税などの税金が増加してキャッシュフローが悪化します。
帳簿上は利益が出ていても、キャッシュフローが不足するケースがあるため注意が必要です。
キャッシュフローを考えるうえでは、減価償却費とキャッシュのバランスを考えておく必要があります。
なぜキャッシュフローが重要視されるのか
不動産投資では、キャッシュフローの確保が成功を左右するといわれるほど重要です。なぜ手元に残る現金が大切なのか、その理由を説明します。
自己資金の余裕確保のため
ローンを活用する不動産投資では、手持ちの現金を確保しておくことが重要です。
空室が発生し家賃収入が入らなくても、ローンは期日通りに返済しなければなりません。キャッシュフローがマイナスになる場合、投資家は自己資金から返済することになります。
自己資金を投入せざるを得ない状態が続くと、いずれ資金が尽きてしまうでしょう。そうなると、物件を手放さなければならなくなる可能性もあるのです。
不動産投資を始めるにあたって、収支計画どおりに進めば良いのですが、想定以上に空室期間が長引いたり、思いがけないタイミングで修繕が必要になったりすることもあります。
急な家賃収入の減少や大きな出費に備えて資金を確保するためにも、キャッシュフローがきちんと出せる物件であるかどうかは、投資において重要なポイントです。
生活費や給与を使用しないため
不動産投資家の中には、会社員と不動産投資を兼業している方も多いでしょう。不動産運用に必要な資金を確保できていないと、貯蓄や給与を使用せざるを得ない事態に陥ることも考えられます。
貯蓄や給与で不足分をカバーしようとすると、日々の生活にも影響が及ぶこともあります。生活レベルや心身の健康状態を低下させてしまう状況では、不動産投資のメリットも得られなくなってしまいます。
不動産運用での支出は、不動産投資で得た利益で賄うのが理想であり、不動産投資のキャッシュフローと生活費は別で考えておくことが大切です。
売却に有利になるため
不動産投資において、キャッシュフローをプラスにできる物件は、安定した収入を見込める物件です。投資物件を売却する際の査定には、キャッシュフローも加味されます。十分な利益を確保できる物件は、不動産投資家からの需要も高いため、より高い売却額が期待できるでしょう。
キャッシュフローを良い状態で維持するには、家賃を高く維持するための努力が必要です。物件の魅力を高め家賃収入を低下させないことで、自然にキャッシュフローもうまく回ります。
不動産投資でキャッシュフローがプラスになるメリット
ここでは、不動産投資でキャッシュフローがプラスになるメリットを解説します。
不動産投資ローンの返済がスムーズに行える
キャッシュフローがプラスであれば、不動産投資ローンの返済をスムーズに行えます。毎月のローン返済は家賃収入から経費を差し引いたあとの余剰資金で確実に行えるため、返済の心配が軽減されます。
プラスのキャッシュフローは、長期的な視点で計画を立てられるようになるほか、安定した資産運用を実現できます。また、返済に余裕があることで、繰り上げ返済や追加の投資物件購入など、積極的な運用戦略を考えられるでしょう。
急な出費で自己資金の持ち出しをしなくて済む
不動産投資においてキャッシュフローがプラスであれば、予期せぬ出費が生じた場合でも自己資金を持ち出さず対応できます。
例えば、突発的な修繕や設備の更新が必要になった場合でも、日々の収益から蓄積された余剰資金で賄えます。投資家は個人的な資産や生活資金に影響を与えることなく、物件の維持管理を行えるようになるでしょう。
また、空室期間が予想以上に長引いた場合でも、プラスのキャッシュフローによって蓄えられた資金で、一時的な収入減少をカバーできます。
収益物件の評価が高くなり売却時に有利
キャッシュフローがプラスの収益物件は市場での評価が高くなり、売却時に有利な条件で取引できる可能性が高まります。
安定した収益を生み出す物件は投資家にとって魅力的かつ需要が高まるため、売却価格を高く設定できる傾向があります。また、プラスのキャッシュフローは物件の収益性の高さを示すため、購入を検討する投資家や金融機関からの信頼度も上がりやすいです。
結果としてスムーズな売却交渉が可能になり、売却期間の短縮や有利な条件での取引につながります。投資家は高い利益を得られるほか、次の投資へのステップアップも容易になります。
収益物件を増やす際に金融機関からの融資を受けやすい
