不動産投資は保険代わりになる?ならない?団体信用生命保険の仕組み

不動産投資をすると、サラリーマンでも不労所得を得られて資産形成ができます。保険代わりになるといわれている不動産投資ですが、なぜ不動産投資が保険になるのでしょうか。今回は不動産投資がなぜ保険代わりになるのか解説しながら、投資に取り組むときの基本的な考え方をご紹介します。

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不動産投資が生命保険の代わりになる理由

不動産投資は家賃収入を得られるのみではありません。例えば、生命保険の代わりになる点も、大きなメリットです。生命保険代わりになるといわれる理由は、団体信用生命保険に加入できるためです。

投資用不動産をローンで購入するとき、投資家は「団体信用生命保険(団信)」に加入できます。

団体信用生命保険は、ローン返済中の被保険者に不測の事態が起きたとき、生命保険会社が保険金によってローン残債を返済する保障制度のことです。

団体信用生命保険に加入していれば、投資家本人がローンを残して亡くなっても、ローンの残債を生命保険で相殺して、遺族が投資物件を相続できます。

不動産投資で団体信用生命保険に加入するメリット

団体信用保険は、もしもに備えて保障があるため、ローン返済者とその家族にとってメリットがあります。

もしものときにローンを完済できる

団体信用生命保険の加入者が死亡や高度障害に患った場合、ローン残金相当の金額が支払われます。死亡時や高度障害状態となったとき、余命6か月以内と診断された場合はローン残債に対する返済義務がなくなります。

万が一のとき、遺族の生活をローン返済で圧迫する心配はありません。

加入する保険によっては、入院時の保障も得られます。どこまでサポートしてもらえるのか、契約時は保証や保障の適用範囲を細部まで確認しましょう。

もしものとき遺族にお金を残せる

保険未加入の場合、遺族は不動産投資時のローン残債を引き継ぐことになります。仮に毎月の家賃収入が安定して得られているとしても、ローン返済にあてなくてはなりません。

一方、団体信用生命保険に加入していると、前述の通りローン返済義務がなくなり、完済したときと同じ状態で物件を遺族に残せます。遺族が賃貸経営を続ける場合、ローンを完済した状態で毎月の家賃収入を得られるため、手元に残る現金が多くなります。

また、賃貸経営を続けないと判断したときも、ローン完済した物件であればスムーズに売却して現金化が可能です。

団体信用生命保険の仕組み

団体信用生命保険は、加入期間「ローンを完済するまで」と決まっているのが特徴です。毎月の保険料は借り入れたローンの金利に含まれており、新たに支払う必要はありません。そのため、団体信用生命保険に加入した方には金利が上乗せされています。

金利が上乗せされると、一見損をするように感じるかもしれません。しかし、同程度の保障額を一般的な生命保険で賄おうとする場合に比べると、負担は小さくなります。一般的な生命保険に加入すると、同程度の保障を得るためには毎月数万円の保険料が必要です。

団体信用生命保険に加入しても、金利に上乗せされるのは1年当たり0.3%前後です。通常より若干多めに金利を支払うのみで、タイミングによっては数千万円分のローン残債を完済したことにできる仕組みは、メリットが大きいといえます。

団体信用生命保険と一般的な生命保険の違い

団体信用生命保険は、表面上は任意加入です。ただし、金融機関によっては融資条件に保険加入が含まれている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

すでに一般的な生命保険へ加入している方の中には、団体信用生命保険を利用するか悩む方も多いのではないでしょうか。団体信用生命保険と一般的な生命保険には、保証の範囲や加入条件など多くの違いがあります。

まずは両者を比較して、一方のみ利用するのか、両方に加入するのか、自分に合ったスタイルを見つけることが大切です。

団体信用生命保険と一般的な生命保険の違いは、下記の通りです。

 

団体信用生命保険

一般的な生命保険

加入期間

ローン契約時から完済まで

加入内容による

(定期or終身)

保証額

借り入れたローンの残高

加入プランによる

保険料

ローン金利に数%上乗せ

加入プランによる

掛け捨ての有無

掛け捨てなし

掛け捨てあり

前述したように、団体信用生命保険は借り入れたローンの残債分に適用されます。そのためローンが完済扱いとなる一方で、現金が支払われることはありません。一般的な生命保険は加入内容によって金額は異なりつつも、万が一のときは現金を遺族に残せます。

団体信用生命保険、一般的な生命保険のどちらにもメリットやデメリットがあります。万が一のときはローンを完済させたいか、現金を残したいかなど、どのようなメリットを重視するかで加入する保険を選ぶことが大切です。

生命保険代わりの不動産投資にはリスクもある!

