不動産投資でデッドクロスにならないためには?発生原因と回避方法

不動産投資をする上で、「デッドクロス」について耳にしたことがある人は多いでしょう。もし不動産投資でデッドクロスになると、黒字倒産になるおそれがあります。 ここでは、デッドクロスの内容や原因、回避方法について詳しく解説します。

この記事は約9分で読み終わります。

不動産投資におけるデッドクロスとは?

はじめに、不動産投資におけるデッドクロスとはどのようなものかを見ていきましょう。

デッドクロスとはどんな状態のこと?

デッドクロスとは、ローンの元金返済額が物件の減価償却費を上回る状態のことです。

そもそも減価償却とは、物件購入で使った取得価格を一括計上せず、耐用年数に応じて毎年経費として計上します。耐用年数にわたって、毎年経費にすることを「減価償却」、実際に経費になる金額を「減価償却費」といいます。

一方、ローンの元金返済は経費になりません(利息は経費になります)。

デッドクロスを理解するには、手元にある現金の資金繰りと帳簿上の利益は違うことを認識する必要があります。

要は、帳簿の上では黒字なのに手元から出ていく現金が黒字分を上回っているのです。

デッドクロスになるとどうなる?

デッドクロスでは、手元のお金は出ているのに帳簿上の利益は減らない、という現象が起きています。

利益が増えると所得税や住民税が高くなり、その支払いでさらに支出が増えます。その結果、手元の現金がさらに少なくなり、ローン返済や税金の支払いができなくなってしまうこともあります。

最悪の場合は、黒字なのに倒産する状況に追い込まれてしまうでしょう。

なぜ黒字なのに倒産するのか

会計上では黒字であるにもかかわらず、手元のキャッシュが不足してしまい、ローンの返済や税金の支払いができなくなって破綻することを「黒字倒産」といいます。

黒字倒産が起きる原因は、以下の2つです。

・償却年数が過ぎて経費計上していた減価償却費がなくなる

・ローン返済額に占める元金返済額が増え、利息が減る

一般的にローンは、返済期間が長くなるにつれ、返済額に占める元金返済額の割合が高くなります。これはローン返済における利息の割合が減り、経費計上できる金額が減ることを意味します。

利息に加えて、償却年数が過ぎて減価償却費も減少すると、経費計上できる額はさらに少なくなります。収入から差し引かれる経費が少なくなると税金は増加します。

そして、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」が発生してしまうのです。デッドクロスを境に、会計上は収益が上がっているにもかかわらず、ローン返済と税金の支払いに圧迫されるようになります。不動産収入からだけでは支払いができなくなると、貯金なども崩すことになり、やがて不動産経営が立ち行かなくなるおそれがあります。

デッドクロスが発生する原因

デッドクロスを避けるためには、発生する原因を把握しておく必要があります。

デッドクロスの発生には、主に以下のような原因が考えられます。

経費計上できる金利が減っていく

デッドクロスが発生する原因のひとつが、先述のとおり経費に計上できる金額の減少です。計上できる金額が減少する経費として、よく挙げられるのが金利(支払利息)です。

ローンの返済が進むと金利(支払利息)の支払いが減ります。ローンの返済方法は「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類です。どちらの返済方法を選択しても、金利分の支払いが減っていくようになっていますが、元金の返済金額が年々増加する「元利均等返済」は、特にデッドクロスになりやすいとされています。

元利均等返済の場合、支払い金額に変化はありません。金利部分が減っても、その分元金の返済が増えます。支払額は同じなのに、手元から出ていく現金が年々増えていくのが、デッドクロスの原因になります。

耐用年数よりローン返済期間が長い

耐用年数よりローン返済期間が長いこともデッドクロスの原因です。不動産物件は物件の構造や築年数などによって、耐用年数が決まっています。また、その耐用年数の期間でしか、減価償却費を計上することができません。

ローンの返済期間が耐用年数よりも長いと、減価償却費が計上できなくなった後でもお金の支出が続くので、デッドクロスになる可能性が高くなります。特に中古物件や木造建築物件は、耐用年数が短いため注意が必要です。

築年数の経過による入居率の悪化

手元の現金が減少するという観点で考えると、家賃収入の減少もデッドクロスの原因となります。築年数の経過とともに、入居率の悪化も考えられるためです。

また、築年数が経過していると、空室対策として家賃を下げざるを得ないケースも出てくるため、家賃収入の減少につながります。

借入金で土地も購入している

借入金で土地を購入していると、必然的にデッドクロスが生じます。土地は減価償却の対象外であるため、減価償却費を計上することができず、借入金で土地を購入すると「借入金の元本返済額>減価償却費」となるからです。

減価償却は「経年によって価値が減少する」という考えのもとに行われ、土地は年を経ても、建物のように劣化して価値が下がるものではないとされています。土地と建物を購入した場合、減価償却費を経費計上できるのは建物購入費分だけです。

デッドクロスを回避するには

ここからは、デッドクロスを回避する方法について見ていきましょう。

自己資金を多く準備する

購入物件に対して頭金を多く用意し、自己資金の割合をできるだけ多くしておきましょう。ローンの返済額を減らすことで、デッドクロスを避けられます。購入物件に対する借入金の割合を8割以下にする、つまり自己資金を2割以上用意することが望ましいとされています。

デッドクロスを回避するためには、購入物件に対して自己資金をどれだけ用意すればよいか、事前にシミュレーションをしておきましょう。購入したい物件の価格をもとに、減価償却費とローンを借りた場合の返済額を算出し、頭金の額を決定するのをおすすめします。