キャッシュフローがプラスの物件を所有している投資家は、新たな収益物件を購入する際に金融機関から融資を受けやすくなります。安定した収益を生み出している実績は投資家の信用力を高め、金融機関にとって融資のリスクを低減させる要因となるためです。
結果、有利な条件での融資を受けられる可能性が高まり、投資規模の拡大や優良物件の取得が容易になります。また、複数の金融機関から融資の提案を受けることで、金利や返済条件などを比較検討し、最適な融資を選択できるでしょう。
現状の家賃設定が適正だと判断できる
キャッシュフローがプラスの場合は、現在の家賃設定が適正である指標になります。収入から経費や返済を差し引いても余剰が生まれている現状は、物件の収益性が確保されており、入居者にとっても適切な家賃設定であると判断できるためです。
この状態を維持すれば、長期的な入居率の安定や競合物件との差別化にもつながります。
ただし、市場の変化や物件の経年劣化などを考慮し、定期的に家賃の見直しを行わなければなりません。プラスのキャッシュフローを維持しつつ、適正な家賃設定を続ければ、持続可能な不動産投資を実現できるでしょう。
不動産投資でキャッシュフローがマイナスになるリスク
ここでは、不動産投資でキャッシュフローがマイナスになるリスクについて解説します。
急な出費に資金繰りが必要になる
キャッシュフローがマイナスの状態で急な出費が生じると、資金繰りに苦労する事態に陥る可能性があります。
例えば、突発的な設備の故障や大規模修繕が必要になった場合、費用を捻出するために個人の貯蓄を取り崩したり、追加の借入を行ったりする必要が出てくるでしょう。これは投資家の財務状況を圧迫し、長期的な投資計画にも影響を与えかねません。
また、資金繰りに追われると、物件の適切な維持管理が滞り、入居者の満足度低下や空室率の上昇につながる恐れがあります。
キャッシュフローがマイナスの状態では、予期せぬ事態への対応力が著しく低下するリスクがあると認識しておきましょう。
改善のために必要な資金の準備が難しくなる
キャッシュフローがマイナスの状態が続くと、物件の価値を維持・向上させるために必要な資金の準備が難しくなります。
例えば、競争力を保つためのリフォームや設備更新、改修工事などを実施するための資金を確保できません。このような状況では物件の魅力が低下し、入居率の維持や家賃の維持が難しくなる可能性があります。
また、将来的な大規模修繕に向けた積立金の確保も困難になるため、物件の長期的な価値維持が危ぶまれます。結果、投資物件の競争力が低下し、収益性がさらに悪化するという悪循環に陥る危険性があります。
不動産投資ローンの返済が滞る可能性がある
キャッシュフローがマイナスの状態が続くと、不動産投資ローンの返済に支障をきたす可能性が高まります。家賃収入だけでは返済額を賄えないため、投資家は個人の資産や収入から不足分を補填する必要が生じます。
この状況が長期化すると、投資家の生活に大きな影響を与えるだけでなく、ローン返済の遅延や延滞につながる恐れがあるため注意が必要です。返済が滞ると金融機関との信頼関係が損なわれ、将来的な融資獲得の障害となる場合があります。
また、延滞情報が信用情報機関に登録されると、個人の信用力にも悪影響を及ぼすため、他の金融取引にも支障をきたす可能性があります。
黒字でも不動産投資を断念しなければいけない可能性がある
帳簿上は黒字であっても、実際のキャッシュフローがマイナスの状態が続くと、不動産投資を断念せざるを得ない状況に陥る可能性があります。
これは「デッドクロス」と呼ばれる現象です。減価償却費の減少に伴い、帳簿上の利益が増加し、課税所得が増えるにもかかわらず、実際の手元資金は減少していく状態を指します。
デッドクロスに陥ってしまうと税金の支払いが増加し、実質的な収支がさらに悪化します。結果、投資を継続するための資金繰りが困難になり、物件の売却や投資の中止を検討せざるを得なくなる可能性があります。
不動産投資でキャッシュフローに影響を与える3つの要素
不動産投資でキャッシュフローに影響を与えるのは、家賃・経費・自己資金の3つです。
家賃
キャッシュフローは基本的に、家賃収入からローン返済額と経費を引いた金額です。そのため、キャッシュフローを確保するには、家賃収入があることが前提となります。