生命保険の代わりとなる一面があるとはいえ、不動産投資には様々なリスクがあります。不動産投資のデメリットも、しっかり理解しておきましょう。

ここでは、不動産投資につきもののリスクを紹介します。

物件を希望通りに売却できない

同じ投資のなかでも、不動産は株式や外国為替と比較して流動性が低いという特徴があります。売却すればまとまった金額になるものの、買主を見つけて契約するまでに最低限でも数ヶ月かかり、すぐに現金化できるとは限りません。

また、不動産価格は変動が大きく、想定した売却額では買い手がつかないリスクもあります。売却時の税金や不動産会社への仲介料、司法書士への報酬といったコストも大きく、希望する売却益に届かない可能性があります。

家賃が下がり生活資金にならない

不動産物件は、築年数の経過によって家賃が下がるので注意が必要です。将来的に家賃が値下がりし、生活資金が得られないことがあります。

物件の維持には一定のコストがかかり、収入と収支のバランスが悪くなると資金計画が頓挫してしまいます。特に 、投資物件を複数棟保有していない場合は、遺族が家賃収入だけで暮らしていけない可能性が高いといえるでしょう。

また、空室リスクも無視できません。家賃収入は、入居者がいてこそ得られるもので、需要の変化で空室が発生すると収入が下がり、生活ができなくなることもあります。

運用中に損益を被る

不動産は生命保険と違い、運用中に損益を被るリスクがあります。例えば、火災や地震、台風による浸水といった被害が発生すると、不動産経営ができなくなります。

災害は、いつ起きるか予測できません。いったん発生すれば家賃収入が途絶えて生活ができなくなるだけでなく、修繕するために大きな支出を求められるため、備えが必要です。

また、入居者がいても、本人の経済事情による家賃滞納のリスクがあります。すでに居住者がいる場合、例え家賃を滞納していてもすぐに追い出せません。

空室であれば新しい入居者を募集して家賃収入の不足をカバーできるものの、滞納されるとなにもできず、投資家にとってはデメリットしかありません。最終的には強制退去を求めるしかなく、訴訟費用を始めとする損失ばかりが増えてしまいます。

不動産ローンを返済中に金利が上昇し、支出が増えるリスクもあります。不動産投資はある程度の資金力を残しておかないと、なかなか難しいのが実情です。

団体信用生命保険の保険金が下りない

団体信用生命保険は不測の事態に備える保険制度ではあるものの、保険金が支払われないケースもあります。例えば、自分の健康状態を正しく金融機関に伝えていなかった場合、告知義務違反と判断されると保険金が支払われません。

一般の生命保険と同様に、団体信用生命保険も本人の健康状態に問題があると債権回収ができないと見なされて、加入できなくなります。健康状態は金融機関にとって重要な判断目安なので、正確な報告が義務づけられています。

また、本人が病気や事故で就業不能になっても、死亡や所定の高度障害に該当しないと判断されて、保険金が下りないことがあります。

不動産投資に対する正しい見方とは

不動産投資はたしかに、生命保険の代わりになる一面があります。しかし、不動産投資はあくまでも、事業としてとらえるのが正解です。

不動産投資には、空室や家賃滞納を始めとする様々なリスクがつきものです。保険のように、毎月お金を払っておけば良いわけではなく、リスクを抑えるために、需要の高い地域や資産価値の高い物件を選ぶ必要があります。

また物件の維持管理にもランニングコストがかかるため、収入と支出のバランスを把握して経営に取り組むことが肝心です。

まとめ

不動産投資がもしものとき、生命保険代わりになるといわれる理由は、団体信用生命保険を利用できるためです。保険に加入していれば、遺族が不動産投資関連のローン返済で悩まされずに済みます。

ただし、デメリットや注意点もあるため、生命保険の代わりとするだけの目的で不動産投資を行うのは適切とはいえません。投資である以上、あくまで資産運用を主目的として取り組むことをおすすめします。