ただし、自己資金の割合を高めると、不動産投資のメリットである「レバレッジ効果」は小さくなります。デッドクロスのリスクとレバレッジ効果のバランスを取りながら、借り入れを行いましょう。

減価償却の期間が長い物件を購入する

新築、または築の浅い物件は減価償却期間が長く、期間が終了するまでにローン返済を終わらせることができるので、デッドクロス発生のリスクを減らせます。新築住宅の場合、木造の減価償却期間は22年ですが、RC造なら47年と長いです。

ただし、減価償却期間が長くなると、1年あたりの減価償却費は小さくなります。

期間の初期においては、ローン返済額に占める利息の割合が高いため、利息と減価償却費を合わせた大きな節税効果を狙えます。しかし、減価償却期間が長くなるほど1年あたりの減価償却費が小さくなるため、節税効果も低くなってしまうのです。

頭金を入れる

頭金を多めに入れておくことで、デッドクロスを回避しやすくなります。頭金を多く入れると、次の利点があります。

・返済額が減り、手元にお金が残りやすい

・ローンの返済期間を減らすことができ、耐用年数よりも早く返済ができる

いくらの頭金を用意すればよいかは、物件によって異なります。デッドクロス回避になる頭金がいくらになるのか、事前にしっかりとシミュレーションすることが大切です。

減価償却の期間が長い物件を購入する

減価償却の期間が長い物件を購入することで、経費計上できる期間を延ばせられます。

できるだけ耐用年数の長い物件を購入することで、耐用年数の期間内でローン返済が可能になるため、デッドクロスを回避できます。

新築の物件や中古物件でも築年数が新しい物件は、耐用年数が長めになります。デッドクロスのリスクを低くするためにも、ローン期間と耐用年数を比較して、どの物件を購入するか検討しましょう。

収益性の高い物件を購入する

デッドクロスの回避策として、収益性の高い物件を購入する方法があります。収益性の高い物件を購入することで、多くの家賃収入を得られます。そのため、手元の資金を確保でき、デッドクロスに備えることができます。

収益をあげることは、デッドクロス自体を回避するための方法とはいえませんが、より資金が手許に残ることで、デッドクロスによるキャッシュフローの悪化に対応できます。

収益性の高い物件を購入することは、デッドクロス発生時の影響を最小限にできる方法といえるでしょう。

繰上返済をする

資金に余裕がある時にローンを繰上返済することで、デッドクロスを回避できます。なぜなら、繰上返済することで、ローン返済の期間を減らすことができるからです。

ただし、繰上返済は、資金の余裕がないと行ってはいけません。無理に繰上返済をすると、逆にキャッシュフローが悪化するおそれがあります。

元金均等返済方式にする

ローンの返済方法には、元利均等返済方式と元金均等返済方式があり、元利均等返済を選択する人が多いです。デッドクロスのリスクを減らすには、時間が経つと元金と利息の合計返済額が減っていく元金均等返済方法が有利といえます。

元利均等返済方式とは、毎月の返済額は一定で、返済額に占める利息の割合が年を経るごとに減っていく方式です。一方、元金均等返済方式とは、元金返済額は返済期間中一定で、上乗せされる利息が返済開始当初から年を経るごとに減っていく方式です。

どちらの方法も利息は時間とともに減っていくため、経費計上できる額は減っていきますが、元金均等返済方式は返済額も次第に減っていくため、経済的な圧迫度合いは元利均等返済方式よりも小さくなります。

借り換えや借入期間の延長

金利の低いローンへの借り換えや借入期間の延長をすれば、毎月のローン返済額を減少でき、デッドクロスの回避にもつながります。

毎月のローン返済額を減らし、手許資金に余裕をもたせることで、万が一デッドクロスが起こった場合のキャッシュフローの悪化に対応できたり、備えたりできるようになります。

まずは、どのくらい借入期間を延長すれば効果があるのかを、シミュレーションしてみましょう。

借入は建物投資額に絞る

借入金を建物購入額に絞ることも、デッドクロスを回避するのも有効な方法です。

先述したように、土地の購入費は減価償却ができないため、土地・建物の両方を借入金で賄っても、建物分の減価償却費しか経費計上できません。土地・建物を合わせた毎年の返済額は当初から減価償却費を超えてしまうため、デッドクロスが起きてしまいます。

土地の購入費を全額自己資金で用意し、建物の減価償却期間が終わるまでにローンを返済すれば、デッドクロスのリスクは下げられます。

物件を早めに売却し、新規物件を購入する

デッドクロスを回避するために、物件を早めに売却し、新規物件の購入を考えるのも良い方法です。耐用年数の終了前に所有する物件を売却し、デッドクロスを回避します。

ただし、保有期間4年以下で物件を売却すると、高く売れる可能性はありますが、売却益にかかる譲渡所得税などの税金が高くなる場合があるので注意しましょう。

また、新規に耐用年数の長い物件を購入すると、長い期間の減価償却費が計上できるので、デッドクロスの回避になります。

まとめ

デッドクロスとは、ローンの元金返済額が物件の減価償却費を上回ることです。デッドクロスになると、経費の計上額よりもお金の支出が多い状態になるため、最悪の場合は黒字なのに倒産する状況に追い込まれます。

デッドクロスを回避するためには、発生原因を理解した上で、対策を講じる必要があります。まずは物件購入前に、十分な収益が確保できるかどうかシミュレーションをし、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。