家賃は立地条件や物件のグレード、築年数などに左右されるため、物件選びが重要です。キャッシュフローを確保するには、できるだけ高い家賃が設定できる需要の高い物件を選びます。また、効果的な空室対策を施してくれる管理会社をパートナーとすることも大切です。
経費
経費が少なくなれば、それだけ手元に残るキャッシュフローは多くなります。経費を削減する方法としては、繰り上げ返済をして利息負担を圧縮する、管理手数料や保険料などの諸費用を見直すなどがあげられます。
ただし、繰り上げ返済は一時的に支出が増加しますので、実行する際は資金バランスを良く考えましょう。また、管理手数料や保険料などの諸費用を削減しすぎると、十分なサービスが受けられなくなるリスクもあるので注意してください。
自己資金
自己資金を多く準備できれば、借入額を減らせます。月々の返済金額を抑えられるので、購入後のキャッシュフローを確保しやすくなるでしょう。
借入額を抑えることは金利の負担を減らす効果がありますが、低金利が続く現状では自己資金にこだわる必要性は低いです。自己資金の比率が高まれば、ローンによるレバレッジ効果が薄れることも考慮する必要があります。
キャッシュフローの計算方法
キャッシュフローは、家賃収入から運用のために必要な費用を引いた額です。以下の式で計算できます。
家賃収入-(ローン返済額+運営経費+税金)
次の条件でキャッシュフローを計算してみましょう。
・想定家賃収入:120万円(10万円/月)
・ローン返済額:60万円(5万円/月)
・経費:20万円
・税金:10万円
この物件から得られる年間のキャッシュフローは、120万円-(60万円+20万円+10万円)=30万円になります。
ただし、満室を想定して計算したものです。空室期間が発生した場合にはキャッシュフローが減少します。
キャッシュフローがマイナスでも大丈夫?
先述のとおり、キャッシュフローが悪いとさまざまなリスクがあります。では、キャッシュフローがマイナスとなってしまった場合、どのように考えれば良いのでしょうか。
一時的なマイナスは問題ない
中長期的な投資とされる不動産投資では、キャッシュフローがマイナスになってしまうこともあるでしょう。
結論からいえば、キャッシュフローは一時的なマイナスなら問題ありません。
よくあるケースとして、入退去に伴いリフォームや修繕費用がかさんだ場合にマイナスになることが挙げられます。
しかし、その後の入居率アップなどを加味すれば、それほど深刻になる必要はありません。
キャッシュフローがマイナスになったからといって、必ずしも投資が失敗したわけではないということです。
不動産投資は長期的に考えることも大事
不動産投資には、大きく分けて以下二つの方法があります。
・家賃収入だけで資産形成をする方法
・家賃収入でローン残高を減らし、売却時に利益を得る方法
このうち、後者の場合でも売却時に利益が出せる計画があれば、キャッシュフローの一時的なマイナスは問題ありません。目先のキャッシュフローだけにとらわれないようにしましょう。
また、売却時に利益を出すためには、リセール価格が落ちにくい物件を選ぶことも意識するようにしましょう。
例えば、今現在郊外の辺鄙な場所にある物件であっても、近い将来、大型の商業施設が近隣に建つといった場合は、現在の相場に比べて高値で売れる可能性が高くなります。
そのため、不動産投資においては物件選びに力を入れることも大切です。
将来の周辺状況はもちろん、買おうとしている物件が住民の生活スタイル(ファミリー層が多いのに単身者向けの物件を選ぼうとしていないかなど)を考慮するよう心がけましょう。
不動産投資で持ち出しが発生する原因
不動産投資において持ち出しが発生する主な原因は多岐にわたります。
下記では、持ち出しが発生する原因を4つ詳しく解説します。
空室が多い
空室が続くと、予想される賃料収入が得られず、ローン返済や管理費などの定期的な支出を賄うことが困難になり持ち出しが発生します。
空室が多い物件は、賃貸ニーズの少ないエリアや築年数が古い物件で見られます。
不動産投資家は、物件選びやマーケティング、物件の維持・改善を考えて投資することで、空室率を最小限に抑える戦略を立てることが重要です。
老朽化によって家賃が下がる
不動産投資において物件の老朽化は避けられない問題です。
建物や設備の経年劣化に伴い、物件の魅力が低下し、競合物件との差別化が困難になります。結果、入居者を確保するために家賃を下げざるを得ない状況に陥る場合があります。
例えば、築年数が20年を超える物件では、新築や築浅物件と比較して10〜20%程度家賃が低くなりやすいです。また、設備の陳腐化や外観の劣化は入居希望者に敬遠される要因となり、空室率の上昇にもつながるでしょう。
このような状況を避けるためには計画的な修繕やリノベーションを行い、物件の価値を維持・向上させる努力が不可欠です。
大規模な設備投資や修繕が必要になった
不動産投資を長期的に続けていくと、大規模な設備投資や修繕が必要になる場合があります。
例えば、建物の外壁塗装や屋上防水工事、エレベーターの更新などです。工事には多額の費用がかかるほか、一時的にキャッシュフローがマイナスになる可能性があります。
マンションの大規模修繕工事では1戸あたり100万円以上、アパートの外壁塗装では1棟500万円以上かかるケースも珍しくありません。
このような大規模工事は物件の価値維持には不可欠ですが、適切な資金計画がなければ投資家に大きな財務的負担をもたらします。乗り越えるためには計画的な修繕積立金の確保や、工事の優先順位付けが重要です。
金利が上昇して返済額が増えてしまった
不動産投資において金利の上昇は、投資家にとって大きな懸念事項のひとつです。とくに変動金利型のローンを組んでいる場合、金利上昇は直接的に毎月の返済額の増加につながります。
例えば借入額3,000万円、返済期間30年の住宅ローンで金利が1%上昇すると、毎月の返済額が約15,000円増加する可能性があります。これは年間で18万円もの負担増となり、キャッシュフローを圧迫する大きな要因です。
また、固定金利型のローンでも、借り換えや新規の投資物件購入時には金利上昇の影響を受けます。
金利上昇リスクに備えるためには余裕を持った返済計画を立て、固定金利と変動金利のバランスを考慮したローンを選ばねばなりません。
ローンの返済比率が高い
高額物件を購入するなどしてローンの返済比率が高い場合、空室発生や金利の変動などによって収支が読めず、マイナス収支を発生させる恐れがあります。
不動産投資をはじめる前に、返済比率が高くならないよう頭金を入れるなどして調整するのが理想です。
しかし、すでに毎月のローン返済が負担という場合は、低金利のローンに切り替えたり、繰り上げ返済を行って利息を減らしたりという対策が必要です。
物件所有数が少ない
投資の方法として1棟投資と区分投資がありますが、区分投資で1件しか物件を所有していない場合、入居者が退去したタイミングですぐに次の入居者が見つからなければ家賃収入はゼロとなります。
比較的少ない資金ではじめられる投資として初心者に人気の方法ですが、空室時のリスクが大きいのが特徴です。
区分マンション投資の場合は、複数の物件を購入することでリスクを分散できます。
ワンルームマンションとファミリータイプのマンションを両方所有する、エリアを分散させるなどの対策を講じながら、物件選びをすることが重要です。
ランニングコストが多い
不動産投資におけるランニングコストは、収入の20~30%が理想とされていますが、その数値を大きく上回ることで当初の予定通りの収支にならないことがあります。
ランニングコストには建物を維持・管理する経費以外にも、入居者対応や税金に関するものなどが含まれます。
まずはランニングコストが収入の何%を占めているか把握し、そこから削減できるものはないか検討してみましょう。
減価償却ができなくなり税負担が増える
不動産投資において減価償却は税務上で重要な優遇措置です。しかし、耐用年数を経過すると減価償却ができなくなり、税負担が増加するリスクがあります。
例えば、木造アパートの法定耐用年数は22年です。期間を過ぎると経費として計上できなくなり課税所得が増加します。仮に年間200万円の家賃収入がある物件で、年間100万円の減価償却費を計上していた場合、耐用年数経過後は100万円分の所得に対して課税されます。
実質的な手取り額が減少し、キャッシュフローがマイナスに転じる可能性があるでしょう。このリスクを回避するためには複数の物件を所有し、減価償却のタイミングをずらすなどの対策が必要になります。
減価償却の仕組みについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
→不動産投資での減価償却の仕組みとは?節税になる理由や注意点を知ろう!
持ち出しありでも物件を所有したほうがよいケース
不動産投資において持ち出しがある場合でも、物件を所有し続けるべきケースはいくつかあります。
一見すると不利に思える持ち出しについて、所有したほうがよいケースを3つ解説します。
一時的な持ち出し
急に設備か壊れなどの理由から、一時的に持ち出しがあった場合は、長期的な収益性を考えると有効になる可能性があります。
市場の変動や短期的な経済状況の悪化により発生する場合も、一過性のものと見られるため、頻繁に持ち出しがある状況ではないなら、問題ないでしょう。
将来的には物件価値の上昇や賃料収入の増加が見込まれる場合、一時的な持ち出しは長期的視点から見れば、継続したほうがよいとされるケースがあります。
節税対策で物件を所有している
所得税・住民税は給与所得から赤字所得を差し引いた額を申請できる『損益通算』ができるため、赤字を黒字で相殺して所得を申請できます。
つまり、会社員として年収500万円の所得があったとしても、不動産所得がマイナス100万円だった場合、400万円のみが課税対象となります。
そのため、所得を減らすためにあえて赤字を出して所得を少なくしている方の場合は、持ち出しがあってもそのまま不動産を所有していても問題ありません。
数年間の持ち出しは考慮のうえで資金計画を立てている
住宅ローンを組んで不動産投資をはじめた場合、ローンの返済期間中は持ち出しがあることも一般的です。
そのため、ローンを完済したあとの老後資金は年金+家賃収入で賄いたいと考え、当初から持ち出しが計画内なのであれば問題ありません。
また、最初に賃貸需要が数十年は下がらないだろうと予測してエリアを選んでおけば、将来的に不動産を売却して利益を得るという方法もあるため、計画が明確になっている場合は持ち出しも想定内となるでしょう。
不動産投資でキャッシュフローをプラスにする方法
ここでは、不動産投資でキャッシュフローをプラスにする方法を5つ取り上げてみました。
・頭金を多めに入れる
・ローンの返済期間を長めにする
・ローンの繰り上げ返済をする
・借り換えで金利を下げる
・新築より中古物件を選ぶ
・経費を削減する
・管理会社選びを慎重にする
・家賃収入アップの工夫をする
それぞれについて、見ていきましょう。
実質利回りの計算をする
実質利回りは、以下の計算式で算出できます。
(年間家賃収入-年間必要経費)÷(物件購入価格+購入時の諸経費)×100=実質利回り(%)
不動産会社のサイトや資料にある『利回り』とは、実質利回りではなく計算式に経費を含まない『表面利回り』であることが多いです。
そのため、表面利回りだけを見て購入を決めたり、収支の計算をしたりすると支出が多くなり持ち出しが発生する原因になります。
持ち出しを防ぐには、実質利回りを計算して家賃収入がどれだけ手元に残るかをしっかり計算しておきましょう。
頭金を多めに入れる
頭金を多めに入れることで、銀行から借り入れる不動産投資ローンの元本と金利に対する支払いが少なくなります。その分ほかの費用に充当することもできるでしょう。
中には頭金を支払わずにローンが組めるケースもありますが、月々の返済負担額が大きくなることからキャッシュフローが悪くなるおそれがあります。
頭金を多く入れた場合も、投資開始時点でのキャッシュフローが悪化するリスクが高いため、頭金は手持ちに余裕がある範囲にすることが大切です。
ローンの返済期間を長めにする
ローンの返済期間を長めに設定することで月々の返済額が小さくなり、結果としてキャッシュフローが改善します。
一方で、返済期間を長くすればするほど完済までに時間がかかってしまうことに注意しましょう。
返済期間が延びると金利も高くなり、総合的な支払い金額が増えるのも注意です。
ローンを繰り上げ返済をする
ローンを繰り上げ返済すると、利息や返済額、返済期間を減らせるとともに、キャッシュフローがプラスになる効果も期待できます。
また、繰り上げ返済には以下2つの方法があるので、あわせて確認しておきましょう。
返済期間短縮型 |
毎月の返済額は変わらないが、返済期間を短くする |
返済額軽減型 |
返済期間は変わらないが、毎月の返済金額が減る |
金融機関によっては繰り上げ返済時に手数料や金額の制限を設けているところもあるため、契約内容を事前に見返しておくことをおすすめします。
借り換えで金利を下げる
低金利のローンに借り換えることで、キャッシュフローの利益を大きくできます。
金利が下がるとともにローンの返済額が総じて減少することから、当初の予定返済期間より早期での返済が可能でしょう。
借り換えには手数料がかかる場合があります。余分な費用を支払わずに済むよう、そもそも借り換えを検討しなくて済むよう、事前にローン検討時に毎月の返済額をシミュレーションしておくことも大切です。
複数の金融機関における返済プランを比較したのち、自身のニーズに見合う先を選ぶように心がけましょう。
新築より中古物件を選ぶ
キャッシュフローを大きくするために、中古物件を選ぶこともひとつの方法です。新築に比べると中古物件の購入額は安いため、ローン返済額が少なくなります。
ただし、中古物件は新築物件購入時のように最長期間でローンが組めない場合があります。築年数によってはローンの期間が短くなってしまい、月々の返済額が高くなってしまうおそれがあるので注意しましょう。
また、物件の築年数が経過していることで、修繕やメンテナンスに費用がかかることも考えられます。新築か中古という点だけではなく、総合的に検討することが大切です。
経費を削減する
現金の収支を確認し、運用に必要なコストを見直すことでもキャッシュフローを改善できます。
見直しやすい経費には、各種保険料や管理会社に支払う管理手数料、消防点検費用などが挙げられます。これらの費用は、企業やプランによって差があるので、複数のサービスを比較してコストの低い会社に乗り換えるのも一つの方法です。
ただし、経費削減のためにコストを下げ過ぎると、最低限のサービスしか受けられなくなる可能性もあるので注意が必要です。費用だけでなくサービスの内容についても十分に確認しましょう。
管理会社選びを慎重にする
不動産投資では物件の管理を管理会社に委託するケースがほとんどです。
入居率の高い管理会社であれば安定した家賃収入が得られるため、キャッシュフローを良い状態で維持できるでしょう。
また、そうした会社は不動産に詳しい人が多い傾向にあり、運営に際してさまざまなアドバイスをもらえるかもしれません。
そのため、不動産管理会社を選ぶ際は入居率の高さに注目することはもちろん、担当者との相性をきちんと確認することをおすすめします。
家賃収入アップの工夫をする
物件の価値を高めて、高めの家賃を維持したり家賃を値上げしたりすることも考えましょう。
物件の価値を高める方法のひとつに、部屋のリフォームが挙げられます。たとえば、壁紙の一部をおしゃれなクロスにする、エアコンを新調する、トイレとバスを別にする、防犯カメラを設置するなどです。
家賃アップを実現させるには、入居者が「住みたい」と感じる部屋にすることが大事です。家賃収入が上がれば、おのずとキャッシュフローも増えていきます。
不動産投資で貯めたキャッシュを有効活用する方法
不動産投資ではキャッシュフローが重要ですが、キャッシュは貯めるだけでは意味がなく、上手に活用することもポイントになります。
ここでは、不動産投資で貯めたキャッシュを有効活用する方法を解説します。
ローン返済に使う
不動産投資で貯めたキャッシュは、空室が発生した際に生じるローンの赤字分を建て替えるとよいでしょう。
不動産投資では、空室になると家賃収入を得ることができなくなる一方で、ローン返済という支出は入居者の有無に関係なく発生します。
不動産投資において、空室リスクは避けては通れないものであり、どれだけ人気物件でも次の入居者が決まるまでには数ヶ月の期間を要する場合もあります。
このような場合、不動産投資を継続するためにはローンの返済を続けなければなりませんが、キャッシュがあれば次の入居者が決まるまでの損失補填が可能です。
せっかく始めた不動産投資をローンの返済ができないという理由で断念しないためにも、キャッシュを残しておきましょう。
金利が上昇したときに使う
不動産投資で貯めたキャッシュは、金利上昇のリスクに備えるために置いておくというのも、有効な活用方法の一つといえるでしょう。
不動産投資は投資の中でも支出と収入のバランスが安定しやすいものの、金利上昇によって資金繰りが大きく変化する場合があります。
基本的には、金利の上昇直後は返済額のうち金利の返済割合が増え、反対に元本の割合は下がります。
しかし、金利上昇から一定の年数が経過すると、上がった金利の分だけ返済額が大きくなり、当初想定していたローンの返済計画が狂ってしまう可能性があります。
このような状況に対しては、低金利ローンへの借り換えや繰り上げ返済などの対策が有効ですが、いずれの方法も手数料が必要です。
キャッシュを貯めておけば、借り換えや繰り上げ返済に必要な手数料をカバーできるため、本来の返済計画に戻しやすくなります。
⇒金利の相場は?不動産投資の金利を決める要因と低金利で借りる4つのコツを紹介
リフォームして物件の魅力を上げる
キャッシュフローを活用した物件リフォームは、不動産投資の価値を高める効果的な方法です。適切なリフォームを行なえば、物件の魅力が向上し、入居率の改善や家賃の値上げにつながる可能性があります。
例えば、キッチンやバスルームの刷新、フローリングの張替え、照明器具の更新などが考えられます。具体的な費用は1Kタイプのマンションで100万円程度、2LDKタイプで200〜300万円程度のリフォーム費用が目安です。
ただし、過度な投資は避け、投資額に見合った家賃上昇や入居率改善が見込めるかを慎重に検討しましょう。
設備が壊れたときの修理費用として使う
不動産投資で貯めたキャッシュは、設備が壊れたときの修理費用や交換費用として使用する方法もあります。
不動産を運用していると、給湯器やエアコンなどの設備が故障する場合もあり、管理会社が想定していないような故障も少なくありません。
これらの設備の修理費用は決して安いものではなく、場合によっては設備や本体の交換に加え、工事費用が発生する可能性もあります。
設備の修理費用は、わざとであれば借主の負担になるものの、それ以外ではオーナーが負担するのが原則です。
例えば、腹が立って物を投げてエアコンが壊れてしまった場合は借主の負担ですが、普通に使っていてエアコンが故障した場合はオーナーの負担になります。
このような場合に発生する一時的な支出は、これまで貯めてきたキャッシュで支払うのが理想的な形といえます。
なぜなら、不動産の管理や修繕で発生する費用は経費となるため、基本的には不動産収入でカバーするものだからです。
予期せぬ出費が発生した際にも滞りなく支払えるように、キャッシュは貯めておく必要があります。
税金を納める際に使う
不動産投資で貯めたキャッシュは、不動産運用で発生する税金のために置いておく必要もあります。
不動産を所有して運用していると、固定資産税や都市計画税をはじめ、所得税、住民税、個人事業税などを納めなければなりません。
これらの税金も不動産投資においては経費に含まれる支出となり、不動産で得た収入からまかなう必要があります。
税金を納めないと延滞税が発生し、さらには資産の差し押さえや競売にかけられるため、十分に注意しましょう。
キャッシュフローのマイナスが続く場合の対処法
キャッシュフローの一時的なマイナスは問題ないものの、長期に続く場合は売却や買取などを視野に入れる必要があります。
ここでは、キャッシュフローのマイナスが続く場合の対策を紹介します。
損切りを検討する
キャッシュフローのマイナスが続く場合は、取り返しのつかない損失になる前に、損切りを検討する必要があります。
損切りとは、投資した金額が当初の計画通りに増えず、赤字が膨らみそうな場合に手元にある資産を売却して損失を抑える行動のことです。
損切りは限られた投資金額を守るために重要な考えであり、判断が早ければ早いほど損失を減らすことにつながります。
不動産投資における損切りのタイミングとして挙げられるのは、慢性的な赤字が発生していてキャッシュフローの回復が見込めない場合です。
例えば、「家賃下落が発生して収入の増加が見込めない」「金利上昇で固定費が上昇した」のようなケースも回復が見込めない状況といえます。
早期に見切りをつけて損切りを行うことで、その分の投資金額を他の投資に使えるため、新たなチャンスを掴める可能性もあるでしょう。
ただし、損切りによってキャッシュフローがさらに悪化するリスクもあるため、キャッシュフローの回復が見込まれる場合は売り急ぎに注意が必要です。
売却する
不動産投資でキャッシュフローの回復が見込めず、損切りを実行する際には売却が選択肢としてあります。
不動産売却を行う際には、「売却時にローン返済ができるか」「売却によって利益が発生するか」なども十分に精査しなければなりません。
売却金額でローンの返済ができない場合は抵当権を外すことができず、足りない分を自身の資金でカバーする必要があります。
上記のことも踏まえ、不動産売却を検討する場合は、まず不動産会社に査定を依頼し、どれくらいの金額で売却できるか調べておきましょう。
また、大きな損失が出ている不動産は将来的な収益が見込めないケースも多く、買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性もあるため注意しましょう。
買取してもらう
キャッシュフローが悪化して損切りを検討しているものの買い手がつかない場合は、買取してもらうのも方法の一つです。
不動産買取は直接物件を買い取るため、不動産売却のように買い手が見つかるのを待つ必要はありません。
また、不動産売却では仲介手数料がかかりますが、不動産買取ではかからないメリットもあります。
一方で、不動産売却の金額の方が買取に比べて高い場合も多いため、時間に余裕がある場合は売却を検討してもよいでしょう。
キャッシュフローのマイナスは放置していると積み重なっていき、やがて大きな損失となり、取り返しがつかない状態になる可能性もあります。
そうならないためにも、売却や買取などの損切りも視野に入れ、キャッシュフローの回復が見込まれない場合は早期の判断も大切です。
まとめ
不動産投資におけるキャッシュフローの重要性は非常に高く、投資の成功を左右する重要な指標です。プラスのキャッシュフローを維持すれば、安定した収益確保や資産価値の向上、さらなる投資機会の創出など、多くのメリットを得られます。
一方、マイナスのキャッシュフローは資金繰りの悪化や投資の中断など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。常にキャッシュフローの状況を把握し、適切な管理と改善策を講じましょう。
また、生み出されたキャッシュは物件の価値向上や新たな投資、リスク対策など、戦略的に活用する必要があります。
不動産投資の成功には長期的な視点でのキャッシュフロー管理が不可欠です。キャッシュフローの安定化を図るためにも適切な管理業務を行ってくれる不動産管理会社を選びましょう。
アセットテクノロジーは、他社と比較してもリーズナブルな価格で管理代行を行っているため、キャッシュフローの改善に貢献します。さらに適切な管理によって入居者様の満足度を高め、入居率アップも実現しています。
安定したキャッシュフローを実現できる不動産投資を目指す方は、お気軽にご相談ください。